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雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの


(223) 雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業給付費
部局等の名称 北海道ほか21都府県(支給庁)
札幌公共職業安定所ほか150公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 383人
失業給付金の支給額の合計 195,379,132円
不適正支給額 108,513,931円

 失業給付金(基本手当及び再就職手当)の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、上記の383人に対して108,513,931円(基本手当49,269,181円、再就職手当59,244,750円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(雇用保険)

 雇用保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者を被保険者とし、被保険者が失業したときにその生活の安定を図るなどのため失業給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

(失業給付金の支給)

 失業給付金には基本手当及び再就職手当のほか9種の手当等がある。このうち、基本手当は、受給資格者(注1) が失業している日について所定給付日数を限度として支給されるものであり、再就職手当は、受給資格者が基本手当の所定給付日数の2分の1以上(注2) を残して安定した職業に就いた場合に支給されるものである。基本手当及び再就職手当は、公共職業安定所が、次のように支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給することとなっている。

(ア) 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職、就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認のうえ失業の認定を行って支給を決定する。

(イ) 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入れ年月日等について調査確認を行って支給を決定する。

(注1)  受給資格者  離職した被保険者で、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あり、労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることの要件を満たしていて、公共職業安定所において、基本手当を受給する資格があると決定された者

(注2)  2分の1以上  平成4年10月以降は、所定給付日数の2分の1未満であっても支給 残日数が100日以上あれば支給される。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか23都府県(支給決定庁 札幌公共職業安定所ほか226公共職業安定所)から失業給付金の支給を受けた者のうち、再就職した者18,776人について、公共職業安定所における失業給付金の支給決定の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、次のとおり基本手当及び再就職手当が不適正に支給されていた。

ア 基本手当

 北海道ほか21都府県で、本院が調査した13,104人に対する基本手当の支給のうち380人に対する支給(支給額136,134,382円)について、49,269,181円が不適正に支給されていた。これは、札幌公共職業安定所ほか149公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職、就労していながらその事実を失業認定申告書に記載していないため、申告書の内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。

イ 再就職手当

 北海道ほか21都府県で、本院が調査した5,646人に対する再就職手当の支給のうち176人に対する支給について、59,244,750円が不適正に支給されていた。これは、札幌公共職業安定所ほか90公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入れ年月日を記載していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 公共職業安定所 本院が調査し た受給者数 不適正受給者 数 左の受給者に支給 した失業給付金 左のうち不適正失 業給付金

北海道

札幌ほか15

1,557

32
千円
9,317
千円
3,810
札幌ほか6 621 14 5,045 5,045
小計 14,363 8,856
青森県 青森ほか6 600 13 3,883 1,670
青森ほか2 243 9 3,525 3,525
小計 7,408 5,196
宮城県 仙台ほか6 511 12 3,265 688
仙台ほか1 154 4 1,535 1,535
小計 4,801 2,223
秋田県 秋田ほか6 695 20 5,395 2,264
秋田ほか2 226 7 1,908 1,908
小計 7,303 4,172
山形県 酒田ほか4 277 12 4,563 842
鶴岡ほか1 69 2 364 364
小計 4,928 1,207
埼玉県 川口ほか8 874 19 8,805 2,230
川口ほか4 340 7 1,834 1,834
小計 10,639 4,064
干葉県 市川 62 2 463 463
市川ほか1 73 2 1,034 1,034
小計 1,498 1,498
東京都 飯田橋ほか16 1,884 50 18,064 8,196
飯田橋ほか16 1,287 32 11,244 11,244
小計 29,308 19,440
神奈川県 横浜ほか8 742 30 13,410 8,744
横浜ほか6 445 20 9,364 9,364
小計 22,774 18,108
富山県 富山ほか5 504 22 6,790 1,752
富山ほか2 184 11 3,948 3,948
小計 10,739 5,701
長野県 長野ほか8 538 15 6,336 840
伊那 27 1 134 134
小計 6,471 975
静岡県 静岡ほか4 366 10 3,946 731
静岡ほか3 231 4 1,863 1,863
小計 5,810 2,594
愛知県 名古屋東ほか8 793 27 9,274 5,716
名古屋東ほか8 465 21 6,949 6,949
小計 16,223 12,665
大阪府 梅田ほか5 550 9 4,264 607
梅田ほか1 95 2 344 344
小計 4,608 951
兵庫県 西宮ほか4 354 16 2,643 1,010
西宮ほか4 176 12 3,080 3,080
小計 5,723 4,090
鳥取県 鳥取ほか3 283 11 6,338 1,403
米子ほか1 110 3 823 823
小計 7,161 2,226
広島県 広島西条ほか4 409 12 4,088 1,281
尾道ほか3 183 6 1,411 1,411
小計 5,500 2,693
愛媛県 松山ほか1 200 4 1,316 168
松山 120 1 348 348
小計 1,664 516
高知県 高知ほか1 149 3 403 403
高知ほか1 111 3 753 753
小計 1,156 1,156
佐賀県 佐賀ほか4 349 18 5,005 1,147
佐賀ほか3 101 6 1,563 1,563
小計 6,569 2,711
宮崎県 宮崎ほか3 350 6 2,048 829
宮崎ほか2 217 4 673 673
小計 2,722 1,503
鹿児島県 鹿児島ほか9 1,057 37 16,507 4,465
鹿児島ほか2 168 5 1,494 1,494
小計 18,002 5,959
150箇所 13,104 380 136,134 49,269
91箇所 5,646 176 59,244 59,244
合計 195,379 108,513

(注1) 上段は基本手当に係る分、下段は再就職手当に係る分である。

(注2) 公共職業安定所のうち、基本手当と再就職手当の双方について不適正な支給があったものが90、基本手当のみのものが60、再就職手当のみのものが1あり、したがって、公共職業安定所の実数は151である。

(注3) 不適正受給者のうち、基本手当と再就職手当の双方に係る者が173人、基本手当のみの者が207人、再就職手当のみの者が3人おり、したがって、不適正受給の実人員は383人である。