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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第1節 省庁別の検査結果|第10 農林水産省|不当事項|役務

森林域における放射性物質流出抑制対策調査に係る委託事業の実施に当たり、航空機の運航時間に運航していない時間を含めてレーザ計測の経費を算定するなどして委託費を支払っていたため、委託費の支払額が過大となっていたもの[林野庁](256)


会計名及び科目
一般会計 (組織)林野庁 (項)東日本大震災復旧・復興森林整備・保全費
部局等
林野庁
契約名
(1)平成24年度森林域における放射性物質流出抑制対策調査その2
(2)平成24年度森林域における放射性物質流出抑制対策調査その4
契約の概要
東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故により発生した放射性物質を含む土砂等が森林域から流出することを防止するための治山対策について検討することを目的として、航空機を使用したレーザ計測を実施するなどして崩壊土砂流出危険度等を把握するもの
契約の相手方
(1)国際航業株式会社
(2)朝日航洋株式会社
契約
(1)平成24年8月 一般競争契約
(2)平成24年8月 一般競争契約
支払額
(1)151,515,000円(平成24年度)
141,750,000円(平成24年度)
計 293,265,000円
過大となっていた支払額
(1)43,444,990円(平成24年度)
(2)3,695,091円(平成24年度)
計 47,140,081円

1 委託事業の概要等

(1)委託事業の概要

林野庁は、東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故により発生した放射性物質を含む土砂等が森林域から流出することを防止するための治山対策について検討することを目的として、平成24年度に森林域における放射性物質流出抑制対策調査その2及び森林域における放射性物質流出抑制対策調査その4(以下、これらを合わせて「委託事業」という。)を、国際航業株式会社及び朝日航洋株式会社(以下、両社を合わせて「2会社」という。)にそれぞれ委託して実施している。

委託契約書等によれば、委託事業の調査内容は、次のとおりとされている。

〔1〕 宮城、福島両県内の特に放射線濃度が高い地域約811km2及び約650km2を調査の対象として、航空機を使用して上空からレーザ光を照射し、その反射波を計測すること(以下「レーザ計測」という。)により詳細な地表状況等を把握する。

〔2〕 〔1〕 により取得した成果等に基づき解析等を行い、森林域における山腹の崩壊等に伴い放射性物質を含む土砂等が森林域から流出するおそれのある箇所を把握し、崩壊土砂の流出の危険度等を把握する。

(2)委託費の額の確定等

委託契約書によれば、林野庁は、委託事業が終了して実績報告書の提出を受けたときは、委託事業の内容が委託契約の内容に適合するものであるかどうかの検査を行うこととされており、適合すると認めたときは、委託契約書に定める委託費の限度額(以下「支払限度額」という。)と委託事業の実施に要した経費の実支出額とを比較して、いずれか低い額を委託費の額として確定し、その支払を行うこととされている。

そして、林野庁は、2会社から提出された実績報告書等を検査した上で、当該実支出額154,128,785円及び145,710,693円が支払限度額の151,515,000円及び141,750,000円を上回ることから、委託費の額を151,515,000円及び141,750,000円、計293,265,000円と確定して、その支払を行っている。

2 検査の結果

(1)検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、委託事業の実施に要したとする経費は適正に確定して支払われているかなどに着眼して、林野庁及び2会社において、2会社に支払われた前記の委託費を対象として、実績報告書等の関係書類により会計実地検査を行った。

(2)検査の結果

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

ア レーザ計測に係る経費の実支出額について

2会社のうち国際航業株式会社は、委託事業の実施に当たり、レーザ計測を航空機の運航会社(以下「運航会社」という。)に再委託して実施させていた。そして、国際航業株式会社は、本件レーザ計測に際して年間借上料が66,000,000円の航空機を3機使用して実施したとして、当該3機分の全運航時間と全運航経費に基づき、レーザ計測の実施に係る航空機1機分の1時間当たりの平均単価を算定し、これに運航会社から報告されたレーザ計測の実施に係る航空機の運航時間計92.4時間を乗じて、レーザ計測費を算定していた。

しかし、本件レーザ計測は、年間借上料が66,000,000円の航空機1機と年間借上料が35,000,000円の航空機1機の計2機で実施されていた。また、運航会社から報告された運航時間には、当該2機が運航していない時間計44.4時間が含まれていた。これらのことから、実績報告書に記載していたレーザ計測費の額は、実支出額より35,764,473円高い額となっていた。

イ 人件費の実支出額について

2会社は、委託事業に従事した者(以下「従事者」という。)ごとに23年4月1日から24年3月31日までの間に実際に支給した給与等に基づき1日当たりの単価(以下「人件費日単価」という。)を算定し、これに従事者が委託事業に従事した実日数を乗じて、人件費を算定していた。

しかし、2会社は、人件費日単価の算定に当たり、委託契約書等において算定の対象から除外することとされている超過勤務手当等を含めるなどしていた。このため、実績報告書に記載していた人件費の額は、実支出額より9,045,555円高い額となっていた。

したがって、レーザ計測の実施に要した適正な航空機1機分の1時間当たりの単価及び運航時間に基づきレーザ計測費を算定するとともに、超過勤務手当等を除外した適正な人件費日単価に基づき人件費を算定するなどして、適正な委託費の額を算定すると、108,070,010円及び138,054,909円となり、前記委託費の支払額151,515,000円及び141,750,000円との差額43,444,990円及び3,695,091円、計47,140,081円が過大に支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、2会社において委託費の適正な算定に対する理解が十分でなかったこと、林野庁において実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。