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  • 平成4年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

輸入麦の受渡業務に係るはしけ取りを接岸取りとすることにより、受渡業務を適切なものに改善させたもの


(2) 輸入麦の受渡業務に係るはしけ取りを接岸取りとすることにより、受渡業務を適切なものに改善させたもの

会計名及び科目 食糧管理特別会計 (輸入食糧管理勘定) (項)輸入食糧買入費
(輸入飼料勘定) (項)輸入飼料買入費
部局等の名称 食糧庁
受渡業務の概要 輸入港において、輸入麦を接岸取り、はしけ取りなどの方法により本船からサイロヘ搬入する業務
はしけ取りに要した受渡業務費 平成3年度 806,961,659円
平成4年度 799,412,657円
  計 1,606,374,316円
節減できた受渡業務費 平成3年度 3億3910万円
平成4年度 3億3890万円
  計 6億7800万円
<検査の結果>
 輸入港において、輸入麦を本船からサイロヘ搬入するに当たり、はしけ取りに代えて接岸取りを行ったとすれば、受渡業務費を約6億7800万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、近年、輸入港における接岸サイロの収容力が逐次増大してきているのに、受渡方法の決定に当たり、これらの事情を考慮しなかったことなどによると認められた。したがって、接岸サイロの収容余力がある場合には接岸取りとする要があると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、食糧庁では、平成5年11月に、食糧事務所に対して通達を発し、輸入麦の受渡方法について、原則として、接岸サイロの収容余力がある場合には接岸取りとする処置を講じた。

1 受渡業務の概要

 食糧庁では、食糧管理法(昭和17年法律第40号)等に基づき、国民の食糧の確保及び国民経済の安定を図ることなどを目的として、食料用及び飼料用の輸入麦を輸入業者から随意契約により買い入れている。
 この輸入麦は船舶(以下「木船」という。)により海上輸送され、輸入港の決定に当たっては、外国産食糧買入要綱(昭和49年食糧業第646号食糧庁長官通達)等により、輸入港に所在する政府指定サイロ(食糧庁が政府所有麦を保管するために指定したサイロをいう。)の収容力などを勘案して行っている。そして、輸入港における本船からサイロヘの輸入麦の受渡方法には、次の方法などがある。

〔1〕 本船を接岸させて直接サイロヘ搬入する方法(以下「接岸取り」といい、また、これができるサイロを「接岸サイロ」」という。)

〔2〕 本船からはしけに移して運送のうえ、サイロヘ搬入する方法(以下「はしけ取り」という。)

 そして、受渡業務に係る費用は国が負担することから、輸入港を所轄する食糧事務所(以下「輸入港事務所」という。)が受渡方法などを決定するに当たっては、極力合理的、経済的な方法を選ぶこととし、はしけ取りの経費(平成4年度1t当たり2,372円〜2,936円)は接岸取りの経費(4年度1t当たり1,126円〜1,449円)に比べて割高であるため、接岸サイロを優先的に使用し、はしけ取りは可能な限り行わないこととしている。

2 検査の結果

(調査の観点)

 近年、全国の輸入港における政府指定サイロの収容力は、接岸サイロの新設又は増設が逐次行われたことにより増大してきていることから、割高となるはしけ取りが真にやむを得ない場合に限って行われているかなどの観点から調査することとした。

(調査の対象)

 千葉港ほか6港(注) において、3、4両年度に接岸取りができない場所にある製粉会社所有の政府指定サイロ(以下「ミルサイロ」という。)にはしけ取りをした輸入麦について、本船156隻分284,657t(受渡業務費806,961千円)及び160隻分277,037t(受渡業務費799,412千円)を調査した。

(調査の結果)

 食糧庁では、ミルサイロヘのはしけ取りを行っている主な理由として、輸入麦は、国内需要量の2.6箇月分(食糧用)又は2.5箇月分(飼料用)を保管することとしており、当該数量を保管するためには、接岸サイロの収容力だけでは不足することから、はしけ取りを行ってでもミルサイロの収容力を活用しなければならないためとしていた。そして、輸入麦が製粉会社に売却されるまでは政府所有麦であることから、この受渡費用は国が負担する必要があるとしていた。

 しかし、前記の各港においてはしけ取りを行った3年度156隻及び4年度160隻について、入港時における接岸サイロの収容余力をサイロを所有する企業の保管台帳等から調査したところ、3年度120隻及び4年度115隻については、本船入港時の接岸サイロの収容余力がはしけ取りした数量を上回っている状況であった。したがって、輸入港事務所が受渡方法を決定するに当たって、接岸サイロにおける政府所有麦の保管状況等を確認し、本船入港時の正確な収容余力を把握していれば、3年度120隻分202,936t、4年度115隻分198,525 tは、割高なはしけ取りに代え、接岸取りを行うことが可能であったと認められた。

 また、3、4両年度に前記の各港において保管管理している政府所有麦の売却についてみると、はしけ取りによりミルサイロに搬入された政府所有麦は、ほぼ全量がミルサイロを所有する製粉会社に売却されている状況となっていた。このため、本船入港時に接岸サイロに収容余力があるにもかかわらず、はしけ取りによってミルサイロヘ政府所有麦を搬入していることは、実質的にミルサイロを所有する製粉会社のために行っている結果となっていると認められた。

 したがって、本船入港時における接岸サイロの収容余力や経済的な受渡方法を十分検討しておらず、接岸サイロに収容余力があるのに、輸入麦を接岸取りによらず割高なはしけ取りでミルサイロに搬入していることは適切でなく、是正改善の必要があると認められた。

(節減できた受渡業務費)

 いま、千葉港ほか6港において、3、4両年度に本船からはしけ取りによりミルサイロヘ搬入した輸入麦のうち、3年度202,936t及び4年度198,525tを接岸取りにより行ったとすれば、受渡業務費を3年度約3億3910万円、4年度約3億3890万円、計約6億7800万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次の理由などによると認められた。

(ア) 食糧庁において、輸入港における接岸サイロの収容力が逐次増大してきているのに、これを有効に活用する配慮が十分でなかったこと

(イ) 輸入港事務所において、合理的、経済的な受渡業務を行うことについての認識が十分でなく、受渡方法の決定に当たり、これらについての十分な検討を行わないままはしけ取りを実施していたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、5年11月に輸入港事務所に対して通達を発し、受渡方法を決定するに当たっては、政府指定サイロにおける収容余力等の把握を的確に行い、原則として、接岸サイロの収容余力がある場合には、接岸取りにより行うことを周知徹底する処置を講じた。

(注)  千葉港ほか6港  千葉、東京、名古屋、神戸、広島、博多、門司各港