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義務教育費国庫負担金の経理が不当と認められるもの


(23)−(27)  義務教育費国庫負担金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計(組織)文部本省(項)義務教育費国庫負担金
部局等の名称 栃木県ほか4県
国庫負担の根拠 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)
事業主体 栃木県ほか4県(平成4年度4県、5年度3県)
国庫負担の対象 公立の小学校及び中学校並びに盲学校及び聾(ろう)学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等
上記に対する国庫負担金交付額の合計 平成4年度 227,695,494,624円
平成5年度 203,783,949,893円
431,479,444,517円
不当と認める国庫負担金交付額
38,649,860円

 上記の5事業主体において、国庫負担対象額の算定に当たり、国庫負担の対象にならない教員に係る給与費等を含めたり、退職手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりなどしていたため、国庫負担金38,649,860円が過大に交付されていて、不当と認められる。

1 国庫負担金の概要

 (義務教育費国庫負担金の交付)

 義務教育費国庫負担金は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、公立の義務教育諸学校(注1) に要する経費のうち都道府県の負担する教職員給与費等の経費について、その実支出額を国庫負担対象額とし、その2分の1(平成4年度は一部の経費について9分の2)を国が負担するため都道府県に交付されるものである。ただし、国庫負担対象額については、「義務教育費国庫負担法第2条但書の規定に基づき教職員給与費等の国庫負担額の最高限度を定める政令」(昭和28年政令第106号)等により、都道府県の財政力に応じて、その最高限度が定められている。
 この国庫負担対象額の最高限度は、次によることとなっている。

(1) 地方交付税の交付団体である都道府県について
 教職員の職種区分及び休職者等の区分ごとに、教職員給与費等の種類ごとの実支出額から次の額を控除するなどして算定した額の合計額

 〔1〕 教職員の実数(注2) と標準定数(注3) とを比較して、実数が標準定数を超過する場合に、その超過する割合を給料等の実支出額に乗じて算定した額

 〔2〕 退職手当等については、国家公務員の例に準じて文部大臣が大蔵大臣と協議して定めるところにより算定した額を超過した額

 〔3〕 教育委員会事務局、教育関係団体等の学校以外の教育機関等に勤務する教職員のうち、充て指導主事(注4) (指導主事に充てる旨の発令がされ、かつ、実際に指導主事としての事務に従事している者に限る。)以外の者に係る給与費等

(2) 地方交付税の不交付団体である都道府県について
 当該年度の5月1日現在において算定した教職員の標準定数の合計数に、同日現在におる休職者等の数を加えるなどして教職員定数を算定し、この教職員定数に、毎年度教職員給与費等の種類ごとに別に政令で定める額を乗ずるなどして算定した額の合計額

 (注1)  義務教育諸学校 小学校及び中学校並びに盲学校及び聾(ろう)学校の小学部及び中学部

 (注2)  実数 毎月1日現在の職種区分(校長教諭等、学校栄養職員、事務職員など)ごとの実際の教職員の数

 (注3)  標準定数 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)等に定める方法により、都道府県全体の公立の義務教育諸学校について、学校の種類(小学校、中学校など)、職種区分ごとに算定された毎月の教職員の数。この数は、校長教諭等にあっては、学級数等を基とし、学校栄養職員、事務職員等にあっては、学枚数等を基として算定されることとなっている。

 (注4)  充て指導主事 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第19条の規定により教員の身分を保有したまま指導主事に充てられている者。指導主事は、教育委員会事務局に配置され、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事することとされている。

2 検査の結果

 検査の結果、地方交付税の交付団体である栃木県ほか4県において、国庫負担金38,649,860円が過大に交付されていて不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。
 

〔1〕 校長教諭等の標準定数の算定を誤っていたもの 福岡県
〔2〕 退職手当に係る国家公務員の例に準ずるべき額等の算定を誤っていたもの 栃木県
〔3〕 教育委員会事務局や教育関係団体に勤務する教員の給与費等を含めて算定していたもの

福井、愛知、鹿児島各県

 これを、県別に示すと次のとおりである。

県名 年度 国庫負担対象額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象額 不当と認める国庫負担金
千円 千円 千円 千円
(23) 栃木県 4 101,743,651 48,437,889 627 313
5 91,434,454 45,717,227 5,219 2,609
小計 193,178,105 94,155,116 5,847 2,923
 栃木県では、本人の都合等により退職した在職期間1年11月から24年6月の教職員9人(4年度3人、5年度6人)について、その在職期間の6月以上1年未満の端数を切り上げて勤続期間(注) を2年から25年として算定した退職手当などにより国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、国家公務員の例に準じて文部大臣が定めたところによれば、在職期間に1年未満の端数があるときはこれを切り捨てて勤続期間を計算することとなっている。このため、上記の教職員の場合勤続期間は1年から24年となるので、勤続期間を2年から25年として算定した退職手当などにより国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が4年度627,995円、5年度5,219,531円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、4年度48,437,575,133円、5年度45,714,617,590円となり、4年度313,998円、5年度2,609,765円がそれぞれ過大に交付されていた。
(注) 勤続期間 退職手当の算定の基礎となる期間で、在職期間に基づき年単位で計算することになっている。
(24) 福井県 4 43,915,103 20,874,648 2,346 1,140
5 40,320,753 20,160,376 2,339 1,169
小計 84,235,856 41,035,024 4,686 2,310

 福井県では、教育委員会事務局に勤務する教員3人を充て指導主事であるとして、これらの教員に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、教育委員会事務局に勤務するこれらの教員は、指導主事に充てる旨の発令がされている者ではないため国庫負担の対象にはならないものであるから、これらの者に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が4年度2,346,460円、5年度2,339,579円それぞれ過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、4年度20,873,507,777円、5年度20,159,206,879円となり、4年度1,140,237円、5年度1,169,790円がそれぞれ過大に交付されていた。

(25) 愛知県 5 275,812,691 137,906,345 30,083 15,041

 愛知県では、教育委員会事務局に勤務する教員1人について指導主事に充てる旨の発令がされているので、この教員に係る退職手当等を含めて国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、この教員は、教育委員会事務局で主として人事、服務等の一般教育行政事務に従事していて、実際に指導主事としての事務に従事している者に該当せず、教育委員会事務局に勤務する教員は国庫負担の対象にならないものであるから、この者に係る退職手当等を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が30,083,577円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、137,891,304,081円となり、15,041,788円が過大に交付されていた。

(26) 福岡県 4 215,695,269 102,696,881 5,340 2,529
 福岡県では、校長教諭等の標準定数を算定するに当たり、要保護・準要保護児童生徒(注1) の数が一定の要件を満たし産炭地域加算(注2) の対象となる小学校及び中学校の数を48校としていた。
 しかし、上記の学校数には、5月1日現在要保護・準要保護児童生徒に該当しない生徒の数を含めていたため上記の要件を満たさない学校が1校含まれているのに、これを含めて算定したのは誤りである。このため、校長教諭等の標準定数が1人過大になっていた。
 この結果、国庫負担対象額が5,340,755円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、102,694,352,369円となり、2,529,447円が過大に交付されていた。
 (注1) 要保護・準要保護児童生徒 「就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律」(昭和31年法律第40号)等に基づき、就学が困難なことにより国から援助を受けている児童又は生徒
 (注2) 産炭地域加算 校長教諭等の標準定数は学級数等に応じて算定されるが、産炭地域振興臨時措置法(昭和36年法律第219号)第6条の規定等に基づく地区に存する小学校及び中学校については次のように定められている。当該年度の5月1日現在において、要保護・準要保護児童生徒の数が25人以上で、当該数のその学校における児童又は生徒の総数に対する割合が100分の20以上の要件を満たす学校がある場合には、その学枚数に応じて次の教頭及び教諭等の数を加算する。
  〔1〕 要保護・準要保護児童生徒数が100人未満の学校については1
  〔2〕 要保護・準要保護児童生徒数が100人以上の学校については2
(27) 鹿児島県 4 116,709,342 55,686,075 33,472 15,844
 鹿児島県では、教育関係団体に勤務する教員4人に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していた。
 しかし、教育関係団体に勤務する教員は国庫負担の対象にはならないものであるから、これらの者に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が33,472,889円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、55,670,230,828円となり、15,844,835円が過大に交付されていた。
(23)−(27) の計 4 478,063,366 227,695,494 41,788 19,828
5 407,567,899 203,783,949 37,642 18,821
885,631,265 431,479,444 79,430 38,649