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東日本大震災からの復興等に関する事業の実施状況等について


3 検査の状況

(1) 復旧・復興予算の執行状況等

ア 復興期間(当初)における復旧・復興事業に係る歳出予算とその執行状況

(ア) 復旧・復興予算の歳出予算額及び執行状況

復旧・復興予算の執行状況の検査に当たって、予算措置年度別の予算現額、支出済額、翌年度繰越額(以下「繰越額」という。)及び不用額を調査し、執行率、繰越率及び不用率をそれぞれ算出した(注15)

(注15)
本報告書においては、令和2年度までの各年度予算の執行状況を予算措置年度別の予算現額ごとに、当該予算措置年度の翌年度以降の執行状況も含めて分析した。すなわち、予算現額は、歳出予算額(当初予算額、補正予算額及び予算移替額の合計)に予備費使用額及び流用等増減額を加減したものとしており、前年度から繰り越された額は含めていない。支出済額は、当該予算措置年度における支出済額に、繰越額として翌年度以降に支出された額も含めている。また、繰越額は、予算措置年度別の予算現額が2年度末現在で繰り越されている額を、不用額は、予算措置年度別の予算現額が2年度末までに不用とされている額を示している。すなわち、執行率、繰越率及び不用率はそれぞれ復旧・復興事業に係る支出済額、繰越額及び不用額の予算現額に対する割合であり、また、繰越率及び不用率は、それぞれ予算措置年度別の予算現額が、2年度末現在でどの程度繰り越され、又は、2年度末までにどの程度不用とされたかを示している。

復興期間(当初)において各年度に措置された予算現額の合計額44兆7478億余円の2年度末現在における執行状況は、図表1-1のとおり、支出済額38兆1711億余円、繰越額4317億余円、不用額6兆1448億余円であり、復興期間(当初)全体の執行率は85.3%、繰越率は0.9%、不用率は13.7%となっていた。

図表1-1 復旧・復興予算の執行状況(平成23年度~令和2年度)

(単位:億円、%)
区分 集中復興期間 復興・創生期間
合計
a+b
平成23年度
 ~27年度
予算計
a
28年度
予算
29年度
予算
30年度
予算
令和
元年度
予算
2年度
予算
平成28年度
~令和2年度
予算計
b
予算現額A 33兆4922 3兆2234 2兆1656 2兆0214 2兆1575 1兆6874 11兆2555 44兆7478
支出済額B 28兆7041 2兆8638 1兆8243 1兆7637 1兆8520 1兆1629 9兆4670 38兆1711
(執行率 B/A) (85.7) (88.8) (84.2) (87.2) (85.8) (68.9) (84.1) (85.3)
繰越額C - - - - 715 3602 4317 4317
(繰越率 C/A) (-) (-) (-) (-) (3.3) (21.3) (3.8) (0.9)
不用額 D=A-B-C 4兆7880 3595 3412 2576 2340 1642 1兆3567 6兆1448
(不用率 D/A) (14.2) (11.1) (15.7) (12.7) (10.8) (9.7) (12.0) (13.7)
  • 注(1) 支出済額は、当該予算措置年度における支出済額に、繰越額として翌年度以降に支出された額も含めている。よって、執行率は、予算措置年度別の予算現額が令和2年度末までにどの程度支出されたかを示す。
  • 注(2) 繰越額は、予算措置年度別の予算現額が令和2年度末現在で繰り越されている額を、不用額は、予算措置年度別の予算現額が2年度末までに不用とされている額を示している。よって、繰越率及び不用率は、それぞれ予算措置年度別の予算現額が、2年度末現在でどの程度繰り越され、又は、2年度末までにどの程度不用とされたかを示す。

(イ) 経費項目別の執行状況

復興期間(当初)における復旧・復興予算について予算の経費の内容から区分した項目(以下「経費項目」という。)ごとに支出済額をみると、図表1-2のとおり、公共土木施設、文教施設等の災害復旧事業の実施に係る経費項目である「復興関係公共事業等」が7兆7456億余円、放射性物質により汚染された土壌等の除染等、放射性汚染廃棄物処理事業及び中間貯蔵施設の整備等の実施に係る経費項目である「原子力災害復興関係経費」が6兆1223億余円、特定被災自治体が復旧・復興事業を実施するための財源の一部である「地方交付税交付金」及び「東日本大震災復興交付金」が、それぞれ5兆8790億余円、3兆3281億余円となっている。

「復興関係公共事業等」「地方交付税交付金」及び「原子力災害復興関係経費」の復興期間(当初)の支出済額に対する復興・創生期間の支出済額の割合は40.0%、27.8%、55.8%となっている。震災直後に、復興のために措置された多額の予算により事業が実施され、徐々に事業規模が縮小していく中、公共インフラの整備や原子力災害への対応には時間を要しており、集中復興期間のみならず復興・創生期間にも継続して多額の国費が支出されている。一方、他の6経費項目(集中復興期間及び復興・創生期間の両期間に支出があったもの)については、上記の3経費項目とは異なり復興・創生期間の支出済額の割合が低く、6経費項目のうち5経費項目については10%以下となっており、特に2年度の支出済額の割合は1%以下となっている。

3年度への繰越額4317億余円を経費項目別にみると、「復興関係公共事業等」3483億余円、「原子力災害復興関係経費」558億余円、「その他の東日本大震災関係経費」269億余円等となっている。繰越しの理由について、各府省庁は、復興計画を具体的に事業化するための関係機関との協議や住民との合意形成等に不測の日数を要したことなどにより、2年度中に事業実施ができなかったことによるとしている。

復興期間(当初)における不用額を経費項目別にみると、「復興関係公共事業等」「原子力災害復興関係経費」の順に多くなっていて、不用の事由としては、事業計画の変更により減額したこと、予定より実績が下回ったことなどが挙げられている。

図表1-2 復旧・復興予算の経費項目別の執行状況(平成23年度~令和2年度)

(単位:億円、%)
経費項目 予算現額計 支出済額 3年度へ
の繰越額
不用額計
集中復興
期間

(B)
復興・
創生期間(A)
(A/B)
うち令和
2年度(a)
(a/B)
災害救助等関係経費 1兆1259 8921 1136
(11.3)
104
(1.0)
1兆0058 - 1201
災害廃棄物処理事業費 1兆2894 1兆1089 412
(3.5)
76
(0.6)
1兆1502 6 1386
復興関係公共事業等 10兆1884 4兆6454 3兆1001
(40.0)
2369
(3.0)
7兆7456 3483 2兆0945
災害関連融資関係経費 1兆6981 1兆5922 645
(3.8)
39
(0.2)
1兆6568 - 413
地方交付税交付金 6兆0678 4兆2416 1兆6374
(27.8)
3398
(5.7)
5兆8790 - 1888
東日本大震災復興交付金 3兆4834 3兆0362 2918
(8.7)
16
(0.0)
3兆3281 - 1552
原子力災害復興関係経費 7兆5220 2兆7036 3兆4186
(55.8)
5058
(8.2)
6兆1223 558 1兆3439
その他の東日本大震災
関係経費
6兆1114 4兆8920 5228
(9.6)
522
(0.9)
5兆4149 269 6694
国債整理基金特別会計
への繰入等
3兆7859 3兆4442 2765
(7.4)
44
(0.1)
3兆7208 - 650
全国防災対策費
その他の経費項目 注(3)
3兆4750 2兆1473 -
(-)
-
(-)
2兆1473 - 1兆3276
44兆7478 28兆7041 9兆4670
(24.8)
1兆1629
(3.0)
38兆1711 4317 6兆1448
  • 注(1) 本図表の各計数は、歳出予算の経費項目により集計したものであり、決算の経費項目による集計とは一致しない。
  • 注(2) 平成24年度以降の補正予算で実施している事業については、各年度の当初予算の経費項目により整理している。
  • 注(3) 「全国防災対策費その他の経費項目」は、「全国防災対策費」「被災者支援関係経費」等5経費項目である。

イ 復旧・復興事業に係る歳入の状況

(ア) 財源項目別の歳入の状況

復興基本方針によれば、集中復興期間において復旧・復興事業に充てる財源は、平成23年度第1次補正予算等及び第2次補正予算に計上した財源に加え、歳出の削減、国有財産の売却収入のほか、特別会計、公務員人件費等の見直しや更なる税外収入及び時限的な税制措置により確保することとされている。そして、復興・創生期間を含む復興期間(当初)の財源については、第13回復興推進会議決定において、これまでに計上した復興財源に加えて、国の保有する資産の有効活用等による税外収入や一般会計からの繰入れによって確保することとなっている。また、復旧・復興に係る事業費の財源が不足すると見込まれる場合、これを賄う一時的なつなぎとして復興債が発行されている。

上記の時限的な税制措置については、復興財源確保法により、復興特別税が創設されるなどしている。そして、復興特別税は、復旧・復興費用に充て、他の経費には充てないことを明確化するために、24年度から令和19年度までの間においては、復興特別税の収入を、原則として復興費用及び復興債の償還に要する費用の財源に充てるものとされており、残余があった場合には復興債以外の公債の償還に要する費用の財源に充てるとされている。

復興期間(当初)の各年度の復旧・復興事業の財源等の決算額を、財源等の内容から区分した項目(以下「財源項目」という。)ごとにみると、図表1-3のとおり、「復興特別所得税」3兆0830億余円、「復興特別法人税」2兆2995億余円、「一般会計より受入」10兆3057億余円等となっている。また、復興債の発行による歳入である「復興公債金」が17兆3933億余円となっている。

復興特別所得税の課税期間は平成25年から令和19年までとされている。そして、復興・創生期間における決算額はおおむね3000億円から4000億円で推移しており、平成28年度の3670億余円から令和2年度の4016億余円へと微増傾向にある。

また、復興特別法人税の当初の課税期間は、平成24年度から26年度までとされていたが、25年12月に閣議決定された「平成26年度税制改正の大綱」等において、経済の好循環を早期に実現する観点から1年前倒しで廃止することとされた。このため、27年度以降は予算額として計上されていないが、既往年度で収納されなかった税額が収納されている。なお、歳入の予算が計上されている24年度から26年度(注16)までの決算額は、24年度6493億余円、25年度1兆2043億余円、26年度4327億余円の計2兆2864億余円となっている。

(注16)
復興特別法人税の課税事業年度は、法人の平成24年4月1日から26年3月31日までの期間内に開始する事業年度とされている。このため、法人が26年度に申告する場合があることなどから、26年度にも予算が計上されている。

「一般会計より受入」は、復興施策の実施や復興債の償還に要する費用に充てるために一般会計の前年度の決算剰余金等を財源として受け入れるものである。そして、復興財源確保法によれば、23年度から27年度までの間の各年度の一般会計歳入歳出の決算上の剰余金を財政法(昭和22年法律第34号)第6条第1項の規定に基づき公債又は借入金の償還財源に充てる場合においては、復興債の償還費用の財源に優先して充てるよう努めるものとされている。「一般会計より受入」に係る受入額はそのときの財政状況等により増減するものであるが、復興・創生期間においてほぼ一貫して減少していて、令和2年度の決算額は292億余円となっている。

図表1-3 復旧・復興事業の財源等(決算ベース)(平成23年度~令和2年度)

(単位:億円)
財源項目 集中復興期間 復興・創生期間 合計
平成23年度
~27年度
28年度 29年度 30年度 令和元年 2年度 復興・創生期間計
復興特別所得税 1兆1048 3670 3939 4154 4001 4016 1兆9781 3兆0830
復興特別法人税 2兆2913 35 22 15 5 2 82 2兆2995
一般会計より受入 8兆2460 6999 5710 5869 1726 292 2兆0596 10兆3057
特別会計より受入 11 - - - - - - 11
復興公債金 14兆9932 7908 767 - 8099 7223 2兆4000 17兆3933
公共事業費負担金収入 1421 931 791 676 784 527 3712 5133
災害等廃棄物処理事業費負担金収入 7 5 22 4 3 2 38 45
附帯工事費負担金収入 2 2 2 2 12 9 29 31
政府資産整理収入 17 - - - - - - 17
雑収入 1兆2246 7253 6535 7240 4595 3808 2兆9433 4兆1679
前年度剰余金受入 7兆7976 1兆4245 1兆1443 7359 6642 9102 4兆8793 12兆6769
歳出予算の既定経費の減額 注(1) 3兆8643 - - - - - - 3兆8643
(震災関係以外の経費の財源)注(2) △2兆9104 - - - - - - △2兆9104
36兆7576 4兆1053 2兆9235 2兆5322 2兆5873 2兆4984 14兆6468 51兆4045
(復興公債金を除く計) (21兆7644) (3兆3144) (2兆8467) (2兆5322) (1兆7773) (1兆7760) (12兆2467) (34兆0111)
  • 注(1) 平成23年度に年金臨時財源、子ども手当等の歳出予算の補正減により、復旧・復興事業の財源を確保したものである。
  • 注(2) 平成23年度に独立行政法人の運営費、年金臨時財源、台風12号対策等に充てられることになったため、復旧・復興事業以外の経費の財源として控除したものである。

(イ) 復興債の発行及び償還の状況

復興財源確保法によれば、復興債は平成23年度第3次補正予算及び24年度から令和7年度までの各年度の予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で発行することができることとされている。復興期間(当初)における復興債の発行状況は、図表1-4のとおり、発行計画額計22兆5395億円に対して発行実績額計17兆3933億余円、発行計画額に対する発行実績額の割合は77.1%となっている。なお、平成29年度は、発行実績額が発行計画額に対して著しく少なくなっていて、30年度は発行の実績がなかった。復興庁によると、29、30両年度がこのようになった主な要因は、雑収入(東京電力からの回収金を含む。)が予算額に対して大きく増加したことから年度内の資金繰り上、復興債を発行する必要がなかったためとしている。

図表1-4 復興債の発行計画額及び発行実績額(平成23年度~令和2年度)

(単位:億円、%)
区分 集中復興期間 復興・創生期間
平成23年度
~27年度
28年度 29年度 30年度 令和元年度 2年度
発行計画額 A 17兆3535 1兆9037 9889 6068 9042 7824 22兆5395
発行実績額 B 14兆9932 7908 767 8099 7223 17兆3933
B / A 86.3 41.5 7.7 89.5 92.3 77.1
  • (注) 発行計画額は、各年度の補正後の予算(平成23年度は第3次補正予算)に基づく国債発行計画額であり、発行実績額は、復興公債金収納済歳入額である。

また、復興財源確保法によれば、復興債は令和19年度までの間に償還することとされており、復興債の償還は、国債等の償還を一元的に行う国債整理基金特別会計(以下「国債整理特会」という。)において行われている。復興債の償還に係る国債整理特会の資金の流れは図表1-5のとおりとなっており、国債整理特会の歳出においては、復興債の債務償還費と復興債の発行に伴う手数料、利子及割引料等(以下、これらを合わせて「復興債償還費等」という。)を計上している。そして、国債整理特会の歳入においては、復興債償還費等に充てる財源(以下「復興債の償還財源」という。)として、復興特会からは復興特別税の税収等の一部を、財投特会からは積立金の一部を、それぞれ受け入れているほか、国債整理特会において保有する株式の売払収入、配当金収入等を計上している。また、復興債の償還財源が債務償還費の額に対して不足する場合は、復興借換債の発行による復興借換公債金を歳入に計上している。

図表1-5 復興債の償還に係る資金の流れ

図表1-5 復興債の償還に係る資金の流れ画像

復興期間(当初)における復興債の各年度末現在額をみると、図表1-6のとおり、平成23年度末の11兆2574億余円から30年度末の5兆3762億余円まで減少していたが、令和元年度に増加に転じ、2年度末は6兆7845億余円となっている。これは、復興特会における歳入のうち一般会計からの受入額が平成30年度までは5000億円程度あったものの、令和元年度は1726億余円、2年度は292億余円へと大きく減少したため、年度途中の資金繰りのために復興債の発行が必要となったことなどによる。

図表1-6 復興債の各年度末現在額(平成23年度~令和2年度)

(単位:億円)
区分 集中復興期間 復興・創生期間
平成
23年度
24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
2年度
年度首
現在額 A
- 11兆2574 11兆0437 9兆0135 8兆3996 7兆2612 6兆9918 5兆5181 5兆3762 6兆1080
発行による
増加 B
11兆2574 4兆8156 2兆4929 9604 1兆3156 1兆1761 2兆9018 2兆7669 3兆8315 3兆3798
償還による
減少 C
- 5兆0294 4兆5231 1兆5742 2兆4540 1兆4455 4兆3755 2兆9088 3兆0996 2兆7033
年度末現在額
A + B - C
11兆2574 11兆0437 9兆0135 8兆3996 7兆2612 6兆9918 5兆5181 5兆3762 6兆1080 6兆7845
  • 注(1) 図表中の数値は復興債の額面金額であるため、復興公債金の収納済歳入額や復興債の債務償還費の支出済額等の歳入歳出決算額とは異なっている。
  • 注(2) 復興債は、復興財源確保法により、各年度において翌年度の4月1日から6月30日までの期間も発行できるため、「発行による増加」は、当該期間内に発行されたものを含めた額面金額を示している。
  • 注(3) 復興借換債に係る額を含む。

平成25年1月に示された復興財源フレームにおける財源として、国債整理特会において保有する政府出資等の有価証券である日本たばこ産業、東京地下鉄、日本郵政各株式会社の株式の売却による収入が挙げられており、上記3社の株式の売却による収入は、それぞれ0.5兆円程度、0.2兆円程度、4兆円程度の計4.7兆円程度が見込まれた。

復興期間(当初)における上記3社の株式の売却の状況についてみると、図表1-7のとおり、東京地下鉄株式会社の株式は売却されていないが、日本たばこ産業株式会社の株式は24年度に9774億余円で、日本郵政株式会社の株式は27、29両年度にそれぞれ1兆4231億余円、1兆4084億余円、計2兆8316億余円で売却されており、これらの売却収入は復興債の償還財源に充てられている。なお、復興期間(当初)以降も含めた日本郵政株式会社の株式の売却価格の総額は令和3年度末までに計3兆9247億余円となっている。

図表1-7 復興債の償還財源となる株式の売却の状況(平成24年度~令和2年度)

会社名 平成25年1月に示された
復興財源フレーム上の見込額
売却年度
令和2年度までの
売却価格の総額(億円)
うち復興債の償還に
充当された額(億円)
(参考)
3年度までの
売却価格の総額(億円)
うち復興債の償還に
充当された額(億円)
日本たばこ産業株式会社
0.5兆円程度
平成24
9774 9733 9774 9733
東京地下鉄株式会社
0.2兆円程度
日本郵政株式会社
4兆円程度
27、29
2兆8316 2兆8094 3兆9247 3兆8961
3兆8090 3兆7828 4兆9022 4兆8695
  • (注) 日本たばこ産業株式会社の株式については平成25年3月までに、日本郵政株式会社の株式については令和3年10月までに、各時点における政府保有義務分を超える株式は全て売却された。

ウ 復興財源フレームの状況

前記のとおり、国は、第13回復興推進会議決定により、復興期間(当初)に係る復興財源について32兆円程度を確保するとした復興財源フレームを示した(図表1-8左列参照)。

上記32兆円程度の復興財源フレームについて、2年度末現在の事業規模及び財源(3年度以降の分として2年度末現在で見込まれた経費及び財源を含む。)の状況をみると、図表1-8中列のとおり、事業規模は、31.3兆円程度となっており、第2期復興・創生期間における事業費(第26回復興推進会議決定における見込額)1.6兆円程度を加えると計32.9兆円程度となる。なお、復興庁によれば、2年度末における執行見込額は31.1兆円程度(0.1兆円未満切捨て)となっている。これは、平成23年度から令和2年度までの復旧・復興事業に係る支出済額と3年度への繰越額の計38.6兆円程度(図表1-2参照)から、復興財源フレームの対象外経費である東京電力への求償対象経費や復興債償還費等の計7.4兆円程度を除くなどした額となっている。

財源については、復興特別税は、平成24年度から令和2年度までの間に地方税も合わせると5.9兆円程度が収納され、3年度から課税期間の最終年度である19年度までの復興特別所得税等の見込額6.0兆円程度を合わせると計11.9兆円程度が見込まれた。歳出削減・税外収入等は、平成23年度から令和2年度までの間に16.9兆円程度、3年度以降の見込額0.2兆円程度と合わせて計17.1兆円程度が見込まれた。また、日本郵政株式会社の株式の売却収入は、平成27年度から29年度までに2.8兆円程度、令和3年度に1.1兆円程度の計3.9兆円程度が収納された。したがって、財源は3年度以降に収納するものも含めて計32.9兆円程度となり、事業規模32.9兆円程度に見合うものと見込まれた。

図表1-8 復興財源フレーム(概念図)

図表1-8 復興財源フレーム(概念図)画像

(2) 国から財政支援等を受けて地方公共団体等が実施する復旧・復興事業の状況

復興基本方針によれば、東日本大震災からの復興を担う行政主体は、住民に最も身近で、地域の特性を理解している市町村が基本となるものとされている。そして、国は、復興の基本方針を示しつつ、市町村が能力を最大限発揮できるよう、現場の意向を踏まえて、財政、人材、ノウハウ等の面から必要な制度設計や支援を責任を持って実施するものとされ、県は、被災地域の復興に当たって、広域的な施策を実施するとともに、市町村の実態を踏まえて、市町村に関する連絡調整や市町村の行政機能の補完等の役割を担うものとされている。

復興基本方針を踏まえて、国は、地方公共団体等が実施する補助事業等(注17)及び復興関連基金事業のほか、復興交付金事業、被災者支援総合交付金事業、福島再生加速化交付金事業等に対して国庫補助金等を交付したり、国庫補助金等を受けて実施する復旧・復興事業等における地方公共団体の負担額等に対処するために地方交付税の総額に係る特例を講じた震災復興特別交付税を交付したりするなどの多様な方法により財政支援等を行っている。これらの財政支援等について、その概要とともに「(3) 復旧・復興事業の実績及び成果の状況」との関係を示すと、図表2-0-1のとおりとなる。

(注17)
補助事業等  国が地方公共団体等に対し補助金若しくは交付金等を交付し又は委託費を支払って実施される事業のうち、復興関連基金事業、復興交付金事業、被災者支援総合交付金事業及び福島再生加速化交付金事業等を除く事業

図表2-0-1 特定被災自治体に対する財政支援等の概要等

財政支援等の種類 財政支援等の概要 「3(3) 復旧・復興事業の
実績及び成果の状況」

における記載箇所
補助事業等

被災直後の被災者に対する緊急援助やその後の避難生活等における各種支援、災害廃棄物の処理の実施、各種産業の復興支援、文教施設、社会福祉施設等の公共施設や河川、道路、港湾等の社会基盤の災害復旧等の多岐にわたる事業について、それぞれ国からの国庫補助金等の交付を受けて、地方公共団体等が事業主体となって実施するもの(補助事業等の実施状況については3(2)ア参照

ア 津波防災に関する施策に係る復旧・復興事業の実績及び成果(リンク参照
ウ 産業再生に関する復旧・復興事業の実績及び成果(リンク参照
復興関連基金事業

各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であること などの特段の事情があり、あらかじめ当該複数年度にわたる財源を確保して おくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるものにつ いて、国からの国庫補助金等の交付を受けて基金を設置造成等した地方公共 団体、公益法人その他の団体が事業を実施するもの(復興関連基金事業の実 施状況については3(2)イ参照

ウ 産業再生に関する復旧・復興事業の実績及び成果(リンク参照
復興交付金事業

被災した地域の復興地域づくりに不可欠な基盤を整備することを目的として、復興庁から通知された復興交付金の交付申請の上限額の範囲内で、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省及び環境省から復興交付金の交付を受けて、これらの各省が所管する40の基幹事業と、基幹事業と一体となってその効果を増大させることを目的とする効果促進事業を特定被災自治体が実施するもの(復興交付金事業の実施状況については3(2)ウ参照

ア 津波防災に関する施策に係る復旧・復興事業の実績及び成果(リンク参照
イ 住まい、市街地等の整備に関する復旧・復興事業の実績及び成果(リンク参照
ウ 産業再生に関する復旧・復興事業の実績及び成果(リンク参照
被災者支援総合交付金事業

東日本大震災の被災者を取り巻く環境の変化に対応し、被災者支援のための事業を効果的に実施することを支援することにより、被災者の心身の健康の維持向上、生活の安定等に寄与することを目的として、復興庁、文部科学省及び厚生労働省から支援交付金の交付を受けて、地方公共団体等が実施するもの(被災者支援総合交付金事業の実施状況については3(2)エ参照

エ 被災者支援に関する復旧・復興事業の実績及び成果(リンク参照
福島再生加速化交付金事業等

福島再生加速化交付金事業は、福島第一原発の事故により設定された避難指示区域の見直しが進められたことに伴い、長期避難者の支援から早期帰還への対応まで幅広く対応し、復興の動きを加速させるために、内閣府、復興庁、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び原子力規制委員会から福島交付金の交付を受けて、福島県及び管内市町村等が実施するもの

環境整備等委託事業は、避難指示が解除された区域への帰還・生活再建への取組として、復興庁が避難指示・解除区域市町村等に委託して実施するもの(福島再生加速化交付金事業等の実施状況については3(2)オ参照

イ 住まい、市街地等の整備に関する復旧・復興事業の実績及び成果(リンク参照
オ 住民の帰還等の状況等(リンク参照
震災復興特別交付税

国庫補助金等を受けて実施する復旧・復興事業等における地方公共団体の負担額等に対処するためのものであり、一般会計及び復興特会から交付税及び譲与税配付金特別会計に対して繰入れを行った後に地方公共団体の事業実施状況等に応じて交付額が決定されて交付されるもの(震災復興特別交付税に係る経費の執行状況については3(2)カ参照

なお、震災復興特別交付税等を基に復興基金事業が実施されている。復興基金事業とは住民の生活の安定やコミュニティの再生等について、単年度予算の枠に縛られずに弾力的かつきめ細やかに対処できる資金として設置造成等された復興基金を財源として実施するもの

復興期間(当初)の10か年度に東日本大震災関係経費として国から交付された、上記の財政支援等における国庫補助金等及び地方交付税のうち、特定被災自治体に交付されたものの全体像についてみると、図表2-0-2のとおり、計19兆3389億余円であり、このうち東北3県に交付されたものが計17兆6796億余円となっていて、全体の91.4%を占めている。

図表2-0-2 特定被災自治体に対する国庫補助金等及び地方交付税の交付額の状況(令和2年度末現在)

(単位:百万円、%)
特定被災自治体が
所在する道県名
国庫補助金等 地方交付税
補助事業等 復興関連
基金事業
復興交付金事業 被災者支援
総合交付金事業
福島再生加速化
交付金事業等
地方負担に係る
地方財政措置としての
震災復興特別交付税
復興基金事業 特定被災
自治体に
対する交付額
の合計
計(11道県)
に占める割合
国庫補助金等
交付額
国庫補助金等
交付額
復興交付金
交付額
支援交付金
交付額
福島交付金
交付額等 注(2)
震災復興特別
交付税交付額
特別交付税及び
震災復興特別
交付税交付額
A B C D E F G H=(A+B+C+D+
E+F+G)
北海道 22,357 18,292 73 53 851 41,628 0.2
青森県 86,516 20,997 5,716 1 96,540 8,478 218,250 1.1
岩手県 1,467,399 165,651 891,436 11,654 1,114,210 63,460 3,713,814 19.2
宮城県 3,020,592 321,264 1,980,000 18,619 1,896,921 136,855 7,374,254 38.1
福島県 1,484,242 2,685,525 350,862 33,489 585,703 1,384,466 67,306 6,591,596 34.0
茨城県 267,288 39,282 52,246 7 463,289 14,455 836,570 4.3
栃木県 59,991 12,922 663 64,546 4,000 142,123 0.7
埼玉県 1,650 9,085 3,866 4 2,634 17,241 0.0
千葉県 107,986 9,757 41,240 7 151,297 4,145 314,434 1.6
新潟県 19,607 8,978 122 183 17,320 1,000 47,212 0.2
長野県 14,400 10,681 2,118 21 13,575 1,000 41,796 0.2

(11道県)
6,552,035 3,302,438 3,328,347 64,042 585,703 5,205,654 300,701 19,338,922 100.0

(東北3県)
5,972,234 3,172,441 3,222,300 63,763 585,703 4,395,598 267,622 17,679,665
計(11道県)に
占める割合
91.1 96.0 96.8 99.5 100.0 84.4 88.9 91.4
  • 注(1) 本表の地方負担に係る地方財政措置としての震災復興特別交付税は、地方税法(昭和25年法律第226号)等の特例措置による減収額に対する措置等を含んでいることから、震災復興特別交付税の交付額の全体に占める割合(表のF/H)が、復旧・復興事業のために特定被災自治体が負担する割合を示すものではない。
  • 注(2) 福島交付金交付額等には、環境整備等委託事業に係る委託費支払額が含まれている。

このように、国は、東日本大震災からの復旧・復興を進めるために事業の実施主体である地方公共団体等に対して多様な財政支援等を行っている。これらの財政支援等について、国の予算の執行としては、国庫補助金等の交付や復興特会から交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特会」という。)への繰入れの段階で支出済額となるが、財政支援等を受けて特定被災自治体等が行った、補助事業等、復興関連基金事業、復興交付金事業、被災者支援総合交付金事業及び福島再生加速化交付金事業等は、国の予算執行のみでは復旧・復興事業の実質的な実施状況を十分に把握できないことから、特定被災自治体等におけるこれらの事業の実施状況等を分析する必要がある。

そこで、国庫補助金等の交付先の地方公共団体等が実施している補助事業等、復興関連基金事業、復興交付金事業、被災者支援総合交付金事業及び福島再生加速化交付金事業等の実施状況、交付税特会における震災復興特別交付税に係る経費の執行状況並びに東北3県における復旧・復興事業分の歳入のうち国費に係る主なものの受入額の状況について検査したところ、次のアからキまでのとおりとなっていた。

ア 補助事業等の実施状況

国は、多岐にわたる補助事業等に係る国庫補助金等の交付額を、事業主体である地方公共団体等が各年度に実施すると見込まれる事業の規模に基づいて算出した概算事業費に基づき決定し、当該補助事業等の実績に基づき確定している。このため、事業の規模が見込みより縮小したり、実施する見込みの事業が実施されなかったりするなどした場合、当該国庫補助金等の交付決定額と交付額との間に差が生ずることになる。また、各年度の実施対象の事業が計画より遅延するなどして、年度内に完了しない場合には、未完了分の事業費に相当する予算額は、一定の条件の下、最大翌々年度まで繰り越すことができることとなっている。

そこで、国庫補助金等の主な交付先である特定被災自治体が実施している補助事業等について、国庫補助金等の交付決定額の計に対する交付額の計の割合(以下「執行割合」という。)等により実施状況の分析を行った。

(ア) 特定被災自治体における補助事業等の実施状況

復興期間(当初)における特定被災自治体に対する国庫補助金等の交付決定額は、図表2-1-1のとおり、計8兆0969億余円となっている。これに対する10か年度の交付額は、計6兆5520億余円となっていて、計2583億余円が3年度に繰り越されており、執行割合は、80.9%となっている。また、交付決定額及び交付額について、11道県計に占める東北3県計の割合をみると、それぞれ9割以上となっており、東北3県計に対しては宮城県が過半を占める状況となっている

図表2-1-1 特定被災自治体における補助事業等の実施状況(平成23年度~令和2年度)

(単位:百万円、%)
特定被災自治体 交付決定額計 交付額計 3年度への
繰越額計
執行割合 不用額計
平成23年度
~27年度
(集中復興期間)
28年度
~令和2年度
(復興・創生期間)

(復興期間(当初))
A B C D=B+C E D/A A-D-E
岩手県及び33市町村 1,834,837 940,251 527,148 1,467,399 58,300 79.9 309,137
宮城県及び35市町村 3,848,102 2,132,333 888,259 3,020,592 107,406 78.4 720,103
福島県及び59市町村 1,750,954 927,376 556,865 1,484,242 74,477 84.7 192,234
その他
(8道県及び100市町村)
663,081 400,540 179,260 579,800 18,197 87.4 65,084
11道県及び227市町村計 8,096,976 4,400,501 2,151,533 6,552,035 258,381 80.9 1,286,560
うち東北3県及び
127市町村計
(11道県及び227市町村計に占める割合)
7,433,895
(91.8)
3,999,961
(90.8)
1,972,273
(91.6)
5,972,234
(91.1)
240,184
(92.9)
80.3 1,221,476
(94.9)

(イ) 所管府省庁別の補助事業等の実施状況

特定被災自治体が実施している補助事業等について、所管府省庁別の実施状況をみると、図表2-1-2のとおりである。

交付決定額についてみると、国土交通省が2兆7872億余円と最も多額となっており、農林水産省が2兆0579億余円、環境省が1兆2540億余円、内閣府が8043億余円となっている。

これら4府省のうち環境省及び内閣府の執行割合は、それぞれ92.5%、89.6%と高くなっていて、交付額の大部分を集中復興期間に交付している。これは、環境省は、地震及び津波により発生した災害廃棄物処理等の事業を、内閣府は、被災直後の被災者に対する緊急援助等の事業を所管しており、被災後の比較的短期間に多くの事業が実施されたことなどによる。一方、国土交通省は集中復興期間と同規模の額を、農林水産省は集中復興期間の約7割の額を、それぞれ復興・創生期間においても交付している。これは、国土交通省は、河川、道路、港湾等の災害復旧事業等を、農林水産省は漁港等の災害復旧事業等を所管しており、被災後長期間にわたって事業が実施されたことによる。そして、執行割合は、復旧過程における事業計画の変更、設計、工法等の見直しなどの要因により、それぞれ78.6%、72.0%となっている。

図表2-1-2 所管府省庁別の補助事業等の実施状況(平成23年度~令和2年度)

(単位:百万円、%)
所管府省庁名 交付決定額計 交付額計 3年度への
繰越額計
執行割合 不用額計
平成23年度
~27年度
(集中復興期間)
28年度
~令和2年度
(復興・創生期間)

(復興期間(当初))
A B C D=B+C E D/A A-D-E
内閣府 804,387 658,162 62,886 721,048 99 89.6 83,239
復興庁 249 248 - 248 - 99.6 0
総務省 80,030 56,771 8,101 64,872 43 81.0 15,113
文部科学省 390,738 233,651 122,064 355,715 2,236 91.0 32,785
厚生労働省 298,413 162,194 76,367 238,562 4,859 79.9 54,991
農林水産省 2,057,961 871,392 610,747 1,482,140 87,078 72.0 488,742
経済産業省 423,919 255,205 81,390 336,596 11,170 79.4 76,152
国土交通省 2,787,213 1,096,701 1,095,090 2,191,792 147,138 78.6 448,282
環境省 1,254,062 1,066,172 94,885 1,161,058 5,753 92.5 87,250
8,096,976 4,400,501 2,151,533 6,552,035 258,381 80.9 1,286,560

イ 復興関連基金事業の実施状況

(ア) 所管府省庁別の復興関連基金事業の実施状況

復興関連基金事業について、所管府省庁別の実施状況をみると、図表2-2-1のとおり、186事業に係る国庫補助金等交付額は計5兆1322億余円、取崩額は集中復興期間が2兆7412億余円、復興・創生期間が1兆0810億余円、計3兆8223億余円、国庫補助金等交付額に対する取崩額の割合(以下「基金事業執行率」という。)は74.4%、2年度末に保有している国庫補助金等相当額は計6944億余円となっている。国庫補助金等交付額を所管府省庁別にみると、交付している8府省庁のうち環境省が1兆9597億余円(28事業)と最も多額となっており、次いで経済産業省が1兆3044億余円(48事業)となっている。基金事業執行率についてみると、復興庁が33.2%(3事業)、国土交通省が35.9%(8事業)と低くなっている。これは、復興庁については、同庁が所管する復興関連基金事業のうち福島原子力災害復興交付金の終了予定年度が令和26年度であることから、国庫補助金等交付額1000億円のうち2年度末までの取崩額が213億余円となっていることなどのためである。また、国土交通省については、国庫補助金等交付額計3648億余円のうち約5割に当たる1790億余円が国庫返納されていることなどのためで、このうち1478億余円は災害復興住宅融資等事業において使用見込みのない余剰金が返納されたものである。

図表2-2-1 所管府省庁別の復興関連基金事業の実施状況(令和2年度末現在)

(単位:事業、百万円、%)
所管府省庁名 復興関連
基金事業数
国庫補助金等
交付額
取崩額 基金事業
執行率
2年度までの
国庫返納額
(国庫補助金等相当額)
2年度末に
保有している
国庫補助金等相当額
平成23年度
~27年度
(集中復興期間)
28年度
~令和2年度
(復興・創生期間)

(復興期間(当初))
A B C D=B+C D/A E A-D-E
内閣府 8 264,238 264,238 6,099 258,517 97.8 808 4,912
復興庁 3 130,000 8,039 35,224 43,264 33.2 - 86,735
文部科学省 11 92,967 74,043 5,018 79,061 85.0 11,897 2,008
厚生労働省 33 786,326 583,725 99,827 683,552 86.9 54,742 48,031
農林水産省 47 229,726 118,145 29,115 147,261 64.1 61,374 21,091
経済産業省 48 1,304,416 555,740 257,413 813,153 62.3 281,469 209,794
国土交通省 8 364,824 88,415 42,631 131,047 35.9 179,027 54,749
環境省 28 1,959,767 1,060,763 605,703 1,666,466 85.0 26,132 267,168
186 5,132,266 2,741,291 1,081,032 3,822,324 74.4 615,451 694,491
  • (注) 取崩額、国庫返納額及び保有する国庫補助金等相当額には運用益を含まない。

(イ) 終了予定年度別及び終了予定年度の延長期間別の実施状況復

復興関連基金事業を2年度末現在の終了予定年度別にみると、図表2-2-2のとおり、3年度以降の終了を予定している事業は109事業、国庫補助金等交付額計3兆8023億余円であり、2年度までに終了した77事業、国庫補助金等交付額計1兆3298億余円と比較して、事業数、国庫補助金等交付額共に多くなっている。上記109事業のうち終了期限を定めていない事業は26事業、国庫補助金等交付額計1兆5605億余円となっており、原子力災害からの復興・再生が長期にわたると想定されている福島県に交付されたものや、除染事業等の原子力災害復興関係経費に係るものが多くなっている。

また、終了予定年度が2年度以前である77事業のうち7事業については、事業終了後の清算手続中であることなどから2年度末において国庫補助金等相当額計23億余円を保有している。

図表2-2-2 終了予定年度別の復興関連基金事業の実施状況(令和2年度末現在)

(単位:事業、百万円、%)
終了予定年度
注(1)
復興関連
基金事業数
国庫補助金等
交付額
取崩額 基金事業
執行率
2年度までの
国庫返納額
(国庫補助金等相当額)
2年度末に
保有している
国庫補助金等相当額
平成23年度
~27年度
(集中復興期間)
28年度
~令和2年度
(復興・創生期間)

(復興期間(当初))
A B C D=B+C D/A E A-D-E
令和2年度以前 77 1,329,884 1,046,680 41,644 1,088,324 81.8 239,130 2,381
3年度以降 109 3,802,381 1,694,610 1,039,388 2,733,999 71.9 376,320 692,109
3年度 10 406,629 296,444 59,930 356,375 87.6 28,426 21,827
4年度 3 56,135 31,270 10,783 42,053 74.9 8,427 5,653
5年度 7 283,888 130,925 78,744 209,670 73.8 - 74,218
6年度 4 495,879 294,206 47,250 341,457 68.8 127,054 27,367
7年度 4 83,630 32,012 38,790 70,802 84.6 58 12,769
8年度以降 18 590,285 48,172 199,201 247,374 41.9 7,820 335,091
その他 注(2) 37 325,352 37,405 49,654 87,059 26.7 166,532 71,760
未定 注(2) 26 1,560,579 824,172 555,033 1,379,205 88.3 38,001 143,420
186 5,132,266 2,741,291 1,081,032 3,822,324 74.4 615,451 694,491
  • 注(1) 「終了予定年度」は、令和2年度末現在の終了期限により集計している。また、終了期限前に、国庫補助金等交付額の全額を取り崩したり、国庫に返納したりした事業は、保有している国庫補助金等相当額がなくなった年度を終了予定年度として集計している。
  • 注(2) 「その他」は、事業の終了期限が融資の返済完了時等となっていて、具体的な終了予定年度が確定していない事業を示している。また、「未定」は終了期限が設定されていない事業を示している。
  • 注(3) 「2年度末に保有している国庫補助金等相当額」は、終了予定年度が「令和2年度以前」の事業に係る基金から終了予定年度が「未定」の事業に係る基金へ配分を変更した額を考慮して算出している。

復興関連基金事業については、一般に、事業の終了期限が到来しても依然として資金需要が高いなどの場合、事業の終了期限を延長している。186事業のうち終了期限を延長したものが69事業(国庫補助金等交付額2兆0765億余円)あり、そのうち5年以上延長したものが33事業(同1兆2877億余円)と約半数を占めている。5年以上延長したもののうち、特に、経済産業省の企業の立地支援に係る事業が10事業と多数を占めており、同省によると、津波浸水地域における区画整理事業等による環境整備に時間を要したことなどから、事業の終了期限を延長したとしている。

(ウ) 復興関連基金事業に係る国庫補助金等の国庫への返納状況等

第6回復興推進会議決定等において復興関連予算について使途の厳格化を行うこととされたことを踏まえて、基金についても使途の厳格化を徹底するため、復興庁及び財務省は、平成25年7月に、復興関連基金事業の所管府省に対して、「復興関連予算で造成された全国向け事業に係る基金への対応について」(平成25年復本第957号・財計第1690号。以下「基金使途通知」という。)を発出している。そして、基金使途通知において使途の厳格化の対象とされた復興関連基金事業については、被災地又は被災者に対する事業に使途を限定した上で、それ以外の事業のうち、執行済みの事業及び契約済みのものなど執行済みと認められる事業を除いた基金残額について国庫に返納することを要請している。

そして、国からの国庫補助金等の交付を受けて基金を設置造成等した地方公共団体、公益法人その他の団体(以下「基金団体」という。)は、復興関連基金事業が終了して残余額があったり、使用見込みがない余剰金があったりなどする場合には、所管府省庁が定めたそれぞれの事業の交付要綱等により、これらに係る国庫補助金等を国庫に返納することとなっている。精算時の残余額、使用見込みがない余剰金等の国庫への返納の状況をみたところ、図表2-2-3のとおり、186事業のうち119事業について、各基金団体が、令和3年7月末までに計6217億余円の基金残額を国庫に返納している。基金団体が基金残額を国庫に返納した事由は、①使用見込みがないことによるもの4323億余円(50事業)、②使途厳格化によるもの1196億余円(19事業)、③事業の終了によるもの666億余円(61事業)などとなっている。

図表2-2-3 復興関連基金事業に係る国庫補助金等の返納の状況(令和3年7月末現在)

(単位:事業、百万円)
所管府省庁 復興関連
基金事業数
国庫補助金
等交付額
令和2年度末に保有
する国庫補助金
等相当額
(運用益を含まない。)
3年7月末までの国庫返納額(運用益を含む。)
①使用見込み
がないことに
よるもの
②使途厳格化
によるもの
③事業の終了
によるもの
④事業実施後
返納事由が
生じたもの
内閣府 7 246,256 2,885 816 294 - 397 124
文部科学省 7 70,691 - 12,059 - 1,928 10,131 -
厚生労働省 28 749,405 35,146 56,193 12,938 16,255 26,314 684
農林水産省 30 162,564 1,751 61,864 13,275 39,432 9,143 13
経済産業省 35 975,470 130,835 285,139 210,031 61,990 10,836 2,281
国土交通省 8 364,824 54,749 179,274 178,625 - 649 -
環境省 4 255,038 4,810 26,407 17,216 - 9,190 -
119 2,824,249 230,178 621,756 432,382
(50事業)
119,606
(19事業)
66,663
(61事業)
3,103
(20事業)
  • 注(1) 「3年7月末までの国庫返納額(運用益を含む。)」欄の①から④までの返納事由の分類は会計検査院が設定したもので、返納事由別の国庫返納額(運用益を含む。)は所管府省庁の回答を基に集計したものである。同一の事業において複数の返納事由により国庫返納を行ったものは、返納事由別に国庫返納額及び事業数を計上しているため、①から④までの返納事由別の事業数を合計しても119事業とは一致しない。
  • 注(2) ①は、事業費の所要見込額を精査した結果、基金残額が事業費の所要見込額を上回るなどしていて、使用見込みがない余剰金を国庫に返納したものである。
    ②は、平成25年の基金使途通知による要請に従い、被災地又は被災者以外に対する事業のうち、執行済みの事業等を除いた基金残額を国庫に返納したものである。
    ③は、事業の終了により基金残額を国庫に返納したものである。
    ④は、事業実施後に、当該事業において取得した財産を処分したため財産の残存価格のうち国庫補助金等相当額を国庫に返納するなどしたものである。

前記の終了予定年度が3年度以降である109事業のうち、基金団体が公益財団法人等である59事業に係る19基金(注18)については、各所管府省庁が余剰金の有無等に係る点検を行い、その結果を基金シートにより公表している。一方、基金団体が地方公共団体である50事業に係る基金については、基金シートを作成して公表することとされていない。

基金シートでは、基金事業終了年度までに必要な基金事業費に対する基金残額の割合(以下「保有割合」という。)が算定されており、基金残額が基金事業終了年度までに必要な基金事業費を超える場合には、保有割合が1を上回ることとなる。上記の59事業に係る19基金の保有割合を基金シートにより確認したところ、図表2-2-4のとおり、2年度末においては、59事業のうち15事業に係る3基金の保有割合が1を上回っており、最大で1.85となっている。そして、その後、3年度末においては、同年度中に終了した1事業に係る1基金を除いた58事業に係る18基金のうち24事業に係る6基金の保有割合が1を上回っており、最大で2.10となっている(別図表3参照)。これらについては、引き続き、使用見込みがない余剰金等が生じていないか確認等していく必要がある。

また、基金シートを作成して公表することとされていない基金団体が地方公共団体である50事業に係る基金についても同様に、各所管府省庁において、使用見込みのない余剰金等が生じていないか確認等していく必要がある。

(注18)
既存の復興関連基金事業に係る基金に対して積増しを行っているものがあることなどから、復興関連基金事業数と基金数は一致しない。59事業のうち40事業は積増しを行うものであることから、59事業に係る基金数は19基金となっている。

図表2-2-4 基金団体が公益財団法人等である基金事業に係る基金の保有割合

図表2-2-4 基金団体が公益財団法人等である基金事業に係る基金の保有割合画像

ウ 復興交付金事業の実施状況

(ア) 復興交付金制度の概要及び復興交付金の交付等の状況

復興交付金事業には、被災した地域の復興地域づくりに不可欠な基盤を整備することを目的とする、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省及び環境省が所管する40の基幹事業と、基幹事業と一体となってその効果を増大させることを目的とする効果促進事業とがある。

復興交付金事業を実施する特定被災自治体は、復興交付金事業計画を作成して、復興庁に提出し、同庁が東日本大震災復興交付金制度要綱(平成24年府復第3号等。以下「制度要綱」という。)に基づき算定した復興交付金の交付申請の上限額(以下「交付可能額」という。)の通知を受け、交付可能額の範囲内で上記の5省にそれぞれ交付申請を行い、所管5省から復興交付金の交付決定及び交付を受けている。復興交付金の交付を受けるに当たっては、単年度型事業か基金型事業かを選択して実施することとなっている。

復興交付金は、2年6月の特区法の改正により、復興交付金事業の確実な終了に向け所要の経過措置を講じた上で、2年度をもって廃止することとされ、同年8月に改正された制度要綱によれば、復興交付金事業について、2年度中に生じた事由に基づき計画期間内に完了しないことが明らかになった場合には、計画期間の最終年度を3年度に変更する手続を行った上で適切かつ効率的な事業実施に一層努めることとされた。さらに、3年12月に改正された制度要綱によれば、3年度中に生じた避け難い事故に基づき計画期間内に完了しないことが明らかになった場合には、計画期間の最終年度を4年度に変更する手続を行った上で4年度の確実な事業完了に向け必要な措置を講ずることとされている。そして、復興庁は、復興交付金事業を実施する特定被災自治体に対して、自らの責任において4年度中に確実に事業を完了するよう求めている。

復興期間(当初)における復興交付金の交付額等の状況をみると、図表2-3のとおり、2年度末現在までに特定被災自治体のうち8道県及び99市町村に交付された額は計3兆3283億余円、執行額又は取崩額(以下「執行額等」という。)は計3兆1348億余円となっている。また、このうち基金型事業を選択しているのは7県及び89市町村で、これらに係る交付額は計3兆3248億余円、取崩額は計3兆1318億余円、基金事業執行率は94.1%となっている。

図表2-3 復興期間(当初)における復興交付金の交付額等(令和2年度末現在)

(単位:百万円、%)
実施方法 道県及び
市町村数
交付額
(第1回~第29回)
執行額等 執行率又は
基金事業執行率
国庫返還額 執行未済額
又は残余額
<参考>
平成27年度末
現在の執行率
又は基金事業執行率
A B B/A C A-B-C
単年度型 3道県及び
15市町
3,499 3,072 87.8 - 426 99.7
基金型 7県及び
89市町村
3,324,848 3,131,815 94.1 177,039 15,993 61.8
8道県及び
99市町村
3,328,347 3,134,888 94.1 177,039 16,419 61.8
  • 注(1) 道県及び市町村は、単年度型、基金型、又は単年度型及び基金型のいずれかで事業を実施している。
  • 注(2) 道県及び市町村数は、復興交付金の交付を受けた道県及び市町村の数であり、計欄は純計である。
  • 注(3) 取崩額には、令和3年度以降に繰り越して執行する予定の額が含まれている。

(イ) 復興期間(当初)における復興交付金事業の完了等の状況

復興期間(当初)内に復興交付金事業計画に記載された復興交付金事業を全て完了しているのは、8道県及び99市町村のうち5道県及び73市町村となっている。残りの3県及び26市町村は、3年度においても復興交付金事業を実施しており、このうち東北3県では、3県及び22市町村が実施している。

被災した地域の復興地域づくりに不可欠な基盤を整備する基幹事業の延べ事業数は2,911事業となっている。このうち2年度末までに完了したものは2,656事業であり、中止又は廃止となった事業を除く事業数に対する完了した事業数の割合(以下「事業完了率」という。)は、平成27年度末現在の36.8%から上昇して94.7%に達している。

完了した基幹事業は、災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4。事業番号は、「別図表4 復興交付金事業の基幹事業(5省40の基幹事業)の概要」と対応している。以下同じ。)の430事業が最も多く、次いで道路事業(事業番号D-1)の345事業となっている。

そして、実施中の基幹事業は147事業となっており、道路事業(事業番号D-1)の46事業が最も多く、次いで漁業集落防災機能強化事業(事業番号C-5)の32事業となっている。令和2年度末現在においても実施中となっている理由について、事業主体によると、道路事業(事業番号D-1)は地権者との用地交渉に時間を要したこと、漁業集落防災機能強化事業(事業番号C-5)は建設事業従事者の確保に時間を要したことなどとなっている。

さらに、2年度末までに事業が中止又は廃止となった基幹事業は108事業となっており、道路事業(事業番号D-1)の31事業が最も多く、次いで災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)の26事業となっている。中止又は廃止となった理由について、事業主体によると、道路事業(事業番号D-1)は防災集団移転促進事業(事業番号D-23)等の中で道路整備が行われることとなったため道路事業としての整備が不要になったこと、災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)は災害公営住宅の建設用地の取得が見込めないため整備を取りやめたことなどとなっている(復興交付金事業(基幹事業)の事業別完了等の状況(令和2年度末現在)の詳細については別図表5参照)。

なお、前記の基幹事業147事業のうち103事業は3年度中に完了していたが、残りの44事業は3年度中に完了せずに4年度に延長して実施されており(支出見込額498億余円)、道路事業(事業番号D-1)の13事業が最も多くなっている。4年度に延長することとなった理由について、事業主体によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による事業の進捗の遅れなどとなっている。

(ウ) 復興期間(当初)における基金型事業の実施状況

基幹事業における基金事業執行率は、平成27年度末現在の64.8%から上昇して95.0%に達し、令和2年度末現在の残余額は133億余円となっている。

基幹事業のうち、被災者の居住の安定確保を図るために被災者に住宅又は宅地の供給等を実施する漁業集落防災機能強化事業(事業番号C-5)、災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)、都市再生区画整理事業(事業番号D-17)及び防災集団移転促進事業(事業番号D-23)の4基幹事業の復興期間(当初)における交付額は、計1兆5896億余円となっていて、基金型事業の同交付額の約5割を占めている。また、上記の4基幹事業に係る基金の2年度末までの取崩額は1兆4404億余円、2年度末現在の残余額は71億余円、基金事業執行率は95.3%となっている(復興交付金事業(基幹事業)における基金型事業の交付額等(令和2年度末現在)の詳細については別図表6参照)。

復興交付金事業が完了したときの残余額は、当初、平成24年1月に東日本大震災復興対策本部により定められた東日本大震災復興交付金基金管理運営要領(平成24年府復第4号等)において、復興交付金事業が全て完了したときに、国庫に返還することとなっていた。そして、第13回復興推進会議決定において、計画期間の終了前でも必要のなくなった金額の返還を進めることが必要と決定されたことを受けて、復興庁は、27年10月に、復興交付金事業のうち一部の基幹事業等を除いて、所管省単位で事業が全て完了したときに当該事業に係る残余額を国庫に返還することとするなど、残余額の返還を従来よりも促進する取扱方針を示した。また、前記のとおり、復興交付金が、令和2年度をもって廃止することとされたことから、復興庁は2年10月に「東日本大震災復興交付金制度の終了に伴う基金の取崩し及び残額の国庫返還について」において、2年度中に基金の残額が確定するものについては、基金から取り崩した上で、同年度の出納整理期間の終期までに国庫へ返還し、2年度決算で生じた執行残額等の残余額が同年度中に確定しないものについては、3年度中に国庫へ返還することとする取扱いを示した。

復興交付金の国庫への返還状況をみると、図表2-3のとおり、2年度末現在において復興交付金事業全体で計1770億余円となっている。

エ 被災者支援総合交付金事業の実施状況

(ア) 支援交付金の交付等の状況

被災者支援総合交付金実施要綱(平成28年復本第437号等。以下「被災者支援実施要綱」という。)によれば、支援交付金は、東日本大震災の被災者を取り巻く環境の変化に対応し、被災者支援のための事業を効果的に実施することを支援することにより、被災者の心身の健康の維持向上、生活の安定等に寄与することを目的とするとされており、復興庁、文部科学省及び厚生労働省が支援交付金を交付している。被災者支援総合交付金事業は、復興庁所管の「住宅・生活再建支援事業」等6事業、文部科学省所管の「仮設住宅の再編等に係る子供の学習支援によるコミュニティ復興支援事業」等3事業及び厚生労働省が所管する「被災者見守り・相談支援事業(地方自治体等実施分)」等11事業の計20事業となっている(別図表7参照)。これらの事業では被災者を支援する人材の確保や支援者同士の連絡調整等のほか、被災者に対する直接的な支援活動として、7事業で被災者の孤立防止や心のケアを図るための訪問等(以下「相談活動」という。)が、8事業で地域住民と融合しコミュニティの形成を図るための交流会、イベントの開催等(以下「交流活動」という。)が実施されている。

事業実施主体は、東北3県及び管内市町村のほか、東北3県からの避難者が居住する都道府県及び市町村や団体となっている。事業実施主体は被災者支援事業計画を作成して、復興庁に提出し、同庁が被災者支援実施要綱に基づき算定した交付可能額の範囲内で被災者支援総合交付金事業を所管する省庁にそれぞれ交付申請を行い、所管省庁から支援交付金の交付決定及び交付を受けて事業を実施している。

特定被災自治体における支援交付金の交付額等の状況をみると、図表2-4-1のとおり、交付決定額は計641億余円、交付額は計640億余円となっている。

また、東北3県及び管内市町村の交付額は計637億余円となっていて、特定被災自治体の交付額計640億余円の大部分を占めている。

図表2-4-1 特定被災自治体における支援交付金の交付額等の状況(令和2年度末現在)

(単位:百万円、%)
道県及び市町村数 交付決定額 交付額 不用額 交付額の計に占める
交付額の割合
岩手県及び管内12市町村 11,655 11,654 0 18.1
宮城県及び管内13市町 18,696 18,619 76 29.0
福島県及び管内21市町村 33,516 33,489 27 52.2
その他(7道県) 289 278 10 0.4
計(10道県及び管内46市町村) 64,157 64,042 115 100.0
うち東北3県及び管内46市町村計 63,868 63,763 104 99.5
  • (注) 道県及び市町村数は、国から直接、支援交付金の交付を受けた道県及び市町村数である。

(イ) 被災者支援総合交付金事業の東北3県における実施状況

上記東北3県及び管内市町村の交付額計637億余円のうち、東北3県及び管内市町村が事業実施主体として実施した被災者支援総合交付金事業における交付額をみると、図表2-4-2のとおり、17事業で計444億余円となっている。

交付額の推移をみると、支援交付金の創設後2年目の平成29年度が99億余円と最も多くなっており、30年度以降は一貫して減少傾向となっている。また、対前年度増減率をみると、令和2年度は18.8%減少しており、他の年度に比べて減少率が大きくなっている。このことについて、復興庁は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により一部の対面で実施する交流活動が中止となる影響もあったとしている。

交付対象事業別の交付額をみると、相談活動を実施する被災者生活支援事業が91億余円と最も多額であり、次いで被災者見守り・相談支援事業(地方自治体等実施分)が88億余円となっていて、相談活動を実施する7事業で計266億余円が交付されている。

図表2-4-2 東北3県及び管内市町村における支援交付金の事業別交付額の推移(平成28年度~令和2年度)

(単位:百万円、%)
所管 区分 平成
28年度
29年度 30年度 令和
元年度
2年度 相談活動を
実施する事業
復興庁 被災者支援総合事業
住宅・生活再建支援事業 603 683 808 495 418 3,009
コミュニティ形成支援事業 751 713 612 452 416 2,946
「心の復興」事業 255 549 492 373 263 1,935
被災者生活支援事業 1,761 1,900 2,155 1,783 1,501 9,102
被災者支援コーディネート事業 9 10 25 10 10 66
県外避難者支援事業 495 520 524 522 469 2,532
小計(6事業) 3,877 4,377 4,619 3,638 3,080 19,592
文部科学省 仮設住宅の再編等に係る子供の学習支援による
コミュニティ復興支援事業 注(2)
- 619 646 615 438 2,320
小計(1事業) - 619 646 615 438 2,320
厚生労働省 被災者見守り・相談支援事業(地方自治体等実施分) 2,353 2,168 1,665 1,425 1,246 8,858
仮設住宅サポート拠点運営事業 1,007 841 631 318 60 2,859
被災地健康支援事業 351 178 105 62 24 722
被災者の心のケア支援事業 注(2) - - - 1,087 1,010 2,098
被災した子どもの健康・生活対策等総合支援事業
子ども健やか訪問事業 3 1 0 0 0 6
仮設住宅に住む子どもが安心して過ごすことができる環境づくり事業 16 18 2 - - 37
遊具の設置や子育てイベントの開催 335 339 350 279 233 1,538
親を亡くした子ども等への相談・援助事業 398 412 408 357 312 1,888
児童福祉施設等給食安心対策事業 214 243 242 236 254 1,191
保育料等減免事業 699 779 831 630 362 3,304
小計(10事業) 5,380 4,982 4,239 4,399 3,505 22,508
計(17事業) 9,258 9,979 9,504 8,653 7,025 44,421 26,659
対前年度増減率 7.7 △4.7 △8.9 △18.8
  • 注(1) 東北3県及び管内市町村が事業実施主体として実施した事業について集計している。
  • 注(2) 仮設住宅の再編等に係る子供の学習支援によるコミュニティ復興支援事業は平成29年度に、被災者の心のケア支援事 業は令和元年度にそれぞれ交付対象事業に追加されている。

オ 福島再生加速化交付金事業等の実施状況

(ア) 福島再生加速化交付金事業の概要

福島再生加速化交付金事業の原資である福島交付金は、福島第一原発の事故により設定された避難指示区域の見直しが進められたことに伴い、長期避難者の支援から早期帰還への対応まで幅広く対応し、復興の動きを加速させる次の各交付対象項目に応じた交付対象事業の実施に要する経費に充てるために、福島特措法等で定めるところにより、交付対象事業を所管している内閣府、復興庁、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び原子力規制委員会(以下「所管府省庁等」という。)から予算の範囲内で交付されるものである。2年度末現在の交付対象項目としては、長期避難者生活拠点形成、福島定住等緊急支援、帰還環境整備、道路等側溝堆積物撤去・処理支援、原子力災害情報発信等拠点施設等整備及び既存ストック活用まちづくり支援がある(別図表8参照)。

福島再生加速化交付金事業を実施する福島県及び管内市町村等(以下、これらを合わせて「福島県等」という。)は、各交付対象項目に応じた交付対象事業の事業計画を作成して復興庁に提出し、福島再生加速化交付金(長期避難者生活拠点形成)実施要綱(平成26年復本第271号等)等(以下、交付対象項目ごとに定められた実施要綱を「各実施要綱」という。)に基づき算定された交付可能額の通知を受けている。そして、福島県等は、所管府省庁等に対して交付可能額の範囲内で交付申請を行い、所管府省庁等から福島交付金の交付決定及び交付を受けて事業を実施している。

福島県等は、福島再生加速化交付金事業の実施に当たり、各実施要綱に基づき、長期避難者生活拠点形成、福島定住等緊急支援及び帰還環境整備の3項目については、各実施要綱に規定する交付対象事業ごとに、単年度型事業、基金型事業又はその両方を選択するなどして実施することとなっており、他の3項目に係る交付対象事業は単年度型事業で実施することとなっている。

(イ) 福島交付金の交付等の状況

2年度末現在における福島交付金の交付等の状況をみると、図表2-5-1のとおり、交付額計5257億余円、執行額等計4054億余円、執行率又は基金事業執行率は77.1%となっている。

交付対象項目別の交付額をみると、帰還環境整備が2846億余円、長期避難者生活拠点形成が2110億余円となっていて、この2項目で交付額全体の9割以上を占めている。また、交付対象項目別及び実施方法別の執行率をみると、帰還環境整備の単年度型の執行率が平成27年度末現在の88.6%から令和2年度末現在の80.2%に低下している。これは、入札の不調等により事業の完了が遅れていることなどによるものであるが、帰還環境整備の単年度型以外の執行率又は基金事業執行率は、長期避難者生活拠点形成は単年度型が68.0%から88.5%に、基金型が33.0%から83.5%にそれぞれ上昇するなど、全て上昇している。

図表2-5-1 復興期間(当初)における福島交付金の交付等の状況(令和2年度末現在)

(単位:実施主体、件、百万円、%)
交付対象項目 実施方法 事業実施主体数 事業実施件数 交付額 執行額等 執行率又は
基金事業執行率
国庫返還額 執行未済額
又は取崩未済額
<参考>
平成27年度末現在
の執行率又は
基金事業執行率
A B B/A C A-B-C
長期避難者
生活拠点形成
単年度型 13 286 33,601 29,750 88.5 3,584 266 68.0
基金型 7 159 177,468 148,291 83.5 19,855 9,321 33.0
13 445 211,069 178,042 84.3 23,439 9,587 35.1
福島定住等
緊急支援
単年度型 30 245 17,065 16,424 96.2 640 82.8
基金型 1 1 1,234 1,095 88.7 138
31 246 18,300 17,520 95.7 779 82.8
帰還環境整備 単年度型 46 1,254 95,725 76,860 80.2 51 18,793 88.6
基金型 20 355 188,965 122,756 64.9 1,166 65,061 35.8
46 1,609 284,690 199,617 70.1 1,217 83,854 78.9
道路等側溝堆積物
撤去・処理支援
単年度型 19 120 7,586 6,153 81.1 962 469
原子力災害情報発信等
拠点施設等整備
単年度型 1 5 4,017 4,017 100.0
既存ストック活用
まちづくり支援
単年度型 6 6 61 50 81.1 11
小計 単年度型 46 1,916 158,058 133,258 84.3 4,598 20,181 82.5
基金型 21 515 367,667 272,144 74.0 21,021 74,520 33.1
合計 46 2,431 525,725 405,402 77.1 25,620 94,702 44.0
  • 注(1) 事業実施主体は重複しているため、各交付対象項目別の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。
  • 注(2) 交付額には令和3年度以降の実施予定分に係るものが含まれているものがある。
  • 注(3) 執行未済額又は取崩未済額は、同一の交付対象項目内で流用した額があるため、交付額から執行額等を差し引いた額と一致しないものがある。

(ウ) 長期避難者生活拠点形成及び帰還環境整備の実施状況

福島交付金の交付対象項目のうち、事業規模が大きい長期避難者生活拠点形成及び帰還環境整備について、交付対象事業別に、2年度末現在の事業実施状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

2年度までに実施された長期避難者生活拠点形成の交付対象事業については、図表2-5-2のとおり、災害公営住宅整備事業等(災害公営住宅の整備、災害公営住宅に係る用地取得造成等)に係る交付額が1832億余円、執行額等が1519億余円と最も多額であり、長期避難者生活拠点形成全体の執行額等に占める割合は85.3%となっている。

図表2-5-2 長期避難者生活拠点形成の事業実施状況(令和2年度末現在)

(単位:実施主体、件、百万円、%)
事業 交付対象事業 事業実施主体数 事業実施件数 交付額 執行額等 執行額等の
計に占める
左の割合
生活拠点事業
(3事業)
災害公営住宅整備事業等(災害公営住宅の整備、災害公営住宅に係る用地取得造成等) 10 182 183,296 151,963 85.3
災害公営住宅家賃低廉化事業 8 90 18,915 18,353 10.3
東日本大震災特別家賃低減事業 8 90 2,113 2,009 1.1
関連基盤整備等事業
(4事業)
施設開設準備経費助成特別対策事業 1 4 112 101 0.0
被災者生活支援事業 1 13 2,209 1,430 0.8
道路事業 11 62 3,914 3,676 2.0
廃棄物処理施設改良・改修事業 1 4 507 507 0.2
計(7事業) 13 445 211,069 178,042 100.0
  • (注) 事業実施主体は重複しているため、各交付対象事業別の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。

また、2年度までに実施された帰還環境整備の交付対象事業(以下、帰還環境整備の交付対象事業を「帰還環境整備事業」という。)については、図表2-5-3のとおり、農山村地域復興基盤総合整備事業に係る交付額が835億余円、執行額等が640億余円と最も多額であり、帰還環境整備全体の執行額等に占める割合は32.0%となっている。

図表2-5-3 帰還環境整備の事業実施状況(令和2年度末現在)

(単位:実施主体、件、百万円、%)
事業 交付対象事業 事業実施主体数 事業実施件数 交付額 執行額等 執行額等の
計に占める
左の割合
生活拠点整備(17事業) 福島復興再生拠点整備事業
(一団地の復興再生拠点市街地形成施設)
3 18 22,675 8,445 4.2
災害公営住宅整備事業等
(災害公営住宅の整備、災害公営住宅に係る用地取得造成等)
6 25 10,948 8,376 4.1
道路事業(面整備事業と一体的に施行すべきアクセス道路等) 5 28 10,788 7,483 3.7
その他14事業 13 258 18,037 12,968 6.4
生活環境向上対策(3事業) 避難区域内危険物・化学物質等処理促進事業 1 4 5,861 5,861 2.9
水道施設整備事業 6 50 4,323 3,210 1.6
生活環境向上支援事業 10 31 3,125 2,363 1.1
健康管理・健康不安対策(4事業) 個人線量管理・線量低減活動支援事業 46 523 9,768 9,044 4.5
放射線測定装置・機器等整備支援事業 11 38 1,263 1,011 0.5
相談員育成・配置事業 10 40 807 800 0.4
被災者生活支援事業 1 22 644 582 0.2
社会福祉施設整備(4事業) 保育所等の複合化・多機能化推進事業 6 13 648 647 0.3
施設開設準備経費助成特別対策事業 1 2 52 52 0.0
児童福祉施設等整備事業 1 4 40 27 0.0
放課後児童クラブ整備事業 1 2 12 12 0.0
農林水産業再開のための
環境整備(5事業)
農山村地域復興基盤総合整備事業 30 360 83,538 64,061 32.0
被災地域農業復興総合支援事業 10 83 31,661 19,596 9.8
農業基盤整備促進事業 10 39 8,692 5,976 2.9
その他2事業 5 13 6,034 5,504 2.7
商工業再開のための
環境整備(3事業)
原子力災害被災地域産業団地等整備等支援事業 11 42 60,191 38,389 19.2
原子力災害被災地域事業所整備等支援事業 8 12 5,488 5,173 2.5
事業者等向け浄化槽導入等支援事業 1 2 81 27 0.0
計(36事業) 46 1,609 284,690 199,617 100.0
  • (注) 事業実施主体は重複しているため、各交付対象事業別の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。

(エ) 環境整備等委託事業の概要

福島避難解除区域等生活環境整備事業実施要綱(平成27年4月9日付け。29年5月19日改正)等によれば、環境整備等委託事業は、避難指示・解除区域市町村等が実施する復旧事業や除染等と密接に関連することから、国の責任において当該事業の目的を迅速かつ早期に達成するために、国から避難指示・解除区域市町村等に委託して実施することとされている。

環境整備事業等委託事業の委託対象項目のうち、生活環境整備事業は、避難指示に起因して機能低下した公共施設等の機能回復を行うものであり、帰還・再生事業は、避難指示・解除区域市町村の住民の帰還を促進するための取組や将来の帰還に向けた荒廃抑制対策等を行うものである。

(オ) 委託費の支払等の状況

復興期間(当初)における環境整備等委託事業に係る委託費の支払額は、図表2-5-4のとおり、集中復興期間のうち平成24年度から27年度までが計203億余円、復興・創生期間の28年度から令和2年度までが計396億余円、合計で599億余円となっている。委託対象項目ごとにみると、生活環境整備事業に係る委託費の支払額は計176億余円となっていて、ほぼ全てが「①清掃等の行為」となっている。一方、社会福祉施設等の再開に必要な介護職員等を養成する「②公共・公益的機能を回復させるために必要な行為」については、平成30年度以降支払の実績はない。

また、帰還・再生事業に係る委託費の支払額は計423億余円となっていて、このうち「③避難区域の荒廃抑制・保全対策」が計229億余円と最も多額となっており、28年度以降は30億円前後で推移している。一方、廃棄物処理施設が再稼働するまでの間、廃棄物の仮置き場として使用する仮設代替処理施設の維持管理等を行う「⑤横断的事項」については、令和元年度以降支払の実績はない。なお、複数の委託対象事業の区分に該当するなどのため、いずれか一つに分類できないとされたものなどがあり、これらを「⑥その他」に区分していて、支払額は平成28年度に1億余円であったが令和2年度には10億余円に増加している。復興庁によると、ニーズの多様化等の地域の実情を踏まえて複数の委託対象事業にまたがる事業が増えていることによるものであるとしている。

図表2-5-4 委託対象項目別の年度ごとの支払額(平成24年度~令和2年度)

(単位:百万円)
委託
対象
項目
委託対象事業 集中復興期間 復興・創生期間
平成24年度~
27年度
28年度~令和2年度
うち28年度 うち29年度 うち30年度 うち令和元年度 うち2年度
生活環境整備事業 5,254 12,350 3,522 2,566 1,819 2,338 2,103 17,605
①清掃等の行為 5,217 12,334 3,515 2,557 1,819 2,338 2,103 17,552
②公共・公益的機能を回復させるために必要な行為 36 16 7 8 - - - 53
帰還・再生事業 15,094 27,277 6,292 5,438 5,652 5,220 4,673 42,372
①生活基盤施設・サービスの代替・補完 539 230 81 91 22 17 17 770
②地域コミュニティ機能の維持・確保 2,192 3,990 1,309 823 788 693 375 6,183
③避難区域の荒廃抑制・保全対策 6,458 16,465 3,701 3,404 3,430 2,960 2,968 22,923
④住民の一時帰宅支援 944 3,304 929 852 582 640 299 4,248
⑤横断的事項 240 138 72 13 51 - - 378
⑥その他 4,720 3,147 198 252 776 908 1,012 7,868
合計 20,349 39,627 9,815 8,004 7,471 7,559 6,777 59,977
  • (注) 帰還・再生事業の「⑥その他」は住民の帰還に資する事業であり、①から⑤のいずれか一つに分類することができない事業及び平成25年度に福島交付金の交付対象項目である帰還環境整備に統合された事業の25年度以前の実施分を含む。

(カ) 福島再生加速化交付金事業等の市町村等別の状況

福島再生加速化交付金事業の執行額等の復興・創生期間における推移をみると、図表2-5-5のとおり、避難指示・解除区域市町村を除いた33市町村等では、平成30年度が85億余円で最も多く、令和元年度以降は減少傾向となり、2年度は56億余円となっている。避難指示・解除区域市町村では、平成28年度の146億余円から令和2年度は266億余円と増加傾向となっていて、特に、区域内のインフラ整備等が集中的に行われる特定復興再生拠点区域に認定された区域を有する6町村のうち双葉郡葛尾村を除いた5町村については、近年の執行額等が大幅に増加していて、当該5町村を中心に避難指示・解除区域市町村においては、引き続き福島再生加速化交付金事業の実施が見込まれる。
また、環境整備等委託事業に係る委託費の支払額の推移をみると、図表2-5-5のとおり、全体の支払額は平成28年度が98億余円で最も多く、29年度以降は減少傾向となっている。一方、帰還困難区域の設定が継続している7市町村についてみると、相馬郡飯舘村に対する支払額が29年度以降増加を続けているなどしており、当該7市町村においては、引き続き帰還・再生事業の実施が見込まれる。

図表2-5-5 福島再生加速化交付金事業等に係る執行額等及び支払額の市町村等別推移(平成28年度~令和2年度)

(単位:百万円)
市町村等名 事業名 平成
28年度
29年度 30年度 令和
元年度
2年度 復興再生計画の
認定日
田村市 福島再生加速化交付金事業 635 571 700 1,317 1,820 5,045
環境整備等委託事業 14 3 3 3 3 29
650 575 704 1,321 1,823 5,074
南相馬市 ※ 福島再生加速化交付金事業 5,954 3,529 3,667 3,946 2,972 20,069
環境整備等委託事業 936 758 509 340 204 2,748
6,891 4,287 4,177 4,286 3,176 22,818
川俣町 福島再生加速化交付金事業 629 967 810 488 233 3,130
環境整備等委託事業 193 236 749 706 112 1,997
823 1,204 1,560 1,195 345 5,128
広野町 福島再生加速化交付金事業 125 243 83 32 109 594
環境整備等委託事業 184 117 63 52 69 486
309 360 146 84 178 1,081
楢葉町 福島再生加速化交付金事業 2,190 987 907 1,413 887 6,386
環境整備等委託事業 980 317 557 172 173 2,201
3,170 1,305 1,464 1,586 1,060 8,588
富岡町 ※ 福島再生加速化交付金事業 284 2,950 1,245 2,604 4,126 11,211 平成30年3月9日
環境整備等委託事業 1,619 1,095 767 872 595 4,950
1,903 4,046 2,013 3,476 4,721 16,162
川内村 福島再生加速化交付金事業 213 934 1,053 2,202
環境整備等委託事業 300 106 47 20 23 498
300 106 261 955 1,076 2,701
大熊町 ※ 福島再生加速化交付金事業 242 2,048 3,596 5,887 29年11月10日
環境整備等委託事業 706 767 729 798 555 3,557
706 767 971 2,847 4,152 9,445
双葉町 ※ 福島再生加速化交付金事業 110 1,734 3,080 3,148 8,074 29年9月15日
環境整備等委託事業 622 544 713 587 563 3,031
622 655 2,447 3,667 3,712 11,105
浪江町 ※ 福島再生加速化交付金事業 1,922 3,765 5,476 4,844 6,130 22,140 29年12月22日
環境整備等委託事業 1,702 1,983 1,468 1,518 1,205 7,879
3,625 5,749 6,945 6,362 7,336 30,019
葛尾村 ※ 福島再生加速化交付金事業 1,879 88 1,840 332 309 4,450 30年5月11日
環境整備等委託事業 1,277 988 639 364 385 3,653
3,156 1,076 2,479 696 694 8,104
飯舘村 ※ 福島再生加速化交付金事業 1,013 1,032 1,508 1,746 2,281 7,583 30年4月20日
環境整備等委託事業 1,122 940 1,027 1,903 2,603 7,596
2,135 1,972 2,535 3,650 4,884 15,179
避難指示・解除区域市町村計 福島再生加速化交付金事業 14,634 14,247 18,432 22,791 26,670 96,776
環境整備等委託事業 9,661 7,859 7,275 7,339 6,495 38,631
24,296 22,107 25,708 30,130 33,165 135,408
33市町村等計 福島再生加速化交付金事業 7,388 5,509 8,598 8,251 5,606 35,353
環境整備等委託事業 153 145 195 219 281 996
7,541 5,654 8,794 8,471 5,888 36,350
福島県 福島再生加速化交付金事業 63,506 39,108 23,502 19,665 22,144 167,926
環境整備等委託事業
63,506 39,108 23,502 19,665 22,144 167,926
合計 福島再生加速化交付金事業 85,529 58,865 50,533 50,707 54,421 300,057
環境整備等委託事業 9,815 8,004 7,471 7,559 6,777 39,627
合計 95,344 66,870 58,005 58,266 61,198 339,685
  • (注) 令和2年度末現在で区域内に帰還困難区域を有している市町村には※を付している。

カ 震災復興特別交付税に係る経費の執行状況

国は、前記のとおり、復旧・復興に係る財政面の取組として、道府県及び市町村が国庫補助金等を受けて実施する復旧・復興事業等における負担額等に対処するため、復興特会(23年度については一般会計)において震災復興特別交付税の財源となる経費を計上している(図表1-2の「地方交付税交付金」。ただし、23年度の「地方交付税交付金」には震災復興特別交付税でない地方交付税を含む。)。当該経費は、復興特会等から交付税特会に繰り入れられ(復興期間(当初)における震災復興特別交付税に係る復興特会等の予算現額は累計5兆5905億余円、支出済額は累計5兆4017億余円。別図表9参照)、繰り入れられた後に地方公共団体の事業実施状況等に応じて実際の交付額が決定されて、各地方公共団体に交付されている。これにより、集中復興期間においては、国の補助金等を受けて実施する事業に要する経費のうち道府県及び市町村が負担する額として総務大臣が調査した額等の全額について震災復興特別交付税が交付されていた。そして、復興・創生期間においては、第13回復興推進会議決定を踏まえて、復興の基幹的事業や原子力災害に由来する事業等については、これまでと同様、震災復興特別交付税により被災自治体は実質的に負担しないこととなった一方、地域振興策や将来の災害への備えといった全国に共通する課題への対応という性質を併せ持つ事業については、被災自治体においても一定の負担を行うものとされた。

交付税特会における震災復興特別交付税に係る歳出についてみると、図表2-6のとおり、復興期間(当初)における歳出予算現額の累計(各年度の歳出予算現額から前年度の繰越額を控除した額の累計)は5兆8943億余円、支出済額は累計5兆4086億余円となっている。

年度ごとの執行状況についてみると、歳出予算現額は24年度以降減少が続いており、また、支出済額も特定被災自治体等における復旧・復興事業の進捗に伴い23年度の8134億余円から減少し、28年度以降は4000億円台で推移している。不用額は、復旧・復興事業の進捗の遅れなどにより24年度から26年度まで及び28年度にそれぞれ855億余円、1633億余円、1482億余円、881億余円生じている。

なお、交付税特会における震災復興特別交付税に係る歳入についてみると、復興期間(当初)における復興特会等からの受入額及び精算に係る返還額(注19)の累計は5兆4090億余円となっている。

(注19)
会計検査院が、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により意見を表示した(「震災復興特別交付税の交付額の精算等について」(平成27年10月29日付け総務大臣宛て))ことを受けて、総務省が処置を講じたことにより、平成29年度以降、精算に係る返還額が生じている。

図表2-6 交付税特会における震災復興特別交付税に係る経費の執行状況(平成23年度~令和2年度)

(単位:億円、%)
年度 歳入 歳出 復興特会等
からの受入額
及び精算に係る返還額
の累計に対する支出済額
の累計の割合
復興特会等
からの受入額
(平成23年度は
一般会計から受入)
精算に係る
返還額
復興特会等
からの受入額
及び精算に係る
返還額の累計
歳出予算現額 支出済額 繰越額 差引額
(不用額)
歳出予算
現額の累計
支出済額
の累計
a A B b C A-B-C b / a





平成
23
1兆6635 1兆6635 1兆6635 1兆6635 8134 8134 8500 48.8
24 6704 2兆3339 1兆5204 2兆3339 7645 1兆5779 6704 855 67.6
25 5771 2兆9111 1兆3331 2兆9966 5070 2兆0850 6627 1633 71.6
26 4116 3兆3227 1兆2377 3兆5716 5144 2兆5995 5749 1482 78.2
27 4415 3兆7642 1兆1647 4兆1614 5889 3兆1884 5758 84.7






28 3429 4兆1072 9188 4兆5044 4877 3兆6761 3429 881 89.5
29 2543 38 4兆3655 6893 4兆8508 4382 4兆1143 2511 94.2
30 3252 5 4兆6912 5768 5兆1765 4301 4兆5445 1467 96.8
令和
3750 4 5兆0666 5221 5兆5519 4633 5兆0078 588 98.8
2 3398 25 5兆4090 4011 5兆8943 4007 5兆4086 4 99.9
  • (注) 支出済額は、交付税特会における(項)地方交付税交付金の支出済歳出額の内数(「東日本大震災復興に係る地方交付税交付金に係る必要な経費」の額)である。

キ 東北3県及び管内市町村等における国庫支出金等の受入れの状況

からまでのとおり、特定被災自治体等に対して復興期間(当初)に多額の国庫補助金等の国費が投じられており、そのほとんどは東北3県及び管内市町村等に対するものとなっていて、これらの国費は各地方公共団体の決算において歳入に計上されている。そこで、総務省が地方財政の状況を把握するために作成している業務統計「地方財政状況調査」を基に、復旧・復興事業分の歳入のうち国費に係る主なものである「国庫支出金」及び「震災復興特別交付税」(以下「国庫支出金等」という。)の受入額の状況をみると次のとおりとなっていた。

東北3県及び管内市町村等における国庫支出金等の受入額の推移については、図表2-7-1のとおり、岩手県及び宮城県は25年度以降は減少しており、福島県については28年度までは増減を繰り返しているが、29年度以降は減少している。そして、26年度以降は福島県が東北3県の中で最も多額となっている。

また、復興期間(当初)における東北3県及び管内市町村等の歳入総額は、図表2-7-2のとおり、岩手県が計21兆6132億余円(うち国庫支出金等計3兆7187億余円、歳入総額に占める割合17.2%)、宮城県が計33兆2927億余円(同計7兆1660億余円、同21.5%)、福島県が計31兆6962億余円(同計6兆5659億余円、同20.7%)となっている。

同様に、歳入総額に占める国庫支出金等の割合の推移をみると、図表2-7-3のとおり、東北3県のいずれも国庫支出金等の受入額の推移(図表2-7-1参照)と同様の傾向となっており、23、24両年度は25%から35%程度と高くなっていたが、令和2年度にはおおむね10%以下に減少している。

さらに、避難指示・解除区域市町村である12市町村についてみると、平成26年度に中間貯蔵施設整備等影響緩和交付金が双葉郡大熊町に461億円、同郡双葉町に389億円交付されたことなどから、図表2-7-2のとおり、避難指示・解除区域市町村の26年度の歳入総額は3609億余円(同1396億余円、同38.6%)と他の年度と比べて多額となっており、歳入総額に占める国庫支出金等の割合も他の年度と比べて高くなっている。そして、避難指示・解除区域市町村全体の歳入総額は計2兆7042億余円(同計7153億余円、同26.4%)となっていて、歳入総額に占める国庫支出金等の割合が福島県全体と比べてやや高くなっている。

図表2-7-1 東北3県及び管内市町村等における国庫支出金等の受入れの状況(平成23年度~令和2年度)

図表2-7-1 東北3県及び管内市町村等における国庫支出金等の受入れの状況(平成23年度~令和2年度)画像

図表2-7-2 東北3県及び管内市町村等の歳入総額(平成23年度~令和2年度)

(単位:億円、%)
年度 岩手県 宮城県 福島県
避難指示・解除区域市町村
歳入総額 歳入総額 歳入総額 歳入総額
国庫支出金等 左の割合 国庫支出金等 左の割合 国庫支出金等 左の割合 国庫支出金等 左の割合
A B B/A C D D/C E F F/E G H H/G
(参考)
平成22
1兆4328 1兆8609 1兆7761 1097
23 2兆2717 5567 24.5 3兆6309 1兆2047 33.1 3兆4420 1兆2267 35.6 1747 438 25.1
24 2兆5026 7062 28.2 4兆3741 1兆6280 37.2 3兆1057 7146 23.0 1931 456 23.6
25 2兆3110 4341 18.7 3兆8027 9813 25.8 3兆3150 6729 20.3 2123 398 18.7
26 2兆1944 3808 17.3 3兆4748 7388 21.2 3兆6572 8156 22.3 3609 1396 38.6
27 2兆1868 3610 16.5 3兆4440 6476 18.8 3兆5441 6928 19.5 3047 550 18.0
28 2兆1564 3474 16.1 3兆1292 5168 16.5 3兆5450 7923 22.3 3026 836 27.6
29 2兆0417 2725 13.3 2兆9212 4462 15.2 2兆8587 5196 18.1 3001 967 32.2
30 1兆9468 2420 12.4 2兆7373 3872 14.1 2兆5837 4205 16.2 2849 843 29.5
令和元 1兆8846 2416 12.8 2兆6817 3642 13.5 2兆6047 4021 15.4 2750 724 26.3
2 2兆1167 1759 8.3 3兆0963 2508 8.1 3兆0395 3083 10.1 2954 540 18.2
注(4) 21兆6132 3兆7187 17.2 33兆2927 7兆1660 21.5 31兆6962 6兆5659 20.7 2兆7042 7153 26.4
  • 注(1) 総務省が公表している「地方財政状況調査」を基に会計検査院が作成した。
  • 注(2) 「歳入総額」は、県及び管内市町村等の「歳入合計」を集計している。
  • 注(3) 「国庫支出金等」は、復旧・復興事業分の歳入のうち「国庫支出金」及び「震災復興特別交付税」を集計している。
  • 注(4) 「計」は、復興期間(当初)の平成23年度から令和2年度までを集計している。

図表2-7-3 歳入総額に占める国庫支出金等の割合の推移(平成23年度~令和2年度)

図表2-7-3 歳入総額に占める国庫支出金等の割合の推移(平成23年度~令和2年度)画像

また、上記の国庫支出金等のほかに、東北3県管内市町村等について、「地方財政状況調査」を基に、復旧・復興事業分の歳入のうち「都道府県支出金(国庫財源を伴うもの)」の受入額の状況をみると、図表2-7-4のとおり、福島県管内市町村等は計1兆7465億余円であり、岩手県管内市町村等の計1943億余円及び宮城県管内市町村等の計2929億余円と比べて5倍以上と多額となっている。これは、福島県管内市町村等では、福島県を経由した間接補助事業が多く実施されたことなどによるものである。

図表2-7-4 東北3県管内市町村等における都道府県支出金(国庫財源を伴うもの)の受入れの状況(平成23年度~令和2年度)

(単位:億円)
管内市町村等 年度 集中復興期間 復興・創生期間
平成
23
24 25 26 27 28 29 30 令和
2
岩手県管内市町村等 431 496 372 220 124 96 71 48 47 33 1943
宮城県管内市町村等 896 689 433 300 183 147 93 78 50 57 2929
福島県管内市町村等 388 1614 2308 3260 3395 2898 1333 871 688 706 1兆7465
避難指示・解除
区域市町村
98 389 463 774 1015 640 326 232 221 199 4360
  • 注(1) 総務省が公表している「地方財政状況調査」を基に会計検査院が作成した。
  • 注(2) 復旧・復興事業分の歳入のうち「都道府県支出金(国庫財源を伴うもの)」を集計している。

(3) 復旧・復興事業の実績及び成果の状況

復興基本方針や28年基本方針において重点的に取り組むなどとされた津波防災、住まい、市街地等の整備、産業再生、28年4月に創設された支援交付金による被災者支援及び避難者の帰還等に関する各施策について、国から特定被災自治体に対する財政支援等のうち9割以上を占める東北3県及び管内市町村が実施した事業を主な対象として、施設等の整備、被災者支援に係る活動等の実績、これらにより得られた成果の状況について検査した(「3(2)国から財政支援等を受けて地方公共団体等が実施する復旧・復興事業の状況」の実施状況との関係は、前掲図表2-0-1参照)。

ア 津波防災に関する施策に係る復旧・復興事業の実績及び成果

(ア) 東日本大震災の発生後の津波防災に関する施策

復興基本方針や28年基本方針において重点的に取り組むなどとされた各施策のうち、津波防災に関する施策については、復興基本方針において、「人命が失われないことを最重視し、災害時の被害を最小化する「減災」の考え方に基づき、「逃げる」ことを前提とした地域づくりを基本に、地域ごとの特性を踏まえ、ハード・ソフトの施策を組み合わせた「多重防御」による「津波防災まちづくり」を推進する」とされた(東日本大震災の発生後の国の津波対策に関する主な取組について別図表10参照)。

23年に成立した「津波防災地域づくりに関する法律」(平成23年法律第123号。以下「津波防災地域づくり法」という。)において、津波による災害を防止し、又は軽減する効果が高く、将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域の整備、利用及び保全を総合的に推進することによって、津波による災害から国民の生命、身体及び財産の保護を図るために、都道府県知事による津波浸水想定(注20)の設定や津波浸水想定を踏まえた津波災害警戒区域の指定(注21)等の措置に関する事項が定められた。
(注20)
津波浸水想定  津波があった場合に想定される浸水の区域及び水深をいう。「津波防災地域づくりの推進に関する基本的な指針」(平成24年国土交通省告示第51号。以下「津波防災基本指針」という。)によれば、最大クラスの津波を想定して、その津波があった場合に想定される浸水の区域及び水深を設定するものとされている。津波浸水想定は津波防災地域づくり法等に示された各施策の前提となるものである。
(注21)
津波災害警戒区域の指定  都道府県知事は、津波防災基本指針に基づき、かつ、津波浸水想定を踏まえて、津波が発生した場合には住民その他の者の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における津波による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域を、津波災害警戒区域として指定することができるとされている。津波災害警戒区域を指定することにより、市町村の長にハザードマップの配布等が義務付けられたり、一定の用途制限等が発生したりすることになる。

海岸法(昭和31年法律第101号)等に基づく海岸は、海岸の存する地域及びその背後地の利用状況等に応じて、図表3-1-1のとおり、農地海岸、漁港海岸、港湾海岸及び建設海岸の四つに区分することができる。

そして、海岸を防護するための施設(以下「海岸保全施設」という。)については、「設計津波の水位の設定方法等について」(平成23年7月農林水産省農村振興局、水産庁漁港漁場整備部、国土交通省水管理・国土保全局及び港湾局通知)において、一定の頻度(数十年から百数十年に一度程度)で到達すると想定される津波の高さを基に設定された水位を前提として設計され、おおむねその設計に基づき整備されている。一方、地域によっては、地域住民等との調整により高さが当初設計に基づくものよりも低くなったものもあり、このような場合には、復興基本方針で掲げられているような「多重防御」の発想による対策がより重要となると考えられる。

図表3-1-1 海岸の区分

区分 本図表以降での表記 主務大臣
土地改良事業として管理している施設で海岸保全施設に該当する
ものの存する地域等に係る海岸保全区域
農地海岸 農林水産大臣
漁港区域に係る海岸保全区域 漁港海岸
港湾区域、港湾隣接地域等に係る海岸保全区域 港湾海岸 国土交通大臣
上記3区分以外の海岸保全区域 建設海岸
  • (注) 海岸保全区域とは、海岸法に基づいて、都道府県知事が、海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するため海岸保全施設の設置等を行う必要があると認めるときに指定することができるとされる防護すべき海岸に係る一定の区域を指す。

また、ハードの施策である海岸保全施設の整備等と組み合わせて講じられるソフトの施策としては、津波防災地域づくり法に基づく、都道府県知事による最大クラスの津波(注22)を前提とした津波浸水想定の設定、津波浸水想定を踏まえた津波災害警戒区域の指定等の措置がある。

(注22)
最大クラスの津波  東北地方太平洋沖地震による津波のように発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす津波

「津波対策の推進に関する法律」(平成23年法律第77号)によれば、都道府県及び市町村は、津波が発生し、又は発生するおそれがある場合における避難場所、避難の経路その他住民の迅速かつ円滑な避難を確保するために必要な事項に関する計画を定め、これを公表するよう努めなければならないとされている。津波からの避難対策について、国は、「津波避難対策推進マニュアル検討報告書」(平成14年消防庁)の中で、「市町村における津波避難計画策定指針」を示し、市町村が住民等の生命及び身体の安全を確保するための避難対策について定めた計画(以下「津波避難計画」という。)に定める事項として、津波浸水想定区域図、避難対象地域、避難困難地域等を挙げている。そして、国は、25年に同検討報告書を見直しており、同策定指針において、津波避難計画は、津波避難訓練で明らかになった課題や、津波防災対策の実施や社会条件の変化に応じて、定期的かつ継続的に見直しを行うことが必要であるなどとした。

(イ) 津波防災に関する施策に係る復旧・復興事業の状況

津波防災に関する施策に係る復旧・復興事業の状況について、東北3県の沿岸37市町村(注23)に所在する海岸保全区域に係る海岸における津波等の災害を防止するために設置された堤体、水門等(以下、これらを合わせて「防潮堤」という。)の整備状況のほか、沿岸31市町村(注24)における避難路及び避難施設の整備状況、津波避難計画の策定、避難対象地域の指定及び避難困難地域の設定の状況等をみると次のとおりである。

(注23)
沿岸37市町村  岩手県の宮古、大船渡、久慈、陸前高田、釜石各市、上閉伊郡大槌、下閉伊郡山田、岩泉、九戸郡洋野各町、下閉伊郡田野畑、普代、九戸郡野田各村、宮城県の仙台、石巻、塩竈、気仙沼、名取、多賀城、岩沼、東松島各市、亘理郡亘理、山元、宮城郡松島、七ヶ浜、利府、牡鹿郡女川、本吉郡南三陸各町、福島県のいわき、相馬、南相馬各市、双葉郡広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江、相馬郡新地各町
(注24)
沿岸31市町村  沿岸37市町村のうち、福島県の南相馬市、双葉郡楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江各町の計6市町を除いた31市町村で、29年報告に係る会計実地検査実施箇所である。

a 防潮堤の整備状況

沿岸37市町村に所在する海岸保全区域に係る海岸における防潮堤の整備に係る復旧・復興事業は、図表3-1-2のとおり、令和2年度末現在で、沿岸37市町村に所在する583海岸において実施されていて、このうち復興期間(当初)において防潮堤が完成した海岸数は444海岸、完成率は76.1%となっており、平成27年度末現在の完成率16.1%と比して、60.0ポイント上昇した。なお、復興期間(当初)に完成しなかった139海岸のうち、令和3年度末現在で、93海岸が完成している(3年度末現在、完成した海岸数は計537海岸、完成率92.1%)。県別にみると、岩手県が111海岸、宮城県が373海岸、福島県が99海岸となっていて、各県の防潮堤が完成した海岸数及び完成率は、2年度末現在で岩手県が81海岸(72.9%)、宮城県が272海岸(72.9%)、福島県が91海岸(91.9%)となっている。また、海岸の区分ごとの完成率は、農地海岸が100.0%、建設海岸が77.4%、港湾海岸が75.3%、漁港海岸が62.7%となっている。漁港海岸、港湾海岸及び建設海岸においては、主に事業期間の延長によって防潮堤の完成率が農地海岸に比べて低くなっているが、その理由は、地域住民や関係機関との調整、他事業との調整等となっている。

また、防潮堤の整備に係る計画事業費1兆4969億余円のうち支出済事業費は、2年度末現在で1兆3621億余円、事業費進捗率は90.9%、完成分事業費は7208億余円(うち国庫補助金等6434億余円)となっている。支出済事業費を県別にみると、防潮堤を整備する海岸数が多い宮城県が7598億余円と最も多額であり、次いで岩手県が4197億余円、福島県が1825億余円となっている。

図表3-1-2 防潮堤の整備状況(令和2年度末現在)

(単位:海岸、%、百万円)
県名
(市町村数)
海岸の
区分
事業費
防潮堤を整備
する海岸数
(参考)
防潮堤が完成
した海岸数
(平成27年度末現在)
防潮堤が完成
した海岸数
(完成率)
防潮堤が
完成して
いない海岸数
(参考)
令和3年度に
完成した海岸数
計画事業費 支出済事業費
(事業費進捗率)
完成分事業費
国庫
補助金等
その他
A B
(B/A)
C D
(D/C)
岩手県
(12市町村)
農地海岸 11 1 11 - - 22,082 22,082 21,091 990 22,082
漁港海岸 56 1 35 21 10 220,732 198,529 62,655 1,742 64,397
港湾海岸 12 - 9 3 - 78,491 69,542 33,514 20,635 54,150
建設海岸 32 9 26 6 4 141,282 129,611 70,558 2,773 73,331
111 11 81
(72.9)
30 14 462,588 419,765
(90.7)
187,820 26,141 213,962
宮城県
(15市町)
農地海岸 97 40 97 - - 23,881 23,878 23,162 716 23,878
漁港海岸 140 5 78 62 40 252,833 199,631 65,379 13,501 78,880
港湾海岸 36 3 23 13 12 100,571 93,727 29,639 599 30,238
建設海岸 100 13 74 26 22 470,205 442,609 205,219 8,533 213,753
373 61 272
(72.9)
101 74 847,491 759,847
(89.6)
323,400 23,350 346,751
福島県
(10市町)
農地海岸 10 2 10 - - 23,358 23,358 19,784 3,573 23,358
漁港海岸 27 8 27 - - 33,968 33,968 26,895 7,072 33,968
港湾海岸 17 9 17 - - 10,267 10,267 7,184 3,082 10,267
建設海岸 45 3 37 8 5 119,296 114,961 78,381 14,158 92,539
99 22 91
(91.9)
8 5 186,890 182,555
(97.6)
132,245 27,887 160,133
東北3県
(37市町村)
農地海岸 118 43 118
(100.0)
- - 69,321 69,319
(99.9)
64,038 5,281 69,319
漁港海岸 223 14 140
(62.7)
83 50 507,534 432,129
(85.1)
154,930 22,316 177,246
港湾海岸 65 12 49
(75.3)
16 12 189,330 173,537
(91.6)
70,338 24,317 94,656
建設海岸 177 25 137
(77.4)
40 31 730,783 687,183
(94.0)
354,159 25,465 379,625
583 94
完成率:
(16.1)
444
(76.1)
139 93
注(3)
1,496,970 1,362,168
(90.9)
643,467 77,380 720,847
  • 注(1) 県、市町村が実施している事業分に限定しており、国の機関による事業(直轄事業)は計上していない。
  • 注(2) 地域住民等との調整の結果、事業を取りやめた海岸は集計の対象外としている。
  • 注(3) 令和3年度末現在完成している海岸数は、2年度末現在完成している444海岸に3年度に完成した93海岸を加えた計537海岸となっている(完成率92.1%)。

沿岸37市町村はいずれも津波により甚大な被害を受けており、被災地域の地形、環境等は被災前の状況から著しく変化しているため、事業の進捗とともに計画や設計の変更を行う必要があったことなどから完成時期が見直されている。

防潮堤が所在する市町村別の完成率及び事業の完成(予定)年度の延長状況をみると、図表3-1-3のとおり、完成率は、2年度末現在で、沿岸37市町村のうち21市町村では80%以上、このうち13市町村では100%となっている一方、3町では50%未満となっている。そして、3町のうち福島県大熊、双葉両町では、完成していない防潮堤の整備予定地が全て帰還困難区域となっているため、2年度末現在の完成率が低くなっている。

583海岸のうち、事業の完成(予定)年度が延長されたものは362海岸と約6割を占めている。このうち170海岸は3か年度以上延長されており、最長のものは5か年度以上延長(一部は4年度以降完成予定)されている。

また、沿岸37市町村の計画事業費についてみると、岩手県大船渡市、宮城県気仙沼市、本吉郡南三陸町及び石巻市では2年度末現在の計画事業費が1000億円を超えているなど、家屋の全壊地域が多かった岩手県南部から宮城県北部において、特に多額になっている。

図表3-1-3 防潮堤の所在市町村別の完成等の状況(令和2年度末現在)

(単位:海岸、%、百万円)
県名
(市町村数)
市町村名 計画施設数 完成(予定)年度の見直し
状況 注(3)
2年度末現在
の計画事業費
完成施設数 完成率 (参考)
令和3年度
完成
(参考)
4年度以降
完成予定
完成(予定)
年度が短縮
された海岸数
完成(予定)
年度が延長
された海岸数
うち3か年度
以上延長
されたもの
A B B/A
岩手県
(12市町村)
洋野町 6 6 100.0 - - 1 - - 1,923
久慈市 4 4 100.0 - - 3 1 1 6,714
野田村 6 4 66.6 2 - 5 2 - 20,814
普代村 2 2 100.0 - - - - - 321
田野畑村 3 2 66.6 - 1 2 2 - 9,537
岩泉町 3 3 100.0 - - - - - 888
宮古市 16 14 87.5 - 2 11 2 - 76,041
山田町 8 4 50.0 1 3 8 5 - 64,238
大槌町 3 1 33.3 2 - 3 3 - 16,994
釜石市 20 18 90.0 2 - 16 8 2 65,316
大船渡市 25 14 56.0 4 7 19 14 - 113,748
陸前高田市 15 9 60.0 3 3 13 10 - 86,050
111 81 72.9 14 16 81 47 3 462,588
宮城県
(15市町)
気仙沼市 88 47 53.4 24 17 68 33 - 259,219
南三陸町 61 40 65.5 15 6 45 23 - 126,446
石巻市 69 43 62.3 25 1 50 29 3 175,990
女川町 12 11 91.6 1 - 7 1 - 7,820
東松島市 35 33 94.2 2 - 19 6 - 85,035
松島町 19 19 100.0 - - 6 - - 10,671
利府町 2 2 100.0 - - 2 - - 4,991
塩竈市 59 56 94.9 3 - 32 13 1 39,846
七ヶ浜町 9 9 100.0 - - 7 3 - 11,688
多賀城市 2 1 50.0 - 1 2 1 - 16,000
仙台市 5 3 60.0 1 1 4 3 - 36,086
名取市 5 4 80.0 - 1 5 3 - 31,292
岩沼市 2 1 50.0 1 - 2 2 - 24,389
亘理町 2 1 50.0 1 - 1 1 1 2,692
山元町 3 2 66.6 1 - 2 1 1 15,321
373 272 72.9 74 27 252 119 6 847,491
福島県
(10市町)
新地町 6 6 100.0 - - 2 - - 10,035
相馬市 12 12 100.0 - - 3 1 1 32,035
南相馬市 19 17 89.4 2 - 6 1 3 57,723
浪江町 5 5 100.0 - - 5 - - 12,715
双葉町 3 1 33.3 1 1 2 1 - 5,720
大熊町 3 - - 1 2 - - - 3,646
富岡町 5 4 80.0 1 - 1 1 1 8,753
楢葉町 5 5 100.0 - - 2 - - 9,212
広野町 4 4 100.0 - - 2 - - 4,967
いわき市 37 37 100.0 - - 6 - 1 42,079
99 91 91.9 5 3 29 4 6 186,890
東北3県(37市町村) 583 444 76.1 93 46 362 170 15 1,496,970
  • 注(1) 県、市町村が実施している事業分に限定しており、国の機関による事業(直轄事業)は計上していない。
  • 注(2) 地域住民等との調整の結果、事業を取りやめた海岸は集計の対象外としている。
  • 注(3) 「完成(予定)年度の見直し状況」は、平成27年度末現在の完成(予定)年度と令和2年度末現在の完成(予定)年度を比較したものである。

防潮堤は、海岸及びその近傍の土地の利用状況のみならず、海岸環境の保全等も考慮して整備されている。そして、東北3県による防潮堤に関する復旧・復興事業には、防潮堤を新規で整備するものもあれば、津波によって被害を受けた防潮堤の復旧やかさ上げを行うものもある。また、その整備に至る過程等も一様ではなく、一部の海岸のみ整備を行わなかったり規模を縮小した形で整備を行ったりすると、津波等発生時に当該箇所に水勢が集中する可能性があることなどから、防潮堤の背後地に当たる区域に保全対象となる施設等が存在していなくても復旧・復興事業として防潮堤を整備している場合もある。例えば、会計実地検査を行った福島県において沿岸3市町の28海岸を抽出して、防潮堤の背後地の状況をみたところ、南相馬市所在の小浜雫海岸においては、災害復旧事業として整備された防潮堤70.6mの背後地に、現在保全対象は存在していない。そして、福島県は、このような現在では活用されていない防潮堤の背後地について、将来に向けて有効に活用していくことが課題であるとしている。

b 避難路及び避難施設の整備状況

沿岸31市町村における、避難目標地点まで最も短時間かつ安全に到達できるものとして市町村が設定する避難路及び切迫した災害の危険から逃れるための緊急避難所等の避難施設の指定の状況をみたところ、平成27年度と令和2年度を比較すると、図表3-1-4のとおり、避難路は195路線から237路線へと、避難施設は2,314施設から2,769施設へとそれぞれ増加していた。また、2年度までに避難路及び避難施設の整備のために支出された事業費は、避難路418億余円(うち国庫補助金等計315億余円)、避難施設852億余円(うち国庫補助金等計670億余円)となっていた(市町村別の詳細については別図表11参照)。

図表3-1-4 避難路及び避難施設の指定数及び事業費(平成27年度末及び令和2年度末現在)

県名
(市町村数)
避難路 避難施設
指定数(路線)
注(1)
事業費(千円) うち国庫補助
金等額(千円)
注(3)
指定数(施設)
注(2)
事業費(千円) うち国庫補助
金等額(千円)
注(3)
平成27年度末 令和2年度末 平成27年度末 令和2年度末
岩手県
(12市町村)
37
(6市町村)
66
(7市町村)
3,037,846 2,306,395 893
(12市町村)
1,065
(12市町村)
34,340,798 26,390,453
宮城県
(15市町)
104
(8市町)
108
(10市町)
27,571,901 20,574,046 981
(15市町)
1,241
(15市町)
43,305,468 38,129,209
福島県
(4市町)
54
(3市町)
63
(4市町)
11,267,985 8,700,044 440
(4市町)
463
(4市町)
7,595,425 2,503,892

(31市町村)
195
(17市町村)
237
(21市町村)
41,877,733 31,580,485 2,314
(31市町村)
2,769
(31市町村)
85,241,692 67,023,555
  • 注(1) 既存の施設に係る指定数も含んでいる。
  • 注(2) 避難施設の指定数は延べ計で、既存の施設に係る指定数も含んでいる。
  • 注(3) 事業費のうち、国庫補助金等からの充当額を記載している。

c 津波災害警戒区域の指定、津波避難計画の策定、避難対象地域の指定及び避難困難地域の設定の状況

津波防災地域づくり法によると、津波災害警戒区域は、津波浸水想定を踏まえるなどして指定することができるとされている。東北3県における津波災害警戒区域の指定の状況についてみると、2年度末現在、岩手県及び宮城県では前提となる津波浸水想定が設定されておらず、津波災害警戒区域は指定されていない。また、平成31年3月に津波浸水想定が設定されていた福島県においても津波災害警戒区域は指定されていない。なお、津波浸水想定は、岩手県で令和4年3月、宮城県で同年5月に設定されているが、同年9月末現在、東北3県で津波災害警戒区域は指定されていない。

次に、沿岸31市町村における2年度末現在の津波避難計画の策定状況についてみると、図表3-1-5のとおり、津波避難計画は全ての市町村で策定されていた。また、避難対象地域の指定及び避難困難地域の設定の状況についてみると、避難対象地域は、該当する地域がない2市を除いた29市町村のうち7市町で指定されておらず、避難困難地域は、該当する地域がない10市町村を除いた21市町村のうち10市町で設定されていない。上記の指定又は設定がされていなかった理由としては、当該時点において、その前提となる津波浸水想定の設定等が行われていなかったことが挙げられている。

図表3-1-5 津波避難計画の策定、避難対象地域の指定及び避難困難地域の設定の状況(令和2年度末現在)

市町村名 津波避難計画の策定
注(1)
避難対象地域の指定
注(2)
指定していない理由 避難困難地域の設定
注(2)
指定していない理由
津波浸水想定
未設定等のため
該当地域が
ないため
津波浸水想定
未設定等のため
該当地域が
ないため
洋野町
久慈市
野田村
普代村
田野畑村
岩泉町
宮古市
山田町
大槌町
釜石市
大船渡市
陸前高田市
岩手県計 12市町村 9市町村 4市町村
気仙沼市
南三陸町
石巻市
女川町
東松島市
松島町
利府町
塩竈市
七ヶ浜町
多賀城市
仙台市
名取市
岩沼市
亘理町
山元町
宮城県計 15市町 12市町 6市町
新地町
相馬市
広野町
いわき市
福島県計 4市町 1市 1市
合計 31市町村 22市町村 11市町村
  • 注(1) 地域防災計画上に規定等している場合を含む。
  • 注(2) 津波浸水想定未設定の場合であっても、東日本大震災における浸水区域等を基に暫定的に災害危険区域等を定めている場合には指定等済みとしている。

前記のとおり、東北3県においては防潮堤、避難路及び避難施設の整備が進められている。また、2年4月に内閣府の「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会(注25)」の検討結果において、東北3県における最大クラスの津波の高さが従来想定してきたものより高くなるところがあるとされ、この検討結果が公表されたことなどを踏まえて、津波浸水想定が岩手県及び宮城県を含む東北3県の全てで設定された。そして、復興交付金事業で整備した津波避難タワーの供用を取りやめた例も見受けられる。今後、新たに設定された津波浸水想定等を踏まえて、東北3県が津波災害警戒区域を指定したり、沿岸市町村が津波避難計画を改定したりするなど、警戒避難体制の整備を進めていくことが必要であると考えられる。

(注25)
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会  日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震について、最大クラスの地震・津波を想定した検討を行うために、平成27年2月に内閣府に設置された検討会

イ 住まい、市街地等の整備に関する復旧・復興事業の実績及び成果

復興交付金及び福島交付金による国土交通省所管の災害公営住宅整備事業等、復興交付金による農林水産省所管の漁業集落防災機能強化事業、国土交通省所管の都市再生区画整理事業及び防災集団移転促進事業(以下、これらの事業を「住まいの復興に係る4事業」という。)は、被災者の住まいの確保等に重要な役割を担うものとされている。29年報告においては、平成27年度末における住まいの復興に係る4事業の状況について記述した。そこで、令和2年度末における住まいの復興に係る4事業により整備された恒久住宅の供給及び宅地の供給等の状況、さらに、都市再生区画整理事業により整備された土地の利用状況について検査した。

なお、東北3県において、被災者が災害公営住宅等の恒久住宅に入居する前に一時的に居住する住宅として、災害救助法(昭和22年法律第118号)に基づき供与された応急仮設住宅は、平成27年度末現在で計52,011戸(岩手県8,818戸、宮城県19,430戸、福島県23,763戸)となっていたが、令和2年度末現在では計554戸(岩手県0戸、宮城県9戸、福島県545戸)となっており、ほとんどは福島県大熊、双葉両町からの避難者に供与されている。

(ア) 住まいの復興に係る4事業による恒久住宅及び宅地の供給等の状況

a 災害公営住宅整備事業等による恒久住宅の供給

災害公営住宅整備事業等は、東北3県のうち岩手、福島両県及び56市町村が事業主体となって実施されており、整備状況をみると、図表3-2-1のとおり、836地区における計画戸数29,806戸に対して29,653戸が完成し、整備が完了した地区に係る整備額は8343億余円となっている。完成率(計画戸数に対する整備済戸数の割合)をみると、平成27年度末現在は56.6%であったものが、令和2年度末現在は99.4%となっており、復興期間(当初)において、災害公営住宅の整備はおおむね完了しているものの、福島県において153戸が未整備となっている。

図表3-2-1 復興期間(当初)における災害公営住宅の整備状況(令和2年度末現在)

(単位:地区、戸、百万円、%)
県(事業主体) 計画 整備済 未整備 完成率
B/A
<参考>
平成27年度末
現在の完成率
地区数 戸数
A
地区数 戸数
B
整備額 地区数 戸数
岩手県
(1県及び14市町村)
212 5,833 212 5,833 146,365 - - 100.0 54.8
宮城県
(21市町)
438 15,823 438 15,823 429,687 - - 100.0 61.6
福島県
(1県及び21市町村)
186 8,150 183 7,997 258,267 3 153 98.1 47.7

(2県及び56市町村)
836 29,806 833 29,653 834,320 3 153 99.4 56.6
  • (注) 福島県(1県及び21市町村)の計画戸数8,150戸及び計(2県及び56市町村)の計画戸数29,806戸のうち福島県に係る計画戸数51戸については、令和2年度末現在で地区数が未定であるため、本図表の地区数には計上していない。また、福島県の計画戸数には、帰還者等のための災害公営住宅が含まれている。

福島県によると、上記の153戸のうち30戸は、双葉町の双葉駅周辺に帰還者のための災害公営住宅として整備が進められている。一方、残りの123戸については、既に115戸に係る土地の造成工事等(これに係る福島交付金相当額4億8897万余円)が終了しているが、同県が平成29年8月に公表している「復興公営住宅の今後の対応方針について(案)」によると、原子力災害による避難者のための災害公営住宅(以下「復興公営住宅」という。)としての整備を保留しているとしている。

そして、同県が整備を保留したとしている上記123戸の復興公営住宅は、上記の対応方針を定めてから4年以上経過した令和4年6月の会計実地検査時点においても、整備が進められておらず、上記の115戸に係る造成した土地は、復興公営住宅の宅地として利用されていない。

同県は、123戸の整備について、復興公営住宅には空室は生じているものの、原子力災害により4年4月現在も県外に2万人を超える住民が避難の継続を余儀なくされている状況の中、必要ないとまでは言い切れない状況にあり、今後の応急仮設住宅の供与期間の延長終了に伴う復興公営住宅への入居者の増加や、帰還に向けての環境整備の進捗状況等を総合的に踏まえて、保留を継続するとしている。

しかし、同県が事業主体として整備した復興公営住宅には2年度末現在で計605戸の空室が生じていることなどから、整備の実施については、今後の復興公営住宅の空室状況も踏まえて、慎重に検討する必要があると認められる。

b 災害公営住宅の入居等の状況

災害公営住宅の入居の状況をみると、図表3-2-2のとおり、管理戸数29,589戸のうち27,410戸(92.6%)が入居済み又は入居手続中であり、2,179戸(7.3%)が入居者未定で空室となっている。

県別にみると、福島県において、998戸(12.5%)が入居者未定で空室が最も多くなっており、その理由について、事業主体によれば、家族構成や生活状況が変化して他の地域において民間宅地を購入して住宅を建築したことなどによるとしている。

各事業主体は、災害公営住宅の入居を定時募集から随時募集に変更するなどして、空室の解消に取り組んでいるとしている。

図表3-2-2 復興期間(当初)に整備された災害公営住宅の入居の状況(令和2年度末現在)

(単位:上段(戸)、下段(%) )
県(事業主体) 整備済戸数 管理戸数
入居済み
A
入居手続中
B
入居済み又
は入居手続中
A+B
入居者未定
岩手県(1県及び14市町村) 5,833 5,826 5,268 5 5,273 553
90.4 0.0 90.5 9.4
宮城県(21市町) 15,823 15,802 15,112 62 15,174 628
95.6 0.3 96.0 3.9
福島県(1県及び21市町村) 7,997 7,961 6,858 105 6,963 998
86.1 1.3 87.4 12.5
計(2県及び56市町村) 29,653 29,589 27,238 172 27,410 2,179
92.0 0.5 92.6 7.3
  • (注) 管理戸数及びその内訳には、公営住宅法(昭和26年法律第193号)に基づいて譲渡するなどした戸数を除外したものを計上している。

上記のように、各事業主体が様々な対策を講じているにもかかわらず、空室が解消しない場合の解消策として、事業主体の判断により、公営住宅法の入居者資格に係る規定で定める災害発生の日から3年間を経過した後は、災害公営住宅に入居を希望する被災者の入居に支障が生じない範囲で、被災者以外の者の入居を可能とする取扱い(以下、この取扱いを「一般公営住宅化」という。)があり、東北3県は、それぞれ一般公営住宅化に係る対応方針等を策定している。

東北3県において一般公営住宅化された災害公営住宅への被災者以外の者の入居戸数の状況をみると、2年度末現在で、図表3-2-3のとおり、全29,589戸のうち2,613戸(8.8%)となっている。事業主体別にみると、岩手県では1県及び14市町村のうち1県及び11市町村(戸数ベースで9.0%)、宮城県では21市町のうち18市町(同11.7%)、福島県では1県及び21市町村のうち9市町村(同2.8%)において、被災者以外の者が入居している災害公営住宅がある。

図表3-2-3 一般公営住宅化された災害公営住宅への入居状況(令和2年度末現在)

(単位:戸、% )
県(事業主体) 管理戸数
A
被災者以外の者が入居
している災害公営住宅
がある事業主体
被災者以外の者の
入居戸数
B
被災者以外の者が
入居している割合
B/A
岩手県(1県及び14市町村) 5,826 1県及び11市町村 527 9.0
宮城県(21市町) 15,802 18市町 1,860 11.7
福島県(1県及び21市町村) 7,961 9市町村 226 2.8
計(2県及び56市町村) 29,589 1県及び38市町村 2,613 8.8
  • (注) 国土交通省から提出を受けた資料を基に会計検査院が作成した。

c 防災集団移転促進事業等による宅地の整備の状況

東北3県の市町村は、防災集団移転促進事業により津波等の被災のおそれのない高台等、漁業集落防災機能強化事業により地盤をかさ上げした被災地の漁業集落及び都市再生区画整理事業により被災した市街地において、宅地等の整備を行っており、一部の地区では他の事業も合わせて実施している。これらの各事業で実施された宅地の整備状況をみると、図表3-2-4のとおり、防災集団移転促進事業では、25市町村の314地区において計画区画数8,323区画全てが完成し、これらの地区に係る整備額は2667億余円となっている。そして、漁業集落防災機能強化事業では、13市町村の36地区において計画区画数515区画全てが完成し、これらの地区に係る整備額は183億余円、都市再生区画整理事業では、18市町村の50地区において計画区画数11,987区画全てが完成し、これらの地区に係る整備額は5253億余円となっている。

上記の防災集団移転促進事業、漁業集落防災機能強化事業及び都市再生区画整理事業における完成率(計画区画数に対する整備済区画数の割合)をみると、平成27年度末現在は、それぞれ73.3%、55.2%、16.3%であったものが、令和2年度末現在は、全て100.0%となっている。

図表3-2-4 宅地の整備状況(令和2年度末現在)

(単位:地区、区画、百万円、%)
事業名 県(事業主体) 計画 整備済 完成率
B/A
<参考>
平成27年度末
現在の完成率
地区数 区画数
A
地区数 区画数
B
整備額
防災集団移転
促進事業
岩手県(7市町村) 88 2,090 88 2,090 70,382 100.0 63.4
宮城県(12市町) 185 5,600 185 5,600 184,165 100.0 74.6
福島県(6市町) 41 633 41 633 12,208 100.0 94.1
計(25市町村) 314 8,323 314 8,323 266,757 100.0 73.3
漁業集落
防災機能強化事業
岩手県(10市町村) 32 475 32 475 16,632 100.0 56.9
宮城県(3市町) 4 40 4 40 1,699 100.0 27.5
計(13市町村) 36 515 36 515 18,331 100.0 55.2
都市再生
区画整理事業
岩手県(7市町村) 17 4,990 17 4,990 286,843 100.0 14.4
宮城県(8市町) 26 5,340 26 5,340 209,999 100.0 21.3
福島県(3市町) 7 1,657 7 1,657 28,482 100.0 8.8
計(18市町村) 50 11,987 50 11,987 525,324 100.0 16.3
  • (注) 一部の地区においては、他の事業も合わせて実施されているため、他の事業の整備額が含まれている。

d 防災移転促進事業等による宅地の分譲の状況

防災集団移転促進事業及び漁業集落防災機能強化事業により整備された宅地の分譲の状況をみると、図表3-2-5のとおり、防災集団移転促進事業においては、整備された宅地8,323区画のうち8,022区画(96.3%)が分譲済み又は分譲手続中であり、301区画(3.6%)が分譲未定で空き区画となっており、漁業集落防災機能強化事業においては、整備された宅地515区画のうち506区画(98.2%)が分譲済み又は分譲手続中であり、9区画(1.7%)が分譲未定で空き区画となっている。

また、都市再生区画整理事業においては、換地処分に伴い発生する土地(注26)を事業主体が取得し、公共施設の用地として利用したり、住宅用地として分譲して分譲収入を当該事業費に充てたりしている(以下、住宅用地として分譲するために事業主体が取得した土地を「保留地」という。)。都市再生区画整理事業により整備された宅地のうち保留地の分譲の状況をみると、図表3-2-5のとおり、整備された保留地1,047区画のうち1,043区画(99.6%)が分譲済みであり、4区画(0.3%)が分譲未定で空き区画となっている。

空き区画数についてみると、防災集団移転促進事業が最も多くなっていて、県別では岩手県で84区画、宮城県で190区画、福島県で27区画となっている。

空き区画が生じている理由について、事業主体によれば、時間の経過とともに住民の意向に変化が生じたことなどによるとしている。宅地が分譲未定で空き区画となっている場合には、各事業主体は、移転対象者以外の者を対象に加えて再募集を行うなどして、空き区画の解消に取り組んでいるとしている。

(注26)
換地処分に伴い発生する土地  都市再生区画整理事業において、区画整理前の土地の所有者に対して、当該土地に代えて整備された区画整理後の土地を帰属させることを換地処分という。原則として、区画整理前後の当該土地の面積には開差が生ずる(区画整理後の土地の面積の方が小さくなる。)。この開差分の面積の土地が換地処分に伴い発生する土地となる。

図表3-2-5 復興期間(当初)に整備された宅地の分譲の状況(令和2年度末現在)

(単位:上段(区画)、下段(%) )
事業名 県(事業主体) 整備済区画数
換地処分に
よる区画数
保留地区
画数
分譲済み
A
分譲手続中
B
分譲済み等
A+B
分譲未定
防災集団移転
促進事業
岩手県(7市町村) 2,090 1,998 8 2,006 84
95.5 0.3 95.9 4.0
宮城県(12市町) 5,600 5,404 6 5,410 190
96.5 0.1 96.6 3.3
福島県(6市町) 633 606 - 606 27
95.7 - 95.7 4.2
計(25市町村) 8,323 8,008 14 8,022 301
96.2 0.1 96.3 3.6
漁業集落
防災機能強化事業
岩手県(10市町村) 475 461 5 466 9
97.0 1.0 98.1 1.8
宮城県(3市町) 40 39 1 40 -
97.5 2.5 100.0 -
計(13市町村) 515 500 6 506 9
97.0 1.1 98.2 1.7
都市再生
区画整理事業
岩手県(7市町村) 4,990 4,911 79 79 - 79 -
100.0 - 100.0 -
宮城県(8市町) 5,340 4,476 864 860 - 860 4
99.5 - 99.5 0.4
福島県(3市町) 1,657 1,553 104 104 - 104 -
100.0 - 100.0 -
計(18市町村) 11,987 10,940 1,047 1,043 - 1,043 4
99.6 - 99.6 0.3
  • (注) 防災集団移転促進事業においては、分譲のほかに貸与も行われており、これに係る区画数についても「分譲済み」及び「分譲手続中」に含めている。

(イ) 都市再生区画整理事業の実施状況等

東日本大震災からの復興に当たっては、津波被害にあった住民の安全・安心を確保するために、既存の土地区画整理事業は、復興交付金事業の都市再生区画整理事業(緊急防災空地整備事業、都市再生事業計画案作成事業、被災市街地復興土地区画整理事業(以下「復興土地区画整理事業」という。)及び効果促進事業)として実施されることとなった。

都市再生区画整理事業は、図表3-2-6のとおり、22市町村で246事業実施されており、廃止となった8事業を除くと2年度末までの完了事業数が217事業、事業完了率は91.1%となっている。都市再生区画整理事業のうち事業の中心である復興土地区画整理事業の事業完了率は86.1%、計画事業費4341億余円のうち支出済事業費は3933億余円であり、事業費進捗率は90.5%となっている。

図表3-2-6 都市再生区画整理事業の実施状況(令和2年度末現在)

(単位:市町村、件、%、百万円)
都市再生区画整理事業(D-17)
において実施している事業名
事業実施
市町村数
計画事業数
A
令和2年度末現在の状況 事業完了率
B/(A-C)
計画事業費
D
支出済事業費
E
事業費進捗率
E/D
完了
B
継続 廃止
C
緊急防災空地整備事業 12 26 21 5 100.0 7,002 7,002 100.0
都市再生事業計画案作成事業 21 58 58   - 100.0 13,091 13,091 100.0
復興土地区画整理事業 21 66 56 9 1 86.1 434,171 393,333 90.5
効果促進事業 16 96 82 12 2 87.2 56,654 53,636 94.6
22 246 217 21 8 91.1 510,919 467,064 91.4
  • (注) 事業実施市町村数の計は、純計であるため、事業数の計に一致しない。

復興土地区画整理事業により整備される土地の用途については、事業を実施した区域を、住宅が立地する地区(以下「居住系」という。)、商工業施設等が立地する地区(以下「産業系」という。)及び行政機関、消防等防災施設、公園等が立地する地区(以下「公共系」という。)に区分することができる。

そこで、整備された面積に対する利用されている土地(駐車場等の一時的な利用も含む。)の面積の割合(以下「利用率」という。)等をみると、図表3-2-7のとおり、整備された面積は、21市町村計で居住系が471ha、産業系が435ha、公共系が408haであり、それぞれの利用率は69.2%、73.7%、96.8%となっている。

居住系及び産業系の利用率が公共系の利用率と比較して低くなっている理由について、事業主体によれば、公共系の土地は、公園の整備等、一定程度の利用を計画どおりに見込むことができる一方、居住系及び産業系の土地は、事業の長期化等から所有者の意向が変化して、他の地域で住宅を再建したことなどにより利用されなくなるためなどとしている。

図表3-2-7 市町村別・土地用途別の復興土地区画整理事業による土地の利用状況(令和2年度末現在)

(単位:ha、%)
県名 市町村名
全体の整備面積
A
居住系 産業系 公共系
整備面積
B
利用面積
C
利用率
C/B
整備面積
D
利用面積
E
利用率
E/D
整備面積
F
利用面積
G
利用率
G/F
岩手県(7市町村) 野田村 12 3 3 100.0 5 5 100.0 0 0 100.0
宮古市 42 8 4 48.2 15 9 60.6 5 5 97.8
山田町 51 16 9 56.4 13 6 51.3 2 2 100.0
大槌町 52 17 11 65.8 14 10 68.4 5 4 98.0
釜石市 107 44 21 48.8 21 14 65.2 6 6 100.0
大船渡市 33 8 7 85.6 12 10 84.6 2 2 100.0
陸前高田市 298 71 13 19.0 24 9 38.0 98 88 89.9
599 170 71 41.7 108 66 61.2 121 111 91.6
宮城県(11市町) 気仙沼市 82 26 14 56.3 29 13 45.3 17 17 100.0
南三陸町 60 31 17 54.6 4 4 100.0
石巻市 335 118 104 87.8 86 56 65.0 59 59 100.0
女川町 218 23 23 100.0 21 21 100.0 49 49 100.0
東松島市 164 38 38 100.0 28 28 100.0 57 57 100.0
塩竈市 5 1 1 100.0 2 2 100.0 0 0 100.0
七ヶ浜町 26 12 9 76.9 4 3 67.6 3 3 100.0
多賀城市 7 2 1 57.3 1 1 100.0 2 2 100.0
仙台市 92 69 60 85.9 6 3 58.3
名取市 140 23 23 100.0 28 28 100.0 62 62 100.0
岩沼市 5 4 4 100.0 0 0 100.0
1,139 246 216 87.9 310 238 76.8 262 259 98.9
福島県(3市町) 新地町 23 7 7 100.0 4 4 100.0 4 4 100.0
いわき市 91 37 23 62.4 9 9 100.0 18 18 100.0
富岡町 22 10 8 79.6 3 3 86.2 0 0 100.0
137 54 38 70.6 17 17 97.1 24 24 100.0
合計(21市町村) 1,876 471 326 69.2 435 321 73.7 408 395 96.8
  • 注(1) 用途別の整備面積には、道路、水路等の用地に係る整備面積を含めていないため、各用途別の整備面積を集計しても全体の整備面積と一致しない。
  • 注(2) 利用率は、表示単位未満を切り捨てる前の整備面積に対する利用面積の割合であり、計算しても一致しないものがある。

ウ 産業再生に関する復旧・復興事業の実績及び成果

復興基本方針では、地域経済活動の再生に関する施策として、経営活動を再開・再建するための施設等の復旧、企業の立地環境を改善するための国内立地補助の措置、新産業の創出及び雇用創出等の取組の促進等、広範多岐にわたる支援を実施するとしている。

復興期間(当初)における各種産業に係る施設等の復旧・復興、企業立地支援等の地域経済活動の再生に関する復旧・復興事業の状況は次のとおりである。

(ア) 各種産業に係る施設等の復旧・復興事業の状況

a 農水産業に係る施設等の復旧・復興の状況

2年度末現在の東北3県における農水産業に係る施設等の復旧・復興の状況をみると、図表3-3-1のとおり、農地は計画施設数38,713haのうち38,038haが完成(完成率98.2%)し、農業用施設(用排水機場、水路、農道等)は計画施設数4,426施設のうち4,388施設が完成(同99.1%)している。また、漁港施設(岸壁、桟橋等)は計画施設数2,711施設のうち2,607施設が完成(同96.1%)し、水産業共同利用施設(荷さばき所、製氷、冷凍両施設等)は計画施設数4,999施設のうち4,982施設が完成(同99.6%)している。そして、事業費進捗率は農地が94.8%、農業用施設が97.8%、漁港施設が92.9%、水産業共同利用施設が97.2%となっており、農水産業に係る施設等の復旧・復興事業はおおむね完了している。

図表3-3-1 農水産業に係る施設等の復旧・復興の状況(令和2年度末現在)

(単位:%、百万円)
施策項目
(単位)
県名 施設数等 事業費
計画施設数
A
完成施設数
B
完成率
B/A
計画事業費
C
支出済事業費
D
事業費進捗率
D/C
完成分事業費
国庫補助金等 その他

農地
(ha)
岩手県 987 987 100.0 17,530 17,529 99.9 14,129 3,400 17,529
宮城県 19,367 19,367 100.0 149,762 146,305 97.6 118,139 28,166 146,305
福島県 18,358 17,682 96.3 55,016 47,073 85.5 41,664 5,409 47,073
38,713 38,038 98.2 222,309 210,908 94.8 173,932 36,976 210,908
農業用施設
(施設)
岩手県 518 518 100.0 17,713 17,713 100.0 11,781 5,932 17,713
宮城県 2,381 2,379 99.9 72,546 70,685 97.4 59,286 11,328 70,614
福島県 1,527 1,491 97.6 52,094 50,892 97.6 41,160 9,732 50,892
4,426 4,388 99.1 142,355 139,291 97.8 112,227 26,993 139,220


漁港施設
(施設)
岩手県 1,040 1,016 97.6 131,486 130,189 99.0 126,253 3,935 130,189
宮城県 1,327 1,247 93.9 212,864 187,683 88.1 155,973 2,917 158,891
福島県 344 344 100.0 30,361 30,361 100.0 24,998 5,362 30,361
2,711 2,607 96.1 374,711 348,233 92.9 307,224 12,216 319,441
水産業共同
利用施設
(施設)
岩手県 1,560 1,559 99.9 121,405 120,075 98.9 87,369 32,706 120,075
宮城県 3,331 3,330 99.9 298,125 289,752 97.1 187,272 81,943 269,215
福島県 108 93 86.1 14,036 11,822 84.2 6,121 5,700 11,822
4,999 4,982 99.6 433,566 421,649 97.2 280,763 120,350 401,113

b 中小企業者等の事業に係る施設等の復旧状況

東日本大震災により被災した中小企業者等の事業に係る施設の復旧について、国は、中小企業組合等共同施設等災害復旧費補助金(以下「グループ補助金」という。)を創設して支援している。グループ補助金は、復興を牽(けん)引する役割を担い得る地域経済の中核を形成する中小企業等グループが復興事業計画を作成し、県の認定を受けた場合に、施設等の復旧等を支援するものである。

国は、グループ補助金による事業のために復興期間(当初)に計4744億余円の予算を措置している。このうち、東北3県における執行実績をみると、図表3-3-2のとおり、グループ補助金による事業に要する総事業費は計5963億余円であり、その負担の内訳は国庫補助金2730億余円、県補助金1395億余円、事業者負担額1837億余円となっている。また、2年度末現在、交付決定を受けた延べ12,505事業者のうち延べ9,148事業者が事業を完了しているが、資金や用地の確保が困難となったことなどから延べ569事業者が事業を廃止し又は取り消しているほか、延べ2,788事業者が事業を延期するなどしている。集中復興期間と復興・創生期間とを比較すると、国庫補助金交付額、事業を完了した事業者数共に、集中復興期間における実績が約8割を占めている。

図表3-3-2 グループ補助金による事業の実績(令和2年度末現在)

(単位:百万円、事業者)
県名
総事業費 国庫補助金 県補助金 事業者負担額 交付決定
事業者数
事業完了 事業の
廃止・取消
事業延期等
集中復興期間計 480,878 219,289 112,646 148,943 8,945 7,256 215 1,474
岩手県 96,359 43,257 21,630 31,470 1,372 996 35 341
宮城県 258,443 120,645 63,322 74,475 4,017 3,043 95 879
福島県 126,075 55,385 27,692 42,996 3,556 3,217 85 254
復興・創生期間計 115,429 53,740 26,868 34,820 3,560 1,892 354 1,314
岩手県 20,453 9,243 4,619 6,589 781 399 61 321
宮城県 67,576 31,583 15,791 20,201 1,847 911 143 793
福島県 27,399 12,913 6,456 8,029 932 582 150 200
596,308 273,029 139,514 183,764 12,505 9,148 569 2,788
  • 注(1) 事業者数は、延べ数である。
  • 注(2) 平成27年度末までに実績が確定した第1次公募分から第13次公募分までを集中復興期間計、第14次公募分から第24次公募分までのうち、令和2年度末までに実績が確定したものを復興・創生期間計として集計した。
  • 注(3) 総事業費及び交付決定事業者数は3県が把握しているものを集計している。

また、東北経済産業局が毎年実施している東日本大震災グループ補助金交付先アンケート調査(3年度は東日本大震災グループ補助金フォローアップ)によると、アンケートに回答した事業者のうち売上又は雇用人数が震災前と同水準に回復し又は増加した事業者の割合は、元年6月の調査(アンケートの回答率60.2%)では売上で約46%、雇用人数で約57%となっていたが、3年8月の調査(同58.7%)では新型コロナウイルス感染症の影響等により、売上で約40%、雇用人数で約56%となっている。

(イ) 企業立地支援による復旧・復興の状況

東日本大震災を契機として、生産拠点の海外移転等による産業の空洞化が加速するおそれがあることなどから、被災地における企業の立地環境を改善し、雇用を創出することなどを目的として、復興関連基金事業において津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金による事業(以下「津波・原子力災害立地補助事業」という。)、地域経済産業復興立地推進事業費補助金による事業(以下「ふくしま立地支援事業」という。)、自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金による事業(以下「自立・帰還支援立地補助事業」という。)等が実施されている。

各事業の交付要綱等によれば、各事業のいずれも新たに地元からの雇用を確保することなどが要件とされていて、工場等の操業後10年以内に事業を休止等したときは、基金団体等は事業者に補助金の返還を求めることができるとされており、各事業は被災地における継続的な雇用創出を図るものとなっている。そして、基金団体は、交付要綱等に基づき、基金事業完了後5年間又は10年間の雇用創出の状況について、事業者から毎年報告を受けることとなっている。

国庫補助金の交付、事業者の採択、交付決定等の状況をみると、図表3-3-3のとおり、2年度末現在、津波・原子力災害立地補助事業は、国から基金団体に対する基金造成に係る国庫補助金交付額2090億余円、基金団体等における採択額3245億余円、交付決定額1800億余円、基金の取崩額1134億余円となっている。ふくしま立地支援事業は、基金造成に係る国庫補助金交付額2102億余円、採択額3562億余円、交付決定額1933億余円、基金の取崩額1938億余円となっている。自立・帰還支援立地補助事業は、基金造成に係る国庫補助金交付額673億余円、採択額796億余円、交付決定額497億余円、基金の取崩額139億余円となっている。津波・原子力災害立地補助事業及び自立・帰還支援立地補助事業については、交付決定額と基金の取崩額との開差額が大きくなっているが、これは事業者が交付決定を受けてから工場の新設等の事業を完了するまでに複数年を要する場合が多いことなどによるものである。また、ふくしま立地支援事業については、2年度をもって当該事業の新規受付が終了し、採択件数に対して74.0%の事業が完了しており、基金の取崩額が基金造成に係る国庫補助金交付額の9割以上となっている。

そして、事業を完了した事業者に係る新規地元雇用者数は、津波・原子力災害立地補助事業が3,558人、ふくしま立地支援事業が6,851人、自立・帰還支援立地補助事業が249人、計10,658人となっている。

図表3-3-3 復興関連基金事業による企業立地支援の状況(令和2年度末現在)

(単位:市町村、百万円、事業者、%、人)
事業名 県名 対象市町村数
注(1)
基金造成に係る
国庫補助金交付額
採択事業者立地
予定市町村数
注(1)
事業者数
採択
A
交付決定 辞退等
B
辞退率
B/A
完了
C
完了率
C/A
津波・原子力災害
立地補助事業
岩手県 12 209,000 9 71 46 34 47.8 25 35.2
宮城県 15 14 260 146 126 48.4 87 33.4
福島県 59 43 397 223 188 47.3 157 39.5
その他2県 14 12 120 71 53 44.1 53 44.1
100 78 848 486 401 47.2 322 37.9
ふくしま立地
支援事業
福島県 59 210,224 49 687 509 86 12.5 509 74.0
自立・帰還支援
立地補助事業
福島県 15 67,301 11 133 83 22 16.5 36 27.0
合計 100 486,525 89 1,668 1,078 509 30.5 867 51.9
事業名 県名 採択額等 基金の取崩額
注(2)
新規地元雇用者数
採択額
D
交付決定額
E
左の割合
E/D
採択事業者に
係る見込数
注(3)
F
完了事業者
に係る実績数
G
左の割合
G/F
津波・原子力災害
立地補助事業
岩手県 23,747 15,402 64.8 113,405 705 252 35.7
宮城県 110,499 48,337 43.7 3,137 917 29.2
福島県 156,641 97,844 62.4 4,476 1,804 40.3
その他2県 33,687 18,465 54.8 1,616 585 36.2
324,575 180,049 55.4 9,934 3,558 35.8
ふくしま立地
支援事業
福島県 356,254 193,383 54.2 193,886 6,769 6,851 101.2
自立・帰還支援
立地補助事業
福島県 79,682 49,792 62.4 13,999 1,133 249 21.9
合計 760,511 423,224 55.6 321,291 17,836 10,658 59.7
  • 注(1) 対象市町村数及び採択事業者立地予定市町村数の合計は、純計である。
  • 注(2) 基金の取崩額には基金団体における管理費が含まれている。
  • 注(3) 採択時の新規地元雇用者数には未完了の事業者及び辞退済みの事業者に係る人数が含まれているため、「左の割合 G/F」が100%未満の事業がある。

各事業を合わせた採択事業者数1,668事業者のうち、事業を完了した事業者は867事業者であり、採択事業者数に対する完了事業者数の割合は51.9%となっている。一方、辞退等事業者数は509事業者であり、採択事業者数に対する辞退等事業者数の割合は30.5%となっている。

経済産業省によれば、多くの辞退者等が生じているのは、工場建設資材価格等の高騰等による事業計画の見直し、用地交渉の不調、新規地元雇用者確保の難航等の理由によるものであるとしている。このような状況の中、基金団体等は、事業者を対象に専門家によるセミナーや個別アドバイザリー事業、個別相談会等を行い、事業者が基金事業を継続し、新規地元雇用者数を確保できるよう支援している。

また、復興庁及び経済産業省は、各事業の行政事業レビューシートや基金シートにおいて、成果の指標を事業者の採択時又は交付決定時における見込みの新規地元雇用者数に設定している。そこで、新規地元雇用者数について、採択事業者に係る見込数と2年度末現在における完了事業者に係る実績数とを比較すると、図表3-3-3のとおり、両者に開差が生じている事業があり、これは事業を実施中で完了していない事業者や、採択後又は交付決定後に事業を辞退した事業者があることなどのためである。したがって、被災地における企業の立地環境を改善し、新規雇用を創出することにより、復興を進めていくためにも、経済産業省及び基金団体等は、各事業者が事業を実施して新規地元雇用者数を確保できるよう引き続き支援していく必要がある。

そして、経済産業省及び基金団体によると、事業完了後の新規地元雇用者の状況については、各事業者から毎年報告を受け、必要に応じて助言を行うなどして雇用者数が確保されるよう努めているとしており、事業完了後も継続して雇用者数が確保されることにより被災地の復興に資するよう引き続き事業者に対する助言等に努める必要がある。

エ 被災者支援に関する復旧・復興事業の実績及び成果

被災者支援について、国は、28年基本方針を踏まえ平成28年度に支援交付金を創設し、復興・創生期間に被災者支援総合交付金事業を実施しており、令和3年度以降についても、3年基本方針を踏まえ、継続して実施している。

東北3県及び管内市町村が事業実施主体として実施した被災者支援総合交付金事業の復興・創生期間における交付額は、3(2)エのとおり444億余円となっており、実施された相談活動及び交流活動の実績等は次のとおりである。

(ア) 相談活動の実施回数

被災者支援総合交付金事業においては、仮設住宅等の訪問巡回、相談支援及び情報提供等の相談活動が避難先や被災地に居住する被災者を対象として実施されている。

その実施回数の推移についてみると、図表3-4-1のとおり、全ての事業で減少傾向にある。特に、活動番号1-3(住宅・生活再建支援事業における転居先の情報提供等の情報提供に関する活動)や、活動番号12-1(仮設住宅サポート拠点運営事業における仮設住宅の居住者等を対象としたサービス拠点運営に係る活動)の実施回数が大きく減少しているが、いずれも、東北3県における仮設住宅の供用数減少に伴うものである。

相談活動の実施回数については減少傾向にあるが、相談内容については、事業実施主体によると、東日本大震災発生からの時間経過に伴い、被災者の悩みが多様化、複雑化し、また、避難指示・解除区域市町村では、仮設住宅から恒久住宅への転居が進捗した時期において、転居先コミュニティとの接し方、転居後の生活に係る内容が増えたとしている。そして、避難等で家族構成が変化したことなどにより、支援を必要とする高齢者世帯や単身者世帯等が増加していることから、これらの者の孤独死を未然に防ぐなどのためにも、復興・創生期間後においても、引き続き相談活動の実施が必要であるとしている。

図表3-4-1 事業別の相談活動の実施回数(平成28年度~令和2年度)

(単位:回)
所管 事業番号・事業名 活動番号 活動の実施回数
平成
28年度
29年度 30年度 令和
元年度
2年度
復興庁 被災者支援総合事業
1 住宅・生活再建支援事業 1-1 10,657 14,221 13,598 8,188 6,904
1-2 5,296 3,323 2,435 1,686 1,416
1-3 75,618 1,404 338 150 39
4 被災者生活支援事業 4-1 482,795 407,211 378,752 243,659 216,769
厚生労働省 10 被災者見守り・相談支援事業(地方自治体等実施分) 10-1 1,381,046 1,009,618 670,168 561,587 458,658
12 仮設住宅サポート拠点運営事業 12-1 52,224 38,186 23,888 791 195
13 被災地健康支援事業 13-1 270 194 166 70 27
14 被災者の心のケア支援事業
注(3)
14-1 - - - 21,807 20,343
被災した子どもの健康・生活対策等総合支援事業
15 子ども健やか訪問事業 15-1 973 426 438 426 335
  • 注(1) 東北3県及び管内市町村が事業実施主体として実施した事業について集計している。
  • 注(2) 事業番号及び活動番号は、「別図表7 被災者支援総合交付金事業の概要」と対応している。
  • 注(3) 被災者の心のケア支援事業は、令和元年度に交付対象事業に追加されている。

(イ) 交流活動の実施回数

被災者支援総合交付金事業においては、災害公営住宅等内の住民同士のコミュニティ形成や、当該住宅等の住民と住宅周辺の既存の地域コミュニティとの融合等、住宅移転後の円滑なコミュニティ形成を図ることなどを目的としたイベント等の交流活動が避難先や被災地に居住する被災者等を対象として実施されている。

その実施回数についてみると、図表3-4-2のとおり、「心の復興」事業等の複数の事業について、元年度から2年度で大きく減少しているが、事業実施主体によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりイベントの小規模化や中止等の影響があったためとしている。

交流活動の実施回数は、複数の事業について元年度から2年度で大きく減少しているが、事業実施主体によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により住民同士の交流の機会が減少し、被災者等の心身の弱体化やコミュニティの衰退が生じていることや、避難指示が解除された地区において、地域住民同士のつながりの修復が必要であるという課題が残っていることなどから、復興・創生期間後も引き続き交流活動の実施が必要であるとしている。

図表3-4-2 事業別の交流活動の実施回数(平成28年度~令和2年度)

(単位:回)
所管 事業番号・事業名 活動番号 活動の実施回数
平成
28年度
29年度 30年度 令和
元年度
2年度
復興庁 被災者支援総合事業
2 コミュニティ形成支援事業 2-1 3,682 4,707 4,320 3,326 3,238
3 「心の復興」事業 3-1 1,738 1,712 2,013 392 135
6 県外避難者支援事業 6-1 62 37 34 93 32
6-2 11 8 9 11 7
文部科学省 7 仮設住宅の再編等に係る
子供の学習支援による
コミュニティ復興支援事業 注(3)
7-1 - 39,398 47,014 44,680 25,591
厚生労働省 被災した子どもの健康・生活対策等総合支援事業
17 遊具の設置や子育てイベントの開催 17-1 250 188 159 117 60
18 親を亡くした子ども等への相談・援助事業 18-1 555 418 446 273 155
  • 注(1) 東北3県及び管内市町村が事業実施主体として実施した事業について集計している。
  • 注(2) 事業番号及び活動番号は、「別図表7 被災者支援総合交付金事業の概要」と対応している。
  • 注(3) 仮設住宅の再編等に係る子供の学習支援によるコミュニティ復興支援事業は、平成29年度に交付対象事業に追加されている。

(ウ) 交流活動の参加者等数

各事業実施主体は、各種イベント等の交流活動を実施し、「心の復興」事業においては、被災者自身が参画し、活動する機会の創出を通じて、被災者が、他者とのつながりや、生きがいをもって前向きに生活することを支援するほか、コミュニティ形成と一体となった被災者の心身のケア等の取組の促進を図るなどしており、被災者や地域住民が参加している。

交流活動の参加者等数についてみると、図表3-4-3のとおり、交流活動の実施回数と同様に複数の事業について、元年度から2年度で大きく減少している。

図表3-4-3 事業別の交流活動の参加者等数(平成28年度~令和2年度)

(単位:人)
所管 事業番号・事業名 活動番号 活動の実施回数
平成
28年度
29年度 30年度 令和
元年度
2年度
復興庁 被災者支援総合事業
2 コミュニティ形成支援事業 2-1 45,337 51,373 54,166 42,586 28,082
3 「心の復興」事業 3-1 82,534 86,015 81,638 79,309 43,460
6 県外避難者支援事業 6-1 1,121 704 537 1,074 205
6-2
注(3)
文部科学省 7 仮設住宅の再編等に係る
子供の学習支援による
コミュニティ復興支援事業 注(4)
7-1 - 796,035 707,509 474,362 440,726
厚生労働省 被災した子どもの健康・生活対策等総合支援事業
17 遊具の設置や子育てイベントの開催 17-1 30,457 23,722 21,278 15,129 4,279
18 親を亡くした子ども等への相談・援助事業 18-1 15,568 8,267 17,833 7,429 1,411
  • 注(1) 東北3県及び管内市町村が事業実施主体として実施した事業について集計している。
  • 注(2) 事業番号及び活動番号は、「別図表7 被災者支援総合交付金事業の概要」と対応している。
  • 注(3) 活動番号6-2(県外避難者支援事業における県外避難者の避難元自治体の現状の理解促進や、帰還後の人的なネットワークの形成を支援するための交流・相談会等の開催に関する活動)については、各種イベントの参加者数について把握されていなかった。
  • 注(4) 仮設住宅の再編等に係る子供の学習支援によるコミュニティ復興支援事業は、平成29年度に交付対象事業に追加されている。

(エ) 第2期復興・創生期間に向けての被災者支援総合交付金事業に関する取組

被災者支援総合交付金事業を各地域の復興の進捗状況や被災者が直面している課題に対応したものとするためには、事業実施主体による被災者の要望や被災者支援に関する課題の適切な把握、所管省庁による事業実施主体が抱える被災者支援に関する課題の把握等が必要である。

そこで、被災者の要望等の把握状況について、事業実施主体に確認したところ、多くの事業実施主体においてアンケートを実施するなどして被災者の要望を把握しており、また、被災者支援に関する課題については、多様で複雑化した悩みを抱えた被災者の心のケアのための人材の確保、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等に伴うコミュニティの衰退、被災者の孤独死の増加等があるとしていた。そして、被災者支援に関する課題に対応するために、事業実施主体では、引き続き被災者支援総合交付金事業において相談活動、交流活動等を実施することを要望している。

事業実施主体が抱える被災者支援に関する課題について、所管省庁は、事業実施主体との定期的な連絡会等において説明を受けるなどして把握しているとしている。そして、3年度以降も被災者支援総合交付金事業を継続するとともに、随時、事業実施主体に対して事業実施に当たっての具体的な情報提供、助言等を行ったり、必要に応じて、被災者支援実施要綱等の改正を行ったりして対応しており、3年度の改正においては、「被災者の心のケア支援事業」の事業内容を追加するなどしている。

被災者支援については、3年基本方針において、東日本大震災の影響によりケアが必要な高齢者等の被災者に対する心のケア等の被災者支援が第2期復興・創生期間の取組事項として掲げられており、支援交付金の東北3県及び管内市町村以外の事業実施主体分を含めた3年度の予算額も125億余円となっていて、引き続き被災者支援総合交付金事業の実施が見込まれる。

したがって、所管省庁は、被災者支援総合交付金事業について、引き続き、事業実施主体における被災者支援に関する課題等を踏まえて情報提供、助言等を行うとともに、被災者や事業実施主体からの要望も踏まえつつ、着実に実施されるよう事業内容を検討するなどの取組を進めていくことが必要である。

オ 住民の帰還等の状況等

28年基本方針によれば、「今後の復興・創生に当たっては、「まちに人が戻る」ことを目指すのみならず、被災地外からも多くの方々が訪問し、あるいは移り住むような、魅力あふれる地域を創造することを目指す」とされている。復旧・復興事業の効果については、東北3県の人口変動が過疎化等の影響も受けていることを踏まえると、避難者数の推移、福島県内の避難指示・解除区域市町村の人口の推移及び帰還者数により単純に測ることはできないが、上記の「まちに人が戻る」ことなどを定量的に測る指標の一つとなる。

そこで、復興期間(当初)における東北3県の避難者数の状況、福島県における住民の帰還等の状況等についてみると次のとおりである。

(ア) 東北3県における避難者数の状況

復興庁が公表している「復興の現状と取組」(令和3年3月10日)等において、東日本大震災発生直後の避難者数が約47万人に及ぶとされた中で、総務省は、被災自治体が避難した者に対して各種通知等を行うため、避難した者の所在地等の情報を把握し、集約する仕組みが必要であるとして、平成23年4月に全国避難者情報システムの構築について、各都道府県に対して協力を依頼する旨の通知を発出している。

同システムは、避難者の任意により避難先市町村等に提供された避難者の氏名、生年月日、住所等の情報(以下「避難者情報」という。)を、避難先市町村がLGWAN(注27)を介して避難元県や避難元市町村に提供するもので、復興庁が設置された24年2月以降、復興庁は、同システムにより避難先市町村が把握している避難者数を調査し、これを「全国の避難者の数」として復興庁のウェブサイト等で公表している。そして、復興庁が上記の調査について26年8月4日付けで各都道府県の避難者数調査担当者宛てに発した文書によれば、避難者とは、東日本大震災をきっかけに住居の移転を行い、その後、前の住居に戻る意思を有する者とするとされている。また、住民票を移したことのみをもって避難終了とは整理しないものとするが、避難終了の意思を確認した場合は、避難終了として整理するなどとされている。

そして、上記のような整理の下にシステム上で把握され、復興庁が公表している避難者数のうち、東北3県における県外避難者数は図表3-5-1のとおりとなっていて、令和3年3月10日現在では岩手県911人、宮城県3,670人、福島県28,372人、計32,953人となっている。

(注27)
LGWAN  地方公共団体内のネットワークを相互に接続する総合行政ネットワーク

図表3-5-1 復興庁が公表している東北3県における県外避難者数

(単位:人)
年月日 岩手県 宮城県 福島県
平成24年 3月22日現在 1,574 8,494 62,700 72,768
25年 3月 7日現在 1,603 7,945 56,920 66,468
26年 3月13日現在 1,477 7,012 47,683 56,172
27年 3月12日現在 1,566 7,146 46,902 55,614
28年 3月10日現在 1,426 6,333 42,801 50,560
29年 3月13日現在 1,310 5,388 39,218 45,916
30年 3月15日現在 1,217 4,865 33,976 40,058
31年 3月11日現在 1,007 4,166 32,476 37,649
令和 2年 3月11日現在 961 3,908 30,730 35,599
3年 3月10日現在 911 3,670 28,372 32,953
<参考>  4年 8月 1日現在 649 1,405 22,727 24,781
  • 注(1) 避難者数は各県の自県民の県外避難者数である。
  • 注(2) 復興庁が公表している宮城県の県外避難者数は、同県が把握している県外避難者数と異なっている。

ただし、同システムにより提供された避難者情報は、原則として避難者自身が申出等を行わない限り変更されないため、避難者が避難を終了したり、転居したりなどしたのに申出等が行われない場合、避難者の実態と避難先市町村が把握している避難者情報が異なることになる。現に、宮城県は、同県外への避難者に対する支援を行うために、同システムにより提供された避難者情報を基に電話調査や戸別訪問等の実態調査を実施していて、避難者のうち、避難先の市町村に定住したり、避難元の市町村に帰郷したりなどして、既に避難を終了した者を把握しており、これによると、同県の県外避難者数は3年3月11日現在で87人となっていて、前記の復興庁が公表している同月10日現在の同県の県外避難者数3,670人と大きくかい離していた。このことについて、復興庁は、同県が把握している避難者数について確認したり、避難先市町村と共有するようにしたりなどして、かい離の解消に努めるとしている。

このように、復興庁が公表している県外避難者数の中には、前の住居に戻る意思がないなどの既に避難を終了したと考えられる者が多数含まれている。前記のとおり、避難者数は、「まちに人が戻る」ことなどを定量的に測る指標の一つとなること、また、国において適切な施策を実施するために必要な情報の一つでもあることなどから、復興庁は、避難元県や避難元市町村が、避難先市町村に定住したり、既に帰郷したりなどしている者を把握した場合、同システムを利用するなどして当該情報を適時適切に避難先市町村に共有することを避難元県等に周知するなどするとともに、当該情報を基にして避難者数をできる限り正確に把握する必要がある。

なお、図表3-5-1のとおり、3年3月10日現在の県外避難者数は32,953人となっていて、平成24年3月22日現在の県外避難者数72,768人と比して5割以上減少している。一方、令和3年3月10日現在の県外避難者数のうち福島県の県外避難者数は28,372人となっていて、全体の8割以上を占めており、東北3県のうち、特に、福島県では現在でも住民の帰還の促進が課題であると思料される。

(イ) 福島県における住民の帰還等の状況

東北3県のうち、地震及び津波による被害のみならず原子力災害により深刻かつ多大な被害を受けた福島県に対して、国は、福島再生加速化交付金事業を始めとする様々な支援制度を設けて、長期避難者に対する安定した生活環境を確保したり、避難解除等区域等における生活再開に必要な環境整備を行ったりするなどして福島県の全域及び避難解除等区域等における復興及び再生を推進している。

全国及び福島県の人口の推移をみると、図表3-5-2のとおり、全国及び福島県全体の人口は減少傾向となっているものの、避難指示・解除区域市町村では平成27年から令和2年までの間に僅かに人口が増加しており、これは、避難指示の解除に伴い住民の帰還等が進んだことによるものと思料される。

避難指示・解除区域市町村別に平成22年と令和2年の人口を比較すると、区域の全域で避難が続いていた双葉町を除く11市町のいずれも減少しており、特に、2年度末現在で区域内に帰還困難区域が設定されている大熊町等5町村の減少率は70%を超えていて、平成22年の人口と比べて大きく減少したままとなっている。

図表3-5-2 全国及び福島県の人口の推移

(単位:人、%)
区分 平成22年の人口
A
27年の人口
B
対22年増減率
(B-A)/A
令和2年の人口
C
対22年増減率
(C-A)/A
増減数
C-A
全国 128,057,352 127,094,745 △ 0.7 126,146,099 △ 1.4 △ 1,911,253
福島県 2,029,064 1,914,039 △ 5.6 1,833,152 △ 9.6 △ 195,912
47市町村 注(4) 1,823,164 1,795,913 △ 1.4 1,709,006 △ 6.2 △ 114,158











避難指示・
解除区域市町村計
205,900 118,126 △ 42.6 124,146 △ 39.7 △ 81,754
田村市 40,422 38,503 △ 4.7 35,169 △ 12.9 △ 5,253
南相馬市※ 70,878 57,797 △ 18.4 59,005 △ 16.7 △ 11,873
川俣町 15,569 14,452 △ 7.1 12,170 △ 21.8 △ 3,399
広野町 5,418 4,319 △ 20.2 5,412 △ 0.1 △ 6
楢葉町 7,700 975 △ 87.3 3,710 △ 51.8 △ 3,990
富岡町※ 16,001 2,128 △ 86.7 △ 13,873
川内村 2,820 2,021 △ 28.3 2,044 △ 27.5 △ 776
大熊町※ 11,515 847 △ 92.6 △ 10,668
双葉町※ 6,932 △ 6,932
浪江町※ 20,905 1,923 △ 90.8 △ 18,982
葛尾村※ 1,531 18 △ 98.8 420 △ 72.5 △ 1,111
飯舘村※ 6,209 41 △ 99.3 1,318 △ 78.7 △ 4,891
  • 注(1) 「平成22年の人口」は「平成22年国勢調査結果」(総務省統計局)による。
  • 注(2) 「27年の人口」は「平成27年国勢調査結果」(総務省統計局)による。
  • 注(3) 「令和2年の人口」は「令和2年国勢調査結果」(総務省統計局)による。
  • 注(4) 47市町村は、福島県の59市町村のうち、避難指示・解除区域市町村である12市町村を除いた市町村である。
  • 注(5) 令和2年度末現在で区域内に帰還困難区域を有している市町村には※を付している。
  • 注(6) 双葉町は、令和2年度末現在、区域内の96%が帰還困難区域に設定されている。

避難指示・解除区域市町村は、前記のとおり、福島交付金による帰還環境整備事業や、国からの委託事業である環境整備等委託事業を実施するなどして、住民の帰還等の促進を図っている。避難指示・解除区域市町村に係る23年3月11日現在の住民登録数に対する、令和2年7月1日現在の帰還者数の割合をみたところ、図表3-5-3のとおり、田村市、広野町及び双葉郡川内村では50%を超えているが、区域内に帰還困難区域が設定されている町村では低くなっていて、特に、双葉郡富岡、大熊、浪江各町の同割合は5%未満となっているなどしている。

図表3-5-3 避難指示・解除区域市町村における帰還者数等の状況

(単位:人、%)
区分 田村市 南相馬市 ※ 川俣町 広野町 楢葉町 富岡町 ※ 川内村 大熊町 ※ 双葉町 ※ 浪江町 ※ 葛尾村 ※ 飯舘村 ※
平成23年
3月11日
現在の住民
登録数
A
4,497 61,040 1,252 5,490 8,011 15,960 3,038 11,505 7,140 21,434 1,567 6,509
居住人口
B
3,206 47,524 348 4,249 4,015 1,472 2,047 852 1,360 418 1,465
うち
帰還者数
C
3,131 29,519 332 3,267 2,708 748 1,634 122 1,000 328 1,239
C/A 69.6 48.3 26.5 59.5 33.8 4.6 53.7 1.0 4.6 20.9 19.0
  • 注(1) 令和2年度末現在で区域内に帰還困難区域を有している市町村には※を付している。
  • 注(2) 田村市、南相馬市、川俣町の平成23年3月11日現在の住民登録数は、避難指示等区域の対象人口である。
  • 注(3) 平成23年3月11日現在の住民登録数のうち飯館村のみ同年2月28日現在の数値である。
  • 注(4) 居住人口及び帰還者数は、令和2年7月1日現在で福島県が把握している数値である。
  • 注(5) 双葉町は、令和2年度末現在、住民の帰還が認められていない。

住民の帰還促進は、3年3月に改定された福島復興再生基本方針において、引き続き重要な課題であるとされており、現在、避難指示・解除区域市町村は、帰還環境整備に係る実施要綱に基づき原則7年度までとされている事業計画期間において、住民の帰還等の促進を目的として農林水産業や商工業の再開のための環境整備や生活拠点整備等の様々な帰還環境整備事業を実施している。

そこで、帰還環境整備事業で整備した施設の利用状況を確認したところ、避難指示・解除区域市町村は、避難している住民に対する意向調査等の結果を踏まえ、帰還環境整備事業により施設等を整備しているが、伊達郡川俣町等の複数の市町村では、避難指示の解除に伴い、帰還した住民が利用することを見込んで施設を整備したものの、避難生活が長期に渡る中で住民の意向に変化が生ずるなどして、避難指示の解除後も住民の帰還が順調に進んでいないため、利用されないままとなっているなどの施設が見受けられた。

前記のとおり、帰還環境整備事業の事業計画期間は原則7年度までとされており、避難指示・解除区域市町村では今後も帰還環境整備事業を実施することが見込まれるため、避難指示・解除区域市町村は、帰還環境整備事業全体の進捗に努めるとともに、個々の事業の効果の発現に努める必要がある。

したがって、国は、帰還環境整備事業により整備された施設の利用状況を把握するなどして、事業の効果の発現に向けた取組が行われるよう、支援・助言等を行っていく必要がある。

(ウ) 認定復興再生計画による帰還のための取組の実施状況

1(1)ア(エ)のとおり、平成29年5月の福島特措法の改正により、内閣総理大臣は、帰還困難区域等をその区域に含む市町村の長が申請した復興再生計画が福島復興再生基本方針に適合することなどの基準に適合すると認めるときは、復興再生計画を認定するとされていて、帰還困難区域が設定されている7市町村のうち、南相馬市を除く6町村は、復興再生計画を申請し、内閣総理大臣による認定を受けている(以下、内閣総理大臣の認定を受けた復興再生計画を「認定復興再生計画」という。)。6町村の認定復興再生計画には、図表3-5-4のとおり、特定復興再生拠点区域の面積、計画期間、避難指示解除又は計画期間終了後から5年後の特定復興再生拠点区域における居住人口の目標等が定められている(特定復興再生拠点区域の範囲については別図表2参照)。また、特定復興再生拠点区域内において、国が避難指示の解除に必要な範囲について土壌等の除染等の措置及び除去土壌の処理を行うことや、6町村が行う事業内容等が記載されている。

そして、認定復興再生計画に記載された国による除染等や、6町村による事業等が進捗することなどにより避難指示の解除の要件を満たしたことから、令和4年6月に葛尾村及び大熊町の特定復興再生拠点区域全域の避難指示が、8月に双葉町の特定復興再生拠点区域全域の避難指示が、それぞれ解除された。

図表3-5-4 6町村の認定復興再生計画の概要(令和4年8月末時点)

(単位:ha、人)
町村名 認定年月日 区域面積 計画期間 目標としている
居住人口
左のうち
帰還者数(見込)
特定復興再生拠点
区域全域の避難
指示解除年月
双葉町 平成29年 9月15日 555 令和4年8月末まで 2,000 1,400 令和4年8月
大熊町 平成29年11月10日 860 令和4年9月まで 2,600 1,500 令和4年6月
浪江町 平成29年12月22日 661 令和5年3月まで 1,500 1,300 -
富岡町 平成30年 3月 9日 390 令和5年5月末まで 1,600 - -
飯舘村 平成30年 4月20日 186 令和5年5月末まで 180 178 -
葛尾村 平成30年 5月11日 95 令和4年9月末まで 80 80 令和4年6月

そこで、6町村の認定復興再生計画に基づく事業等の進捗状況を確認したところ、図表3-5-5のとおり、実地検査を行った4年6月時点において未着手又は実施中となっている事業等が多数見受けられ、認定復興再生計画に記載された事業等のうち完了している事業等が占める割合は、おおむね10%台にとどまっている状況となっていた。

一方、6町村の認定復興再生計画の計画期間をみると、図表3-5-4のとおり、双葉、大熊両町、葛尾村の認定復興再生計画の計画期間は4年9月末までに既に終了している。また、他の3町村についても、計画期間の終了が最も遅い富岡町及び飯舘村で5年5月末までに終了するとされているが、計画期間終了後の検証等の実施について確認したところ、復興庁は、認定復興再生計画は福島特措法等において、計画期間終了後、国による検証等を行うこととなっていないとしている。

図表3-5-5 認定復興再生計画における事業等の進捗状況(令和4年6月時点)

(単位:件、%)
町村名 完了率
未着手 実施中 完了 中止・廃止 その他
双葉町 95 22 57 12 1 3 12.6
大熊町 63 8 27 9 - 19 14.2
浪江町 91 4 76 10 1 - 10.9
富岡町 59 1 26 6 24 2 10.1
飯舘村 32 15 12 3 1 1 9.3
葛尾村 27 1 15 7 1 3 25.9
  • 注(1) 「完了率」は、「完了」となっている事業の「計」に占める割合である。
  • 注(2) 事業等の件数は、各町村の認定復興再生計画に記載されている「事業内容等」「取組内容」を会計検査院において集計した件数である。

福島復興再生基本方針等において、「将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、政府一丸となって、まずは特定復興再生拠点区域について、各町村の認定計画に定められた避難指示解除の目標時期を目指して、家屋等の解体・除染やインフラ整備を進めるとともに、買い物、医療・介護等の生活環境整備、鳥獣被害対策の強化等の帰還環境整備を進める」などとしている。また、「特定復興再生拠点区域への帰還・居住に向けた課題について、引き続き、個別かつきめ細かに町村と議論し、取組を推し進めていく」などとしている。これらを踏まえると、今後、国は、6町村の認定復興再生計画に基づき行われた事業等の進捗状況や目標の達成状況を踏まえた上で、帰還困難区域が設定されている市町村の課題等を的確に把握し、支援・助言等の取組を行っていくことが必要である。