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  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 法務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

謄本作成機の調達を登記事務のコンピュータ化に対応して適切に行うよう改善させたもの


謄本作成機の調達を登記事務のコンピュータ化に対応して適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 登記特別会計 (項)事務取扱費
部局等の名称 東京法務局ほか11法務局
調達物品 全自動謄本作成機、半自動謄本作成機、標準型謄本作成機
調達物品の概要 登記簿を複写するなどして、謄本又は抄本を作成する機器
調達費用 501,689,935円 (平成5、6両年度)
節減できた調達費用 2460万円 (平成5、6両年度)
<検査の結果>
 上記の各部局において、登記事務がコンピュータ化されたことにより、謄本等の作成枚数が大幅に減少している実態に対応して謄本作成機の調達を行っていたとすれば、調達費用を約2460万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、法務本省において謄本作成機の配備基準を部内にとどめ法務局に明示していなかったり、法務局において余剰となる謄本作成機を他の登記所に供用換えする配慮が十分でなかったりしていたことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、法務省では、平成7年11月に、各法務局に対して通知を発し、謄本作成機の配備基準を明示するとともに、これに基づいて調達を適切に行うよう、また、余剰となる謄本作成機についてはこれを供用換えするよう指導するなどして、登記事務のコンピュータ化に対応した謄本作成機の調達を行うこととする処置を講じた。

1 謄本作成機の調達の概要

 (登記簿謄本等の作成)

 法務省では、法務局(地方法務局を含む。以下同じ。)又はその支局若しくは出張所において、不動産登記、商業登記、船舶登記等の登記事務を行っている。そして、登記事務を行うこれら部局(以下「登記所」という。)は、各種の登記簿を管理し、登記簿の謄本又は抄本(以下「謄本等」という。)の交付請求があった場合には、登記簿謄本作成機(以下「謄本作成機」という。)を使用して、登記簿を複写し、謄本等である旨の認証文を付記し、契印するなどして謄本等を作成し、それを申請者に交付している。

 (謄本作成機の種類)

 上記の謄本作成機には、登記簿の複写から紙折り、綴じ、契印、認証までを自動的に行う全自動謄本作成機(以下「全自動機」という。)、複写及び紙折りを自動的に行う半自動謄本作成機(以下「半自動機」という。)及び複写のみを行う標準型謄本作成機(以下「標準機」という。)がある。

 (登記事務のコンピュータ化)

 法務省では、登記事務を迅速かつ適正に処理するため、昭和60年からコンピュータを用いて登記事務を処理する登記情報システムの導入(以下「コンピュータ化」という。)を図っている。そして、登記事務の大部分を占める不動産登記を中心にコンピュータ化を順次進めてきており、全国の50法務局、1,059登記所のうち、平成7年3月末現在でコンピュータ化されているものは21法務局、109登記所となっている。その内訳は、不動産登記に係るものが107登記所、商業登記に係るものが1登記所、不動産登記及び商業登記に係るものが1登記所である。
 そして、コンピュータ化された登記所においては、不動産登記法(明治32年法律第24号)等により、謄本等に代えて、コンピュータシステムにより謄本等と同一の効力を有する登記事項証明書を作成することとなるため、当該登記所では、謄本作成機による謄本等の作成枚数は大幅に減少することとなる。

 (謄本作成機の配備基準及び調達)

 法務本省では、昭和60年に、各謄本作成機の処理能力、登記所における年間の謄本等の作成枚数などを総合的に検討し、登記所に謄本作成機を配備する基準(以下「配備基準」という。)を定めている。
 そして、法務本省では、毎年度、コンピュータ化されていない登記所については、前年の謄本等の作成枚数を、また、コンピュータ化された登記所については、コンピュータ化の対象外の登記に係る前年の謄本等の作成枚数を基に、それぞれ上記の配備基準に従って更新、増設等に必要な謄本作成機の機種及び台数を決定している。これを基に、全自動機については、法務本省において一括して調達したうえで各登記所に配備し、半自動機及び標準機については、各法務局において調達し、局内の各登記所に配備することとしている。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 前記のとおり、コンピュータ化された登記所においては、謄本作成機による謄本等の作成枚数が大幅に減少することになるので、配備基準に基づき、登記事務のコンピュータ化に対応して謄本作成機の調達が適切に行われているかなどの観点から調査を実施した。

 (調査の対象)

 登記事務がコンピュータ化されている登記所を管轄している21法務局のうち、比較的コンピュータ化が進んでいると認められる東京法務局ほか13法務局(注1) について調査した。

 (調査の結果)

 調査の結果、上記の14法務局では、平成3年から5年にかけて47登記所においてコンピュータ化されており、これらの登記所の謄本作成機による謄本等の作成枚数は、コンピュータ化される前と比較して平均で7割程度減少していると認められた。そして、このようにコンピュータ化されると謄本等の作成枚数が大幅に減少するのに、東京法務局ほか11法務局(注2) において、5、6両年度に計5億0168万余円で調達された謄本作成機計230台(全自動機74台、半自動機42台、標準機114台)のうち、次のとおり、37台に係る調達がコンピュータ化に対応しておらず、適切とは認められない事態が見受けられた。

 〔1〕 コンピュータ化された登記所において謄本作成機の配備台数が配備基準を超過しているのに、新たに調達していたもの    
    東京法務局ほか9法務局(注3)
       半自動機6台、標準機12台、計18台、調達費用計約1260万円

 〔2〕 他のコンピュータ化された登記所において余剰となる謄本作成機があるのに、これを供用換えして使用することなく、新たに調達していたもの
    東京法務局ほか9法務局(注4)
       半自動機4台、標準機15台、計19台、調達費用計約1190万円

 (節減できた調達費用)

 登記事務のコンピュータ化に対応して謄本作成機の調達を行っていたとすれば、5、6両年度に調達している上記の37台については、その調達の要がなく、調達費用を約2460万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のような理由などによるものと認められた。

(ア) 法務本省が配備基準を部内にとどめ法務局に明示していないことから、法務局においては、コンピュータ化された登記所からの更新などの要望をそのまま採り入れて謄本作成機を調達していたり、余剰となる謄本作成機を他の登記所に供用換えする配慮が十分でなかったりしていたこと

(イ) 法務本省が、各登記所における謄本作成機の配備の実態を十分把握していなかったことから、各法務局における調達に関して、実態に基づいた適切な指示を行っていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、法務省では、7年11月に、各法務局に対して通知を発し、次のとおり、登記事務のコンピュータ化に対応した謄本作成機の調達を行うこととする処置を講じた。

(ア) 配備基準を明示するとともに、これに基づいて謄本作成機の配備台数を決定して調達するよう、また、配備基準を上回り余剰となる謄本作成機を他の登記所に供用換えするよう各法務局に対し指導した。

(イ) 各登記所における謄本作成機の配備の実態を把握し、実態に基づいた指示を行うため、各法務局に対して謄本作成機の配備状況調書を提出させることとした。

 (注1)  東京法務局ほか13法務局 東京、大阪、名古屋、広島、福岡、札幌、高松各法務局及び横浜、浦和、岐阜、富山、岡山、宮崎、徳島各地方法務局

 (注2)  東京法務局ほか11法務局 東京、大阪、広島、福岡、札幌、高松各法務局及び横浜、浦和、岐阜、富山、宮崎、徳島各地方法務局

 (注3)  東京法務局ほか9法務局 東京、大阪、広島、福岡、札幌、高松各法務局及び横浜、岐阜、宮崎、徳島各地方法務局

 (注4)  東京法務局ほか9法務局 東京、大阪、福岡、高松各法務局及び横浜、浦和、岐阜、富山、宮崎、徳島各地方法務局