1 本院が要求した是正改善の処置及び表示した改善の意見
厚生省の貸付けを受けて、都道府県等が貸付けを行う母子福祉資金及び寡婦福祉資金の貸付事業の運営状況について調査した。
その結果、16府県及び4市(以下「府県等」という。)において、次のように適切とは認められない事態が見受けられた。
(ア) 母子福祉資金で、相当の貸付財源を保有しているのに国から貸付けを受けているもの
(イ) 母子福祉資金で、多額の余剰資金が滞留している寡婦福祉資金から融通を受けることができないため国から貸付けを受けているもの
(ウ) 母子福祉資金及び寡婦福祉資金の余裕金の運用益を、各資金の特別会計に適正に計上していないもの
このような事態が生じているのは、厚生省が府県等から提出された貸付事業計画等を十分審査しなかったこと、母子及び寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)において両特別会計の間で資金の融通を図ることとなっていないこと、厚生省が府県等に対し運用益の計上方法について適切な指導を行っていなかったことなどによると認められた。
母子福祉資金及び寡婦福祉資金の貸付事業の適切な運営を図るために次のような処置を講ずるとともにその周知徹底を図るよう、厚生大臣に対し平成2年12月に、会計検査院法第34条及び第36条の規定により是正改善の処置を要求し、及び改善の意見を表示した。
(ア) 母子福祉資金の貸付事業計画等を十分審査するようにし、都道府県等に対して実態に即した適切な貸付事業計画等を作成させる。(是正改善の処置要求)
(イ) 寡婦福祉資金の活用を図るとともに、両特別会計の間で資金の融通が図られるようにする。(改善の意見表示)
(ウ) 都道府県等に対して、適正な運用益を両特別会計に計上させる。(是正改善の処置要求)
2 当局の処置状況
厚生省では、本院指摘の趣旨に沿い、上記の(ア)、(イ)のうち寡婦福祉資金の活用及び(ウ)については、3年4月に母子及び寡婦福祉法施行令(昭和39年政令第224号)の一部を改正するなどしてそれぞれ所要の処置を講じた。 しかし、同省では、(イ)のうち、両特別会計の間の資金融通については、関係方面と調整したうえ、両資金の統合を図るため母子及び寡婦福祉法の改正を検討しているところである。