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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
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  • 租税

租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(2) 租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
 (項)各税受入金
部局等の名称 麹町税務署ほか190税務署
納税義務者又は源泉徴収義務者 593人

 上記の191税務署において納税義務者等593人から租税を徴収するに当たって、調査が十分でなかったため、徴収額が不足していたものが552事項1,077,367,138円、徴収額が過大になっていたものが41事項113,315,574円あった。これらについては、本院の注意により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。これを各国税局ごとに集計して税目別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)

 昭和58年度国税収納金整理資金の各税受入金は、徴収決定済額33兆9586億余円で、このうち源泉所得税、申告所得税及び法人税の3税が72.8%を占めている。
 しかして、本院が主として上記3税の課税内容について検査したところ、上記の191税務署において、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったり、法令適用の検討が十分でなかったため税額計算等を誤っていたり、申告内容の調査が十分でなかったため経費等の額を誤って所得を計算していたり、納税者が申告書等において所得金額、税額計算等を誤っているのにそのままこれを見過ごしていたりなどして、徴収額に過不足を生じているものが認められた。
 これを、源泉所得税、申告所得税、法人税に分けてその主な態様を示すと次のとおりである。

1 源泉所得税

 給与等(44事項)及び配当(29事項)について

 給与等(給料、賃金、賞与等をいう。)及び配当については、その支払の際に支払者が源泉徴収義務者となって、所定の方法により各受給者に対する税額を計算してこれを徴収し、原則として徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないことになっている。また、未払となっている配当については、支払が確定した日から1年を経過した日において支払があったものとみなし、源泉徴収義務者はこれに対する税額を徴収してその翌月10日までにこれを国に納付しなければならないことになっている。そして、源泉徴収義務者が法定納期限までに納付していなかったときは納税の告知をしなければならないことになっている。
 しかし、源泉徴収義務者が法定納期限を過ぎても長期にわたって納付していなかったものについて、法人税等の申告に当たって提出された決算書等に計上されている当該給与等及び配当を調査すれば判明したのに、調査が十分でなかったため納税の告知をしていなかったものなどである。

<事例>

 源泉所得税に関する徴収不足の1例を配当について示すと次のとおりである。

某会社は、昭和55年11月から56年4月までの事業年度分決算書によると、56年6月24日支払確定した利益処分による配当が72,000,000円あり、当該配当は未払のまま支払確定の日から1年を経過しているのに、これに対する源泉所得税を納付していなかった。
しかし、これについての調査が十分でなかったため、源泉所得税14,400,000円について納税の告知をしていなかった。

2 申告所得税

(1) 資産所得の合算(78事項)について

 生計を一にする一定範囲の親族の資産所得(利子所得、配当所得及び不動産所得)については、これを主たる所得者(注) の所得に合算しこの合計額が所定の金額を超えるときには、この合計額に対する税額を計算した後、その税額を各人の所得に応じてあん分し、それぞれの税額を計算することになっている。
 しかし、これらの資産所得があるのにこれを見過ごしたり、法令の適用を誤ったりしたため、合算して税額を計算していなかったものなどである。

(注)  主たる所得者 生計を一にする一定範囲の親族のうち、総所得金額から資産所得の金額を差し引いた金額が最も大きい者をいい、資産所得だけの場合は資産所得の金額が最も大きい者をいう。

(2) 譲渡所得(61事項)について

 資産の譲渡益については、譲渡所得として課税することになっている。譲渡所得のうち、土地建物等の譲渡に係る所得は他の所得と区分して課税することになっており、譲渡した土地建物等の所有期間がその年の1月1日において10年を超えるものは長期譲渡所得、10年以下のものは短期譲渡所得(56年以前の譲渡については、その譲渡した土地建物等の取得の日が、44年1月1日前のものは長期譲渡所得、同日以後のものは短期譲渡所得)として、それぞれ特別な税額計算の方法が執られている。また、保証債務を履行するために資産を譲渡した場合において、その履行に伴う求償権を行使するととができないこととなったときは、行使できないこととなった金額について収入がなかったものとみなされることや、自己が居住の用に供した土地建物等を譲渡した場合には特別控除額が認められることなどの特例措置が執られている。
 しかし、譲渡所得が発生しているのに課税資料の収集、活用が的確でなかったため課税していなかったり、法令の適用を誤ったことや申告書の記載事項の誤りを見過ごしたことのため、長期譲渡所得、短期譲渡所得についての税額を誤っていたり、上記特例適用についての調査が十分でなかったため、保証債務を履行するための譲渡や居住用財産の譲渡に該当しないのに特例を適用したりしていたものなどである。

(3) 配当所得(31事項)及び雑所得(30事項)について

 配当については、源泉分離選択課税(注) の適用を受けた配当を除いて、その支払を受ける者に配当所得として課税することになっており、また、貸付金の利子等で事業所得等に該当しないものについては、雑所得として課税することになっている。
 しかし、これら配当又ば貸付金の利子等による所得があるのに、課税資料の収集、活用が的確でなかったため課税していなかったものなどである。

(注)  源泉分離選択課税 配当について、その支払を受ける者が法人の発行済株式の総数又は出資金額の100分の5以上を有する場合又は法人から支払を受ける配当の金額が1回25万円(年間50万円)以上の場合を除いて、他の所得と分離し100分の35の税率による課税を選択することをいう。

(4) 給与所得(23事項)について

 給与等から生ずる所得については、その年中の給与等の収入金額から所定の給与所得控除額を差し引いた残額を給与所得の金額として課税することになっている。
 しかし、課税資料の収集、活用が的確でなかったり、法令適用の検討が十分でなかったりしたため、給与所得の金額の計算に当たって、収入金額を過少にしたり、給与所得控除額を過大にしたりして課税していたものなどである。

<事例>

 申告所得税に関する徴収不足の1例を譲渡所得について示すと次のとおりである。
某納税者は、昭和57年分課税長期譲渡所得金額189,871,000円に対する税額計算に当たり、同金額に100分の20を乗じた37,974,200円を長期譲渡所得の税額としていた。
しかし、課税長期譲渡所得金額が4000万円を超える場合は、上記税額計算の方法によるのではなく、別の計算方法により税額を計算することになっており、これによれば長期譲渡所得の税額は57,701,250円となるのに、申告書の税額計算誤りを見過ごしたため19,727,100円が徴収不足となっていた。

3 法人税

(1) 同族会社の留保金額(91事項)について

 同族会社(注) に対する法人税の課税については、通常の法人税のほか、利益を社内に留保した金額が所定の金額を超える場合、その超える部分の金額に対し特別税率による法人税を課税することになっている。
 しかし、法令の適用を誤ったことや申告書の同族会社に関する記載事項についてその誤りを見過ごしたことのため、同族会社であるのに同族会社でないと判定して上記特別税率による法人税を課税していなかったり、同族会社と判定しながら、留保金額が所定の金額を超えていて課税の要があるのに課税していなかったりしていたものなどである。

(注)  同族会社 特別税率の規定が適用される同族会社とは、株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)の3人以下並びにこれらと特殊の関係にある個人及び法人が有する株式の総数又は出資金額の合計額が、その会社の発行済株式の総数又は出資金額の100分の50以上となる会社をいう。

(2) 退職給与引当金(28事項)について

 退職給与規程を定めている法人は、その使用人の退職により支給する退職給与に充てるための退職給与引当金勘定への繰入額について、期末退職給与の要支給額から前期末退職給与の要支給額を控除した金額(又は給与総額の100分の6相当額)と、期末退職給与の要支給額の 100分の40相当額(法人税法施行令の一部を改正する政令(昭和55年政令第41号)による経過措置の適用を受けた場合においては、期末退職給与の要支給額の 100分の40相当額が前期末退職給与引当金勘定の金額を超えることとなるまで、前期末の退職給与引当金勘定の金額を限度額とすることになっている。)から期末における前期から繰り越された退職給与引当金勘定の金額を控除した金額とのうち、いずれか少ない金額の範囲内で、これを損金に算入することが認められている。
 しかし、法令の適用を誤ったことや申告書の記載事項について誤りがあるのに調査が十分でなかったことのため、繰入額の計算に当たって、期末又は前期末退職給与の要支給額を誤って計算していたり、期末退職給与引当金勘定の金額が当期末退職給与の要支給額の100分の40相当額を超えることとなるのにその超える金額を損金に算入していたり、上記経過措置による前期末の退職給与引当金勘定の金額を誤って計算していたりしていたものなどである。

<事例>

法人税に関する徴収不足の1例を同族会社の留保金額について示すと次のとおりである。
某同族会社は、昭和57年1月から12月までの事業年度分法人税の申告に当たり、所得金額のうち留保した金額に対し特別税率による税額計算をしていなかった。
しかし、留保金額、留保控除額について所定の計算を行えば留保金額が留保控除額を超えることが判明したのに、調査が十分でなかったため、課税留保金額120,379,000円に対する特別税率による法人税額17,575,700円が徴収不足となっていた。

(別表)

租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものの図1