ページトップ
  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 令和3年5月

国が実施するPFI事業について


4 検査の状況に対する所見

(1) 検査の状況の主な内容

会計検査院は、国が実施するPFI事業について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、①国が実施しているPFI事業の類型別の事業数及び契約金額はどのような状況となっているか、②PFI事業の選定時及び民間事業者の選定時に適切に評価が実施されているか、③モニタリングが適切に実施され、債務不履行に対する対応が的確に行われているか、④PFI事業の事業期間終了に伴う評価の実施状況、PFI事業として実施したことによる効果の発現状況等はどのようになっているかに着眼して検査を実施した。

ア PFI事業に係る評価の実施状況(NUM3-2リンク参照

サービス購入型の65事業のうち34事業に係る割引率は、技術指針における社会的割引率を主な設定根拠として設定されていた(24-27リンク参照)。

サービス購入型の65事業のうち事業者選定時VFMの算定結果を確認することができた60事業について、民間事業者の選定時における評価の実施状況をみると、PSCとPFI事業のLCCでは、競争の効果の反映の有無の点で算定条件が一致していない状況となっていた。そして、このことが多くのPFI事業において、事業者選定時VFMがPFI事業選定時VFMよりも大きくなった要因の一つであると考えられる。また、VFMガイドラインにおいて、VFMガイドライン等に示したもの以外の方法等によってPFI事業を実施することを妨げるものではないとなっていることの趣旨が各府省等において十分に理解されていないことなどにより、PSCとPFI事業のLCCについて、競争の効果の有無の点で算定条件が一致していないことは、両者を比較するに当たり適当でないと考えられる(30-34リンク参照)。

技術指針における社会的割引率を主な設定根拠として割引率を設定していたPFI事業については、PFI事業の選定時期の金利情勢が割引率に十分に反映されておらず、高めに設定されていた結果として、VFMが大きく算定され、PFI方式の経済的な優位性が高く評価されていた可能性があると考えられる(36リンク参照)。

独立採算型の11事業について、PFI事業の選定時における評価の実施状況をみると、4事業(公共施設等運営事業)では、PFI事業の選定時に事業内容の詳細が定まっていないなどのため、定量的評価は困難であるとして、定性的評価のみが実施されていた。また、民間事業者の選定時における評価の実施状況をみると、8事業(公共施設等運営事業を含む。)では、定量的評価及び定性的評価のいずれも実施されていなかった(NUM3-2-iリンク参照)。

イ モニタリングの実施状況等(NUM3-3リンク参照

サービス購入型の65事業のうち30年度末時点において維持管理・運営業務が開始されていた57事業について、モニタリングにより確認された債務不履行の発生状況をみると、同種の債務不履行が繰り返し発生していて、債務不履行の年間の発生件数が多くなっているものが見受けられた(NUM3-3リンク参照)。

独立採算型の11事業のうち30年度末時点において維持管理・運営業務が開始されていた9事業について、モニタリングの実施状況をみると、1事業において、SPC等の財務状況が悪化しており、施設管理者は、財務状況の監視によりこれを把握し、SPC等に対して経営改善に係る資料を求めるなどして、事業の継続性等について検討を行っていた。また、業務要求水準等において施設管理者が修繕を行うこととされた設備の不具合について、モニタリングの際にSPC等から報告を受けていたものの、施設管理者において不具合を解消するための修繕を十分に行うことができていないなどのため、PFI事業に係る公共施設を十分に利用できない状態が継続していたものが見受けられた(NUM3-3-iリンク参照)。

ウ PFI事業の事業期間終了に伴う評価の実施状況等(NUM3-4リンク参照

30年度末現在で事業期間が終了していたサービス購入型の29事業について、PFI事業の事業期間終了に伴う評価の実施状況をみると、事後検証が行われていたものはなかった。そこで、会計検査院において、可能な範囲でPFI事業に係るコスト面及びサービス面の両面についての事後検証等を試みたところ、上記29事業のうち、事業期間終了後、PFI事業により行われていた業務の一部である維持管理が従来方式による事業により行われていた27事業について、PFI事業により行われていた業務のうちから従来方式により締結された契約に含まれていない業務等を除外した上で算定したPFI事業における維持管理費相当額と、従来方式により行われていた事業における維持管理費相当額とを比較した結果、27事業の全てについて、PFI事業の方が従来方式により行われていた事業よりも維持管理費相当額が高額となっており、前者の後者に対する割合が最も高いもので285.3%、最も低いものでも106.8%となっていた。また、上記27事業のいずれにおいても、PFI事業として実施したことによるサービス面に係る定性的な効果を評価するための指標等が設けられるなどしていなかったことなどから、サービス面に係る事後検証を行うことが困難な状況となっていた(NUM3-4リンク参照)。

(2) 所見

11年7月にPFI法が制定されて以降、国は、30年度までに6次にわたりPFI法の改正を行い、施設管理者がPFI事業を実施する民間事業者に公共施設等運営権を設定することができるようにしたり、PFI事業の対象とする公共施設等を追加したりすることなどにより、PFI事業の推進を図ってきたところである。そして、PFI事業は、真に必要な公共施設等の整備等と財政健全化の両立を図る上で重要な役割を果たすものであるとしている。

また、PFI法が制定されて20年余りが経過して、サービス購入型のPFI事業については、事業期間が終了したもの又は終了が近いものが増加してきており、今後のPFI事業の実施に資するために、これまで実施してきたPFI事業に係る事後検証等を行い、PFI事業における課題等を明らかにして、今後の事業の改善にいかすことが重要となってきている。独立採算型のPFI事業については、まだ実績が少ないものの、公共施設等運営事業への導入が促進されてきていることから、事業実績の増加が見込まれ、今後、その効果を見定めていくことが必要であり、SPC等の財務状況がサービスの提供に影響するため、財務状況の監視を含めてモニタリング等を適切に行うことがますます重要となってきている。

さらに、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大が、PFI事業の実施状況やSPC等の財務状況等に与える影響についても、モニタリング等を通じて把握に努めて、必要に応じて的確な対応を行うことが望まれる。

ついては、以上の検査の状況を踏まえて、各府省等は、今後、PFI事業を実施する際には、次の点に留意する必要がある。

ア PFI事業に係る評価の実施

(ア) 各府省等は、サービス購入型のPFI事業に係るVFM評価に当たり、PFI事業の選定時期等における金利情勢を十分に考慮するなどして割引率を設定するとともに、民間事業者の選定時におけるVFM評価の精度を高めるために、PSCに競争の効果を反映させるなどして、より実情に沿った算定を行った上でPFI事業の実施について判断すること。また、内閣府は、今後実施されるPFI事業について、各府省等における事業者選定時VFMの算定状況を把握の上、より適切にVFM評価が行われるようにするために、VFMガイドライン等に示したもの以外の方法等によってPFI事業を実施することを妨げるものではないとなっていることの趣旨が各府省等において十分に理解されるよう、VFMガイドラインの改定等について検討すること

(イ) 各府省等は、独立採算型のPFI事業について、公共施設等運営事業以外の独立採算型のPFI事業を含めて、より客観的な評価を行うようにするために、PFI事業の選定時及び民間事業者の選定時のいずれにおいても、公共施設等運営事業ガイドラインで示された評価方法を参考にするなどして定量的評価を行うよう工夫すること

イ モニタリングの実施等

(ア) 各府省等は、同種の債務不履行が繰り返し発生している場合には、債務不履行の再発防止に向けて改善すること。特に、法務省は、同種の債務不履行が繰り返し発生しているPFI事業について、債務不履行の再発防止に向けて更に改善すること

(イ) 独立採算型のPFI事業を行う各府省等は、当該事業が今後も安定的に継続され、公共サービスの提供に支障が生じないようにするために、モニタリングにおいて、サービス水準に加えて、SPC等の財務状況についても引き続き監視していくこと。また、国土交通省は、同省が修繕を行うこととされた設備について、SPC等から不具合の報告を受けた場合、PFI事業に係る公共施設等を十分に利用できるようにするために、不具合を解消するための修繕を十分に行うこと

ウ PFI事業の事業期間終了に伴う評価の実施

各府省等は、今後のPFI事業の実施に当たり、内閣府におけるPFI事業の事業期間終了に伴う評価の実施方法についての検討結果を踏まえるなどして、PFI事業の事業期間終了に伴う評価を客観的に行うよう検討すること

会計検査院としては、今後とも国が実施するPFI事業について引き続き注視していくこととする。