1 本院が要求した是正改善の処置
労働者災害補償保険の診療費における入院室料加算については、次の要件を満たすなどの場合に算定できることとされている。
(ア) 個室又は2人部屋の特定病床(都道府県知事の承認を受けた病床)に傷病労働者を収容した場合
(イ) 傷病労働者の容態が常時監視できるような設備又は構造上の配慮がなされているなどの要件を満たす個室又は2人部屋に傷病労働者を収容した場合
しかし、入院室料加算の算定について調査したところ、19労働基準局における56指定医療機関について、次のような不適切な事態が見受けられた。
(ア) 特定病床でない個室又は2人部屋の病床に傷病労働者を収容しているのにこれを算定しているもの
(イ) 設備又は構造上の配慮がなされていない個室又は2人部屋に傷病労働者を収容しているのにこれを算定しているもの
このような事態が生じているのは、主として次のことによると認められた。
(ア) 労働省が昭和56年及び63年に各労働基準局に発した「労災診療費算定基準の一部改正に伴う実施上の留意事項について」は、審査について、確認すべき事項の内容、審査の方法、算定要件にいう病室の設備又は構造上の配慮の内容等を具体的に示していなかったこと
(イ) 各労働基準局において、指定医療機関から提出させていた資料の保存体制が十分でなくその利活用を図っていなかったりしたこと
入院室料加算の算定及び支払の適正を期するため、労働大臣に対し平成5年11月に、会計検査院法第34条の規定により次のような是正改善の処置を要求した。
(ア) 労働省において、各労働基準局に対し、入院室料加算の審査について、確認すべき事項の内容、審査の方法、算定要件にいう病室の設備又は構造上の配慮の内容等を具体的に示すこと
(イ) 各労働基準局において、確認結果の記録、その保存体制の整備を図って、入院室料加算の的確な審査を行うこと
2 当局が講じた是正改善の処置
労働省では、本院指摘の趣旨に沿い、入院室料加算の算定及び支払の適正を期するため、6年10月に通達を発して、次のような処置を講じた。
(ア) 入院室料加算の審査について、当該指定医療機関の資料で特定病床又は個室等の病室番号及び設備構造をあらかじめ確認しておき、その資料等と病室番号等が明記されたレセプトを照合確認することとし、設備又は構造上の配慮については、病室に監視装置(テレビ、モニター等)が設置されているなどの内容を具体的に示すこととした。
(イ) 指定医療機関から提出された資料及び報告等について、確認事項を記録するとともにその保存体制の整備を図って、入院室料加算の的確な審査を行うこととした。