会計名及び科目 | 道路整備特別会計 | (項)街路事業費 (項)北海道街路事業費 (項)街路事業資金貸付金 |
部局等の名称 | 北海道ほか5県 |
補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号)等 |
事業主体 | 道1、県5、市1、計7事業主体 |
補助事業 | 連続立体交差事業 8事業 |
補助事業の概要 | 鉄道と道路の平面交差踏切を除却するため、鉄道を相当区間にわたって高架化するなどの事業 |
鉄道事業者に支払った負担金 | 21,451,382,696円(昭和63年度〜平成4年度) |
上記に対する国庫補助金相当額(無利子貸付金相当額を含む。) | 10,840,348,870円(昭和63年度〜平成4年度) |
不適切と認められた負担金 | 平成4年度末 25億6627万円 |
不適切と認められた国庫補助金相当額(無利子貸付金相当額を含む。) | 平成4年度末 12億8240万円 |
1 連続立体交差事業の概要
建設省では、街路事業の一環として、都道府県又は指定都市(以下「事業主体」という。)が、市街地における鉄道と道路の平面交差踏切を除却するなどのため、鉄道を相当区間にわたって高架化するなどの事業(以下「連続立体交差事業」という。)に対して国庫補助金(道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)に基づく地方道路整備臨時交付金及び道路法(昭和27年法律第180号)に基づく街路事業資金貸付金を含む。以下同じ。)を交付している。この事業は、施工技術、安全管理等鉄道工事の特殊性から、高架施設等の工事は鉄道事業者によって実施されており、これに要した工事費等は事業主体と鉄道事業者との間で事前に交わされた協定に基づきそれぞれが負担することとされ、事業主体は上記の国庫補助金の交付を受けてこの負担金を鉄道事業者に支払っている。
連続立体交差事業については、平成4年3月31日、運輸省と建設省との間で締結された「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する協定」(昭和44年9月1日付けの協定は同日付けで廃止。)等において事業の施行方法、費用負担等が定められている。このうち、費用負担については、鉄道事業者はその受益相当額(現在の協定では高架下を店舗等として貸し付けることなどによる受益相当額を考慮して、鉄道を高架化することに要した費用の5%から14%となっている。)を負担し、都市計画事業施行者である事業主体はその残額を負担することとなっている。
そして、事業主体は、鉄道事業者が事業を施行するに当たり、上記の協定等に基づき個々の事業箇所に応じて全体的な事業の施行方法、費用の負担額及びその支払方法などについて定めた協定(以下「基本協定」という)及びこれを各年度ごとに区分した内容について定めた協定(以下「年度協定」という。)を鉄道事業者との間で締結している。この基本協定では、鉄道事業者は各年度ごとの事業に係る決算額を当該年度終了後速やかに事業主体に通知することなどを定めており、さらに、年度協定では、当該年度に事業主体の負担すべき金額や鉄道事業者の請求に基づいてこれを支払うことなどを定めている。
2 検査の結果
連続立体交差事業が補助事業により実施され、その事業費の大部分が鉄道事業者に対する負担金として支払われていることなどにかんがみ、この負担金の支払時期が、事業の実施状況を反映し妥当なものとなっているかについて調査した。
連続立体交差事業は、3、4両年度中に延べ70箇所で実施されている。そして、事業主体が鉄道事業者に負担金を支払い、これに対して国庫補助金の交付を受けているものは北海道ほか23都府県及び8指定都市(注1) で延べ59箇所ある。このうち、北海道ほか9都府県及び6指定都市(注2) の41箇所において鉄道事業者に対して支払われた負担金3年度476億3957万余円(これに対する国庫補助金相当額259億6267万余円)、4年度689億9191万余円(同378億5856万余円)について調査した。
調査の結果、北海道ほか5県及び1指定都市(注3) の各事業主体が8箇所で実施している上記の事業において、3、4両年度中(事業が3年度以前から実施されている2箇所については63年度から4年度まで)に支払った負担金214億5138万余円(これに対する国庫補助金相当額108億4034万余円)について、次のとおり、負担金の支払時期が適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、事業主体では、各年度の工事内容を鉄道事業者と協議し、これに基づいて各年度の負担金を決定していた。そして、事業主体は年度終了時に簡単な図面等により事業の実施状況を形式的に確認し、当該各年度の協定で定めている負担金を鉄道事業者からの請求により支払っていた。そして、この支払った負担金と同額の決算額の通知を鉄道事業者から受けるなどして、これにより各年度の補助事業が完了したなどとして実績報告書を作成し、これを建設省に提出していた。
しかし、事業主体では、各年度終了時に、鉄道事業者から事業の決算額の通知を受けてはいるものの、当該各年度の事業内容や工事等の出来高を設計図書等によって十分に確認すことなく請求された金額をそのまま支払っていた。
このため、4年度末においては、総額約25億6627万円(これに対する国庫補助金相当額約12億8240万円)の負担金が過大に支払われる結果となっていた。
この事態について一例を示すと次のとおりである。
A県で実施しているB駅付近の連続立体交差事業では、A県と鉄道事業者との問で締結した年度協定により4年度の負担金を770,390千円と定めこの全額を支払っており、これに対して423,714千円の国庫補助金が交付されていた。
しかし、検査したところ、鉄道事業者が4年度中に施行したこの負担金に係る工事の出来高は85,776千円にすぎないのに、A県では、現地において当該年度工事の出来高を鉄道事業者立会のもとに確認することなく請求されるまま年度協定に定めた負担金の全額を支払っていた。このため、4年度末において負担金684,613千円(これに対する国庫補助金相当額376,537千円)が過大に支払われる結果となっていた。
このような事態が生じていたのは、事業主体において、年度協定等に基づく負担金を支払うことで当該年度の補助事業が完了するものとしていたなど補助事業に対する配慮が十分でなかったことにもよるが、建設省において、次のように適切でない点があったことによると認められた。
(ア) 負担金の支払が適切に行われるように、年度協定等に定めるべき事項を事業主体に対して具体的に示していなかったこと
(イ) 連続立体交差事業の実施状況について、実状を十分把握しておらず、事業主体に対する指導が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、5年11月に都道府県及び指定都市に通達を発し、次のように負担金の支払が適切に行われるよう年度協定等で定めるべき事項を明示するとともに、本件補助事業の適切な実施を図るよう指導することとするなどの処置を講じた。
(ア) 事業主体は、鉄道事業者が施行する事業について、その実際の進捗状況に応じた負担金の支払時期及び方法について鉄道事業者と協議を行うこと
(イ) 事業主体が必要と認めるときは、鉄道事業者に対して事業に関する資料の提出又は報告を求めたり、現地確認を求めたりすることができること
(ウ) 事業主体は、各年度終了時に、鉄道事業者が実施した事業の事業内容、工事等の出来高を設計図書等により鉄道事業者との間で相互に確認し、これに基づき事業費及び負担金の額を確定し、負担金について精算を行うこと
(注1) | 北海道ほか23都府県及び8指定都市 東京都、北海道、京都、大阪両府、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、福井、長野、岐阜、愛知、兵庫、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡、宮崎各県、札幌、仙台、川崎、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡各市 |
(注2) | 北海道ほか9都府県及び6指定都市 東京都、北海道、大阪府、埼玉、神奈川、愛知、兵庫、和歌山、福岡、宮崎各県、札幌、川崎、名古屋、大阪、神戸、福岡各市 |
(注3) | 北海道ほか5県及び1指定都市 北海道、愛知、兵庫、和歌山、福岡、宮崎各県、福岡市 |