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  • 昭和55年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本電信電話公社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

ステップバイステップ交換機の撤去スイッチ類売払予定価格の積算について処置を要求したもの


(2) ステップバイステップ交換機の撤去スイッチ類売払予定価格の積算について処置を要求したもの

(昭和56年11月25日付け56検第390号 日本電信電話公社総裁あて)

 日本電信電話公社では、昭和62年度を目途に53年度以降、老朽化したステップバイステップ交換機を撤去し、新型の電子交換機等へ順次計画的に更改しており、これに伴い同交換機の構成品であるセレクタ、コネクタ等のスイッチ類(注1) をその他の不用品と合わせ毎年度多量に売り払っているが、そのうち東京地方電気通信部ほか31電気通信部等(注2) が55年度に行った売払契約66件売払総額2億2350万余円について検査したところ、次のとおり、スイッチ類の売払予定価格の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 上記契約に係る予定価格の積算についてみると、上記の各電気通信部等では、各電気通信局が制定した「整理品売払予定価格積算要領」に基づき、スイッチ類の品名ごとに構成素材別重量の内訳を示した「整理品目付(めつけ)表」を基に算出した構成素材別重量に素材別単価を乗ずるなどして算定している。

 しかして、本院で、前記契約の対象となったスイッチ類のうち、1品目当たりの売払個数が比較的多い46品目、459,193個、積算額合計8959万余円を抽出し、これらの構成素材について調査したところ、スイッチ類には、1スイッチ当たり16個から190個の接点バネが組み込まれ、その先端部分には、白金、PGS合金(注3) 、GS合金(注4) 、銀パラジウム合金(注5) 又は銀の貴金属接点(1接点当たりの重量8mg〜68mg)が1個又は2個付いているが、整理品目付表にこの貴金属を記載しておらず、したがって、ごく一部の売払いを除いて、予定価格算定上もこれら貴金属について全く考慮されていないことが判明した。
 そして、その理由についてみると、同公社では、整理品目付表を制定した44年当時は、ステップバイステップ交換機の撤去がほとんどなく、1個の貴金属接点が微量であり、また、貴金属価格も低価であったこと、その後52年に至り貴金属の回収について一応検討したが、その結果、貴金属の価値と回収費用がほぼ同額となり、売払いに当たってこれを考慮する実益がないと判断したことによるとしている。
 しかしながら、ステップバイステップ交換機の計画的な更改が始まった53年度以降は、毎年多量のスイッチ類が順次売り払われるようになり、その結果、前記459,193個についてみても、これに含まれる貴金属総量は約878kgと多量に上っており、一方、貴金属の市場価格は、54年度下期以降著しく高騰しているのであるから、これらの実情にかんがみ、本件売払いに当たっては、予定価格の算定上これら貴金属についてもその価額を検討のうえ算入すべきであったと認められるのに、同公社では、これらの実情の把握が十分でなく貴金属を整理品目付表に記載していないなどのため、予定価格が著しく低廉になっていると認められる。

 現に、買取業者は、接点バネから貴金属接点部分を切断し、その切断片を希硝酸溶液で処理するなどして、上記の貴金属を容易に回収している状況である。
 いま、仮に前記の459,193個のスイッチ類について、これに含まれていた貴金属約878kgの価額をそれぞれ売払時の時価相当額によることとして予定価格を修正計算すると、貴金属の回収に要すると認められる費用を考慮しても、総額2億8406万余円となり、前記の積算額8959万余円はこれに比べて約1億9400万円低廉に失していると認められる。
 このような事態を生じたのは、同公社では、近年における貴金属価格の高騰、買取業者における貴金属回収の実態等の把握が十分でなかったこと、本件のような物品売払いの予定価格積算について、下部機関に対する指導、監督が十分でなかったことなどによると認められる。
 ついては、日本電信電話公社では、電気通信施設の整備拡充の一環として、ステップバイステップ交換機の新型交換機への更改に伴い、55年度末現在全国の電話局等に設備されているスイッチ類690万余個の撤去、売払いが今後も引き続き全国的に行われる見込みであるから、早急に整理品目付表の整備を行うとともに、貴金属価格、回収費用等を実態に即して予定価格に算入するなどし、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

(参考図)

(参考図)

 (注1)  セレクタ、コネクタ等のスイッチ類 ステップバイステップ交換機を構成する機器で、発信者からのダイヤルパルスを受けて1又は2数字を選択するなどの機能を有するもの

 (注2)  東京地方電気通信部ほか31電気通信部等 東京地方、神奈川、埼玉、新潟、三重、兵庫、香川、長崎、佐賀、旭川各電気通信部、横浜、京都、神戸、福岡各都市管理部、東京千代田、東京新宿、東京港、東京台東、東京豊島、東京墨田、大阪東、大阪中、大阪北各地区管理部、信越、東海、北陸、近畿、中国、東北各電気通信資材配給局、近畿電気通信保全工事事務所、北海道電気通信局建設部、沖縄電信電話管理局

 (注3)  PGS合金 白金6%、金69%及び銀25%の合金

 (注4)  GS合金 金10%及び銀90%の合金

 (注5)  銀パラジウム合金 銀40%及びパラジウム60%の合金