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  • 平成4年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 東海旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地中送電線路改良工事におけるケーブル取替え工事費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


地中送電線路改良工事におけるケーブル取替え工事費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)建設勘定 (項)新幹線輸送
(款)鉄道事業営業費 (項)電路保存費
部局等の名称 東海旅客鉄道株式会社本社
工事名 綱島平塚間綱島地区地中送電線路改良工事
工事の概要 東海道新幹線の輸送力増強に伴う運転用電力供給設備増強工事の一環として、地中送電線を取り替える工事
工事費 462,008,354円
請負人 古河電気工業株式会社
契約 平成3年7月随意契約
過大積算額 3820万円

<検査の結果>

 上記の工事において、ケーブル間調整に要する費用の積算(積算額4676万余円)が適切でなかったため、積算額が約3820万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、積算の基準にケーブル取替え工事に適合する歩掛かりがなかったことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、東海旅客鉄道株式会社では、平成5年11月に、ケーブル取替え工事費の積算が施工の実態に即したものとなるよう積算の基準を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

(工事の内容)

 東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)では、東海道新幹線の運転用電力供給設備増強工事を平成元年度から毎年実施している。そして、これらの工事の一環として、3年度から4年度にかけて、地中送電線を収容するため設置してあるコンクリート製のトラフ(注) 内に敷設されている旧タイプのOFケーブルを、送電容量の大きい新タイプのCVTケーブルに取り替えるなどの工事(工事区間延長8,596m)を4億6200万余円で実施していた。

(注)  トラフ  地中に敷設する各種ケーブルを保護するために用いる鉄筋コンクリート製の函渠で、本件の場合は幅40cm、深さ22cm。

 上記の地中送電線路工事のうち、送電線をトラフ内に敷設している区間(延長7,514m)についてみると、既設の送電線の敷設状況により同区間を2区間に分けて次のように施工していた(参考図参照)

(ア) OFケーブル1条とCVTケーブル1条、計2条が敷設されている区間(延長6,930m)について、このうちのOFケーブルをCVTケーブルに取り替える。

(イ) OFケーブル3条が敷設されている区間(延長584m)について、これらのOFケーブルをCVTケーブル2条に取り替える。なお、この区間では、一度にCVTケーブル2条の取替えができないため、第1段階として、OFケーブル2条を取り替えた後、第2段階としてOFケーブル1条を取り替えることとなっていた。

(ケーブル取替え工事費の積算)

 上記の工事費の積算は、JR東海本社制定の電気関係工事標準歩掛積算要領(以下「積算要領」という。)等に基づき行うこととしている。この積算要領には、ケーブル増設工事として、トラフ内に既設のケーブル2条が敷設されているところへ新たにケーブル1条を増設する場合に、ケーブル間隔を適度に保つため、既設2条のケーブルを移動させたり、ケーブルを仮吊りしたり、砂を取り出したりするなどの作業を行う場合の歩掛かりが定められている。
 そして、本件工事の積算については、積算要領にケーブル取替え工事における既設ケーブル間調整に関する歩掛かりが定められていなかったことから、上記のケーブル増設工事の歩掛かりを準用することとし、その費用を4676万余円と積算していた。

2 検査の結果

(調査の観点)

 この積算に当たり、ケーブル増設工事の歩掛かりを準用していることから、この歩掛かりが本件ケーブル取替え工事の施工の実態に適合しているかを調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、これらの区間のケーブル取替え作業は次の手順で施工していた。

ア トラフ内に充てんされているケーブル保護用の砂を取り出し、これを袋詰めして仮置きし、撤去するOFケーブルをトラフの外に取り出す。

イ トラフ内の既設のケーブルの位置形状を整正し新設するCVTケーブルとの間隔を調整する作業(以下「ケーブル間調整作業」という。)を行う。

ウ 既設のケーブルと並行してCVTケーブルを敷設し、仮置きしておいた砂で埋め戻す。

 そして、上記の作業においては、前記のケーブル増設工事の歩掛かりが想定しているケーブルの移動作業や仮吊り作業は行われていなかった。
 したがって、ケーブル取替え工事の積算に当たっては、その作業がケーブル増設工事の歩掛かりが想定している作業内容とは異なることから、この歩掛かりを準用することなく、ケーブル間調整作業に必要な費用(以下「ケーブル間調整費」という。)を施工の実態に即した歩掛かりにより算定して積算すべきものと認められた。
 いま、このケーブル間調整費を施工の実態に即して計算すると、前記の積算額を約3820万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、積算要領にケーブル取替え工事に適合する歩掛かりがなかったため、ケーブル増設工事の歩掛かりを準用したことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、JR東海では、5年11月に、ケーブル間調整費の積算が施工の実態に即したものとなるよう、積算要領を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)

(ア)の例 OFケーブル1条、CVTケーブル1条の区間

(ア)の例OFケーブル1条、CVTケーブル1条の区間

(イ)の例 OFケーブル3条の区間

(イ)の例OFケーブル3条の区間