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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(28)−(127) 医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)老人福祉費
(項)国民健康保険助成費
(項)生活保護費
(項)精神保健費
厚生保険特別会計(健康勘定) (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
船員保険特別会計 (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
部局等の名称 社会保険庁、宮城県ほか25都府県
国の負担の根拠 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、精神保健法(昭和25年法律第123号)
医療給付の種類 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法及び精神保健法に基づく医療
実施主体 国、県12、市314、特別区23、町428、村73、国民健康保険組合62、計913実施主体
医療機関 公立16、法人70、個人26、計112医療機関
不当と認める国の負担額 343,997,623円
 上記の913実施主体において、入院時医学管理料、処置料、注射料等の診療報酬の支払に当たり、請求に対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費615,227,365円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額343,997,623円が不当と認められる。

1 医療給付の概要

(医療給付の種類)

 厚生省の医療保障制度には、老人保健制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、 これらの制度により次の医療給付が行われている。

(ア) 老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法及び国民健康保険法(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(70歳以上の者又は65歳以上70歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療

(イ) 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者((ア)の老人を除く。)に対して行う医療

(ウ) 公費負担医療制度の一環として、都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村が、生活保護法に基づき要保護者に対して行う医療及び精神保健法に基づき精神障害者を医療機関に入院させて行う医療

(診療報酬)

 これらの医療給付においては、被保険者(生活保護法に基づく要保護者及び精神保健法に基づく精神障害者を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)がその費用を医療機関に診療報酬として支払う。

 診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(下図参照)

診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(下図参照)。

(ア) 診療を担当した医療機関は、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定する。

(イ) 医療機関は、上記診療報酬のうち、患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬(以下「医療費」という。)については、老人保健に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、公費負担医療制度に係るものは都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村に請求する。

 このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。

〔1〕 医療機関は、診療報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に送付する。

〔2〕 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関ごと、保険者等ごとの請求額を算定し、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。

(ウ) 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認のうえ、審査支払機関を通じて医療機関に医療費を支払う。

(国の負担)

 保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。

(ア) 老人保健法に係る医療費については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、地方公共団体及び保険者が以下のように負担している(下図参照)

〔1〕 老人保健法により、老人保健施設療養費等を除く老人医療費については、国は10分の2を、都道府県・市町村はそれぞれ10分の0.5ずつを負担することになっており、残り10分の7については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。また、老人保健施設療養費等については、国は12分の4を、都道府県・市町村はそれぞれ12分の1ずつ負担することになっており、残りの12分の6については老人医療費拠出金が財源となっている。

〔2〕 国民健康保険法により国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の一部を負担している。(平成4年度における国の負担額は老人医療費の約12%)

〔3〕 健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。(4年度における国の負担額は老人医療費の約21%)

〔3〕健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。(4年度における国の負担額は老人医療費の約21%)

(注) ( )書きは、老人保健施設療養費等に係る費用の負担割合である。

(イ) 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費はその全額を、〔2〕市町村が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は当該市町村が支払った額の50%を、〔3〕国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は当該国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。

(ウ) 生活保護法及び精神保健法に係る医療費については、国は都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村が支払った医療費の4分の3を負担している。

2 検査結果の概要

 前記の913実施主体(112医療機関)が行った診療報酬の支払について、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費615,227,365円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額343,997,623円が不当と認められる。
 これを診療報酬の別に整理して示すと、次のとおりである。

〔1〕 入院時医学管理料等の支払が適切を欠いたもの
249実施主体(13医療機関) 不当と認める国の負担額 129,999,986円
〔2〕 処置料等の支払が適切を欠いたもの
254実施主体(33医療機関) 不当と認める国の負担額 76,674,876円
〔3〕 注射料等の支払が適切を欠いたもの
346実施主体(25医療機関) 不当と認める国の負担額 44,072,723円
〔4〕 検査料等の支払が適切を欠いたもの
229実施主体(12医療機関) 不当と認める国の負担額 27,356,161円
〔5〕 老人基本診療料等の支払が適切を欠いたもの
18実施主体(13医療機関) 不当と認める国の負担額 25,791,055円
〔6〕 室料等の支払が適切を欠いたもの
90実施主体(4医療機関) 不当と認める国の負担額 15,634,407円
〔7〕 給食料の支払が適切を欠いたもの
39実施主体(4医療機関) 不当と認める国の負担額 6,876,734円
〔8〕 リハビリテーション料の支払が適切を欠いたもの
54実施主体(4医療機関) 不当と認める国の負担額 6,389,647円
〔9〕 救命救急入院料等の支払が適切を欠いたもの
107実施主体(4医療機関) 不当と認める国の負担額 11,202,034円

3 検査結果の詳細

 上記の診療報酬の支払が不当と認められる事態について、診療報酬の別に、その算定方法及び医療機関における実際の算定・請求等の詳細を示すと次のとおりである。

〔1〕 入院時医学管理料等の支払が適切を欠いたもの

(入院時医学管理料等の算定方法)

 入院時医学管理料及び看護料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。そして、医療機関において、医師及び看産婦等の数が標準となる数にそれぞれ100分の80を乗じて得た数以下である場合(以下「医師看護婦不足」という。)の翌月分の入院時医学管理料及び看護料については、所定点数に100分の90を乗じて得た点数を用いて算定することとされている。また、医師看護婦不足の医療機関については、基準給食及び基準寝具(以下「基準給食等」という。)の承認を行わないこととされており、既に基準給食等の承認を受けている医療機関が医師看護婦不足に該当する場合には速やかに基準給食等の承認辞退の申請をさせることになっている。
 また、特例許可外老人病院(注) においては、入院時医学管理料は特例許可老人病院(注) より点数が低く定められている。

(検査の結果)

 検査の結果、茨城県日立市ほか12市区町に所在する13医療機関において、入院時医学管理料等の請求が不適正と認められるものが13,852件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 医師看護婦不足であるのに入院時医学管理料等について所定の減額をしないで算定していた。

(イ) 医師、看護婦、准看護婦及び介護職員の数が特例許可老人病院の基準を満たさず特例許可外老人病院であるのに、点数の高い特例許可老人病院の入院時医学管理料を算定していた。このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、都府県において、定期的に調査し把握している医師等の配置に関する資料の活用が十分でなかった。

 このため、検査料の算定を誤っているものも含めて、上記の13,852件の請求に対し茨城県日立市ほか248市区町村等が支払った医療費について241,528,089円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額129,999,986円は負担の要がなかったものである。

(注)  特例許可老人病院・特例許可外老人病院  特例許可老人病院は、主として老人慢性疾患の患者を収容する病院であって、医師、看護婦等の配置について医療法(昭和23年法律第205号)第21条第1項のただし書きによる特例として、都道府県知事から一般病院より緩和された基準によることの許可を受けた病棟を有するもの
 特例許可外老人病院は、主として老人慢性疾患の患者を収容する病院であって、医師、看護婦等の配置が医療法主の特例に該当しないことなどから特例許可老人病院としての許可等を受けていないもの

 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(28)

茨城県

日立市ほか21市区町村等

1,432
千円
35,123
千円
16,270

入院時医学管理料、看護料等の支払不適切
(29)  同 古河市ほか75市区町村等 3,055 76,558 41,308
(30)  同 水海道市ほか51市区町村等 1,849 46,692 25,644
(31)  同 鹿島郡神栖町ほか12市町等 296 2,439 1,347
(32)  同 結城郡八千代町ほか6市町村等 293 2,209 1,218
(33) 千葉県 市川市ほか10市区町等 167 3,411 1,303
(34) 東京都 江戸川区ほか8市区等 269 4,539 2,289
(35) 岐阜県 安八郡神戸町ほか5市町等 201 5,700 3,227
(36) 大阪府 河内長野市ほか24市町村等 1,106 27,771 15,228
(37) 奈良県 大和郡山市ほか45市町村等 529 13,101 7,451
(38)  同 橿原市ほか29市町村等 181 1,978 1,339
(39) 佐賀県 杵島郡大町町ほか20市町等 4,191 15,718 9,154 入院時医学管理料、検査料等の支払不適切
(40) 大分県 日田市ほか16市町村等 283 6,284 4,215 入院時医学管理料、看護料等の支払不適切
小計 13,852 241,528 129,999

〔2〕 処置料等の支払が適切を欠いたもの

(処置料の算定方法)

 処置料には、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置ごとに所定の点数が定められている。
 このうち、一般処置料の人工腎臓に係る処置については、外来の人工腎臓実施患者に対して人工腎臓実施中に食事を給与した場合は、所定の点数に食事加算をし、この場合において医療用食品(注) を給与したときは更に医療用食品加算をすることとされている。また、人工腎臓に使用される透析用かん流液を希釈する水に含まれているアルミニウム等を逆浸透装置等を用いて除去する処理(以下「水処理」という。)を行う旨を都道府県知事に届け出た医療機関が当該水処理を行った場合、所定の点数に水処理加算をすることとされている。さらに、著しく人工腎臓の実施が困難な心身障害者等に対して行った場合は、所定の点数に心身障害者等の加算をすることとされている。
 そして、人工腎臓に使用される特定治療材料及び薬剤の購入価格は、厚生省告示で定められており、このうち特定治療材料の購入価格は4年4月から低い価格に変更されている。

(検査の結果)

 検査の結果、栃木県真岡市ほか23市区町に所在する33医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが31,035件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 人工腎臓に係る処置において、人工腎臓実施中に食事を給与した際に、医療用食品を使用した事実がないなど医療用食品加算の要件を満たしていないのに、所定の点数に医療用食品加算を行っていた。

(イ) 人工腎臓に係る処置において、都道府県知事に水処理を行う旨の届出をしていないのに、水処理加算を行っていた。

(ウ) 人工腎臓に係る処置について、心身障害者でない者に心身障害者等の加算を行っていた。

(エ) 人工腎臓に使用される特定治療材料について、変更前の高い価格の点数で算定していた。

(オ) 人工腎臓に使用される薬剤について、割高な算定を行ったり、実際よりも多い使用量に基づいて算定していた。

(カ) 人工腎臓に使用される特定治療材料に係る滅菌加算を重複して算定していた。

(キ) 医師の診療が行われていない日に処置料を算定していた。

(ク) 実際の処置よりも高い点数の処置を行ったとして皮膚科軟膏処置料を算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなかった。
 このため、注射料、検査料、基本診療料及び投薬料の算定を誤っているものも含めて、上記の31,035件の請求に対し栃木県真岡市ほか253市区町村等が支払った医療費について139,102,572円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額76,674,876円は負担の要がなかったものである。

(注)  医療用食品  主として入院患者の給食に用いられることを目的とする食品であって、厚生大臣が指定する検査機関において調理加工後の栄養成分が分析され、かつ、当該栄養成分分析値が保たれている食品

 これを医療機関の所在する都県別に示すと次のとおりである。

都府県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(41)

栃木県

真岡市ほか9市町等

1,389
千円
1,578
千円
945

処置料の支払不適切
(42) 千葉県 船橋市ほか11市町等 509 1,622 915
(43)  同 木更津市ほか43市区町等 967 13,247 6,427
(44)  同 茂原市ほか5町等 101 1,063 465
(45) 東京都 足立区ほか14市区等 989 8,881 4,539
(46)  同 町田市ほか8市等 462 5,159 2,407
(47) 神奈川県 横浜市ほか18市区等 4,649 5,602 2,937
(48)  同 横浜市ほか12市区町等 2,020 19,184 9,432
(49)  同 川崎市ほか4市町等 154 1,520 826
(50)  同 相模原市ほか15市区町村等 175 1,544 938
(51) 富山県 高岡市ほか15市町等 3,291 6,736 4,164 処置料及び注射料の支払不適切
(52) 福井県 福井市及び国 384 3,612 2,756 処置料の支払不適切
(53)  同 坂井郡三国町及び国 912 7,581 4,878
(54) 岐阜県 岐阜市ほか5町等 1,049 1,305 786
(55) 静岡県 浜北市ほか12市町村等 1,320 1,473 881
(56) 三重県 松阪市ほか33市町村等 3,137 16,761 9,546 処置料及び投薬料の支払不適切
(57) 三重県 上野市ほか2市等 1,573 7,309 3,849 処置料及び基本診療料の支払不適切
(58)  同 上野市ほか14市町村等 1,436 7,575 4,746 処置料の支払不適切
(59) 奈良県 奈良市ほか7市町等 269 1,973 1,042
(60)  同 桜井市ほか14市町村等 396 3,825 2,384
(61) 和歌山県 和歌山市及び国 1,132 1,438 996
(62) 広島県 尾道市ほか6市町等 379 3,787 2,240
(63)  同 福山市ほか3町等 272 2,081 1,110 処置料及び注射料の支払不適切
(64)  同 福山市及び県 335 1,043 571 処置料の支払不適切
(65) 高知県 南国市ほか37市区町等 745 1511 933 処置料及び検査料の支払不適切
(66) 福岡県 北九州市ほか8市区町等 1,251 1,617 990 処置料及び注射料の支払不適切
(67)  同 福岡市ほか37市区町等 938 4,021 2,371
(68)  同 福岡市ほか5町等 801 5,859 2,597 処置料及び検査料の支払不適切
小計 31,035 139,102 76,674

〔3〕 注射料等の支払が適切を欠いたもの

(注射料の算定方法)

 注射料には、静脈内注射、点滴注射等があり、それぞれ種類ごとに所定の点数が定められている。
 そして、人工腎臓の回路を通して静脈内注射、点滴注射等を行った場合の技術料については算定できないことになっており、また、救命救急医療で救命救急入院料を算定する場合には、点滴注射及び中心静脈注射に係る精密持続点滴注射料は、同入院料に含まれていることから、別途に算定できないこととされている。

(検査の結果)

  検査の結果、宮城県仙台市ほか20市区に所在する25医療機関において、注射料等の請求が不適正と認められるものが21,301件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 人工透析の患者に対して人工腎臓の回路を通して行った静脈内注射、点滴注射等について、人工腎臓の処置料のほかに注射に係る技術料を別途に算定していた。

(イ) 救命救急医療で救命救急入院料を算定しているほかに、点滴注射及び中心静脈注射の精密持続点滴注射に係る技術料の加算を行っていた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等においてレセプトの審査点検が十分でなかった。
 このため、検査料、処置料及び老人基本診療料の算定を誤っているものも含めて、上記の21,301件の請求に対し宮城県仙台市ほか345市区町村等が支払った医療費について73,680,651円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額44,072,723円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(69)

宮城県

仙台市ほか39市町村等

2,665
千円
15,473
千円
8,661

注射料、処置料等の支払不適切
(70) 東京都 新宿区ほか55市区町等 1,161 2,886 1,565 注射料の支払不適切
(71) 岐阜県 岐阜市ほか9市町等 610 1,822 1,010 注射料及び老人基本診療料の支払不適切
(72)  同 大垣市ほか19市町村等 1,331 3,337 2,088 注射料の支払不適切
(73)  同 土岐市ほか8市町等 1,312 3,232 2,398
(74) 静岡県 静岡市ほか2市等 297 1,292 676
(75)  同 島田市ほか8市町等 1,423 3,366 1,949 注射料及び処置料の支払不適切
(76)  同 焼津市ほか4市等 474 1,228 725 注射料の支払不適切
(77)  同 掛川市ほか7市町等 1,182 3,132 1,724 注射料及び処置料の支払不適切
(78) 大阪府 吹田市ほか41市町等 438 1,690 978 注射料の支払不適切
(79)  同 高槻市ほか13市町等 1,578 6,851 4,011
(80) 奈良県 奈良市ほか47市町村等 420 1,627 889
(81) 岡山県 岡山市ほか14市町等 870 1,741 1,425 注射料及び処置料の支払不適切
(82)  同 倉敷市ほか53市区町村等 325 3,360 2,350 注射料の支払不適切
(83)  同 倉敷市ほか19市町等 938 2,100 1,148
(84) 広島県 福山市ほか6市町等 375 2,654 1,624
(85) 香川県 高松市ほか12市区町等 955 2,356 1,454 注射料、処置料等の支払不適切
(86) 福岡県 北九州市ほか23市区町等 2,383 3,727 2,168 注射料及び処置料の支払不適切
(87)  同 福岡市ほか19市町等 1,279 4,483 2,882
(88) 長崎県 諌早市ほか20市町等 722 2,229 1,263 注射料及び検査料の支払不適切
(89) 大分県 大分市ほか5市等 563 5,085 3,075 注射料の支払不適切
小計 21,301 73,680 44,072

〔4〕 検査料等の支払が適切を欠いたもの

(検査料の算定方)

 検査料には、尿検査、血液化学検査等の検体検査料及び超音波検査、呼吸心拍監視等の生体検査料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。また、検査は、治療方針の決定に必要な限度で行うこととし、診療上必要があると認められる範囲内において選択して行うこと、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
 そして、検体検査料のうち一定の血液化学検査料については、それらの検体について20項目以上の検査を一括して行った場合は、項目の種類、回数によらず、上限として定められた点数(245点)で算定すること、また、尿及び血液を検体とする生化学的検査を実施した場合は、尿と血液の検査項目数を合算することなどとされている。
 また、安定した状態にある人工透析患者について、計画的な治療管理を行う場合には、各種の検査項目を包括した慢性維持透析患者外来医学管理料を算定することができるが、同管理料に包括されていない検査の検査料を算定する場合にはその必要性をレセプトの摘要欄に記載することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、東京都中央区ほか8市に所在する12医療機関において、検査料等の請求が不適正と認められるものが12,021件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 多くの患者について検体検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定していた。

(イ) ほとんどの患者について、毎月、20項目以上の血液化学検査を実施するに当たり、検査を2回に分けて実施することなどにより、上限として定められた点数によらずにその都度血液化学検査料を算定していた。

(ウ) 尿及び血液を検体とする生化学的検査を実施するに当たり、尿の検査項目と血液の検査項目とを別々に算定することにより、その都度生化学的検査料を算定していた。

(エ) 安定した状態にある人工透析患者について慢性維持透析患者外来医学管理料を算定しているほかに、同管理料に包括されていない検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定していた。

(オ) 心拍監視料を、誤って高い点数の呼吸心拍監視料として算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等において、医療機関からほとんどの患者に対し画一的に同一の検査を行ったとする請求がなされていることなどを看過し、更に(エ)については、検査の必要性がレセプトの摘要欄に記載されていないことを看過していた。
 このため、注射料、処置料の算定を誤っているものも含めて、上記の12,021件の請求に対し東京都中央区ほか228市区町村等が支払った医療費について45,643,533円の支払が適切でなく、これに対する困の負担額27,356,161円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(90)

東京都

中央区ほか86市区町村等

1,132
千円
6,235
千円
3,177

検査料及び処置料の支払不適切
(91) 三重県 津市ほか11市町村等 660 2,267 1,300 検査料の支払不適切
(92)  同 津市ほか23市町村等 1,483 5,411 3,504
(93) 大阪府 大阪市ほか20市町等 1,179 3,338 2,090
(94)  同 大阪市ほか7市町等 1,735 3,503 1,813
(95) 奈良県 奈良市ほか7市町等 220 2,216 967
(96)  同 大和高田市ほか4市町等 86 2,515 1,546
(97) 岡山県 岡山市ほか21市町等 1,763 3,445 2,222
(98) 福岡県 北九州市ほか3市町等 722 7,889 5,221 検査料及び注射料の支払不適切
(99) 長崎県 長崎市ほか45市町等 1,237 2,573 1,595 検査料の支払不適切
(100) 大分県 大分市ほか19市町等 991 2,182 1,414
(101)  同 大分市ほか9市町等 813 4,065 2,500
小計 12,021 45,643 27,356

〔5〕 老人基本診療料等の支払が適切を欠いたもの 

(老人基本診療料の算定方法)

 老人基本診療料には、老人初診時基本診療料、老人再診時基本診療料等があり、それぞれの診療ごとに所定の点数が定められている。このうち、老人初診時基本診療料は老人保健法の対象となる患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があった場合に、老人再診時基本診療料はその後の診療行為の都度それぞれ算定できることとされている。ただし、特別養護老人ホーム(以下「特養ホーム」という。)に配置されている医師(以下「嘱託医」という。)が特養ホームに赴いてその入所者に行っている診療については、その診療が別途国の補助事業として実施されている老人福祉施設保護事業の一環として行われているものであることから、老人初診時基本診療料、老人再診時基本診療料は算定できないこととされている。そのため、患者が特養ホームの入所者である場合には、レセプトにその旨を表示することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、福島県福島市ほか10市町に所在する13医療機関において、老人基本診療料等の請求が不適正と認められるものが10,759件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 特養ホームの嘱託医が特養ホームに赴いて入所者に行った診療について、老人初診時基本診療料、老人再診時基本診療料等を算定していた。

(イ) 嘱託医となっていない医師が、特養ホームの入所者からの往診の求めによってではなく、定期的に特養ホームヘ赴いて入所者の診療に当たっている場合、その医師は実質的には嘱託医と認められるのに、その医師が行った診療について、(ア)と同様に、老人再診時基本診療料を算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、レセプトに患者が特養ホームの入所者である旨が表示されているものについては審査支払機関等においてその審査点検が十分ではなく、また、その旨が表示されていないものについては市町において特養ホームの入所者か否かについての点検が十分でなかつた。
 このため、注射料の算定を誤っているものも含めて、上記の10,759件の請求に対し福島県福島市ほか17市町等が支払った医療費について46,473,123円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額25,791,055円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。

県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(102)

福島県

福島市ほか1町

1,269
千円
6,578
千円
4,030

老人基本診療料の支払不適切
(103) 群馬県 伊勢崎市 498 3,317 2,218
(104) 千葉県 木更津市 372 1,479 847
(105) 富山県 富山市及び国 794 2,889 1,474
(106)  同 魚津市及び国 2,350 5,263 2,786
(107) 石川県 金沢市ほか1町 1,417 7,701 4,160
(108) 石川県 小松市 363 3,223 1,745 老人基本診療料の支払不適切
(109) 静岡県 藤枝市ほか5市町等 1,274 5,284 3,021 老人基本診療料及び注射料の支払不適切
(110) 和歌山県 那賀郡貴志川町 520 3,703 1,990 老入基本診療料の支払不適切
(111) 広島県 呉市及び国 492 4,306 2,054
(112) 福岡県 北九州市及び国 1,410 2,725 1,460
小計 10,759 46,473 25,791  

〔6〕 室料等の支払が適切を欠いたもの 

(室料等の算定方法)

 室料、看護料及び入院時医学管理料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。そして、医療機関における月平均の入院患者数が、許可を受けた病床数に100分の105を乗じて得た数を超過した場合(以下「定数超過入院」という。)、翌月分の室料、看護料及び入院時医学管理料については、所定点数に100分の80を乗じて得た点数を用いて算定することとされている。また、定数超過入院の医療機関については、基準給食等の承認を行わないこととされており、既に基準給食等の承認を受けている医療機関が定数超過入院に該当する場合には速やかに基準給食等の承認辞退の申請をさせることになっている。

(検査の結果)

 検査の結果、茨城県行方郡牛堀町ほか3市町に所在する4医療機関において、室料等の請求が不適正と認められるものが780件あった。いずれも、定数超過入院となっているのに、翌月の室料等について所定の減額をしないで算定していた。
 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、県において、定期的に調査し把握している入院患者数等に関する資料の活用が十分でなかった。
 このため、上記の780件の請求に対し茨城県行方郡麻生町ほか89市町村等が支払った医療費について26,929,618円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額15,634,407円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。

県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(113)

茨城県

行方郡麻生町ほか21市町村等

88
千円
3,325
千円
1,874

室料、看護料等の支払不適切
(114) 群馬県 高崎市ほか51市町村等 384 17,156 9,341 室料、看護料等の支払不適切
(115) 広島県 広島市ほか9市町等 79 2,856 2,000
(116) 長崎県 佐世保市ほか8市町等 229 3,591 2,417
小計 780 26,929 15,634

〔7〕 給食料の支払が適切を欠いたもの

(給食料の算定方法)

 給食料は、入院時基本診療料の一部であり、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。そして、都道府県知事の承認を得て、基準給食を行った場合に、所定の点数に基準給食の点数を加算することとされており、さらに、厚生大臣が定める特別食を給与したときは、この点数を加算することとされている。この基準給食の承認基準は、医療機関を単位として、給食部門が組織化され、かつ、栄養士が必ず置かれているなど給食を担当する職員が適正に配置されていることなどとされている。そして、都道府県知事は、医療機関が基準給食の承認を得た後に承認の内容と異なった事情が生じた場合には、遅滞なく変更の申請をさせることになっている。また、基準給食の承認を得ている医療機関に対しては、毎年、実地調査を行うとともに、申請書記載の事項について報告を徴し審査を行うことになっている。

(検査の結果)

 検査の結果、岐阜県可児市ほか2市町に所在する4医療機関において、給食料の請求が不適正と認められるものが942件あった。いずれも、栄養士が退職していなくなり、基準給食の承認基準に適合しなくなったのに、変更の申請をしないまま従来どおり、基準給食の点数を加算していた。
 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、県において、栄養士の配置状況に関する資料の活用が十分でなかった。
 このため、上記の942件の請求に対し岐阜県可児市ほか38市町等が支払った医療費について11,475,447円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額6,876,734円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。

県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(117)

岐阜県

可児市ほか23市町等

570
千円
5,969
千円
3,169

給食料の支払不適切
(118)  同 安八郡墨俣町ほか14市町等 220 2,340 1,515
(119) 愛知県 名古屋市ほか5市町等 152 3,165 2,191
小計 942 11,475 6,876

〔8〕 リハビリテーション料等の支払が適切を欠いたもの

(リハビリテーション料の算定方法)

 リハビリテーション料のうち理学療法料には、基本的動作能力の回復訓練の内容に応じて複雑な訓練に係るものと簡単な訓練に係るものがある。このうち、前者は、医師の指導監督の下に1人の理学療法士が1人の患者に対して重点的に個別的訓練を1対1で40分以上専用施設で行った場合に、後者は、医師の指導監督の下に複数の患者に対して基本的動作能力の回復訓練を15分以上行った場合にそれぞれ算定できることとされている。
 また、常時勤務する専従の理学療法士がいることなど厚生大臣が定める施設基準に適合しているとして都道府県知事が承認した医療機関においては、承認施設として高い点数によって算定できることとされている。そして、都道府県知事は、施設の承認後に承認の内容と異なった事情が生じた場合には、遅滞なく変更の申請をさせることになっている。また、承認を得ている医療機関に対しては、毎年、実地調査を行うとともに、申請書記載の事項について報告を徴し審査を行うことになっている。

(検査の結果)

 検査の結果、群馬県群馬郡榛名町ほか3市に所在する4医療機関において、リハビリテーション料の請求が不適正と認められるものが2,059件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 複雑な訓練でないものについて、複雑な訓練を行った場合に用いることになっている高い点数で算定していた。

(イ) 常勤の理学療法士が退職したため承認施設に該当しなくなったのに、変更の申請をしないまま従来どおり、承認施設に適用される高い点数で算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、(ア)については、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなく、ほとんどの患者に対し複雑な訓練を画一的に繰り返し行ったとする請求がなされていることを看過していた。(イ)については、県において、理学療法士の配置状況に関する資料の活用が十分でなかった。
 このため、検査料の算定を誤っているものも含めて上記の2,059件の請求に対し群馬県高崎市ほか53市区町村等が支払った医療費について11,147,333円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額6,389,647円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。

県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(120)

群馬県

高崎市ほか24市区町村等

691
千円
5,773
千円
3,422

リハビリテーション料の支払不適切
(121) 愛知県 瀬戸市ほか10市等 506 1,204 679
(122) 広島県 呉市ほか8町等 468 3,155 1,632 リハビリテーション料及び検査料の支払不適切
(123)  同 広島市ほか14市町等 394 1,014 654 リハビリテーション料の支払不適切
小計 2,059 11,147 6,389

〔9〕 救命救急入院料等の支払が適切を欠いたもの 

(救命救急入院料、手術料、老人看護料、投薬料の算定方法)

 救命救急入院料は、都道府県が定める救急医療に関する計画に基づいて運営される救命救急センターを有しているなど厚生大臣の定める救命救急入院に係る施設基準に適合しているとして都道府県知事が承認した医療機関が、救命救急医療を行った場合に算定することとされている。
 眼球の手術料については、片眼において2以上の手術を同時に行った場合、主たる手術の所定点数のみにより算定することとされているが、特定の症状を伴うものについては従たる手術料を併せて算定できることとされている。
 老人看護料のうち、その他の看護料は、入院期間が6月を超える場合、6月以内の点数よりも低い点数が定められている。
 内服薬の投薬量は、診療1回について2日分を標準とし、帰郷療養等特殊の事情がある場合において必要があると認められるときは14日分を限度として投与できることになっている。さらに、厚生大臣が長期投与に適するとして定めた内服薬は、厚生大臣が定める慢性的経過をたどる疾患にかかっている患者に対しては1回につき30日分を限度として投与することができるとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、東京都府中市ほか3市に所在する4医療機関において、救命救急入院料等の請求が不適正と認められるものが4,348件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 救命救急入院に係る施設の承認を得ていないにもかかわらず、救命救急入院料を算定していた。

(イ) 片眼で同時に行った2手術について、特定の症状を伴わないものに従たる手術料を併せて算定していた。

(ウ) 入院期間が6月を超える老人の患者について、6月以内の高い点数で老人看護料を算定していた。

(エ) 厚生大臣が長期投与に適するとして定めた薬以外の内服薬を1回に14日分の限度を超えて投与したり、厚生大臣の定めた内服薬ではあるが所定の疾患にかかっていない患者に対して1回に14日分の限度を超えて投与したりして、これにより投薬料を算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等において、レセプトの審査点検が十分でなかった。
 このため、注射料、老人基本診療料の算定を誤っているものも含めて、上記の4,348件の請求に対し東京都府中市ほか106市区町村等が支払った医療費について19,246,999円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額11,202,034円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 実施主体 不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額 摘要

(124)

東京都

府中市ほか26市区

1,242
千円
3,579
千円
1,742

老人看護料の支払不適切
(125) 大阪府 大阪市ほか34市町村等 192 3,473 2,138 手術料及び注射料の支払不適切
(126) 岡山県 岡山市ほか23市町等 1,189 2,201 1,363 投薬料及び注射料の支払不適切
(127) 大分県 大分市ほか23市町村等 1,725 9,992 5,958 救命救急入院料及び老人基本診療料の支払不適切
小計 4,348 19,246 11,202
〔1〕〜〔9〕 の計 97,097 615,227 343,997