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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第10 農林水産省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金 |
  • (1)工事の設計が適切でなかったなどのもの

放水路の設計が適切でなかったもの[農林水産本省](271)


(1件 不当と認める国庫補助金 2,468,034円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(271) 農林水産本省 広島県 福山市
(事業主体)
地域自主戦略交付金 24 31,438 15,500 5,005 2,468

この交付金事業は、福山市が、同市沼隈地区において、老朽化したため池を改修するために、堤体工、洪水吐・放水路工等を実施したものであり、洪水吐・放水路工として、洪水吐(延長21.5m)、移行部緩勾配水路(延長17.0m。以下「移行部水路」という。)及び放水路(延長8.0m)を築造したものである。このうち、移行部水路については3区間に分かれており、道路が横断する中央部をボックスカルバート(延長9.0m)とし、この上流側の区間(延長3.45m、高さ5.0m~5.1m(左岸)及び3.9m(右岸)、幅3.6m~4.7m。以下「上流部」という。)及び下流側の区間(延長4.55m、高さ2.8m~4.7m(両岸)、幅3.6m。以下「下流部」という。)を現場打ち鉄筋コンクリート構造の開水路としていた。

同市は、移行部水路の設計に当たり、「土地改良事業計画設計基準・設計「水路工」」(農林水産省農村振興局制定)等に基づき、側壁背後における地面の勾配、自動車荷重等により側壁及び底版に作用する土圧を算定し、この土圧等により側壁及び底版に配置された主鉄筋に生ずる引張応力度(注)が許容引張応力度(注)を下回ることから、応力計算上安全であるとし、また、応力計算を行った後に作成する配筋図において、下流部の右岸側壁外側の主鉄筋については径13㎜の鉄筋を12.5㎝間隔で配置することとして、これらにより施工していた(参考図参照)。

しかし、現地の状況等を確認したところ、本件移行部水路のうち上流部及び下流部の設計は次のとおり適切でなかった。

ア 側壁背後の土圧の算定等について

設計の基礎となっている設計計算書においては、側壁背後の地面について、上流部の勾配が1:19.7であるのに1:50.0とこれより緩い勾配としていたり、上流部及び下流部にはそれぞれ盛土があるのにこれらを考慮していなかったり、また、側壁背後の自動車荷重について、上流部の道路には設定していたのに下流部の道路には設定していないなどしていた。

イ 主鉄筋の配筋について

下流部の右岸側壁外側の主鉄筋について、設計計算書においては、径16㎜の鉄筋を配置することとしていたのに、配筋図を作成する際に、誤って径13㎜の鉄筋を配置することとしていた。

そこで、ア及びイに基づいて改めて応力計算を行ったところ、上流部において、底版下面の主鉄筋に生ずる引張応力度(注)が196.74N/mm2となり、また、下流部において、右岸側壁外側及び底版下面の主鉄筋に生ずる引張応力度(注)がそれぞれ193.42N/mm2及び220.02N/mm2となるなど、許容引張応力度(注)176N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、移行部水路の上流部及び下流部の延長計8.0mの区間(これらの工事費相当額計5,005,818円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額計2,468,034円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、広島県において同市に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

(参考図)

移行部水路断面図

移行部水路断面図 画像