日本郵便株式会社(以下「日本郵便」という。)は、郵政民営化法(平成17年法律第97号)等に基づき、日本郵政公社の郵便、銀行、保険の窓口業務等を承継して平成19年10月1日に設立された郵便局株式会社が24年10月1日に商号を変更し、日本郵政公社から郵便物の配達等の郵便業務等を承継して設立された郵便事業株式会社を吸収合併して、これらの業務を行っている(以下、郵便業務等を承継した部門を「事業部門」、窓口業務等を承継した部門を「局部門」という。)。
日本郵便は、上記の業務を行うために、全国に13の支社と支社管内に、事業部門の業務又は局部門及び事業部門の両業務を行う1,085郵便局(25年度末現在。以下「集配局」という。)を含めて20,126郵便局(25年度末現在。以下、支社と郵便局とを合わせて「郵便局等」という。)を設置している。
そして、日本郵便は、これらの業務で使用するために、軽自動四輪車、自動二輪車等の車両(以下「業務車両」という。)を、事業部門で約12万台(全体の約8割)、局部門で約3万台それぞれ保有しており、本社及び郵便局等に配備している。
本社は、業務車両に使用するレギュラーガソリン等の燃料(以下「車両用燃料」という。)の調達に当たり、24、25両年度に、石油元売会社ごとに各社が組織する全国的な加盟給油所で現金の支払等を行うことなく給油を受けることができる発券店値付けカードの発行及び当該加盟給油所での給油に係る代金の本社への一括請求等を行う5会社(注)(以下、これらの会社を「発券店」という。)との間で、一般競争契約により、車両用燃料の調達に係る物品売買契約(以下「本社契約」という。)を締結している。
車両用燃料の単価は、毎月の給油代金請求の際の各本社契約の全国一律の1L当たり単価として、資源エネルギー庁が公表している給油所小売価格調査における1L当たりの毎月の全国平均価格から本社とそれぞれの発券店との間で決定した所定の額を差し引いた額とされている。
一方、本社契約により給油を受けることが可能な給油所(以下「本社契約給油所」という。)が近隣にないなどの郵便局等は、事前に車両用燃料の調達に必要な予算配賦を受けるために、本社に対して調達理由等を記載した車両関係予算要求書を提出して予算要求を行い、本社から予算配賦を受けた後に、近隣の給油所との間で独自に契約(以下「局契約」という。)を締結するなどしている。
また、本社は、21年11月に「車両燃料の調達コスト削減に関する指示」を発出して、車両用燃料の調達費用の削減、各集配局における契約事務量の軽減等のために、可能な限り局契約から本社契約に切り替えるよう、集配局に対して指示している。
そして、本社契約による車両用燃料の調達額は、24年度計99億3028万余円、25年度計107億3808万余円、合計206億6836万余円、局契約による車両用燃料の調達額は、24年度計35億0991万余円、25年度計36億4210万余円、合計71億5202万余円となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性等の観点から、業務車両の約8割を保有している事業部門で使用されるレギュラーガソリンの調達が適切に行われているかなどに着眼して、24、25両年度の事業部門に係るレギュラーガソリンの調達等の契約を対象として、本社、13支社及び65集配局において、本社契約及び局契約に係る契約書、請求書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。また、車両用燃料の調達に係る26年度の予算配賦額が多額となっている133集配局を選定して、24、25両年度の局契約の内容、調達数量、給油代金の支払額等の状況を聴取するなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
前記の計198集配局のうち145集配局は、24、25両年度に、それぞれ本社から予算配賦を受けて、局契約によりレギュラーガソリンを調達しており、給油代金の支払額は24年度計14億5812万余円、25年度計15億7429万余円、合計30億3242万余円となっていた。
上記の局契約の実態についてみたところ、〔1〕 本社契約給油所と局契約を締結していた集配局が24年度117集配局、25年度116集配局、〔2〕 近隣に本社契約給油所があるにもかかわらず他の給油所と局契約を締結していた集配局が24年度16集配局、25年度17集配局、〔3〕 〔1〕 及び〔2〕 の両方の局契約を締結していた集配局が24年度12集配局、25年度12集配局となっていて、いずれの集配局においても本社契約によりレギュラーガソリンを調達することが可能であった。
そして、レギュラーガソリンの1L当たり単価について、各局契約における単価(以下「局単価」という。)と前記の5発券店との各本社契約における単価(以下「本社単価」という。)とを比較すると、一部の集配局の局単価が本社単価の最低額を一時的に下回ることがあったものの、毎月、局単価の平均額は本社単価の最高額を上回っていた。
このように、レギュラーガソリンについて、本社契約により経済的に調達することが可能であったにもかかわらず、局契約により調達していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(節減できた給油代金の支払額)
前記の145集配局において局契約により調達していたレギュラーガソリンの給油代金の支払額について、本社契約により調達することとして修正計算すると、24年度計13億5869万余円、25年度計14億7983万余円、合計28億3853万余円となり、前記の支払額との差額24年度9943万余円、25年度9445万余円、計1億9388万余円が節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、日本郵便において、集配局に対して、原則として本社契約により車両用燃料を調達することについての指導及び本社契約の内容等についての周知が十分でなかったこと、集配局に対する車両用燃料の調達のための予算配賦に当たり、局契約が必要となる具体的な理由を把握していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本郵便は、次のような処置を講じた。