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  • 平成4年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第8 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局おいて改善の処置を講じた事項

ディジタル交換機の回路基板の購入に当たり、他の交換機の使用されていない回路の活用を考慮して購入数量を適切に算定するよう改善させたもの


(1) ディジタル交換機の回路基板の購入に当たり、他の交換機の使用されていない回路の活用を考慮して購入数量を適切に算定するよう改善させたもの

科目 設備投資勘定
部局等の名称 日本電信電話株式会社
購入物品 D70形ディジタル交換機に搭載して加入者回線を収容する回路基板10,251枚
購入 平成4年4月〜5年2月
購入価額 966,211,080円
節減できたと認められる購入価額 1億1570万円(回路基板1,228枚分)

<検査の結果>

 上記の物品の購入に当たって、同一ビル内に併設されている他の交換機の使用されていない回路を活用することを考慮したとすると、1,228枚は購入する要がなく、購入価額を約1億1570万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、同一ビル内の他の交換機に使用されていない回路があるのに、これを活用することについて十分検討しないで交換機ごとの回路基板の不足枚数をそのまま購入数量としたことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成5年11月に、各支社に対して指示文書を発し、同一ビルに交換機が併設されている場合の回路基板の購入数量の具体的な算定方法を示すとともに、上記の1,228枚の回路基板については、5年度末までに転用を図ることとする処置を講じた。

1 回路基板の概要

(加入者線交換機)

 日本電信電話株式会社(以下[NTT」という。)では、電話等の加入者回線(以下「回線」という。)を相互に接続するために、加入者線交換機を支店、営業所等の機械棟(以下「ビル」という。)に設置している。加入者線交換機には、情報をアナログ信号で交換するアナログ交換機とディジタル信号で交換するディジタル交換機とがあるが、アナログ交換機については、平成9年度末までに、すべてをディジタル交換機に更新することとしている。

(交換機の設置と回線の収容)

 加入者線交換機は、通常、1ビルに1ユニット(注1) が設置されていて、一定区域内のすべての回線を収容しているが、区域内の回線数が1ユニットの回線収容能力を上回るときは、1ビルに複数ユニットが設置され、区域内のすべての回線を各加入者線交換機に割り当てて収容している。

(回路基板)

 ディジタル交換機の主力機種であるD70形ディジタル交換機(以下「交換機」という。)には、加入者からのアナログ信号をディジタル信号に変換するなどの機能を有する回路を組み込んだ回路基板が搭載されていて、この回路に回線を収容している。回線のうち、公衆電話の回線及び単独電話に料金収納機能を付加した電話(通称「ピンク電話」と呼ばれている。)の回線を収容する回路基板には4回路が組み込まれていて、1枚当たり4回線を収容する構造となっている(下図参照)

ディジタル交換機の回路基板の購入に当たり、他の交換機の使用されていない回路の活用を考慮して購入数量を適切に算定するよう改善させたものの図1

(回路基板の必要枚数の算定)

 回路基板は、交換機に必要に応じて搭載することができる構造となっているので、各交換機に搭載する回路基板の枚数は、次のような方法により算出している。
 区域における一定期間後の加入者の増加を見込んだ回線数の需要予測値(以下「区域内需要予測値」という。)を求める。そして、交換機が1ビルに1ユニットしか設置されていない場合には、区域内需要予測値をそのまま交換機の需要予測値とし、また、複数ユニットが設置されている場合には、区域内需要予測値を各交換機に割り当てて交換機ごとの需要予測値を定める。各交換機の需要予測値を4で除して、回路基板の必要枚数を求める。
 上記の方法で算出した必要枚数がその交換機に搭載されている枚数を上回るとき、その不足枚数を購入して増設することとしている。

2 検査の結果

(調査の対象及び観点)

 同一ビルに複数ユニットが設置されている場合には、回路基板の必要枚数を計算した結果不足することとなる交換機があっても、他の交換機に回線を収容していない回路(以下「空き回路」という。)が多数あれば、その空き回路を活用することができるので、不足枚数をそのまま購入する必要はない。
 そこで、回路基板の購入に当たり、同一ビルに複数ユニットが設置されている場合には、他の交換機の空き回路を活用することを考慮して購入数量を決定しているかを調査することとした。

(調査の結果)

 東京支社ほか9支社管内(注2) の57支店では、複数ユニットが設置されているビルの交換機について、前記の需要予測値に基づいて回路基板の不足枚数を交換機ごとに算出した結果、71ビルの76ユニットについて回路基板が不足するとして、本社に対し合計10,251枚の購入要求を行っていた。そして、本社では、4年度中に同数の回路基板を購入単価91,510円、購入価額9億6621万余円で購入していた。
 一方、上記71ビルの他の交換機に搭載されている回路基板の使用状況を調査したところ、東京支社及び関東支社管内の17ビルの25ユニットに搭載されている回路基板には、当面の回線数の増加に備えるなどのために必要な数量を超えた数の空き回路が合計4,935見受けられた。
 したがって、回路基板の購入の要があるとしていた前記76ユニットのうち、上記17ビルに設置されている17ユニットに搭載する回路基板の購入要求を行うに当たっては、上記の4,935の空き回路の活用を考慮して購入数量を決定すべきであったと認められた。

(節減できた経費)

 いま、回路基板の購入に当たって、同一ビル内の他の交換機の空き回路の活用を考慮したとすると、上記の4,935の空き回路に相当する回路基板1,228枚は購入する要がなく、購入経費を約1億1570万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のように適切でない点があったことによると認められた。

(ア) 支店において、回路基板の購入を要求するに当たって、同一ビル内の他の交換機に空き回路があるのに、これを活用することについて十分検討しないで交換機ごとに算出した不足枚数をそのまま購入要求していたこと

(イ) 本社及び支社において、上記のような実態を十分把握していなかったため、これに対する明確な指導を欠いていたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、5年11月に、各支社に対して指示文書を発し、次のとおり、回路基板の購入数量の算定方法を適切なものとするなどの処置を講じた。

(ア) 複数ユニットが設置されているビルにおける回路基板の購入に当たっては、他の交換機の空き回路の活用を考慮のうえ購入枚数を算出するよう具体的な算定方法を示した。

(イ) 購入する要がなかったと認められる回路基板については、5年度末までに、他の交換機に転用を図ることとした。

(注1) ユニット 交換機の数量の単位で、回線を収容する装置、回線を相互に接続する装置、各装置間の制御を行う装置等で構成された交換機一式を表わす。
(注2) 東京支社ほか9支社 東京、関東、信越、東海、北陸、関西、中国、九州、東北、北海道各支社