ページトップ
  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本専売公社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

国内産葉たばこについて過剰在庫を解消するよう意見を表示したもの


国内産葉たばこについて過剰在庫を解消するよう意見を表示したもの

科目 (項)たばこ事業費
部局等の名称 日本専売公社
国内産葉たばこの在庫量の概要 日本専売公社がたばこ製造用として保管している国内産葉たばこ
386,925t(昭和57年度末)

 日本専売公社における国内産葉たばこの在庫量は、標準在庫量24箇月分に対して37箇月分となっていて13箇月分過剰になっており、このため年間に固定することとなる資金を計算すると約2840億円となる。 そして、在庫量の中には品質の劣っているものが多量に含まれている。
 同公社では、国内産葉たばこの過剰在庫の解消を図るため、廃減作による生産調整を行うこととしたが期待どおりの進展をみせず、また、品質の劣っている葉たばこについてまで買入れを余儀なくされているため原料の効率的な使用を妨げる要因となっている。
 このような事態は、日本専売公社の資金を固定するばかりでなく多額の経費を負担することとなるので、過剰在庫を解消すべく各般の対策を講ずる要がある。

 上記に関し、昭和58年11月29日、日本専売公社総裁に対して意見を表示したが、その全文は以下のとおりである。

国内産葉たばこの在庫量について

 貴公社では、製造たばこの主要原料である国内産葉たばこについては、たばこ専売法(昭和24年法律第111号)の規定により、貴公社の許可を受けた耕作者から、廃棄するものを除き、収穫したすべての葉たばこを収納することとなっているが、その在庫量は昭和57年度末において使用量の37箇月分に当たる386,925tとなっている。
 しかして、貴公社では葉たばこが原料として使用されるまでに要する2年間程度の熟成期間等を考慮してその標準在庫量を24箇月分と定めているが、52年度末における国内産葉たばこの在庫量がこれを上回る30箇月分となっていたことなどから、昭和52年度決算検査報告において特に掲記を要すると認めた事項として掲記したところであり、これに対して、貴公社においては、過剰在庫の解消策として葉たばこの生産調整等を図ってきているほか、葉たばこの品質向上を図るため各種の措置を実施してきているが、その後の生産調整等の実施状況について調査したところ、次のような事態が見受けられた。

1 生産調整について

 貴公社では、国内産葉たばこの過剰在庫の解消を図るため、その基本的手段として極力廃減作による生産調整を行うこととしたが、たばこ耕作農家に対する配慮等から急激な対策を採り得ないまま、53年から56年までの間に5,530haの自然廃減作による生産調整を行うにとどまり、その結果、耕作面積は64,550haら59,020haになっていた。57年においては、生産調整を更に促進するため、廃減作するたばこ耕作者43,027名に対し、1a当たり15,000円の臨時葉たばこ生産調整奨励金7,199,628,000円(交付対象面積4,799ha)を交付するなどして4,943haの廃減作を行い、耕作面積を54,077haとしたが、この面積では年間の葉たばこ使用量に見合った生産量となるにと
 どまり、過剰在庫の減少には寄与しないものとなっている。 しかも、この面積は59年まで固定させることになっているため、この間、自然廃減作が生じてもその分を他の耕作者に増反させることとしており、過剰在庫の解消のための生産調整が期待できない状況となっている。

2 用途区分葉について

 貴公社では、耕作者が収穫した葉たばこを、品質等級にかかわりなく、使用不能と判断したもの以外は全量買い入れることになっているが、この中には、原料として使用する際に特別の処理を要する品質の特に劣ったもの(以下「用途区分葉」という。)が含まれており、この用途区分葉は、製造たばこの高級化、多様化、緩和化の傾向が強まってきて、この原料として使用することには制約があるため、正常葉と区分して買い入れているものであるが、その使用量を上回る収納量になっているため、52年度末在庫量の16,980tはその後、更に増加して57年度末においては105,576tとなり、国内産葉たばこ在庫量の27.3%を占める状況となっている。しかも、その在庫量は58年度の使用計画からみると40箇月分となっており、そのうち、特に使用量が規制される降灰葉、グレー葉は、それぞれ55箇月分、43箇月分となっていて、原料の効率的な使用を妨げる要因となっている。

 このような事態により、貴公社の57年度末在庫量386,925tは、標準在庫量24箇月分を13箇月分上回る37箇月分となっていて、52年度に比べ過剰在庫の事態は依然として解消されていないばかりでなく、かえって増こうしている状況となっており、更には、用途区分葉についても逐年増加している状況となっている。
 いま、上記の過剰在庫となっている葉たばこについて年間に固定することとなる資金を計算すると約2840億円となり、また、保管寄託料相当額は約30億円と多額に上っている。
 このような事態を生じているのは、たばこ耕作農家の経営に与える影響を考慮して積極的な生産調整を講じなかったこと、用途区分葉の発生の抑制が十分でなかったこと、製造たばこの輸出についての努力が十分でなかったことなどによるものである。
 ついては、製造たばこの売行きの停滞や、たばこの喫味上外国産葉たばこをある程度使用せざるを得ないことなど種々の困難な事情はあるにしても、過剰在庫を解消すべく各般の対策を講ずる要があると認められる。

 よって、会計検査院法第36条の規定により、上記の意見を表示する。