ページトップ
  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第14 防衛省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(4)大規模災害等に備えて調達した携帯無線機について、無線局の開設等に必要な手続を速やかに行い、運用を開始できるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省
(項)東日本大震災復旧・復興武器車両等整備費
部局等
海上幕僚監部、47部隊等
調達した携帯無線機の概要
大規模災害等における災害派遣、基地警備等に当たり、海上自衛隊の隊員が使用する携帯無線機
携帯無線機の調達数及び調達額
2,924台 1億7319万余円(平成23年度)
上記のうち無線局の開設等に必要な手続が行われていなかった携帯無線機の調達数及び調達額
753台 4460万円

1 無線設備の運用開始に必要な手続等の概要

海上自衛隊は、任務の遂行に必要な無線通信等を行うために、多くの無線設備を運用している。

海上幕僚監部は、東日本大震災において災害派遣及び基地警備に当たり個々の隊員が使用する携帯無線機が不足した経験等を踏まえて、新たに遠距離の通信等が可能で秘匿性が高い小型の携帯無線機(以下「新型無線機」という。)を全国の部隊等に装備することとした。そして、同大震災と同様の大規模災害等が発生した場合における災害派遣体制、基地警備体制等を想定して、従来災害派遣等に従事し無線設備を運用している部隊等に加えて、従来無線設備を運用していない部隊等でも運用することとし、平成24年3月に新型無線機2,924台を173,197,500円で調達して、これらを132部隊等に装備させている。

また、自衛隊法(昭和29年法律第165号)等によれば、自衛隊が携帯無線機等の無線設備で一定の規格を有するものを運用するに際しては、当該無線設備に関する無線局の開設(既に開設されている無線局にあっては無線設備の種類や数量等の変更。以下、これらを合わせて「開設等」という。)について、部隊等ごとに防衛大臣に申請してその承認を受けるなど所定の手続を経た後でなければ、運用を開始してはならないとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、有効性等の観点から、大規模災害等に備えて調達した新型無線機が、速やかに運用を開始できるよう手続が行われているかなどに着眼して、新型無線機を装備した132部隊等を対象として検査した。検査に当たっては、海上幕僚監部、地方総監部、航空基地等において、132部隊等のうちの114部隊等について無線局の開設等に必要な手続に関する書類を確認するなどして会計実地検査を行った。また、残りの18部隊については、海上幕僚監部を通じて同手続の実施状況に関する報告を求めてその内容を確認するなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

新型無線機を装備した部隊等のうち47部隊等において、24年3月の納入後約2年を経過していたにもかかわらず、無線局の開設等に必要な所定の手続が行われていなかった。このため、これらの部隊等が装備した新型無線機753台(調達価格4460万余円)は、その運用を開始できない状況となっていた。

このように、新型無線機を装備した部隊等において、無線局の開設等に必要な手続が適切に行われず、大規模災害等に備えて調達した多数の新型無線機が、その運用を開始できない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

  • ア 部隊等において、従来無線設備を運用していなかったことから無線局の開設に所定の手続が必要なことについての認識が欠けていたり、無線設備の運用に当たって無線局の開設等に係る手続が必要であることを認識していたものの、新型無線機についてはその手続が必要ない又は海上幕僚監部等からの指示があってから同手続を行うと誤解していたりしていたこと
  • イ 海上幕僚監部において、従来無線設備を運用していなかった部隊等にも今回新たに新型無線機を装備するなどしていたのに、無線局の開設等には所定の手続が必要であることについて説明を行っていなかったなど、部隊等に対する指導が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、海上幕僚監部は、全ての新型無線機の運用を開始できるようにするために、26年3月に部隊等に対して通知を発して、無線局の開設等に必要な手続を速やかに行うよう指示した。そして、部隊等は同年6月までに手続を完了して、全ての新型無線機の運用を開始する処置を講じた。