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大学病院における診療報酬の請求に当たり、入院時医学管理料等の請求が不足していたもの


(6)−(22)大学病院における診療報酬の請求に当たり、入院時医学管理料等の請求が不足していたもの

会計名及び科目 国立学校特別会計(款)附属病院収入(項)附属病院収入
部局等の名称 北海道大学ほか16大学(28大学病院)
入院時医学管理料等の概要 入院時に行われる診療行為又は入院サービスの費用などを一括して算定するもの
請求不足額 932,511,980円

 上記の17大学(28大学病院)において、診療報酬の請求に当たり、退院した患者が同一傷病により再入院した場合の入院時医学管理料等を過小に算定するなどしていて、診療報酬請求額が932,511,980円不足していた。

1 診療報酬の概要

 (診療報酬の算定及び請求)

 国立大学の医学部、歯学部等に附属する病院(以下「大学病院」という。)では、臨床医学の教育・研究を行うほか、保険医療機関として患者の診療を行っている。
 保険医療機関は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号。以下「厚生省告示」という。)により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定することとなっている。そして、保険医療機関は、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書を添付して社会保険診療報酬支払基金等に対して請求することとなっている。

 (診療報酬の構成)

 診療報酬は、厚生省告示により、基本診療料と特掲診療料とから構成されている。
 このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際に、それぞれ行われる診療行為又は入院サービスの費用などを一括して算定するもので、初診料、再診料、入院料、入院時医学管理料及び特定入院料に区分されており、さらに、入院料は入院環境料、看護料及び特定機能病院入院診療料等から構成されている。

 (入院時医学管理料の算定方法)

 入院時医学管理料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められており、その点数は、入院期間が長くなるほど逓減するように定められている(次表参照)

<入院時医学管理料点数>

入院期間 2週間

以内

2週間

〜1月

1月

〜2月

2月

〜3月

3月

〜6月

6月

〜1年

1年

〜1年
6月

1年

6月超

点数 545 355 250 226 155 121 101 98

  (注) 一般病棟に入院している患者の場合

 そして、退院した患者が同一傷病により再入院した場合、当該再入院に係る入院時医学管理料の算定における入院の起算日及び入院期間の計算については、「新診療報酬点数表の制定(昭和33年告示の全部改正)等に伴う実施上の留意事項について(通知)」(平成6年保険発第25号厚生省保険局医療課長・歯科医療管理官通知。以下「6年医療課長通知」いう。)等により、次のように取り扱うこととなっている。

(ア) 一傷病により入院した患者が退院後、いったん治癒し又は治癒に近い状態までよくなり、その後再発して同一保険医療機関に再入院した場合は、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算する。

(イ) 一傷病により入院した患者が退院後、退院の日の翌日から起算して3月以上(注1) (特定の疾患に罹患している患者については1月以上(注2) )の期間、同一傷病について当該保険医療機関を含むいずれの保険医療機関にも入院することなく経過した後に再入院した場合は、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算する。

(ウ) (ア)、(イ)以外の場合で、同一傷病により再入院した場合は、初回入院日を起算日として入院期間を計算する。

 (看護料及び特定機能病院入院診療料)

 看護料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められており、入院期間が入院の日から起算して一定の日数を超えた場合の点数は、超える以前の点数より低く定められている。また、特定機能病院入院診療料は、特定機能病院(注3) として厚生大臣の承認を受けた大学病院において、その入院患者について、当該入院中1回に限り入院の日に所定の点数を算定することとされている。
 そして、この看護料及び特定機能病院入院診療料の算定に当たっても、退院した患者が同一傷病により再入院した場合の入院の起算日及び入院期間の計算については、6年医療課長通知により、入院時医学管理料と同様に取り扱うこととされている。

(注1) 3月以上 6年3月31日以前の再入院に係る患者については、6月以上
(注2) 1月以上 6年3月31日以前の再入院に係る患者については、3月以上
(注3) 特定機能病院  医療法(昭和23年法律第205号)第4条の2第1項の規定に基づき、高度医療の提供、高度医療技術の開発及び評価、高度医療に関する研修を実施する能力を備え、それにふさわしい人員配置、構造設備等を有する病院として、厚生大臣の承認を受けた病院をいう。

2 検査の結果

 (検査の対象)

 北海道大学ほか18大学の32大学病院における6年度の入院時医学管理料等に係る診療報酬の請求の適否について検査した。

 (請求不足の事態)

 検査の結果、北海道大学ほか16大学の28大学病院において、退院した患者が同一傷病により再入院した場合の入院の起算日を誤ったため、入院時医学管理料等に係る診療報酬請求額が不足していたものが31,051件、932,511,980円あった。
 これを診療報酬別に示すと次のとおりである。

ア 入院時医学管理料
 北海道大学ほか16大学の28大学病院では、患者が退院後、3月以上(特定の疾患に罹患している患者については1月以上)の期間、同一傷病についていずれの保険医療機関にも入院することなく経過した後に再入院したものについて、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算すべきであったのに、誤って初回入院日から通算した入院期間に基づき低い点数の入院時医学管理料を算定していた。このため、入院時医学管理料が過小に算定され、診療報酬請求額が861,993,630円不足していた。

イ 看護料
 北海道大学ほか16大学の27大学病院では、上記の入院時医学管理料の場合と同様に、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算すべきであったのに、誤って初回入院日から通算した入院期間に基づき低い点数の看護料を算定していた。このため、看護料が過小に算定され、診療報酬請求額が26,184,350円不足していた。

ウ 特定機能病院入院診療料
 特定機能病院としての承認を受けている大学病院のうち、北海道大学ほか13大学の14大学病院では、同一傷病で再入院した患者について、入院時医学管理料の場合と同様に再入院の日を起算日として、新たに特定機能病院入院診療料を算定することができるのに、誤ってこれを算定していなかった。このため、診療報酬請求額が44,334,000円不足していた。

 上記のように入院時医学管理料等の算定に当たり、診療報酬請求額が不足していたのは、主として次のようなことによると認められた。

(ア) 再入院の日を起算日として入院時医学管理料等を算定できるのは、入院した患者が退院後いったん治癒し又は治癒に近い状態までよくなり、その後再発して同一保険医療機関に再入院した場合に限られると誤解していたこと

(イ) 診療報酬請求事務に使用しているコンピュータヘの入力に当たり、再入院の日を入院時医学管理料算定の際の起算日とするか否かは職員が判断し入力しなければならないのに、コンピュータシステムにより自動的に処理されるものと誤解し、これを入力していなかったため、自動的に初回入院日が起算日とされていたこと

 上記の事態を大学病院別に示すと次のとおりである。

上記の事態を大学病院別に示すと次のとおりである。