1 本院が表示した改善の意見
労働省では、埼玉県ほか9都府県の47施行者が開催している競走事業(競馬、競輪、オートレース、競艇)に従事する者16,884人について、その雇用契約が日々又は1開催期間ごとの雇用となっていることから日雇労働被保険者として取り扱い、競走事業が開催されない日については失業しているとして日雇労働求職者給付金を支給している。
しかし、競走事業に従事する者の雇用の実態は、長期にわたり安定した雇用関係、安定した雇用条件等が保障されていて継続雇用的な性格を有していると認められた。したがって、上記の事態は、事業主、就労場所等が常に変動し、社会的に不安定な立場にある労働者に対して失業給付を行うことを目的とした日雇労働被保険者制度の趣旨からみて適切でないと認められた。
このような事態が生じているのは、競走事業に従事する者の雇用関係等の実態やこれらの者に対する公共職業安定所の取扱いについての把握が十分でなく、上記の事態に適切に対処しなかったことなどによると認められた。
日雇労働被保険者制度について、その適正な運営を図るために、競走事業に従事する者の雇用関係等の実態について十分把握、検討し、雇用保険の取扱いを適正なものとする措置を講ずるよう、労働大臣に対し平成元年12月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。
2 当局が講じた改善の処置
労働省では、本院指摘の趣旨に沿い、競走事業に従事する者の雇用関係等の実態について調査を行ったうえで、2年3月に各都道府県知事に対し通達を発し、競走事業に従事する者は雇用保険法に定める日雇労働者には該当しないものであることを明確にしたうえで、次のとおり雇用保険の取扱いの適正化を図る処置を講じた。
(ア) 2年4月以後に新たに競走事業に従事する者として施行者に登録される者については、日雇労働被保険者として取り扱わないこととした。
(イ) 2年3月以前から既に日雇労働被保険者として取り扱われている競走事業に従事する者については、5年4月までに一般被保険者に移行させることとする。そのため、複数の施行者に雇用される者については、その就労日数を合算して一般被保険者の資格要件の有無を判断できることとするなど取扱いを改めた。