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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果の概要|
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  • 保険給付

厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの


(13) 厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(年金勘定) (項)保険給付費
国民年金特別会計(基礎年金勘定) (項)基礎年金給付費
部局等の名称 社会保険庁
支給の相手方 (1)厚生年金保険 2,540人
(2)国民年金 22人
2,560人 (重複者2人)
老齢厚生年金等の支給額の合計 (1)厚生年金保険 5,211,057,786円
(2)国民年金 9,421,215円
5,220,479,001円
不適正支給額 (1)厚生年金保険 3,249,195,722円
(2)国民年金 9,421,215円
3,258,616,937円
 老齢厚生年金等の支給に当たり、審査に当たる都道府県の保険課及び社会保険事務所において、年金の受給権者が被保険者資格を取得した場合の届出等に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、上記の2,560人に対して3,258,616,937円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(厚生年金保険及び国民年金の給付)

 厚生年金保険(「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」参照) において行う給付には、老齢厚生年金、老齢年金及び通算老齢年金などがある。また、国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者等を被保険者として、老齢、死亡等に関し年金等の給付を行うものであり、この給付には、老齢基礎年金などがある。

(老齢厚生年金)

 老齢厚生年金は、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「法」という。)第42条の規定により、厚生年金保険の適用事業所に雇用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したときに受給権者となる。また、昭和60年に改正された法附則第8条等の規定により、当分の間の特例として、65歳未満であっても、被保険者期間を1年以上有し、保険料納付済期間が25年以上ある者などは、次のような場合に特別支給の老齢厚生年金の受給権者となる(下図参照)

〔1〕  被保険者の資格を喪失している者(以下「退職者」という。)であって、その者が60歳(女子については55歳から60歳までの一定の年齢、坑内員及び船員については55歳)に達している場合

〔2〕  被保険者である者(以下「在職者」という。)が60歳に達していて、現に受けている報酬月額の標準報酬等級(注) が第18級以下である場合

〔2〕被保険者である者(以下「在職者」という。)が60歳に達していて、現に受けている報酬月額の標準報酬等級(注)が第18級以下である場合

 特別支給の老齢厚生年金の給付額は、〔1〕 受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕 配偶者等について加算される額(以下「加給年金額」という。)との合計額となっている。

(注)  標準報酬等級 第1級80,000円から第30級530,000円までの等級に区分されているもので、被保険者の標準報酬月額は、実際に支給される報酬月額をこの等級のいずれかに当てはめて決定される。

(特別支給の老齢厚生年金の支給の停止)

 退職者に係る特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、その後、厚生年金保険の適用事業所に雇用され、在職者に係る特別支給の老齢厚生年金の受給権者となったときなどには、次のとおり、年金の額の一部又は全部について支給を停止することとなっている。

〔1〕  受給権者が60歳未満である場合は年金の額の全部(加給年金額を含む。)の支給停止

〔2〕  受給権者が60歳以上65歳未満である場合は、その者が現に受けている報酬月額の標準報酬等級の区分に応じ、基本年金額の100分の20から100分の80に相当する部分又は全部(加給年金額を含む。)の支給停止
この場合の支給停止の手続は次のとおりである。

(ア) 厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに雇用した者が受給権者であるときは、その者の生年月日、資格取得年月日、報酬月額、受給権を有することなどを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳及び年金証書を添えて都道府県の保険課又は社会保険事務所に提出する。

(イ) 都道府県の保険課又は社会保険事務所は、これを調査確認のうえ、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定のうえ、支給額を決定する。

(老齢年金及び通算老齢年金)

 老齢年金及び通算老齢年金は、いずれも60年改正前の法に規定される保険給付であり、61年4月1日において60歳以上の者又はその前日において既に受給権を有していた者を対象としている。 65歳未満の在職者に係る老齢年金及び通算老齢年金の支給の要件、支給の手続等は在職者に係る特別支給の老齢厚生年金の支給の要件等とほぼ同様である。

(国民年金の老齢基礎年金)

 国民年金の老齢基礎年金は、保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したとき、又は65歳に達する前に繰上げ支給の請求をしたときは、そのときから受給権者となる。そして、繰上げ支給の請求をした者が、その後、厚生年金保険の適用事業所に雇用されたときは、年金の額の全額が支給停止されることになっていて、その手続は特別支給の老齢厚生年金の場合とほぼ同様である。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか26都府県の1保険課及び203社会保険事務所において、厚生年金保険の適用事業所を退職したとして、平成3年に特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者等255,916人のうち、厚生年金保険の適用事業所からの給与収入が確認され調査の要があると認められた者が6,306人見受けられた。そして、これらの受給権者を使用している4,253事業所について、厚生年金保険の被保険者資格取得届の提出の必要性の有無及び特別支給の老齢厚生年金等の支給の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、北海道ほか26都府県で、1,622事業所の2,560人については当該事業所において常用的に使用されていて、年金の額の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに被保険者資格取得届が提出されなかったなどのため、年金の支給停止の手続が執られていなかった。このため、特別支給の老齢厚生年金等の受給権者2,540人に対する支給(支給額5,211,057,786円)について3,249,195,722円、国民年金の老齢基礎年金の受給権者22人(注) に対する支給(支給額9,421,215円)について9,421,215円、計3,258,616,937円が不適正に支給されていた。
 これは、北海道ほか26都府県の1保険課及び201社会保険事務所において、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、社会保険庁で年金の支給停止をしていなかったことによるものである。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

 (注)  22人の中には特別支給の老齢厚生年金も不適正に受給しているものが2人含まれている。

 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと、次のとおりである。

都道府県名 社会保険事務所等 本院が調査した受給権者数 不適正受給権者数 左の受給権者に支給した年金の額 左のうち不適正支給額

北海道

札幌東ほか8

223

58
千円
85,602
千円
49,162
岩手県 盛岡ほか4 154 64 58,731 34,201
宮城県 仙台東ほか4 319 145 257,886 181,734
山形県 山形ほか4 224 61 65,835 36,286
茨城県 水戸南ほか4 180 68 135,586 77,504
埼玉県 浦和ほか6 165 98 232,773 139,907
千葉県 千葉ほか4 392 176 383,793 259,144
東京都 麹町ほか29 858 421 1,041,934 720,537
神奈川県 鶴見ほか11 496 192 531,357 347,777
富山県 富山ほか3 179 82 108,766 72,692
石川県 金沢南ほか3 82 36 57,015 32,926
福井県 福井ほか2 97 52 104,812 57,028
愛知県 大曽根ほか15 318 139 281,529 165,169
三重県 津ほか4 168 61 135,480 86,028
京都府 上京ほか5 115 44 74,258 40,972
大阪府 天満ほか19 598 208 496,521 299,546
兵庫県 三宮ほか9 370 171 409,198 225,823
和歌山県 和歌山東ほか2 41 11 24,101 16,520
島根県 松江ほか2 208 56 81,462 43,218
広島県 保険課、広島東ほか7 165 58 106,744 70,443
山口県 山口ほか5 182 62 85,557 47.259
徳島県 徳島南ほか2 84 51 58,832 29,240
香川県 高松東ほか2 71 12 14,029 7,397
福岡県 東福岡ほか10 330 107 205,859 119,730
長崎県 長崎南ほか3 97 34 45,135 27,818
熊本県 熊本東ほか4 110 43 66,193 39,866
宮崎県 宮崎ほか3 80 50 71,477 30,673

202箇所

6,306 2,560 5,220,479 3,258,616