1 本院が要求した改善の処置
農林水産省では、農業者が自主的に能率的な農業技術を導入し経営規模を拡大することなどを促進するために農業改良資金の貸付事業を行う都道府県に対し、当該事業に必要な資金の3分の2相当額を、昭和59年度以前は国庫補助金として交付し、60年度以降は無利子で貸し付けている。国の助成が補助方式から貸付方式に改められた趣旨は、都道府県の貸付財源に余裕がある場合等には国の貸付金の繰上償還及び国庫補助金の自主納付(以下「繰上償還等」という。)をすることができることとし、それを貸付財源が不足している都道府県へ融通することによって都道府県の間の資金の過不足を調整し、国の助成資金の効率的な運用を図ることにある。
しかし、この農業改良資金の貸付事業の運営について青森県ほか22県を対象に調査したところ、貸付財源に多額の余剰資金が生じているのに国への繰上償還等を行っていない県がある一方で、資金の造成がいまだ十分でない県があるなど、県の間で資金の偏在を生じていた。
また、農業改良資金の余裕金の運用益は、農業改良資金特別会計に計上し貸付財源に充てることになっているのに、実際の運用利回りによる額を適正に計上していなかった。
農業改良資金の効率的かつ適切な運用を図るために、次のような処置を講ずるよう、農林水産大臣に対し平成元年12月に、会計検査院法第36条規定により改善の処置を要求した。
(ア) 都道府県に対し本制度の趣旨の周知徹底を図ること
(イ) 都道府県において実際の資金需要や過去の貸付実績等を十分考慮して実態に即した貸付事業計画を策定するよう指導を強化するとともに、地方農政局等においてその審査を十分行うこと
(ウ) 都道府県に対し、繰上償還等が可能な額の算定の基準を示すとともに、実際の運用利回りにより計算した運用益を農業改良資金特別会計に計上させること
2 当局が講じた改善の処置
農林水産省では、本院指摘の趣旨に沿い、次のとおり、農業改良資金の効率的かつ適切な運用を図るために必要な処置を講じた。
(ア) 元年12月に地方農政局等に通達を発して、貸付事業の運営を適切に行う上で必要な保有額の算定の基準を示すとともに、都道府県に対する制度の趣旨及び保有額の算定基準の周知徹底を図らせ、また、都道府県が適切な貸付事業計画の策定及び運用益の適正な計上を行うよう指導させた。そして、地方農政局等は、貸付事業計画に対し適切な審査及び指導を行うよう指示した。
(イ) さらに、2年6月に地方農政局等に通達を発して、都道府県に対し適時適切な指導が行えるよう、貸付事業遂行状況報告書に貸付財源の現在額等を記載させることとするなどした。