1 本院が要求した是正改善の処置
診療棟、病棟等(以下「診療棟等」という。)の建築工事における鉄筋の加工組立費については、文部省が定めた積算指針に基づいて積算することとされている。積算指針では、鉄筋は径13mm以下の細物と径16mm以上の太物の2つに区分され、この区分ごとに1t当たりの鉄筋の加工組立歩掛かりが定められている。これらの歩掛かりは、一般の建築物における鉄筋の径別の標準的な使用割合を基に設定されたものである。
しかし、鉄筋の径別の歩掛かりは、鉄筋の径が太くなるに従って低くなるものである。そして、診療棟等は、大型の機器を設置する構造となっているなどのため、一般の建築物に比べ太い鉄筋の使用割合が高くなっており、鉄筋の径別の使用割合が標準的な使用割合とは著しく異なっていて実態に即さないものとなっていた。したがって、本件工事における鉄筋加工組立費の積算は、鉄筋の径別の使用割合の実態に即して行う要があり、そのようにしたとすれば積算額を低減できたと認められた。
このような事態が生じているのは、文部省において、鉄筋の径別の使用割合の実態に即した積算を行うための具体的な方法が示されていないことなどによると認められた。
予定価格の積算の適正を期すため、診療棟等のような大規模な建物の建築工事における鉄筋の加工組立費の積算に当たり、鉄筋の経別の使用割合の実態に即して積算するために積算指針の改正を行うよう、文部大臣に対し平成2年12月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
2 当局が講じた是正改善の処置
文部省では、本院指摘の趣旨に沿い、3年4月に鉄筋の径別の使用割合の実態に即した積算とするよう、積算指針を改正し、同年5月以降に発注する工事について適用することとし、予定価格積算の適正化を図る処置を講じた。