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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第18 帝都高速度交通営団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地下鉄道施設を保守管理する工事の労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの


地下鉄道施設を保守管理する工事の労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)鉄道業営業費 (項)線路保存費
(款)営業線一般改良建設仮勘定 (項)請負工事費
(款)有形固定資産 (項)建物 (項)停車場設備 (項)線路設備
部局等の名称 帝都高速度交通営団本社
工事名 原木中山駅乗降場上家増築その他工事ほか78工事
工事の概要 営業線における駅舎、乗降場、トンネル、軌道等の運送施設について乗降場の床改良、トンネルの漏水防止、レールの交換、マクラギの交換、改良等を行う工事
工事費 2,168,428,335円
請負人 浅野建築工業株式会社ほか34社及び1共同企業体
契約 昭和56年12月〜58年3月 指名競争契約及び随意契約

 上記の各工事において、労務費の積算(積算額11億3859万余円)が適切でなかったため、積算額が約4300万円過大になっていた。
 このように積算額が過大となっているのは、積算基準で定めている労務費の深夜作業割増率が標準的な実働8時間の夜間作業を前提として算出したものであるのに対し、上記各工事の夜間作業の実働時間がこれを下回るものとなっているのに、これを積算に反映しなかったことによるもので、作業の実働時間に即した割増率を定めるべきであると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 帝都高速度交通営団(以下「営団」という。)では、本社工務部において駅舎、乗降場、トンネル、軌道等の運送施設について乗降場の床改良、トンネルの漏水防止、レールの交換、マクラギの交換、改良等の工事を毎年多数実施しているが、昭和57年度に施行している上記79工事(工事費21億6842万余円)について検査したところ、次のとおり、労務費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記79工事の大部分の作業は、電車を運行していない営業時間外(0時30分から5時まで)及び送電停止時間内(0時50分から4時40分まで)の深夜に短時間で行わなければならないため、労務費の積算に当たっては、営団本社制定の「工務部土木工事積算基準」(以下「積算基準」という。)に基づき、一般作業については基準賃金(実働8時間分)の30%、トンネル内作業については基準賃金の40%の割増率を適用して深夜作業の賃金を算出し、これに所要の歩掛かりを乗ずるなどして上記79工事の労務費を総額1,138,596,475円と算定していた。

 しかして、上記の積算基準における割増率は、夜間作業を行う場合の標準時間帯を21時30分から翌朝6時30分までと設定し、このうち、深夜割増しの対象となる時間を労働基準法(昭和22年法律第49号)では22時から翌朝5時までの間としているので、これから、休憩1時間を除いた6時間とし、これに従来から適用していた実働1時間当たりの賃金割増率40%を採用して、次の算式により、一般作業の割増率を30%とし、トンネル内作業は、一般作業に比べて作業環境が悪いことから、更に10%を加え40%としていた。

地下鉄道施設を保守管理する工事の労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたものの図1

 このように、上記の割増率は深夜の実働時間が6時間であることを前提としたものとなっていた。
 しかしながら、本件79工事の深夜作業の実態は、前記のように営業時間外及び送電停止時間内に行うという制約のため、準備作業時間30分を含めても、(1)営業時間外の作業は実働5時間、(2)送電停止時間内の作業は実働4時間、(3)送電停止時間内の軌道内作業は実働4時間15分となっていて、いずれも実働時間は前記6時間を下回っていることから、実際に作業員が実働する4時間ないし5時間を深夜割増しの対象とすべきであったと認められた。
 現に、営団の電気部及び他団体においては、この種深夜作業の割増しについては実働時間のみを対象としている状況である。

 したがって、深夜割増しの対象となる実働時間は、従来、実働時間の対象としていなかった電話による停電確認や作業開始前及び作業終了後に行う点呼、点検等の時間10分及び45分を含めても、営業時間外作業については5時間、送電停止時間内の作業については4時間10分、送電停止時間内の軌道内作業については5時間となり、この実働時間に対応する割増率を上記の算式により計算すると、一般作業の割増率30%は、それぞれ25%、20%及び25%となり、トンネル内作業の割増率40%は、それぞれ35%、30%及び35%になるものと認められた。
 いま、仮に本件各工事の労務費について、上記割増率を適用して積算したとすれば、積算額を約4300万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、帝都高速度交通営団では、58年10月に積算基準を改定し、深夜作業の実態に即した深夜作業割増率を定め、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。