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  • 平成4年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 北海道旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

鉄道病院の看護に係る診療報酬の請求を適切なものにするよう改善させたもの


鉄道病院の看護に係る診療報酬の請求を適切なものにするよう改善させたもの

科目 (款)病院収入 (項)医療収入
部局等の名称 札幌鉄道病院
看護料の概要 保険医療機関等が、入院患者に対し、都道府県知事の承認を得て厚生大臣の定める基準に該当する看護を行った場合に、診療報酬として請求することができるもの
看護に係る診療報酬請求額 平成3年度 55,148,820円
(3年8月〜4年3月、1病棟分)
平成4年度 218,719,632円
4年4月〜7月、1病棟分
4年8月〜5年3月、
上記の1病棟を含む3病棟分
273,868,452円
増加する診療報酬の額 平成3年度 12,928,334円
平成4年度 57,711,708円
70,640,042円

<検査の結果>

 上記の鉄道病院では、保険医療機関等として、一部の病棟において、特3類看護料を請求できる看護を行っていたと認められるにもかかわらず、特3類看護に係る北海道知事の承認を得ていなかったため、これより低額な特2類看護の看護料しか請求していなかった。
 したがって、同鉄道病院は、特3類看護に係る承認申請を行って、その承認を受けるべきであったと認められ、このようにしたとすれば、診療報酬請求額が平成3年度12,928,334円、4年度57,711,708円、計70,640,042円増加したと認められた。このような事態が生じていたのは、同鉄道病院において、基準看護の制度の趣旨の理解が十分でなかったことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、同鉄道病院では、5年7月に、北海道知事に対し特3類看護に係る承認申請を行い、同年8月にその承認を受け、看護の実態に適合した適正な診療報酬を請求するための処置を講じた。

1 制度の概要

(診療報酬の算定)

 北海道旅客鉄道株式会社の札幌鉄道病院では、保険医療機関(労働者災害補償保険の指定病院等を含む。以下同じ。)として患者の治療を行っている。
 保険医療機関は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(昭和33年厚生省告示第177号)等により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(健康保険等の場合は10円)を乗じて算定することになっている。そして、あらかじめ都道府県知事の承認を受けて「看護、給食及び寝具設備の基準」(昭和33年厚生省告示第178号)等に定められた基準に該当する看護(以下「基準看護」という。)を行った場合には、看護の実態に応じた所定の看護料(以下「基準看護料」という。)を算定できることになっている。この基準看護料は、正看護婦、准看護婦及び看護助手(以下「看護職員」と総称する。)1人当たりの入院患者数、看護職員の最少必要数に対する正看護婦の割合などに応じて区分されている。

(特2類看護と特3類看護)

 基準看護のうち、一般病棟(結核病棟、精神病棟等以外の病棟)における特2類看護及び特3類看護の主な承認要件及び基準看護料の額は次表のとおりとなっている。

区分 特2類看護 特3類看護
〔1〕 看護職員1人当たりの入院患者数   2.5人以下 2人以下
〔2〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦の割合   4割以上 5割以上
〔3〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦及び准看護婦の割合  8割以上 8割以上
〔4〕 入院患者の平均在院日数 25日以内
(3年度以前は
20日以内)
基準看護料の額
(患者1人1日当たり。
4年度(3年度)の額)
入院期間等に応じて
5,180円又は5,100円
(4,520円又は4,440円)等
入院期間等に応じて
6,550円又は6,450円
(5,590円又は5,490円)等

 

(注)

1 〔1〕 の看護職員の数は申請時の実数、入院患者数は申請時の1箇年間の実績による。
2 〔2〕 、〔3〕 の看護職員の最少必要数は上記の入院患者数を基にした最少必要数、正看護婦及び准看護婦の数は申請時の実数による。
3 〔4〕 の入院患者の平均在院日数は申請時の直近3箇月間の実績による。

 そして、都道府県知事が行う基準看護の承認は、原則として保険医療機関の全病棟について包括的に行うことになっているが、特3類看護については、特2類看護(平成3年度以前は特2類看護又は特1類看護)を行っている保険医療機関からの申請により、看護体制の実態に配慮したうえ、看護体制の1単位(注) をもって、又はそれを2以上まとめて承認できることになっている。この2以上の看護体制の単位をまとめて承認する場合にあっては、その全体として、前記の看護職員1人当たりの入院患者数、看護職員の構成比率及び入院患者の平均在院日数の要件を充足していればよいことになっている。
 そして、基準看護の承認申請に当たっては、人員及び看護内容が安定的に充足されることを担保するため、承認を受けようとする基準看護について、申請前3箇月間の実績が必要とされている。

看護体制の1単位  ナースステーション、看護記録室等の設備を有し、看護の責任者が配置され、交代制勤務等の看護を実施する看護チームの1編成をいう。

(診療報酬の請求状況)

 札幌鉄道病院では、北海道知事から全5病棟312床について包括的に特2類看護の承認を受けていて、これに基づき、看護に係る診療報酬として、3年度に432,910,132円、4年度に492,741,632円を社会保険診療報酬支払基金等に請求し、これによる病院収入を得ていた。

2 検査の結果

(調査の結果)

 本院は、札幌鉄道病院における看護の実態及び看護に係る診療報酬の請求が適切に行われているかについて調査した。
 同鉄道病院における看護の実態についてみると、南3病棟(産婦人科等69床)、北3病棟(内科等63床)及び北4病棟(呼吸器科等55床)では、いずれも看護体制の1単位による看護が行われていると認められた。そして、これらの病棟における3、4両年度の看護職員1人当たりの入院患者数、看護職員の構成比率及び入院患者の平均在院日数をみたところ、次のようになっていた。

(ア)病棟ごとにみた場合、南3病棟で、3年4月から5年3月までの各月において、次表のとおりであった。

〔1〕 看護職員1人当たりの入院患者数 1.7人 〜 2.0人
〔2〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦の割合 8割1分〜10割4分
〔3〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦及び准看護婦の割合 9割2分〜10割8分
〔4〕 入院患者の平均在院日数 14.2日 〜 18.6日

(イ) 病棟をまとめてみた場合、南3、北3、北4の3病棟全体で、4年4月から5年3月までの各月において、次表のとおりであった。

〔1〕 看護職員1人当たりの入院患者数 1.7人 〜 1.9人
〔2〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦の割合 8割1分〜9割8分
〔3〕 看護職員の最少必要数に対する正看護婦及び准看護婦の割合 9割5分〜10割7分
〔4〕 入院患者の平均在院日数 18.0日 〜 22.7日

 このように札幌鉄道病院では、病棟ごとにみた場合は南3病棟で3年4月から、また、病棟をまとめてみた場合は南3、北3、北4の3病棟全体で4年4月から特3類看護の承認要件を充足していた。したがって、当初の3箇月間の実績に基づき、3年7月に南3病棟について、そして4年7月に南3、北3、北4の3病棟をまとめて特3類看護に係る承認申請を行って、速やかにその承認を受けるべきであったと認められた。

(増加する診療報酬の額)

 いま、上記のとおり3年7月及び4年7月に特3類看護の承認申請を行い、翌8月以降の診療についてその承認を受けたこととして、当該病棟及び期間についての看護に係る診療報酬請求額を修正計算すると、3年度分68,077,154円、4年度分276,431,340円、計344,508,494円となる。そして、これによれば、札幌鉄道病院における診療報酬請求額3年度分55,148,820円、4年度分218,719,632円、計273,868,452円に比べて、請求額が3年度12,928,334円、4年度57,711,708円、計70,640,042円増加したと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、札幌鉄道病院において、基準看護の制度の趣旨の理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、札幌鉄道病院では、5年7月に、北海道知事に対し特3類看護に係る承認申請を行い、同年8月に承認を受けて、看護の実態に適合した適正な診療報酬を請求するための処置を講じた。