1 本院が表示した改善の意見
東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社(以下「各会社」という。)では、駅施設、鉄道用地、人材等社内の経営資源を最大限活用することにより、鉄道事業収入に次ぐ収入を確保し、安定的かつ健全な経営基盤を確立することを目的として直営店舗事業を展開している。
しかし、各会社では、直営店舗事業について売上収入と売上原価の対比を行う程度にとどまり、この事業全体の収支を把握するのに必要な収支管理を行っていなかった。そこで、本院において、売上原価以外の費用も含めて平成2年度の直営店舗事業の収支状況について調査したところ、全体として費用が売上収入を大幅に上回り、費用超過となっていることが判明した。さらに、昭和63年度以前に設置した店舗の収支状況をみると、大多数の店舗が費用超過となっていて、売上収入が費用のうち人件費にも満たないものなどが多数見受けられた。そして、費用超過となっている店舗のうち大半の店舗で設置後の推移を勘案した見直しが十分行われておらず、管理が十分でない状況となっていた。
このような状況となっているのは、直営店舗事業を展開するに当たり、収入の確保を目的として収入管理を中心に行い費用の把握を十分に行ってこなかったこと、鉄道事業に従事しなくなった社員の活用を図ることに重点をおいた管理をしていることなどによるものである。
直営店舗事業については、社内の人材を活用するという一面はあるものの、費用超過になっている店舗について早急に適切な対応策を講じないまま推移すると、今後も収支の改善が図られない状況が継続するばかりでなく、事業の目的に沿わないことになると認められた。
直営店舗事業については、全体の収支に多額の損失を生じている状況から、次のような対策を講ずるよう、各会社の代表取締役社長に対し平成3年12月に、会計検査院法第36条の規定によりそれぞれ改善の意見を表示した。
(ア) 各店舗の収支状況を把握したうえで、大幅な費用超過となっている店舗の要員配置、立地条件、顧客の動向等を的確に把握する。
(イ) これによって店舗ごとの管理を強化して収益性の向上に必要な具体的対策を講じ、収支改善を図る。
(ウ) 今後新たに店舗を設置するに当たっても、上記の諸点に留意して、適切な設置及び管理を図る。
2 当局が講じた改善の処置
各会社では、本院指摘の趣旨に沿い、直営店舗事業の改善を図るために、次のような処置を講じた。
(ア) 各店舗の収入及び費用を明確化し、店舗別及び全体の収支状況を把握するとともに店舗ごとの管理の徹底を図った。
(イ) 各店舗の収支を把握したうえで、大幅な費用超過となっている店舗を廃止したり、店舗の要員配置、営業時間、販売品目の見直しを行ったりするなど収益性の向上に必要な具体的対策を講じた。
この結果、昭和63年度以前に設置した店舗において生じている収支差損は、次のとおり改善された。
2年度(A) | 3年度(B) | 改善額(A−B) | |
東日本旅客鉄道株式会社 | 41億5728万余円 | 36億8541万余円 | 4億7187万余円 |
東海旅客鉄道株式会社 | 8億5059万余円 | 6億7930万余円 | 1億7128万余円 |
九州旅客鉄道株式会社 | 13億8195万余円 | 11億1385万余円 | 2億6809万余円 |
(ウ) 新たな店舗の設置については、顧客の動向、収益性等を十分に検討したうえで適切な設置及び管理を図るなどした。