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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本国有鉄道|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

新幹線用トンネル巡回車の仕様について


(3)  新幹線用トンネル巡回車の仕様について

 日本国有鉄道(以下「国鉄]という。)では、新幹線のトンネル内を保守点検するための新幹線用トンネル巡回車(以下「巡回車]という。)と巡回車用の可搬充電器(以下「充電器」という。)について、国鉄本社において施設局用、電気局用のそれぞれに仕様を定めており、この仕様に基づいて各地方資材部等で購入し、各鉄道管理局等で保守担当の保線区及び電力区の現場部門に配備することとしている。

 しかして、東北、上越両新幹線の開業に伴い、昭和54、55、56年度中に東北地方資材部ほか4箇所(注1) が購入し仙台鉄道管理局ほか7箇所(注2) が現場部門に配備した巡回車等は、軌道保守担当の保線区に巡回車92両(購入価額4億8724万円、1両当たり500万円から540万円)、充電器87個(購入価額8961万円、1個当たり103万円)、電車線設備保守担当の電力区に巡回車60両(購入価額2億3248万円、1両当たり362万円から390万円)、充電器73個(購入価額6234万余円、1個当たり85万余円)、合計巡回車152両(購入価額7億1972万円)、充電器160個(購入価額1億5195万余円)となっているが、その仕様等について検査したところ、次のとおり、仕様を統一した兼用巡回車によることとしても差支えないのにこれを別の仕様としているため不経済となっていると認められる点が見受けられた。

 すなわち、この巡回車は、トンネル内の軌道、電車線設備等の巡回点検について、トンネル内の路盤中央部に設置されたU型保守通路(幅1m、深さ約1m)を走行しながら車中から目視点検できるように設計されたもので、トンネル延長が1kmを超える合計33(連続する小トンネルは1群としたもの)のトンネルを巡回点検することとしている。そして、その仕様は、施設局用に定めた施設用巡回車及び電気局用に定めた電気用巡回車のいずれも、バッテリーを動力源とした2人乗りの装甲車型鋼製4輪車で、施設用巡回車については、軌道状態の目視検査を主目的とした車体(全長3m及び3.30m、全幅0.98m、全高1.92m及び1.87m、自重1,580kg及び1,630kg)で両側面の窓から目視できる構造となっており、電気用巡回車については、トンネル上部に設置された電車線設備の目視検査を主目的とした車体(全長3.15m、全幅0.98m、全高1.32m、自重850kg)でトンネル上方が目視できるよう約40度傾斜した窓を前・後方につけた構造となっている。また、巡回車に附属する充電器は施設用及び電気用巡回車のそれぞれに対応するよう別の仕様となっている。

 そして、上記巡回車等の配備については、トンネルの片側又は両側に、上越新幹線の長大トンネル2箇所にはその中央部にも共用の車庫を設け、施設用巡回車は1トンネル当たり2両から7両計92両を、電気用巡回車は1トンネル当たり1両から4両計60両をそれぞれ配備し、また、充電器は原則として巡回車1両につき1個を配備していた。

 しかしながら、上記両巡回車の仕様上の主な相違点は、前記のとおり、施設用巡回車は側面の点検窓から両側のレール締結装置等の状況を、電気用巡回車は前、後の点検窓からトンネル上方に設置している架線等の状況をそれぞれ目視点検することから、点検用照明灯の照明方向や点検窓の角度、高さ、大きさが異なるだけで、保守通路を走行する2人乗りの車両としての基本的な構造は異なるものではなく、また、点検時には幅1mの保守通路内をスイッチとブレーキだけの操作で時速約5kmで前進又は後進するもので機能上も特に差異はないと認められる。

 更に、上記巡回車の使用についてみると、新幹線における軌道、電車線設備等の点検作業については、新幹線鉄道運転規則(昭和39年運輸省令第71号)等により、毎日1回軌道モータカー若しくは列車に添乗して実施することになっている「巡回検査」と、定期的に軌道及び電車線設備等の状態について詳細に点検を実施することになっている「定期検査」とが定められていて、巡回車による点検作業はこれらの検査を補足するため、徒歩による巡回を全線にわたり行うもののうち、トンネル内について作業の安全性を考慮して徒歩に代えて行うこととしているもので、その作業は施設部門は週に1回程度、電気部門は10日に1回程度実施すれば足りることになっており、しかも、実際の点検に当たっては、危険防止のため両部門の巡回日時が重複して実施されないようにしている。

 したがって、上記巡回車について、殊更これを施設局用、電気局用の別に仕様を定める意義は認められず、仕様の決定に当たって国鉄両部門間において十分な連絡調整を行えば、両部門の保守点検機能を兼ねた巡回車の仕様は可能であり、その製作費は施設用巡回車の購入価額と同額程度で可能であったと認められ、この兼用巡回車を配備したとしても上記のような巡回車の使用方法からみて、施設用巡回車と同数で十分対応できると認められ、これによれば電気用巡回車60両分及びこれらの充電器73個分合計約2億9400万円が節減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、57年10月に施設用巡回車の仕様を基として両部門の保守点検が実施できる兼用巡回車(全長3m、全幅0.98m、全高1.87m、自重1,300kg)の仕様を定め、山陽新幹線で使用している巡回車の更新等に当たって、新規に兼用巡回車を導入することとした。

(注1)  東北地方資材部ほか4箇所 東北、関東、新潟各地方資材部及び盛岡、高崎両資材事務所

(注2)  仙台鉄道管理局ほか7箇所 仙台、盛岡、新潟、東京北、高崎各鉄道管理局、仙台新幹線、盛岡両工事局及び仙台試験線管理所