会計名及び科目 | 郵政事業特別会計 (項)業務費 |
部局等の名称 | 郵政本省 |
調達物品 | 郵便貯金キャッシュサービス用の監査テープ・ご利用明細票 |
調達物品の概要 | 預金者がATM又はCDを利用した際、預金者に預払い金額等の利用内容を通知するためなどの伝票 |
契約金額 | 868,604,665円 |
契約の相手方 | 大日本印刷株式会社 |
契約 | 平成4年9月 指名競争契約 |
節減できたと認められる調達額 | 2億7100万円 |
1 契約の概要
郵政省では、郵便貯金事業を実施するために多種多様な印刷物を調達している。このうち、郵便貯金キャッシュサービス用の監査テープ・ご利用明細票については、平成4年度において、指名競争契約により、868,604,665円で大日本印刷株式会社と調達契約を締結している。
この監査テープ・ご利用明細票は、監査テープと利用明細票の2枚を重ねて1部とした複写式伝票で、この伝票1部ごとのミシン目で折りたたまれた505部が連続して一束となっている。この伝票は、一束単位でATM(垂便貯金自動預払機)及びCD(郵便貯金自動支払機)に収納され、預金者がATM等を利用した際に利用年月日、預払い金額及び預金残高等が記入(印字)されることになっている。そして、監査テープは、預払い状況とATM等内の現金とを照合確認するとともに、後日、預金者からの利用内容に関する問い合わせ等に備えるため、ATM等内のローラに巻き取られて郵便局に保管され、また、利用明細票は1枚づつ切り離されて預金者に渡され、預払い等の利用状況の確認に資することになっている。
連続伝票は、ミシン目を入れたり、折りたたんだりするなどの加工が必要なことから、印刷とともにミシン入れ、折りたたみ等の加工までの一連の作業を行うことのできるフォーム印刷機により作製されている。そして、複写式でない一枚ものの伝票の場合は、この印刷機により印刷から折りたたみ加工までが施される。しかし、本件の伝票のように複写式伝票の場合には、上紙と下紙の丁合いが必要なことから、フォーム印刷機でそれぞれ別に印刷、ミシン入れ等の加工が施され、いったん口ーラに巻き取られた後、別途、丁合い機により重ね合わされて、折りたたまれる。
郵政省では、印刷物の予定価格の積算に当たっては、「印刷物積算基準」(昭和62年4月資購第800号、以下「基準」という。)等に基づいて、その材料費(用紙代等)、印刷加工費(刷版の製作費等、印刷費、丁合い費)などを算定することとしている。本件監査テープ・ご利用明細票についても、この基準によって印刷加工費を次のとおり算定している。
〔1〕 刷版の製作費等
調達契約において調達される伝票枚数(以下「調達伝票枚数」という。)を1刷版(注) に割り付けた伝票枚数(以下「面付け数」という。)で除して刷り数を算出し、これを1刷版で可能な刷り数(以下「耐刷枚数」という。)で除するなどして刷版数を算出する。そして、刷版の製作費等は刷版数に刷版単価を乗ずるなどして算定する。
(注) 刷版 印刷機で印刷するため、あらかじめ感光性を施したアルミニウム板に製版ワィルム(原板)を焼き付けたもの
〔2〕 印刷費
調達伝票枚数を刷版1刷りの1折り当たりの伝票枚数(下図参照) で除して祈り数を算出する。そして、これに、刷版による刷り作業費に折り作業等の加工費を加えた印刷単価を乗じて印刷費を算定する。
〔3〕 丁合い費
印刷費と同様の算式により丁合い折り数を算出し、これに丁合い単価を乗じて丁合い費を算定する。
2 検査の結果
調査したところ、次のとおり、刷版への面付け数、折り数の算出及び耐刷枚数の設定が適切を欠いていると認められた。
(ア) 刷版への面付け数
刷版の寸法は、縦11インチ(約28cm)、横15インチ(約38cm)となっている。そして、本件の伝票の大きさは縦5.5インチ(約14cm)であることから面付け数を縦に2面とし、横についても同じ2面として、1刷版当たり縦2面、横2面計4面付けとしている。
しかし、本件伝票の大きさは横3.5インチ(約9cm)であるので、横に4面とすることが可能である。したがって、面付け数は、刷版の大きさを有効に利用し、1刷版当たり縦2面、横4面の計8面付けとして刷版の制作費等、印刷費、丁合い費を算定すべきであると認められた。
(イ) 折り数の算出
基準において、印刷費は、折り数に印刷単価を乗じて算定することとなっており、本件伝票は、納品形態では1部ごとに祈りたたまれていることから、ミシン目ごとに1折りとして折り数を算出している。
しかし、本件伝票の場合は、フォーム印刷機ではいったんローラに巻き取られミシン目で折りたたまれていないのであり、刷版による刷り作業が主体となっているのであるから、折り数を基に印刷費を算定するのは適切ではなく、刷り数を基に印刷費を算定すべきであると認められた。
(ウ) 耐刷枚数の設定
耐刷枚数については、基準において、5万枚と設定しており、本件の積算においても、これにより刷版の製作費等を算定している。
しかし、耐刷枚数は印刷速度、紙質及び要求される印刷精度等によってそれぞれ異なるとされている。そこで、要求される印刷精度等が本件伝票と同程度である印刷物における耐刷枚数の実態を調査したところ、いずれも7万枚以上となっていた。これらのことから、耐刷枚数を5万枚として積算しているのは適切ではなく、実態に合った耐刷枚数を設定し、これにより刷版の製作費等を算定すべきであると認められた。
いま、面付け数を8面付けとし、折り数を刷り数に代え、耐刷枚数を7万枚として刷版の製作費等、印刷費、丁合い費などを算定したとすれば、本件契約額を約2億7100万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(1) フォーム印刷についての詳細な加工手順等の実態の把握が十分でなかったことなどから、基準が印刷加工の複雑さなどに対応したものとなっていなかったこと
(2) 積算担当職員については、比較的短期間で配置替えしていることもあって、必ずしも十分に印刷に関する高度な知識を習得し得る状況にないにもかかわらず、これを補完するための印刷物の予定価格の積算の審査体制が整備されていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、郵政省では、5年10月に、印刷物積算基準を印刷加工の方法等に対応したものに改正するとともに、新たに積算内容審査要領を制定し、同月以降に調達する印刷物の予定価格の積算及び審査にこれを適用することとして、積算の適正化を図った。