会計名及び科目 | 一般会計 国税収納金整理資金 | (款)歳入組入資金受入 (項)各税受入金 |
部局等の名称 | 麹町税務署ほか187税務署 |
納税者 | 452人 |
徴収過不足額 | 徴収不足額 | 1,375,521,771円 |
徴収過大額 | 18,771,500円 |
1 租税の概要
源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、納付の方法などが定められている。
平成6年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は57兆6668億余円に上っている。このうち源泉所得税は18兆0165億余円、申告所得税は4兆1330億余円、法人税は13兆0897億余円、相続税・贈与税は3兆3176億余円、消費税は8兆5785億余円となっていて、これら各税の合計額は47兆1355億余円となり、全体の81.7%を占めている。
2 検査の結果
上記各税の課税内容に重点をおいて検査したところ、麹町税務署ほか187税務署において、納税者452人から租税を徴収するに当たり、徴収額が不足していたものが446事項1,375,521,771円、徴収額が過大になっていたものが6事項18,771,500円あった。
これを、税目別にみると次表のとおりである。
税目 | 徴収不足の事項数 徴収過大の事項数 |
徴収不足額 徴収過大額(△) |
源泉所得税 |
27 |
円 90,137,711 |
− | − | |
申告所得税 | 125 | 262,319,900 |
4 | △5,757,100 | |
法人税 | 200 | 605,586,300 |
1 | △10,778,800 | |
相続税・贈与税 | 55 | 274,005,200 |
− | − | |
消費税 | 37 | 140,281,760 |
1 | △2,235,600 | |
その他 | 2 | 3,190,900 |
− | − | |
計 | 446 | 1,375,521,771 |
6 | △18,771,500 |
なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。
上記の188税務署において、徴収不足又は徴収過大の事態を生じた原因は、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどによるものである。
この452事項のうち、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税に関するものについて、その態様を示すと次のとおりである。
(1) 源泉所得税に関するもの
源泉所得税では徴収不足となっていたものが27事項あった。この内訳は、退職手当、給与等及び報酬に関するもの15事項、配当に関するもの12事項である。
ア 退職手当、給与等及び報酬に関するもの
退職手当、給与等(給料、賃金、賞与等をいう。)及び報酬の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、これを徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
この退職手当、給与等及び報酬に関し、徴収不足となっている事態が15事項あった。その内容は、税額の計算に誤りがあり、税額が過小のままとなっていたり、法定納期限を経過した後、長期間にわたって源泉所得税が納付されていなかったりしているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりしたため、納税の告知をしていなかったものである。(事例1参照)
イ 配当に関するもの
配当の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、これを徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。また、支払が確定した日から1年を経過した日において未払となっている配当については、その日に支払があったものとみなし、支払者が配当に対する源泉所得税を徴収してその翌月10日までにこれを国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
この配当に関し、徴収不足となっている事態が12事項あった。その主な内容は、法定納期限を経過した後、長期間にわたって源泉所得税が納付されていないのに、これを見過ごしたため、納税の告知をしていなかったものである。
源泉所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例1> 報酬に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの
A会社は、平成3年9月から4年6月までの間に芸能人等に支払った報酬を22,897,775円とし、これに対する源泉所得税額2,289,775円を納付していた。そして、4年7月から6年3月までの間の報酬に対する源泉所得税については納付していなかった。
しかし、同会社の法人税の申告書等によれば、3年9月から4年6月までの間及び4年7月から6年3月までの間に支払った報酬はそれぞれ122,903,326円、119,920,494円である。そして、これに対する源泉所得税額は12,290,326円、11,992,042円であるのに、支払金額等の調査が十分でなかったため、源泉所得税額10,000,551円、11,992,042円、計21,992,593円について納税の告知をしておらず、同金額が徴収不足になっていた。
(2) 申告所得税に関するもの
申告所得税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが129事項あった。この内訳は、不動産所得に関するもの35事項、雑所得に関するもの32事項、配当所得に関するもの22事項及びその他に関するもの40事項である。
ア 不動産所得に関するもの
個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から不動産所得を生ずべき業務に要した負債の利子などの必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、不動産所得の計算上損失を生じた場合において、必要経費のうちに貸付けの用に供する土地等を取得するために要した負債の利子があるときは、損失の金額のうちこの負債の利子に相当する部分の金額は損失が生じなかったものとみなした上で他の各種所得と総合し、課税することとなっている。
また、不動産所得の計算に当たって、貸付料等の収入、建物等の取得などに係る経費の各項目の金額に消費税を含めて経理している場合には、経費に係る消費税額が収入に係る消費税額を超えるときに生じる消費税の還付金は、不動産所得の計算上総収入金額に算入することとなっている。
この不動産所得に関し、徴収不足となっている事態が35事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、総収入金額から差し引く必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。(事例2参照)
(イ)申告書等で、収入及び経費に消費税を含めて経理している場合の消費税の還付金が総収入金額に算入されていないのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。
イ 雑所得に関するもの
個人が貸付金の利子(事業所得に該当するものを除く。)などを受けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を雑所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
この雑所得に関し、徴収不足となっている事態が32事項あった。その主な内容は、個人に貸付金の利子による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、この所得を他の所得と総合して課税していなかったものである。(事例3参照)
ウ 配当所得に関するもの
個人が法人から配当を受けた場合には、源泉分離選択課税(注)
の適用を受けた配当などを除いて、配当所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
この配当所得に関し、徴収不足となっている事態が22事項あった。その内容は、個人に法人から受けた配当による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりしたため、この所得を他の所得と総合して課税していなかったものである。
(注) 源泉分離選択課税 配当について、その支払を受ける者が法人の発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の5以上を有する場合又は法人から支払を受ける配当の金額が1回25万円(年間50万円)以上の場合を除いて、その者の選択により他の所得と分離し100分の35の税率を適用して源泉所得税を課することをいう。
エ その他に関するもの
上記のアからウのほか、譲渡所得、事業所得、一時所得等に関し、徴収不足又は徴収過大となっている事態が40事項あった。
申告所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例2> 不動産所得に係る必要経費などを誤っていたもの
納税者Bは、平成4年分の申告に当たり、次表の「申告」欄のとおり、不動産貸付けに係る総収入金額5,664,190円と必要経費21,543,086円との差額15,878,896円を不動産所得の損失額としていた。そして、この損失額から土地等を取得するために要した負債の利子2,733,464円を差し引いた金額13,145,432円を給与所得の金額と損益通算し、総所得金額は27,354,068円であるとしていた。
しかし、同人の申告書等によれば、必要経費には家事上の経費6,527,427円が含まれており、正しくは、次表の「訂正」欄のとおり、必要経費は15,015,659円となる。また、土地等を取得するために要した負債の利子は8,712,855円であり、損益通算の対象となる損失額は638,614円となる。したがって、この損失額を給与所得の金額と損益通算すると総所得金額は39,860,886円となるのに、これを見過ごしたため、申告所得税額6,253,400円が徴収不足になっていた。
\ | 申告 | 訂正 | |
不 動 産 所 得 |
総収入金額〔1〕 |
円 5,664,190 |
円 5,664,190 |
必要経費〔2〕 | 21,543,086 | 15,015,659 | |
不動産所得の損失額〔3〕 | 15,878,896 | 9,351,469 | |
〔2〕 のうち土地等を取得するために要した負債の利子〔4〕 | 2,733,464 | 8,712,855 | |
損益通算の対象となる不動産所得の損失額(〔3〕 -〔4〕 )〔5〕 | 13,145,432 | 638,614 | |
給与所得の金額〔6〕 | 40,499,500 | 40,499,500 | |
総所得金額(〔6〕 -〔5〕 )〔7〕 | 27,354,068 | 39,860,886 |
<事例3> 貸付金の利子から生じた雑所得について課税していなかったもの
納税者Cは、平成5年分の申告に当たり、雑所得はないとしていた。
しかし、D会社の4年7月から5年6月までの事業年度分の法人税の申告書等によれば、同会社は同人からの借入金に対する利子として5年6月に14,384,551円を支払っていた。したがって、同人には5年分の貸付金の利子から生じた同額の雑所得があるのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、申告所得税額7,192,400円が徴収不足になっていた。
(3) 法人税に関するもの
法人税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが201事項あった。この内訳は、同族会社の留保金に関するもの29事項、法人税額の特別控除に関するもの29事項、土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関するもの28事項、新規取得土地等に係る負債の利子に関するもの21事項及びその他に関するもの94事項である。
ア 同族会社の留保金に関するもの
特定の同族会社(注1)
については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注2)
の法人税を課することとなっている。
この同族会社の留保金に関し、徴収不足又は徴収過大となっている事態が29事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかった。 (事例4参照)
(イ) 申告書等で課税留保金額や税額の計算に誤りがあり、特別税率の法人税額が少なく記載されているのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税額を過小のままとしていた。
(注1) 特定の同族会社 発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の50以上が、3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)及びこれらと特殊の関係にある個人・法人によって所有されている会社をいう。
(注2) 特別税率 課税留保金額が年3000万円以下の部分については100分の10、年3000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20となっている。
イ 法人税額の特別控除に関するもの
青色申告書を提出する法人のうち中小企業者等(発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属しているなどの法人を除く。)が電子機器利用設備を取得し又は賃借した場合には、その設備を事業に使用した最初の事業年度において、次の金額のうちいずれか少ない金額を限度として法人税額から控除する特例を適用できることなどとなっている。
〔1〕 取得価額又は賃借胡間中に支払う費用の総額に一定の割合を乗じて得た金額
〔2〕 確定申告書の法人税額の100分の20に相当する金額
この法人税額の特別控除(以下「税額控除」という。)に関し、徴収不足となっている事態が29事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で、前期以前に既に税額控除された余額が当期の法人税額から重複して控除されるなどしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
(イ) 申告書等で、発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属しているなどの法人が税額控除をしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
ウ 土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関するもの
法人の長期所有土地等(注1)
、短期所有土地等(注2)
、超短期所有土地等(注3)
の譲渡等について、それぞれ区分し、収益の額から原価と経費の額を差し引いて譲渡利益金額が算出される場合には、通常の法人税のほか、それぞれの譲渡利益金額に対し特別税率の法人税を課することとなっている。そして、この特別税率の法人税額は、長期所有土地等、短期所有土地等及び超短期所有土地等の譲渡利益金額のそれぞれ100分の10、100分の20及び100分の30に相当する金額などとなっている。
この土地等の譲渡等に係る譲渡利益に関し、徴収不足となっている事態が28事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で原価又は経費の額に誤りがあり、譲渡利益金額が記載されていなかったり、少なく記載されていたりしていた。しかし、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、特別税率の法人税を課していなかったり、譲渡利益金額を過小のままとしたりしていた。
(イ) 申告書等で、長期所有土地等の譲渡利益金額と短期所有土地等の譲渡損失金額が合算されるなどし、譲渡利益金額が算出されなかったり、少なく算出されたりしていた。しかし、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、特別税率の法人税を課していなかったり、譲渡利益金額を過小のままとしたりしていた。 (事例5参照)
(注1) 長期所有土地等 法人が所有する土地等のうち短期所有土地等、超短期所有土地等以外の土地等をいう。
(注2) 短期所有土地等 譲渡した年の1月1日までに所有していた期間が10年(昭和62年10月1日から平成9年3月31日までの譲渡では5年)以下である土地等をいう。ただし、超短期所有土地等に該当するものを除く。
(注3) 超短期所有土地等 昭和62年10月1日から平成9年3月31日までに譲渡した土地等のうち、譲渡した年の1月1日までに所有していた期間が2年以下である土地等をいう。
エ 新規取得土地等に係る負債の利子に関するもの
法人が、新規取得土地等(昭和63年12月31日以後に取得した土地等)を有し、当該土地等が長期間にわたって使用される建物等の敷地の用に供されていない場合には、当該土地等に係る負債の利子は取得後4年間損金に算入しないこととなっている。そして、当該負債の利子は、損金に算入されなかった期間の末日を含む事業年度の翌事業年度から4年間で均等額を損金に算入することなどとなっている。
この新規取得土地等に係る負債の利子に関し、徴収不足となっている事態が21事項あった。その主な内容は、申告書等で、長期間にわたって使用される建物等の敷地の用に供されていない新規取得土地等があるのに、これを見過ごしたため、当該土地等に係る負債の利子を損金に算入したままとしていたものである。
オ その他に関するもの
上記のアからエのほか、受取配当等の益金不算入、役員賞与の損金不算入等に関し、徴収不足となっている事態が94事項あった。
法人税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例4> 同族会社の課税留保金額に対し特別税率の法人税を課していなかったもの
E会社は、平成3年4月から4年3月までの事業年度分の申告に当たり、特定の同族会社には該当しないとして、利益のうち社内に留保した金額に対し特別税率による税額計算をしていなかった。
しかし、申告書等によれば、同会社は3人の株主及びこれらの親族が発行済株式の総数の100分の60を所有する特定の同族会社であり、所定の計算をすれば課税留保金額172,739,000円が算出される。したがって、この課税留保金額に対して特別税率の法人税を課することとなるのに、これを見過ごしたため、法人税額28,047,800円が徴収不足になっていた。
<事例5> 長期所有土地等を譲渡した場合の譲渡利益金額の計算を誤っていたもの
F協同組合は、平成4年4月から5年3月までの事業年度分の申告に当たり、期中に譲渡した土地7件について、いずれも長期所有土地等に該当するとして、譲渡利益金額と譲渡損失金額を合算し、譲渡利益金額はないとしていた。
しかし、申告書等によれば、期中に譲渡した土地7件のうち1件は、所有期間が5年以下である短期所有土地等に該当するから、この土地の譲渡損失金額56,813,740円と他の6件の譲渡利益金額54,583,851円は合算できない。したがって、長期所有土地等の譲渡利益金額は54,583,851円となるのに、これを見過ごしたため、法人税額5,471,000円が徴収不足になっていた。
(4) 相続税・贈与税に関するもの
相続税・贈与税では徴収不足となっていたものが55事項あった。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関するもの21事項、相続税額の加算に関するもの10事項、その他に関するもの16事項、贈与税については8事項である。
ア 相続税に関するもの
(ア) 土地建物等の価額に関するもの
個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。ただし、被相続人が相続開始前3年以内に取得した土地建物等(被相続人が居住の用に供していたものを除く。)については、被相続人が取得したときの取得価額によることとなっていて、この場合、借地権相当額、借家権相当額等の控除はできないこととなっている。
この土地建物等の価額の計算に関し、徴収不足となっている事態が21事項あった。その主な内容は、申告書等で、相続により取得した建物等の価額の計算において、被相続人が相続開始前3年以内に取得した建物等の取得価額から借家権相当額を控除しているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、建物等の価額を過小のままとしていたものである。
(イ) 相続税額の加算に関するもの
相続又は遺贈により財産を取得した者が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者である場合には、所定の方法により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算した金額をその者の相続税額とすることとなっている。
この相続税額の加算に関し、徴収不足となっている事態が10事項あった。その内容は、相続により財産を取得した者が当該被相続人の弟妹や甥姪で一親等の血族ではないのに、これを見過ごしたため、相続税額を過小のままとしていたものである。 (事例6参照)
(ウ) その他に関するもの
上記(ア)、(イ)のほか、有価証券の価額等に関し、徴収不足となっている事態が16事項あった。
イ 贈与税に関するもの
個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。そして、同族会社である株式会社が新株を発行する際、従前の株主が新株の引受けをせず、その株主の親族が新株引受権を取得し、有利な発行価額による新株の引受けをした場合には、その親族が従前の株主から新株引受権を贈与により取得したものとみなされることとなっている。
この贈与税に関し、徴収不足となっていた事態が8事項あった。その主な内容は、同族会社における従前の株主からその親族が新株引受権を贈与により取得しているのに、これに係る資料の収集・活用が的確でなかったため、贈与税を課していなかったものである。
相続税・贈与税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例6> 相続税額の加算をしていなかったもの
納税者Gは、平成3年10月相続分の申告に当たり、被相続人から相続した財産に係る相続税額を41,660,600円としていた。
しかし、申告書等によれば、納税者Gは被相続人の弟であり、一親等の血族以外の者であるから、所定の方法により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算して得られる金額がその相続税額となるのに、これを見過ごしたため、相続税額8,332,100円が徴収不足になっていた。
(5) 消費税に関するもの
消費税では徴収不足又は徴収過大となっていたものが38事項あった。この内訳は、仕入れに係る消費税額の控除に関するもの21事項、簡易課税制度の適用に関するもの15事項及びその他に関するもの2事項である。
ア 仕入れに係る消費税額の控除に関するもの
事業者は、課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)における課税売上高に対する消費税額から仕入れに係る消費税額を差し引いた額を消費税として納付することとなっている。そして、仕入れに係る消費税額の控除に当たっては、課税期間における課税売上割合(注)
が100分の95以上のときは、商品の仕入れや建物(自己の居住の用に供するなど事業用とはならないものを除く。)の取得等に係る消費税額の全額を、また、100分の95未満のときは課税売上高に対応する部分の金額を控除することとなっている。
この仕入れに係る消費税額の控除に関し、徴収不足となっている事態が21事項あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 申告書等で課税売上割合が100分の95未満でありながら、建物の取得等に係る消費税額の全額が控除されているのに、これを見過ごしたため、仕入れに係る消費税額を過大のままとしていた。 (事例7参照)
(イ) 申告書等で建物のうちに自己の居住の用に供していて事業用とはならない部分がありながら、これを含めた建物全体の取得に係る消費税額が控除されているのに、これを見過ごしたため、仕入れに係る消費税額を過大のままとしていた。
(注) 課税売上割合 次の算式により計算した割合をいう。
イ 簡易課税制度の適用に関するもの
事業者は、課税期間の基準期間(個人事業者については前々年、法人については前々事業年度)における課税売上高が4億円(平成3年9月30日までに開始する課税期間については5億円)以下であるときは、課税売上高に対する消費税額に所定の率(注)
を乗じて得られる金額を仕入れに係る消費税額とみなして税額を計算する簡易課税制度を適用することができることとなっている。
この簡易課税制度の適用に関し、徴収不足となっている事態が15事項あった。その主な内容は、基準期間における課税売上高が4億円(3年9月30日までに開始する課税期間については5億円)を超えている事業者が簡易課税制度を適用していて、納付する税額が少なくなっているのに、これを見過ごしたため、消費税額を過小のままとしていたものである。
(注) 所定の率 事業の種類ごとに次のとおり定められている。
第一種事業(卸売業) | 100分の90 |
第二種事業(小売業) | 100分の80 |
第三種事業(製造業等) | 100分の70 |
第四種事業(サービス業等) | 100分の60 |
ウ その他に関するもの
上記ア、イのほか、課税売上高の計上等に関し、徴収不足又は徴収過大となっている事態が2事項あった。
消費税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例7> 仕入れに係る消費税額の計算を誤っていたもの
納税者Hは、平成4年1月から12月までの課税期間分の申告に当たり、貸付けの事業の用に供している建物の取得等に係る消費税額34,117,980円全額を仕入れに係る消費税額とし、これを課税売上高に対する消費税額から控除していた。
しかし、同人の申告所得税の申告書等によれば、貸付事業のうちの大部分は課税の対象とならない住宅の貸付けで、課税売上割合は100分の95未満となっているので建物の取得等に係る消費税額の全額を控除することはできない。したがって、仕入れに係る消費税額について課税売上高に対応する部分の金額を計算すると控除する税額は7,198,591円となるのに、これを見過ごしたなどのため、消費税額27,011,400円が徴収不足になっていた。
これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。