会計名及び科目 | 一般会計 (部)官業益金及官業収入 (款)官業収入 (項)病院収入 |
部局等の名称 | 放射線医学総合研究所 |
看護料の概要 | 保険医療機関が、入院患者に対し、都道府県知事の承認を得て厚生大臣の定める基準に該当する看護を行った場合に、診療報酬として請求することができるもの |
看護に係る診療報酬請求額 | 46,847,940円 | (平成4年度) |
増加する診療報酬の額 | 9,995,380円 | (平成4年度) |
<検査の結果> |
上記の研究所では、保険医療機関として、その設置する病院において、特2類看護料を請求できる看護を行っていたと認められるにもかかわらず、特2類看護に係る千葉県知事の承認を得ていなかったため、これより低額な特1類看護(I)の看護料しか請求していなかった。 したがって、同研究所は、特2類看護に係る承認申請を行って、その承認を受けるべきであったと認められ、このようにしたとすれば、診療報酬請求額が9,995,380円増加したと認められた。 このような事態が生じていたのは、同研究所において、基準看護の制度の趣旨の理解が十分でなかったことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、同研究所では、平成5年8月に、千葉県知事に対し特2類看護に係る承認申請を行い、同年10月にその承認を受け、看護の実態に適合した適正な診療報酬を請求するための処置を講じた。 |
1 制度の概要
科学技術庁の放射線医学総合研究所(以下「放医研」という。)では、放射線医学に関する基礎研究の成果を臨床応用するために、放射線科の病院を設置し、保険医療機関として患者の治療を行っている。
保険医療機関は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(昭和33年厚生省告示第177号)により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定することになっている。そして、あらかじめ都道府県知事の承認を受けて 「看護、給食及び寝具設備の基準」(昭和33年厚生省告示第178号)に定められた基準に該当する看護(以下「基準看護」という。)を行った場合には、看護の実態に応じた所定の看護料(以下「基準看護料」という。)を算定できることになっている。この基準看護料は、正看護婦、准看護婦及び看護助手(以下「看護職員」と総称する。)1人当たりの入院患者数、看護職員の最少必要数に対する正看護婦の割合などに応じて区分されている。
基準看護のうち、一般病棟(結核病棟、精神病棟等意外の病棟)における特1類看護(I)(平成4年3月以前は「特1類看護」)及び特2類看護の主な承認要件及び基準看護料の額は、次表のとおりとなっている。
区分 | 特1類看護(I) | 特2類看護 |
〔1〕 看護職員1人当たりの入院患者数 | 3人以下 | 2.5人以下 |
〔2〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦の割合 | 4割以上 | 4割以上 |
〔3〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦及び准看護婦の割合 | 8割以上 | 8割以上 |
基準看護料の額 (患者1人1日当たり。4年度の額) |
入院期間に応じて 4,270円又は4,190円 |
入院期間に応じて 5,180円又は5,100円 |
(注)1 | 〔1〕 の看護職員の数は申請時の実数、入院患者数は申請時の直近1箇年間の実績による。 |
2 | 〔2〕 、〔3〕 の看護職員の最少必要数は上記の入院患者数を基にした最少必要数、正看護婦及び准看護婦の数は申請時の実数による。 |
そして、基準看護の承認申請に当たっては、人員及び看護内容が安定的に充足されることを担保するため、承認を受けようとする基準看護について、申請前3箇月間の実績が必要とされている。
放医研では、干葉県知事から、その設置する病院(88床)について特1類看護(A)の承認を受けていて、これに基づき、看護に係る診療報酬として、4年度に46,847,940円を社会保険診療報酬支払基金等に請求し、これによる病院収入を得ていた。
2 検査の結果
本院は、放医研における看護の実態及び看護に係る診療報酬の請求が適切に行われているかについて調査した。
放医研における看護の実態についてみると、3、4両年度の各月において、看護職員1人当たりの入院患者数及び看護職員の構成比率は次表のとおりとなっていた。
〔1〕 看護職員1人当たりの入院患者数 | 1.3人〜1.6人 |
〔2〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦の割合 | 10割6分〜15割 |
〔3〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦及び准看護婦の割合 | 14割4分〜18割6分 |
このように、放医研の病院は遅くとも3年4月から特2類看護の承認要件を充足していた。したがって、当初の3箇月間の実績に基づき、速やかに特2類看護に係る承認申請を行い、その承認を受けるべきであったと認められた。
いま、上記のとおり速やかに特2類看護の承認申請を行い、その承認を受けたこととして、4年度分の看護に係る診療報酬請求額を修正計算すると、56,843,320円となり、放医研における診療報酬請求額46,847,940円に比べて、請求額が9,995,380円増加したと認められた。
このような事態が生じていたのは、放医研において、基準看護の制度の趣旨の理解が十分でなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、放医研では、5年8月に、千葉県知事に対し特2類看護に係る承認申請を行い、同年10月に承認を受けて、看護の実態に適合した適正な診療報酬を請求するための処置を講じた。