1 本院が要求した是正改善の処置
宅地取得資金の貸付けは、自ら居住する住宅の用に供する土地の取得に必要な資金を市町村が貸し付けるもので、建設省では、その財源の一部としてその市町村に国庫補助金を交付している。そして、宅地取得資金の借受人は取得した土地に住宅を建設する義務があり、建設に着手する期限は、貸付後2年とされている。
この宅地取得資金の貸付けに係る住宅建設の状況等について調査したところ、借受人が、貸付対象土地を取得していなかったり、取得後無断で処分していたり、取得していても住宅の建設に着手していなかったりしていて適切でない事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、借受人が貸付事業について十分認識していなかったことにもよるが、市町村が、貸付対象土地の取得及び住宅建設の状況把握や指導を十分に行っていないこと、建設省が、市町村において貸付事業の運営を適正に行うよう指導監督を十分に行っていないことなどによると認められた。
貸付事業の適正な運営を確保するため、市町村が次のような措置を執るなどするよう、建設大臣に対し平成2年12月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
(ア) 貸付対象土地の未取得及び無断処分並びに住宅建設未着手の事態について是正措置を講じること
(イ) 貸付対象土地の取得及び使用の状況や住宅建設状況を把握できるような手段を講じること
2 当局が講じた是正改善の処置
建設省では、本院指摘の趣旨に沿い、3年3月に都道府県等に通達を発するなどして、市町村が、次のような処置を執るよう指導するなどして、本件貸付事業の適正な運営を確保するための処置を講じた。
(ア) 貸付対象土地の未取得及び無断処分並びに住宅建設未着手のものについては、貸付対象土地の取得、住宅建設の早期着手を指導し、その見込みのないものについては期限前償還請求を行い補助金を返還させること
(イ) 今後の貸付事業の運営に当たっては、的確な審査を行うこと、貸付条例等の整備を行うこと、貸付対象土地の取得等を適宜把握すること