1 本院が表示した改善の意見
保険医療機関が、患者に使用する医療用酸素の診療報酬請求については、厚生省が定めている「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(昭和33年厚生省告示第177号。以下「診療報酬点数表」という。)において、その購入価格を10円で除して得た点数によることとされている。
この酸素の購入単価及び診療報酬請求の実態を、本院の検査対象機関である国立病院等の117病院において調査したところ、次のような状況となっていた。
(ア) 酸素の購入単価は、液体酸素と圧縮酸素の別、容器のボンベの大小などによって異なっていた。
(イ) 診療報酬請求については、病院によって取扱いが区々となっており、いずれも、患者に実際に使用した酸素の購入単価によることなく、独自に設定した単価により請求していた。そして、半数以上の病院では、割高な圧縮酸素の購入単価によるなど、実際の購入価格を大幅に上回る価格で請求していた。 このため、酸素に係る保険者の支払額は過大となり、ひいては国の負担額が過大となっていた。
このような事態が生じているのは、酸素は気化による消失などのため購入量がそのまま使用量とならないことから、購入価格で請求すると費用の回収ができないなどの事情もあるが、厚生省において、酸素の診療報酬の請求について前記のように定めているだけで、具体的な算定方法を示していないことによると認められた。
医療用酸素に係る診療報酬請求の適正化、合理化を図るため、保険医療機関における酸素の購入及び使用の態様に応じてその診療報酬を適切に請求し得る具体的な算定方法を明確にするよう、厚生大臣に対し平成元年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。
2 当局が講じた改善の処置
厚生省では、本院指摘の趣旨に沿い、2年3月に診療報酬点数表の一部を改正するとともに酸素の購入価格についての具体的な算定方法を定め、これを都道府県その他の関係機関を通じて、保険医療機関へ周知徹底させるための通達を発するなどし、医療用酸素に係る診療報酬請求の適正化、合理化を図る処置を講じた。