会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生本省 (項)国民健康保険助成費 |
部局等の名称 | 厚生本省(交付決定庁) |
大阪府、茨城、福井、兵庫、和歌山各県(支出庁) | |
交付の根拠 | 国民健康保険法(昭和33年法律第192号) |
交付先 | 日立市ほか5市町(保険者) |
財政調整交付金の概要 | 市町村等の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、災害等特別の事情を考慮して交付する特別調整交付金がある。 |
上記に対する交付金交付額の合計 | 2,287,413,000円 | (昭和63年度〜平成4年度) |
不当と認める交付金交付額 | 97,614,000円 | (昭和63年度〜平成4年度) |
1 交付金の概要
国民健康保険は、市町村等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、助産費、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づいて交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。
普通調整交付金は、一定の基準により算定される収入額(調整対象収入額)(注1)
が同じく一定の基準により算定される支出額(調整対象需要額)(注2)
に満たない市町村に対し、その不足を公平に補うことを目途として交付するものである。
普通調整交付金の交付額は、調整対象需要額が調整対象収入額を超える額に別に定める率を乗じて得た額となっている。ただし、市町村における保険料又は保険税(以下「保険料」という。)の収納努力を交付額に反映させるため、徴収の決定を行って納付義務者たる世帯主に 賦課した保険料の額(以下、徴収の決定を「調定」、その額を「調定額」という。)に対する収納した額の割合が所定の率を下回る市町村については、その下回る程度に応じて段階的に5%から20%の率で交付額を減額することとなっている(以下この率を「減額率」という。)。
この減額の基準となる保険料の収納割合は、全被保険者から退職被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)を除いた一般被保険者に係る保険料について計算した次の〔1〕 、〔2〕 の収納割合のうちいずれか高い方の割合(以下「保険料収納割合」という。)とされている。
〔1〕 当該年度分の保険料で1月31日までに納期が到来している分の調定額に対する同日までの収納額の割合
〔2〕 前年度分の保険料の調定額に対する前年度の収納額の割合(以下「前年度収納割合」という。)
また、保険料収納割合による交付額の減額率は、次の減額率表のとおりとなっている。
保険料収納割合 | 減額率 (%) |
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一般被保険者数1万人未満である市町村 (%) |
一般被保険者数1万人以上5万人未満である市町村 (%) |
一般被保険者数5万人以上である市町村 (%) |
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92以上94未満 | 91以上93未満 | 90以上92未満 | 5 |
87以上92未満 | 86以上91未満 | 85以上90未満 | 10 |
80以上87未満 | 80以上86未満 | 80以上85未満 | 15 |
80未満 | 80未満 | 80未満 | 20 |
特別調整交付金は、市町村について災害その他特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付するものである。そして、国民健康保険事業に対する経営努力が顕著であるなど、事業の適正な運営に積極的に取り組んでいると認められる場合にも交付されている。この場合に交付する特別調整交付金の中には、保険料の収納割合の確保・向上に努めている市町村に交付するもの(以下「収納割合確保・向上特別交付金」という。)があり、その交付額は別に定める定額となっている。
収納割合確保・向上特別交付金の交付を受けることができる市町村は、前年度の全被保険者に係る保険料の収納割合が、全被保険者数の区分に応じて別に定められた率以上であるなどの要件を満たす市町村となっている。
財政調整交付金の交付手続は、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕 交付申請書を受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査のうえ、これを厚生省に提出し、〔3〕 厚生省はこれに基づき交付決定を行い交付することとなっている。(注3)
(注1) | 調整対象収入額 | 本来徴収すべきとされている保険料の額で、医療費を基に算定される応益保険料額と被保険者の所得を基に算定される応能保険料額の合計額 |
(注2) | 調整対象需要額 | 本来保険料で賄うべきとされている額で、医療費、老人保健医療費拠出金及び保健施設費の合計額から愚者の一部負担金及び療養給付費等負担金等の国庫補助金等を控除した額 |
(注3) | 普通調整交付金の交付については、国の予算措置の都合により、昭和57年度から特例として、当年度分の交付金の一部は翌年度に交付するとされている。したがって、交付額は、当年度分として算定された交付金の額から翌年度に交付される額を控除した額に前年度分の交付金の額のうち当年度に交付される額を加えた額となる。 |
2 検査の結果
財政調整交付金の交付について検査した結果、日立市ほか5市町において、交付金97,614,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
これは、日立市ほか5市町が保険料の収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、茨城県ほか4府県のこれに対する審査が十分でなかったことなどのため、普通調整交付金が減額を全部又は一部免れて過大に交付されたり、交付すべきでない収納割合確保・向上特別交付金が交付されたりしていたものである。
これを、府県別に示すと次のとおりである。
府県名 | 交付先 (保険者) |
年度 | 交付金交付額 | 左のうち不当と認める額 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(163) |
茨城県 |
日立市 |
昭和63、平成元 |
千円 363,184 |
千円 9,056 |
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日立市では、昭和63年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、91%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて63年度及び平成元年度の交付申請を行い、計363,184,000円の交付を受けていた。 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額についてみると、同市では、被保険者の一部について、保険料の賦課額を一律に減額して調定額を過小にしていた。すなわち、同市では、昭和62年度に実施した保険料の賦課方式の変更により新たに保険料の所得割額が賦課されることになった世帯を対象とし、保険料の減免を行うことができる場合(注) に該当しないのに保険料の賦課額を一律に減額していて、調定額を過小にしていた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を一部免れていた。 (注) 保険料の減免を行うことができる場合 (ア) 世帯の所得が地方税法(昭和25年法律第26号)第314条の2第2項に規定する基礎控除額以下である世帯等を対象として減額する場合 (イ) 市町村が条例で規定する事由に該当する世帯主からの申請に基づいて減免する場合 そして、適正な賦課に基づく調定額は表1(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で89%となり、交付金の減額率は10%となる。 |
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したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、63年度及び平成元年度で計354,128,000円となり、計9,056,000円が過大に交付されていた。 |
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(注) 平成元年度については、(注3)参照 |
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(164) | 福井県 | 敦賀市 | 平成元〜3 | 302,645 | 17,916 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注) |
1 ( )書きは、収納割合確保・向上特別交付金を内書きしたものである。 |
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2 平成3年度については、(注3)参照 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(165) | 和歌山県 | 那賀郡粉河町 | 平成2、3 | 253,680 | 12,586 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
粉河町では、平成2年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、94%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同町は一般被保険者数が1万人未満であることから、減額率表により減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて2年度及び3年度の交付申請を行い、計253,680,000円の交付を受けていた。 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の収納額についてみると、同町では、保険料を他の町県民税等と一括して徴収する方式を採用しており、決算上の保険料の収納額を算出するにあたり、町県民税等の収納額の一部を保険料の収納額に含め、保険料の収納額を過大にしていた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を免れていた。 そして、実際の賦課に基づく適正な保険料の収納額は表1(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で89%となり、交付金の減額率は10%となる。 |
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したがって調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、2年度及び3年度で計241,094,000円となり、計12,586,000円が過大に交付されていた。 |
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(注) 平成3年度については、(注3)参照 |
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(166) | 和歌山県 | 那賀郡那賀町 | 平成2〜4 | 376,503 | 18,911 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
那賀町では、平成2年度から4年度までの各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、92%又は93%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同町は一般被保険者数が1万人未満であることから、減額率表により各年度分とも5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて2年度から4年度までの交付申請を行い、計376,503,000円の交付を受けていた。 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の収納額についてみると、同町では、保険料を他の町県民税等と一括して徴収する方式を採用しており、決算上の保険料の収納額を算出するに当たり、町県民税等の収納額の一部を保険料の収納額に含め、保険料の収納額を過大にしていた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を免れていた。 そして、実際の賦課に基づく適正な保険料の収納額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で88%又は89%となり、交付金の減額率は、いずれの年度分とも10%となる。 |
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したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、2年度から4年度までで計357,592,000円となり、計18,911,000円が過大に交付されていた。 |
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(167) | 大阪府 | 泉大津市 | 平成2、3 | 458,888 | 12,109 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
泉大津市では、平成2年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、91%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて2年度及び3年度の交付申請を行い、計458,888,000円の交付を受けていた。 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額についてみると、同市では、被保険者の一部について、保険料の賦課額を一律に減額して調定額を過小にしていた。すなわち、同市では、世帯の所得が一定額以下である世帯を対象とし、保険料の減免を行うことができる場合((注)参照) に該当しないのに保険料の賦課額を一律に減額していて、調定額を過小にしていた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を一部免れていた。 そして、適正な賦課に基づく調定額は表1(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で90%となり、交付金の減額率は10%となる。 |
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表1
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したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、2年度及び3年度で計446,779,000円となり、計12,109,000円が過大に交付されていた。 |
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表2
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(注) 平成3年度については、(注3)参照 |
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(168) | 兵庫県 | 伊丹市 | 平成3、4 | 532,513 | 27,036 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
伊丹市では、平成3年度分及び4年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、91%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により両年度分とも5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて3年度及び4年度の交付申請を行い、計532,513,000円の交付を受けていた。 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額についてみると、同市では、被保険者の一部について、保険料の賦課額を一律に減額して調定額を過小にしていた。すなわち、同市では、世帯の所得が一定額以下である世帯を対象とし、保険料の減免を行うことができる場合((注)参照) に該当しないのに保険料の賦課額を一律に減額していて、調定額を過小にしていた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を一部免れていた。 そして、適正な賦課に基づく調定額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば両年度分とも保険料収納割合は前年度収納割合で89%となり、交付金の減額率は10%となる。 |
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表1
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したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、3年度及び4年度で計505,477,000円となり、計27,036,000円が過大に交付されていた。 |
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表2
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(163)-(168)の計 | 6件 | 2,287,413 | 97,614 |