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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第10 農林水産省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(8)国営土地改良事業に係るパイプライン工事の実施に当たり、基礎材として再生砕石の利用を一層促進することにより、環境に配慮しつつ経済的な設計を行えるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省
(項)農業生産基盤保全管理・整備事業費 等
食料安定供給特別会計(国営土地改良事業勘定)
(項)土地改良事業費 等
東日本大震災復興特別会計 (組織)農林水産本省
(項)農業生産基盤保全管理・整備事業費 等
部局等
7事務所等
事業の根拠
土地改良法(昭和24年法律第195号)
工事の概要
基礎材に砕石を用いた農業用水を送水するなどのパイプラインを整備する工事
基礎材に新材砕石を使用している工事費
95億3589万余円(平成23年度~25年度)
上記工事の基礎材費の積算額
1億4944万余円(平成23年度~25年度)
上記のうち低減できた基礎材費の積算額
2530万円

1 事業の概要

(1)パイプラインの概要

農林水産省は、土地改良法(昭和24年法律第195号)等に基づき、農業の生産性の向上等に資することを目的として、各地方農政局等の農業水利事務所、農地防災事務所等(以下「事務所等」という。)において、農業用水を送水するなどのパイプラインを整備する国営かんがい排水事業等の国営土地改良事業を毎年度多数実施している。

パイプラインは、鋳鉄管等を埋設した管路を用いて農業用水を送配水する水路組織であり、管路とポンプ施設等の附帯施設から構成されている。

(2)パイプラインの設計に係る技術基準等

農林水産省は、パイプラインの設計に係る技術基準として「土地改良事業計画設計基準・設計「パイプライン」」(平成10年9構改D第248号農林水産事務次官依命通達。以下「設計基準」という。)等を制定している。

設計基準等によれば、管路の基礎として用いられる材料(以下「基礎材」という。)には、原則として砂、砂れき又は良質な地盤材料を用いるものとするとされている。そして、一般的に基礎材の一つとして砕石が使用されている。

砕石には、原石を破砕するなどして製造する砕石(以下「新材砕石」という。)と、コンクリート構造物の解体等により発生するコンクリート塊等の廃棄物を再資源化施設において破砕するなどして製造する砕石(以下「再生砕石」という。)がある。

(3)管路の基礎材の品質及び施工に関する事項

農林水産省は、「土木工事共通仕様書」において、土木工事に共通する各作業手順、使用材料の品質、施工方法等の工事の内容について定めている。また、各工事の実施に当たっては「特別仕様書」を定め、「土木工事共通仕様書」を補足して、工事の施工に関する明細等を定めている(以下、「土木工事共通仕様書」と合わせて「仕様書」という。)。

仕様書によれば、基礎材に使用する砕石については、仕様書に定められた粒度等の規格に適合したことを証明する試験成績書を監督員に提出して承諾を得たものを使用することとされており、粒度等の規格については、新材砕石も再生砕石も同様となっている。また、材料の使用時に監督員が不良品と認めた材料については、速やかに取り替えなければならないとされている。

(4)農林水産省における再生砕石の活用等に関する取組

国は、再生資源の十分な利用及び廃棄物の減量等を通じて資源の有効な利用の確保等を図ることを目的として、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年法律第104号)等の法体系の整備を始め様々な取組を進めている。

そして、農林水産省が上記の再生資材の活用等に関する取組を踏まえて定めた「建設副産物活用技術指針(案)」(平成15年農林水産省農村振興局整備部設計課作成。以下「技術指針」という。)によれば、利用の用途に要求される品質等を考慮した上で、原則として再生砕石を利用することなどとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、管路の基礎材に砕石を使用している工事について、技術指針等の趣旨に沿って、再生砕石の利用の促進が図られ、環境に配慮しつつ経済的な設計が行われているかに着眼して、23年度から25年度までの間に11事務所等(注1)において実施された工事のうち、管路の基礎材に砕石を使用している工事計107件(工事費計171億4534万余円)を対象として、設計図書等の書類、現地の状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
11事務所等  筑後川下流農業水利事務所、四国東部農地防災事務所、那珂川沿岸、印旛沼二期、柏崎周辺、九頭竜川下流、西諸、肝属中部、沖永良部各農業水利事業所、庄川左岸農地防災事業所、帯広開発建設部

(検査の結果)

検査したところ、7事務所等(注2)では、管路の基礎材に再生砕石ではなく新材砕石を使用していた工事が、計78件(工事費計139億2115万余円、基礎材費の積算額計2億2929万余円)見受けられた。

(注2)
7事務所等  筑後川下流農業水利事務所、那珂川沿岸、印旛沼二期、九頭竜川下流、西諸、肝属中部各農業水利事業所、帯広開発建設部

そして、上記78件の工事について、再生砕石を使用していない理由を確認したところ、設計基準等に「アスファルト成分の固化による集中荷重や製造過程で混入金属等を除去しきれない場合があるので注意が必要である」との注意事項の記載があることから、管内の再資源化施設に再生砕石の品質について問い合わせるなどした結果、再生砕石からアスファルト塊や混入金属等の異物を全て除去することはできないとの回答を得たことから再生砕石を使用しなかったとしていた。

しかし、農林水産省は、上記の設計基準等における注意事項の趣旨は、再生砕石の利用を妨げるものではないとしており、また、再生砕石を使用している事務所等は、異物の混入等について、監督員が基礎材の搬入の際に現地において確認して使用するなどしていて、再生砕石を使用することにより特段の問題が生じている事態は見受けられなかった。そして、前記78件の工事のうち、64件の工事(工事費計95億3589万余円、基礎材費の積算額計1億4944万余円)においては、新材砕石よりも、再生砕石の方が安価であった。したがって、7事務所等においても、再生砕石を使用することが可能であり、再生砕石の利用の促進を図る必要があると認められた。

このように、管路の基礎材に再生砕石ではなく新材砕石を使用していて、環境に配慮した経済的な設計となっていない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

前記64件の工事における基礎材費の積算額計1億4944万余円について、新材砕石ではなく再生砕石を使用することとして修正計算すると計1億2406万余円となり、基礎材費の積算額を約2530万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、農林水産省において、管路の基礎材について、再生砕石の利用を一層促進することにより、環境に配慮しつつ経済的な設計を行うことについての各事務所等に対する指導が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、26年8月に通知を発して、再生砕石の利用を一層促進することにより、環境に配慮しつつ経済的な設計を行えるよう、基礎材に使用する再生砕石の品質等を特別仕様書に明記するための土木工事特別仕様書記載例の改正を行うなどの処置を講じた。