【改善の処置を要求したものの全文】
道路管理データベースシステムへの基本データの登録について
(平成26年10月30日付け 国土交通大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴省は、道路法(昭和27年法律第180号)に基づき、一般国道のうち政令で指定された区間の道路について、維持、修繕及び災害復旧その他の管理(以下、これらを合わせて「道路管理」という。)を行っている。そして、貴省は、上記区間の道路の橋りょう、トンネル等の施設(以下、これらの施設を合わせて「道路施設」という。)に関する情報の一元化及び共有化を図るとともに、道路管理の効率化及び高度化を図ることにより、災害時等において迅速かつ的確な対応ができるように道路管理データベースシステム(以下「道路管理DBS」という。)を昭和63年度から地方整備局、北海道開発局及び沖縄総合事務局(以下、これらを合わせて「地方整備局等」という。)のほか、地方整備局管内の国道事務所、河川国道事務所、技術事務所、北海道開発局管内の開発建設部及び沖縄総合事務局管内の国道事務所(以下、これらを合わせて「国道事務所等」という。)に導入している。
道路管理DBSは、新設、改良又は撤去を行った道路施設の名称、所在地、路線名等の文字データや延長、幅員等の数値データからなる諸元、図面、写真等(以下、これらを合わせて「諸元等」という。)を登録する基幹システムと道路施設の点検記録や補修履歴等を登録するサブシステムから構成されている。
道路管理DBSは、財団法人道路保全技術センター(以下「センター」という。)が開発したシステムであり、貴省は、道路管理DBSに係るデータの登録等をセンターに委託して実施していた。その後、平成21年11月に、センターは道路管理DBSの登録等を含む貴省発注の業務から撤退して、23年3月末に解散することとなった。そして、貴省は、21年11月から道路施設の諸元等の道路施設基本データ(以下「基本データ」という。)の道路管理DBSへの登録ができない状態となっていたが、センターの解散に伴い道路管理DBSに関してセンターが有していた著作権の譲渡を受けて、23年度に道路管理DBSに係る基本データの登録を再開した。
貴省は、基本データを作成する対象工事であることが契約図書の一部である土木工事共通仕様書に明示されている道路工事を発注する場合には、工事の請負人に、道路工事完成図等作成要領(平成18年国土技術政策総合研究所制定)等に基づいて基本データを作成させて、電子成果品として提出させている。なお、基本データの作成に係る費用については、当該工事の積算において、共通仮設費の中の技術管理費に計上することとなっている。そして、貴省は、新設、改良等の道路工事の完成後に、工事の請負人から提出された工事ごとの基本データを道路施設ごとに集約するなどして道路管理DBSに登録するなどの業務(以下「登録業務」という。)を委託している。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
道路管理DBSの機能を活用して災害時等において迅速かつ的確な対応を行うためには、道路管理DBSに最新の道路施設の情報が登録されていることが重要である。そこで、本院は、有効性等の観点から、基本データの登録状況はどのようになっているかなどに着眼して、25国道事務所等(注)において20年度から24年度までの間に作成された基本データ6,207件(基本データの作成に係る費用の積算額計2億4368万余円)を対象として、25国道事務所等のほか、25国道事務所等のうち4国道事務所、2河川国道事務所及び3開発建設部で作成された基本データの登録を行っている関東地方整備局関東技術事務所、中国地方整備局中国技術事務所及び北海道開発局の3技術事務所等(以下、これらを合わせて「28国道事務所等」という。)において、登録業務の報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、25国道事務所等が新設、改良等の道路工事の完成後に、工事の請負人から提出を受けた基本データには、道路工事の完成時期に応じて当該年度又は翌年度以降に登録された基本データ(以下、これらの基本データを「登録済データ」という。)と25年度末現在で登録されていない基本データ(以下「未登録データ」という。)があった。
前記の20年度から24年度までの間に作成された基本データ6,207件のうち、道路管理を行う上で重要となる供用中の道路施設に係る基本データは5,158件あり、道路管理DBSへの登録状況は、表のとおり、25年度末現在で登録済データが2,235件、未登録データが2,923件(基本データの作成に係る費用の積算額1億1511万余円)となっていた。
そして、25国道事務所等に係る登録済データ2,235件の登録年度別の内訳は、表のとおり、20年度に176件が登録されているが、21年11月にセンターが道路管理DBSの登録等の業務から撤退したことにより、21年度に登録されたのは46件にとどまり、その後、貴省が23年度に基本データの登録を再開したことにより、23年度から25年度までの各年度に349件、610件、1,054件が登録され、登録件数は年々増加している。
一方、未登録データ2,923件の作成年度別の内訳は、表のとおり、センターが道路管理DBSの登録等の業務から撤退したことにより年度中に全く登録のできない状態となっていた22年度に作成された基本データが556件、20、21両年度に作成された基本データがそれぞれ295件、507件となっていて、23年度の登録再開以前に作成された基本データが多数登録されないままとなっていた。
表 作成年度別・登録年度別件数表(平成26年3月31日現在)
基本データ作成年度 | 作成された基本データ | うち登録済データ | うち未登録データ | ||||||
登録年度 | |||||||||
A+B | A | 平成 20年度 |
21年度 | 22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | B | |
20年度 | 1,097 | 802 | 176 | 41 | 0 | 219 | 187 | 179 | 295 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
21年度 | 1,073 | 566 | ― | 5 | 0 | 74 | 165 | 322 | 507 |
22年度 | 1,034 | 478 | ― | ― | 0 | 48 | 204 | 226 | 556 |
23年度 | 1,014 | 262 | ― | ― | ― | 8 | 41 | 213 | 752 |
24年度 | 940 | 127 | ― | ― | ― | ― | 13 | 114 | 813 |
計 | 5,158 | 2,235 | 176 | 46 | 0 | 349 | 610 | 1,054 | 2,923 |
そして、25国道事務所等においては、表のとおり、20年度から24年度までの各年度に、供用中の道路施設に係る基本データが1,000件程度作成されているが、当該年度の登録済データの数は作成された基本データの数を下回っており、未登録データを解消するまでには至っていなかった。
上記のとおり、供用中の道路施設に係る基本データが道路管理DBSに登録されないままの状態が継続すると、国道事務所等が道路管理DBSによって道路施設の最新の情報を把握しないまま災害時等の対応を行わざるを得なくなる状況になると認められる。
(改善を必要とする事態)
災害時等において迅速かつ的確な対応を行うために重要となる道路管理DBSの機能を活用するのに必要な供用中の道路施設に係る基本データが多数登録されておらず、その状態が計画的に解消されていない事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
貴省においては、道路管理DBSの機能を活用して災害時等において迅速かつ的確な対応を行うために、今後も道路管理DBSへの基本データの登録を適切に行うことが求められている。
ついては、貴省において、基本データが登録されていない状態を計画的に解消するよう、次のとおり改善の処置を要求する。