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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成28年4月|

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について


1 24年報告及び25年報告の概要

(2)25年報告の概要

① 24年度において、国は、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として、復興特会を設置し、24年度当初予算3兆7753億余円、24年度補正予算1兆1952億余円をそれぞれ措置するとともに、財源については、それまでに確保されていた19兆円程度に加えて、日本郵政の株式の売却収入として見込まれる4兆円程度等を確保することにより、計25兆円程度を確保することとした。

また、除染は直ちに取り組む必要のある喫緊の課題であることから、国は、23年8月26日に除染に関する緊急実施基本方針を策定するとともに、同年8月30日に放射性物質汚染対処特措法を公布し、計画的かつ抜本的に除染等を推進することとした。さらに、復興庁は、25年2月1日に、福島対応体制の抜本的な強化策として、福島復興再生総局を福島現地に設置するとともに、関係省庁の諸施策を総括し総合的かつ強力に推進する福島復興再生総括本部を設置した。

② 復旧・復興事業の実施状況は、24年度末の執行率が77.2%、繰越率が11.0%、不用率が11.6%となっていた。

復興関連基金事業90事業に対する国庫補助金等交付額は計2兆8674億余円、24年度末における取崩額は計8244億余円であり、基金事業執行率は平均で28.7%となっていた。また、90事業のうち基金事業執行率が10%未満となっているものが40事業あった。そして、3基金の10事業に係る564億余円を基金団体から返還させて、これを国庫に返還していた。

23、24両年度の復興事業1,401件について、「今後の復興関連予算に関する基本的な考え方」(平成24年復興推進会議決定)に基づき被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策に関する事業等(以下「復興直結事業」という。)に分類するなどしたところ、復興直結事業912件、その他事業326件等となっていた。

③ 特区法に基づく各種計画の実施状況等をみると、復興推進計画66件に記載されている特例は、特区法等において規定されている21の特例のうち14の特例であり、特定被災自治体が作成して認定を受けた復興推進計画に記載された特例数は延べ75件、これらの特例の対象区域とされた市町村数は延べ817市町村となっていた。また、復興庁が計6回にわたって通知した復興交付金の交付可能額は、23年度2510億余円、24年度計1兆3191億余円、25年度527億余円、合計1兆6228億余円と多額に上っていた。

④ 復興事業の実施状況については、8道県及び100市町村に交付決定された23、24両年度の国庫補助金等は計7540億余円となっている。8道県に対する復興関連基金事業に係る国庫補助金等交付額は、14基金で計1270億余円となっており、24年度末の基金事業執行率は平均で42.4%となっていた。

復興交付金基金による基幹事業の進捗状況については、4県及び26市町村における復興交付金基金による基幹事業の件数は146件となっており、このうち、23、24両年度分の復興交付金に係る事業は102件となっていた。これらの進捗状況をみると、おおむね工程表どおりに進捗している事業がある一方、完了時期を7か月以上延長している事業や、完了時期が未定となっている事業も見受けられた。

また、8道県及び100市町村に対する23年度補正予算により措置された補助事業等に係る国庫補助金等交付決定額は計2202億余円となっており、24年度末までの補助事業執行率は92.4%となっていた。また、24年度予算により措置された補助事業等に係る国庫補助金等交付決定額518億余円のうち252億余円が25年度に繰り越されていた。

⑤ 原子力災害関係の経費項目別の予算現額は、23、24両年度計1兆5128億余円であり、23年度補正予算の24年度末までの累計の執行率は79.8%、24年度予算の24年度末における執行率は38.7%となっていた。また、放射性物質に汚染された廃棄物の処理、特措法3事業の執行状況をみると、23年度補正予算では、23年度末における執行率が59.9%、24年度までの累計の執行率が67.5%となっており、24年度予算では、24年度末における執行率が37.0%となっていた。

そして、25年報告の検査の結果に対する所見は、次のとおりである。

会計検査院は、24年次に引き続き、東日本大震災からの復旧・復興に対する事業について検査を行った。国及び地方公共団体は、現在全力を挙げて復旧・復興に取り組んでいるところであるが、東日本大震災から2年半以上を経過した今もなお、多くの住民は仮設住宅での不自由で困難な生活を余儀なくされており、地方公共団体は膨大な復旧・復興事業に取り組んでいる。特に、原子力災害からの復興再生については長期にわたることが予想されていて、地方公共団体は除染や健康管理等の事業を執行する一方、風評被害に苦しめられているなど、被災地の社会経済の再生や生活の再建に向けた課題は数多く、これらを解決するには多くの困難がある。

このため、復旧・復興のための施策は、被災地に暮らす国民の声に配慮して迅速に実施することが不可欠であり、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が、基本理念に即して、更なる復旧・復興の進展につながるよう、今後、次の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。

  • ア 国は、東日本大震災復旧・復興事業の実施に当たっては、多数かつ多額の事業が実施されている一方、多額の事業費が翌年度に繰り越されていることから、事業の実施計画や規模等は適切かなどについて的確に検討するとともに、事業実施の障害となっている事項について不断に検証して、必要に応じて見直すこと。また、国は、復興事業が有効かつ効率的に実施されるよう優先度等も考慮するなどして予算の配分や人的・技術的支援を行うとともに、事業が適切に実施されているかなどについて確認して、不適切な事態や障害となっている事項については、既存の制度の見直しも含めて迅速な措置を講ずるなどして、被災地の復興が円滑かつ迅速に実施されるよう努めること
  • イ 復興特別区域制度の各種計画の作成状況や各種特例の活用状況を把握して、地方公共団体が必要としている制度について十分な意見交換をした上で、情報提供、助言その他必要な協力を行い、地方公共団体の迅速かつ着実な支援に努めること
  • ウ 復興関連基金事業、復興交付金事業等が、復興に寄与され適切かつ効率的な執行や資金の有効活用が図られるよう、実施状況等の把握と必要な支援に努めること
  • エ 原子力災害からの復興再生については、長期的視点から、被災者等に対する支援や除染等の実施、産業振興・雇用対策等に関して、被災した地方公共団体の意向や要望等を踏まえるなどして、必要な支援に努めること