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  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

艦船製造請負契約における建造保険料の計算に当たり、付保対象額の算定を適切に行うよう改善させたもの


艦船製造請負契約における建造保険料の計算に当たり、付保対象額の算定を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 (1) 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)平成元年度乙型警備艦建造費
平成元年度継続費 (組織)防衛本庁 (項)平成元年度乙型警備艦建造費
(2) 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)艦船建造費
平成元年度国庫債務負担行為

(組織)防衛本庁 (事項)艦船建造
部局等の名称 調達実施本部
契約艦船及び建造保険料 (1) 〔1〕平成元年度護衛艦 「ちくま」 74,000,000円
〔2〕同 「とね」 80,000,000円
(2) 〔1〕平成元年度掃海艦 「やえやま」 130,000,000円
〔2〕同 「つしま」 130,000,000円
建造保険料の概要
艦船製造請負契約を締結するに当たり、造船会社に船舶建造保険を付させることにより必要となる費用

契約の相手方 (1) 〔1〕日立造船株式会社
〔2〕住友重機械工業株式会社
(2) 〔1〕日立造船株式会社
〔2〕日本鋼管株式会社
契約 (1) 〔1〕、〔2〕 }平成元年12月22日 随意契約
(2) 〔1〕、〔2〕
過大に計算されていた建造保険料 6180万円
<検査の結果>
 上記の艦船製造請負契約において、官給品の付保対象額の算定を誤ったため、建造保険料(4億1400万円)が約6180万円過大に計算されていたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、調達実施本部において、官給品の付保対象額を海上幕僚監部からの事務連絡により決定しているのに、この事務連絡が複数の同型艦の場合に艦船別に記載されておらず、その内容が正確に把握できない体制になっていたことによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、調達実施本部では、平成7年度からの艦船製造請負契約における建造保険料の計算を行うに当たり、官給品の付保対象額は、新たに注意事項を加えた海上幕僚監部からの事務連絡により決定するなど、建造保険料の計算を適切に行うための処置を講じた。

1 建造契約の概要

 (建造契約)

 調達実施本部(以下「本部」という。)では、海上幕僚監部の要求に基づき、自衛艦(以下「艦船」という。)を製造させるため、造船会社と艦船製造請負契約(以下「建造契約」という。)を締結している。
 この建造契約のために作成する予定価格は、原価計算方式により、直接材料費、加工費及び直接経費の製造原価に、一般管理費及び販売費、支払利子、利益の総利益を加えて価格を算出し、この価格に建造保険料等を計上して計算価格を算定し、この計算価格に消費税額を計上して決定されている。

 (建造契約に伴う建造保険の付保)

 本部では、艦船の建造契約を締結するに当たり、建造中の偶然の事故により造船会社が負担する経済的損失をてん補するため、船舶建造請負契約特殊条項により、造船会社を保険契約者及び被保険者とし、保険会社を保険者とする船舶建造保険(以下「建造保険」という。)を造船会社に付させることとしている。
 このため、本部では、予定価格の算定に当たり、造船会社が建造保険を付すことに要する費用として建造保険料を計上している。

 (建造保険の概要)

 建造保険の目的物は、船体並びに艦船に搭載されることとなる主機関、武器類及びぎ装品等(以下、武器類及びぎ装品等を「官給品」という。)となっている。そして、この目的物の価額が保険価額であり、この保険価額は、船体に主機関、官給品が搭載された完成時の価額とされている。

 (建造保険料の計算)

 建造保険料を計算する際の保険価額は、船体、主機関及び官給品の額の合計金額となっている。このうち、官給品については、本部が海上幕僚監部へ建造保険に付す対象額(以下「付保対象額」という。)を問い合わせており、これに対し、海上幕僚監部で付保対象額を事務連絡により本部あてに通知し、これを本部において査定するなどして計上している。
 そして、建造保険料は保険価額と同額の保険金額に所定の料率を乗じて計算することとなっている。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 建造契約の予定価格の計算価格には建造保険料が計上されていることから、計算価格の算定に誤りがあると予定価格に、ひいては予定価格を基に決定されている契約金額に影響するため、建造保険料の計算が適正なものとなっているかどうかについて調査した。

 (調査の対象)

 本部において、平成元年度から6年度までの間に、随意契約により、日立造船株式会社ほか7会社に請け負わせている護衛艦「ちくま」ほか34隻の建造契約(建造保険料計37億4840万円)について調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、元年12月に契約し、5年2月及び同年3月に就役した護衛艦「ちくま」ほか3隻の建造保険料の計算について次のような事態が見受けられた。

(1) 本部では、上記4隻の建造契約における建造保険料を計4億1400万円(護衛艦「ちくま」7400万円、同「とね」8000万円、掃海艦「やえやま」1億3000万円及び同「つしま」1億3000万円)と計算していた。

(2) しかし、この計算に当たり、本部では、付保対象額のうち官給品について次のように算定を誤っていた。

 (ア) 護衛艦「ちくま」及び「とね」の官給品の付保対象額については、海上幕僚監部からの事務連絡に記載された額が2隻分で141億5956万余円となっていた。本部では、これを十分確認しなかったため、そのまま1隻分で141億5956万余円と誤り、上記の両護衛艦について、これを査定して113億2765万余円をそれぞれについて計上し保険価額を算定していたが、官給品の適正な付保対象額を計算すると、護衛艦「ちくま」及び「とね」は共に72億6237万余円となる。

 (イ) 掃海艦「やえやま」及び「つしま」の官給品の付保対象額については、海上幕僚監部からの事務連絡に記載された額が2隻分で111億2416万余円となっていた。本部では、これを十分確認しなかったため、そのまま1隻分で111億2416万余円と誤り、上記の両掃海艦について、これを査定して86億4012万余円をそれぞれについて計上し保険価額を算定していたが、官給品の適正な付保対象額を計算すると、掃海艦「やえやま」及び「つしま」は共に57億2894万余円となる。

 (過大に計算されていた建造保険料)

 官給品の付保対象額を上記の適正なものに改めて建造保険料を計算すると、護衛艦「ちくま」は6378万余円、「とね」は6869万余円、また、掃海艦「やえやま」及び「つしま」は共に1億0984万余円、計3億5218万余円となり、建造保険料が4隻の合計で約6180万円過大に計算されていたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、本部では、官給品の付保対象額を、海上幕僚監部からの事務連絡により決定しているが、この事務連絡は、複数の同型艦の場合に艦船別に記載されておらず、その内容が正確に把握できない体制となっていたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、本部では、7年度からの建造契約における建造保険料の計算を行うに当たり、海上幕僚監部から官給品の付保対象額の事務連絡を受ける際、十分な審査を行い、海上幕僚監部と調整を図るとともに、事務連絡に、複数の同型艦の場合は1隻ごとの金額とするなどの注意事項を新たに追加することとする処置を講じた。