ページトップ
  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 文部省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

建築工事におけるコンクリート工の型枠費の積算が適切に行われるよう改善させたもの


 建築工事におけるコンクリート工の型枠費の積算が適切に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目 国立学校特別会計 (項)施設整備費
(項)特別施設整備費
部局等の名称 山形大学ほか17国立大学等
工事名 山形大学国際交流会館新営その他工事ほか26工事
工事の概要 校舎等の建築工事として、コンクリート工、鉄筋工等のく体工事等を行うもの
工事費 7,669,380,000円
請負人 山形建設株式会社ほか25社
契約 平成6年1月〜7年3月 指名競争契約、一般競争契約
過大積算額 2億3900万円

<検査の結果>

 上記の各工事において、建築工事のコンクリート工の型枠費の積算(積算額計9億9367万余円)が適切でなかったため、積算額が約2億3900万円過大になっていた。

 このように積算額が過大になっていたのは、積算に当たり前もって示されている型枠の単価と、積算参考資料に記載されている単価とに開差がある場合の取扱いについて通知が発せられているのに、複合単価表にその通知が明示されていなかったり、積算担当者まで十分周知徹底されていなかったりしたことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、文部省では、平成7年10月に、コンクリート工の型枠費の積算に当たり使用する複合単価表の取扱要領を改正するとともに、同年11月に各国立大学等に対して通知を発し、積算担当者への型枠の単価の取扱いについての周知徹底を図るなどの処置を講じた。

1 工事の概要

 (建築工事の概要)

 文部省及び各国立大学等では、国立大学等の施設整備の一環として、毎年多数の校舎等の建築工事を施行しており、このうち、平成6年度に、同省ほか98国立大学等で施行した契約額1億円以上の建築工事は294工事、工事費総額1525億6298万余円に上っている。これらの建築工事は、コンクリート工、鉄筋工等のく体工事等を施工するものである。

 (工事費の積算)

 同省では、建築工事の積算に当たっては、「国立文教施設工事積算要領(建築工事)」(以下「積算要領」という。)を基に行うこととしており、この積算要領に定める複合単価等算出表により「国立文教施設工事複合単価表(建築工事)」(以下「複合単価表」という。)を作成している。
 この複合単価表には、材料費、労務費等から構成される複合単価が都道府県別に表示されており、コンクリート工の型枠費の積算に当たっても、この複合単価を用いて行うこととなっている。そして、このコンクリート工の型枠費は、鉄筋コンクリート造り等の建築工事において工事費全体の相当な割合を占めており、上記の294工事では、型枠費の直接工事費に占める割合は平均14%、最高34%となっている。

 (型枠費の積算)

 前記の複合単価表の取扱要領では、型枠の複合単価(以下「型枠複合単価」という。)の採用に当たっては、一般に公表されている積算参考資料に記載されている発注時の型枠用の合板単価(以下「合板市場単価」という。)を考慮することとされている。すなわち、型枠複合単価の算出に当たり使用した型枠用の合板単価(以下「資材単価」という。)と合板市場単価との単価差が20%を超える場合は、工事実施部局において、合板市場単価を基に改めて型枠複合単価を算出し、これを採用して積算することとしている(下図〔1〕 参照)
 また、上記の積算参考資料には、材料費である合板市場単価のほかに、労務費など型枠を製作するのに必要な費用を含んだ型枠の市場単価(以下「型枠市場単価」という。)も記載されている。
 そして、同省では、近年、型枠市場単価の変動が大きく型枠複合単価との開差が大きいこと、また、型枠費が建築工事費全体に占める割合も小さくないことから、元年10月以降、型枠市場単価と型枠複合単価との間に開差がある場合の取扱いについては、必要の都度通知を発することにより対応している。これらの通知で現在適用されているのは、5年10月に各国立大学等に対して発せられた「国立文教施設整備事業に係る工事の積算に用いる型枠単価の取扱いについて(通知)」(平成5年5施技第63号。以下「型枠通知」という。)である。この型枠通知では、材料費である合板市場単価と資材単価との単価差が20%を超えない場合においても、上記のように型枠市場単価の変動が大きく型枠複合単価との間に開差が生じていることから、型枠市場単価と型枠複合単価についても比較することとしている。そして、その開差が10%を超える場合は型枠複合単価に代えて型枠市場単価を採用することとしている(注1)  (下図〔2〕 参照)

建築工事におけるコンクリート工の型枠費の積算が適切に行われるよう改善させたものの図1

(注1)  積算参考資料に型枠市場単価が記載されていない工事実施地域については、近隣の型枠市場単価と当該近隣の型枠複合単価を比較し、その開差が10%を超える場合には、その開差比率により工事実施地域の型枠複合単価を修正した単価(以下「修正単価」という。)を算出し、これを採用し、積算することとしている。

2 検査の結果

 (調査の観点及び対象)

 前記のとおり、コンクリート工の型枠費は、建築工事の直接工事費の中で相当な割合を占めており、その積算額も多額に上っている。また、依然として型枠市場単価と型枠複合単価との間に開差が生じている状況にある。
 そこで、建築工事において、コンクリート工の型枠費の積算が、型枠通知に基づき適切に行われているかという観点から、文部省及び各国立大学等が6年度に施行した建築工事のうち、型枠通知が適用される5年11月以降に92国立大学等が発注した219工事について調査した。

 (調査の結果)

 調査の結果、92国立大学等が施行した219工事のうち、山形大学ほか17国立大学等(注2) が施行した27工事(工事費総額76億6938万円)において、コンクリート工の型枠費の積算(積算額計9億9367万余円)について、適切でないと認められる事態が見受けられた。
 すなわち、上記27工事のコンクリート工の型枠費の積算に当たっては、積算時において型枠市場単価と型枠複合単価とを比較したところ、その開差が10%を超えているため、型枠通知に基づき、型枠市場単価又は修正単価を採用すべきであった。しかし、積算に当たり、型枠通知の内容を見落とし、複合単価表の取扱要領に基づき合板市場単価と資材単価との比較は行ったものの、この開差が20%を超えていなかったことから、型枠複合単価をそのまま採用していた。このため、型枠市場単価又は修正単価を採用した場合に比べて、積算額が過大になっていた。
 この事態について一例を挙げると、次のとおりである。

<事例>

 A大学では、6年12月に、校舎の建築等の工事を工事費882,710,000円で、B建設会社に請け負わせ施行している。
 同大学では、上記工事のコンクリート工の型枠費の積算に当たり、発注時の合板市場単価と資材単価を比較したところ、その開差が20%を超えていないことから、型枠複合単価をそのまま採用し、これに型枠面積を乗じて、型枠費を123,321,900円と算定していた。
 しかし、本件工事の発注時において、工事実施地域における型枠市場単価と型枠複合単価の開差は28.9%となっていて10%を超えていたのであるから、型枠通知に基づき型枠市場単価を採用すべきであった。
 そこで、型枠市場単価を採用して積算したとすれば、前記の型枠費123,321,900円は、87,585,600円となり、35,736,300円過大に積算されていた。

 (低減できた積算額)

 本件各工事におけるコンクリート工の型枠費について、型枠通知に基づき、型枠市場単価と型枠複合単価とを比較し、その開差が10%を超える場合は型枠複合単価に代えて型枠市場単価又は修正単価を採用して積算すると、7億5425万余円となり、前記の積算額9億9367万余円を約2億3900万円低減できたと認められた。

 (発生原因)

 このように積算額が過大になっていたのは、主として次のことによると認められた。
(ア) 型枠費の積算に当たっては、合板市場単価と資材単価を比較し、更に、型枠市場単価と型枠複合単価についても比較することとなっているのに、同省の複合単価表には、前者の単価の比較についてだけしか記載されておらず、後者については別途通知によっているため、積算担当者がその内容を見落としやすいものとなっていたこと
(イ) 同省は、型枠通知の内容を各国立大学等の積算担当者に十分周知徹底しておらず、また、各国立大学等において、工事費の積算に対する審査が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、文部省では、7年10月に、コンクリート工の型枠費の積算に当たり使用する複合単価表の取扱要領を改正するとともに、同年11月に各国立大学等に対して通知を発し、積算担当者への型枠通知の周知徹底を図るなどの処置を講じた。

 (注2)  山形大学ほか17国立大学等 山形、茨城、埼玉、一橋、福井、神戸商船、鳥取、愛媛、佐賀、長崎各大学及び鶴岡、茨城、木更津、長野、松江、呉、徳山、宇部各工業高等専門学校