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  • 平成4年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

護衛艦に搭載する砲のオーバーホールの実施に当たり、契約業務を簡素化するなどしてオーバーホールを経済的に実施するよう改善させたもの


護衛艦に搭載する砲のオーバーホールの実施に当たり、契約業務を簡素化するなどしてオーバーホールを経済的に実施するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)装備品等整備諸費
平成4年度国庫債務負担行為
(組織)防衛本庁 (事項)装備品等整備
部局等の名称 要求部局 海上幕僚監部
契約部局 海上自衛隊需給統制隊
契約名 武器等修理用部品モジュールオシレーターほか175件
契約の概要 護衛艦に搭載する砲のオーバーホールの際に官給する部品等の製造
契約金額 84,882,300円
契約の相手方 株式会社日本製鋼所
契約 平成5年3月 随意契約
支払 平成5年9月
節減できた調達額 7520万円

<検査の結果>

 上記の契約で調達した官給するための部品は、砲のオーバーホールに係る契約業務を簡素化するなどしていれば調達する要はなく、約7520万円が節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、海上幕僚監部で、契約業務についての検討が十分でなく、標準的な仕様書が作成されていなかったことなどによるものと認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、海上幕僚監部では、平成5年11月に、標準的な仕様書を制定し、契約業務の簡素化を図るなどして、砲のオーバーホールを経済的に行うようにするための処置を講じた。

1 砲のオーバーホール用部品の調達の概要  

(砲のオーバーホール)

 海上幕僚監部(以下「幕僚監部」という。)では、護衛艦「たかつき」ほか12隻に搭載されている24門の砲(54口径5インチ単装速射砲)について、昭和50年度以降、所定の期間が経過したものから、護衛艦の定期検査の際に撤去し、この分解修理を行うオーバーホールを実施している。
 砲のオーバーホールは、砲の製造修理会社(以下「製造会社」という。)で行っており、その性能回復及び信頼性の確保を図るため、砲を分解し、検査、修理等を行った後に組み立て、組立機器調整試験を行い、最後に砲として総組立し総合試験を行うものである。

(オーバーホールの契約を締結するまでの手続)

 護衛艦の定期検査開始後、オーバーホールの契約を締結するまでの手続は、次のとおりである。

ア 砲は、護衛艦の定期検査の契約後、護衛艦から撤去し、製造会社に輸送する。

イ 物品管理上の手続として、護衛艦が在籍する定係港の補給所から呉補給所へ管理換を行い、呉補給所は呉造修所に対し砲の物品修理請求を行う。

ウ この請求に基づき、呉造修所はオーバーホールの契約ごとに個別に仕様書を作成するなどし、呉地方総監部に対し物品修理要求を行う。

エ 呉地方総監部は予定価格調書の作成などを行った後、製造会社と随意契約により砲のオーバーホールの請負契約を締結する。 

(護衛艦の定期検査と砲のオーバーホール) 

 砲を搭載している護衛艦の定期検査は、通常約5箇月でこれを完了することとなっている。一方、砲のオーバーホールは、護衛艦の定期検査が開始されてから、上記の契約手続を行った後、通常約12箇月を要して実施されている。したがって、護衛艦の定期検査期間中に、砲のオーバーホールを行って再び同じ護衛艦に搭載することはできないことになる。このため、幕僚監部では、護衛艦に搭載している砲とは別に予備砲を保有し、護衛艦の定期検査の際、撤去した砲に代えてこの予備砲を搭載することとしている。そして、護衛艦から撤去した砲は、オーバーホールを行った後、予備砲として保有し、次の定期検査を行う護衛艦に搭載することとしている。

(オーバーホール用部品の調達)

 幕僚監部では、護衛艦の定期検査の計画に基づき、平成5年度に護衛艦「ひえい」の定期検査と搭載されている砲のオーバーホールを実施することとしていた。そして、本件護衛艦の定期検査とこの砲の搭載を予定している他の護衛艦の定期検査の時期が近接していたため、砲のオーバーホールを行える期間は、9箇月しか確保できず、通常の12箇月に3箇月足りないとしていた。
 このため、幕僚監部では、砲の一部を構成するものであらかじめ組み立てられた部品(以下「組部品」という。)を官給し、オーバーホールの工程のうち、官給された組部品に係る分解、検査、修理、組立て等の作業を省略することにより、砲のオーバーホールの期間を3箇月短縮させることとして、次のとおり、組部品の調達計画を策定していた。

〔1〕 製造にかなりの日数を要する組部品については、3年度に調達実施本部に要求して調達し、この組部品を使用することによりオーバーホールに必要な期間を2箇月短縮することとした。 

〔2〕 製造にそれほど日数を要しない組部品については、4年度に海上自衛隊需給統制隊に要求して調達し、この組部品を使用することによりオーバーホールに必要な期間を更に1箇月短縮することとした。 

 そして、上記の〔2〕 の組部品の調達について、同需給統制隊では、他の武器等修理用部品とともに、組部品(17品目19個)の製造を、5年3月に随意契約により、製造会社に84,882,300円(このうち組部品に係る分75,285,790円)で請け負わせ、5年7月呉補給所に納入させていた。

2 検査の結果 

(調査の観点)

 本件のように、砲のオーバーホールに通常必要な12箇月の期間を確保することが困難で、組部品を調達する要がある場合には、オーバーホールの契約業務等を簡素化するなどして、早期に契約を締結しオーバーホールを行える期間を長く確保することにより、組部品の調達額の節減が図れるかどうか調査した。

(調査の結果)

 幕僚監部では、組部品の調達計画を策定するに当たって、本件護衛艦の定期検査の契約日から、前記の砲のオーバーホールに係る所定の手続を経て、70日目の日に、砲のオーバーホールを契約することとしていた。
 上記において、幕僚監部が砲のオーバーホールの契約日を本件護衛艦の定期検査の契約日から70日目の日としていたのは、呉地方総監部において砲のオーバーホールの契約を締結するまでの業務に要する期間を次のように見込んでいたことによるものである。

〔1〕 本件護衛艦の定期検査の契約日から、撤去した砲を製造会社に搬入するまでの期間 30日

〔2〕 砲が製造会社に到着した後、呉造修所が、砲の欠品、損傷の有無を確認するなどしてオーバーホールに係る仕様書等を作成し、呉地方総監部に提出するまでの期間 20日

〔3〕 呉地方総監部が、予定価格調書等の契約関係書類を作成し、契約審査を行って契約を締結するまでの期間 20日 

〔1〕 +〔2〕 +〔3〕 70日

 幕僚監部では、このオーバーホールの契約日までの70日の期間について、オーバーホールの確実性等を期するために一般的に必要な期間であるとしていた。
 しかし、調査したところ、次のように契約業務に必要な手続を改善するなどすれば、本件護衛艦の定期検査の契約日からオーバーホールの契約日までの期間を40日とすることが可能となり、30日短縮することができたと認められた。

〔1〕 本件護衛艦の定期検査の契約日から、撤去した砲を製造会社に搬入するまでの期間は、幕僚監部の算定どおり30日とする。

〔2〕 仕様書については、従来、撤去した砲が製造会社に到着した後、契約ごとに個別に作成していたが、その内容の大半が共通的なものであることから、標準的な仕様書を作成する。そして、この仕様書を使用して予定価格調書等の契約関係書類を作成することとすれば、上記〔1〕 の期間内に作成することが可能となる。

〔3〕 砲の到着後、砲の欠品、損傷の有無の確認、契約審査等の契約締結に至るまでの必要な業務に要する期間は、過去の調査実績により、到着日から10日とする。 

(節減できた調達額)

 上記により、本件護衛艦の定期検査の契約日から砲のオーバーホールの契約を締結するまでの期間70日が40日となり30日短縮されることから、オーバーホールを行える期間が30日長く確保されることになり、本件護衛艦から撤去した砲のオーバーホール期間9箇月は10箇月となる。
 したがって、オーバーホールに必要な通常の期間12箇月を2箇月短縮すればよいことになることから、3年度に調達した組部品のみでオーバーホールを完了できることとなり、4年度に調達した本件組部品の官給を計画し、調達する要はなく、その調達額約7520万円は節減できたと認められた。  

(改善を必要とする事態) 

 幕僚監部では、護衛艦の定期検査の実施に伴う砲のオーバーホールを今後も引き続き行うものであり、その際、砲を撤去する護衛艦とこの砲の搭載を予定している護衛艦との定期検査の間隔が短いときには、必要なオーバーホール期間を確保できない場合が生じることになる。
 ついては、幕僚監部において、砲のオーバーホールの実施に当たっては、標準的な仕様書を作成し、その契約業務の簡素化を図るなどして、契約締結時期を早めることにより、オーバーホール期間を長く確保し、オーバーホールに要する経費の節減に努める必要があると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、幕僚監部では、5年11月に、標準的な仕様書を制定し、これにより契約業務の簡素化を図るなどして、もって砲のオーバーホールを経済的に行うようにするための処置を講じた。