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雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったもの


(206) 雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定)(項)雇用安定等事業費
部局等の名称 岩手県ほか8都府県(支給庁)
北上公共職業安定所ほか24公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 29事業主
雇用調整助成金の支給額の合計 943,055,107円
不適正支給額 144,924,987円

 雇用調整助成金の支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、上記の29事業主に対して144,924,987円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(雇用調整助成金)

 雇用調整助成金は、雇用保険(前掲の「雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの」参照 )で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、失業の予防その他雇用の安定を図るため、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用する労働者について休業、教育訓練又は出向を実施した事業主に対して支給されるものである。そして、この助成金は、これら休業等に対して事業主が、休業日について支払った休業手当、教育訓練受講日について支払った賃金又は出向労働者の賃金について負担した額の一部を助成するものである。

(雇用調整助成金の支給)

 この助成金の支給要件等は、次のとおりとなっている。

(1) 支給要件

 労働大臣が指定する業種の事業主等が、これら事業主の区分に応じて定められた期間(以下「指定期間」という。)内に、労使間の協定により、当該事業所の雇用保険の被保険者(以下「対象被保険者」という。)に対し、次に示す休業、教育訓練又は出向を行うこと

(ア) 休業については、対象被保険者が所定労働日の全一日にわたり休業するものであることなど

(イ) 教育訓練については、その受講日において対象被保険者を業務に就かせないものであることなど

(ウ) 出向については、出向先事業所における対象被保険者の出向期間が3箇月以上であることが確実であると認められるものであることなど

(2) 支給額

 支給額は、事業主が対象被保険者に支払った休業手当、教育訓練受講日について支払った賃金又は出向労働者の賃金について負担した額に、所定の支給率(注1) を乗じて得た額(教育訓練については、このほか定額の訓練費(注2) が支給される。)

(3) 支給日数及び支給対象期間

(ア) 休業又は教育訓練に係る助成金の支給日数は、1指定期間につき休業と教育訓練の延日数の合計が、対象被保険者数に200日を乗じて得た日数を超えない日数

(イ) 出向に係る助成金の支給対象期間は1年間(注3)

(4) 支給手続

(ア) 事業主から、休業、教育訓練又は出向の実施前に、これら休業等に関する労使間の協定書を添付した実施計画届を、実施後に資本の額、事業の種類、対象被保険者数、休業延日数、対象手当額、教育訓練延日数、対象賃金額等を記載した支給申請書を、公共職業安定所にそれぞれ提出させる。

(イ) 公共職業安定所は、これらの支給申請書等に基づいて支給要件等に適合しているかどうかを審査して支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給する。

(注1)  所定の支給率 1/2(中小企業事業主の場合は2/3)であるが、平成5年6月11日から7年3月31日までの間は暫定措置として2/3(中小企業事業主の場合は3/4)、さらに教育訓練については6年1月1日から7年3月31日までの間は3/4(中小企業事業主の場合は4/5)となっている。

(注2)  定額の訓練費 教育訓練の日数に1,500円(5年6月11日から12月31日までの間は暫定措置として2,000円、さらに6年1月1日から7年3月31日までの間は3,000円)を乗じて得た額となっている。

(注3)  1年間6年2月9日から7年3月31日までの期間に係る出向については暫定措置として2年間となっている。

2 検査の結果

(検査の対象)

 岩手県ほか14都府県(支給決定庁 北上公共職業安定所ほか132公共職業安定所)から雇用調整助成金の支給を受けた事業主のうち、543事業主(支給額7,817,711,230円)について、公共職業安定所における雇用調整助成金の支給決定の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、岩手県ほか8都府県で、29事業主に対する支給(支給金額943,055,107円)について144,924,987円が不適正に支給されていた。これは、北上公共職業安定所ほか24公共職業安定所において、事業主が誠実でなかったなどして、次のように支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによるものである。

(ア) 実際には休業を全く実施していないのに出勤簿、賃金台帳を改ざんして、計画どおりに休業を実施したとして繰り返し申請していた。

(イ) 休業日又は教育訓練日に業務に就いている日数分を支給対象として申請していた。なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

 これらの不適正支給額を都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 公共職業安定所 本院が調査した事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した雇用調整助成金 左のうち不適正雇用調整助成金
千円 千円
岩手県 北上 1 1 46,683 46,683
崎玉県 大宮ほか1 11 3 20,200 1,096
千葉県 千葉ほか1 7 2 302,249 869
東京都 飯田橋ほか3 25 5 237,822 39,884
神奈川県 鶴見ほか5 35 6 43,614 25,401
静岡県 静岡ほか2 20 3 90,551 24,122
大阪府 岸和田ほか1 5 2 42,921 1,052
兵庫県 神戸ほか2 19 3 17,793 3,919
福岡県 福岡中央ほか1 10 4 141,217 1,893
25箇所 133 29 943,055 144,924