1 本院が表示した改善の意見
労働省が支給する労働者災害補償保険の遺族補償年金等の受給資格者の認定に当たっては、死亡労働者の収入がなければ通常の生活水準を維持することが困難となるような関係、すなわち生計維持関係が常態であったか否かにより判断して行うこととされている。
しかし、この認定の取扱いの実態について調査したところ、死亡労働者との間に必ずしも生計維持関係があったとは認められないその孫又は祖父母が受給資格者と認定されている事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、死亡労働者との同居の事実を確認するだけで受給資格者と認定していることによると認められた。
遺族補償年金等についてその趣旨に沿った支給を行うために、生計維持関係の判断を実質的に行うこととするなどして、死亡労働者によって真に生計が維持されていた遺族を受給資格者とするための制度の見直しを図るよう、労働大臣に対し昭和63年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。
2 当局が講じた改善の処置
労働省では、本院指摘の趣旨に沿い、平成2年7月に労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)の改正を行うとともに、各都道府県労働基準局長に対し通達を発した。そして、同年8月以降の受給資格の認定に際しては、死亡労働者の孫又は祖父母は一般に死亡労働者の子又は父母の収入により生計を維持していることを踏まえ、子又は父母の収入を把握するなどして生計維持関係の判断を実質的に行うこととする処置を講じた。