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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(44) 医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)老人福祉費
(項)国民健康保険助成費
(項)生活保護費
(項)精神保健費
厚生保険特別会計 (健康勘定) (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
船員保険特別会計 (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
部局等の名称 社会保険庁、北海道ほか30都府県
国の負担の根拠 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、精神保健法(昭和25年法律第123号)
医療給付の種類 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法及び精神保健法に基づく医療
実施主体 国、道府県16、市285、特別区21、町366、村51、国民健康保険組合43、計783実施主体
医療機関 公立11、法人66、個人24、計101医療機関
不当と認める国の負担額 569,454,010円
 上記の783実施主体において、処置料、入院時医学管理料、看護料等の診療報酬の支払に当たり、請求に対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費961,502,782円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額569,454,010円が不当と認められる。

1 医療給付の概要

(医療給付の種類)

 厚生省の医療保障制度には、老人保健制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。

(ア) 老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法及び国民健康保険法(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(70歳以上の者又は65歳以上70歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療

(イ) 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者((ア)の老人を除く。)に対して行う医療

(ウ) 公費負担医療制度の一環として、都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村が、生活保護法に基づき要保護者に対して行う医療及び精神保健法に基づき精神障害者を医療機関に入院させて行う医療

(診療報酬)

 これらの医療給付においては、被保険者(生活保護法に基づく要保護者及び精神保健法に基づく精神障害者を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)がその費用を医療機関に診療報酬として支払う。

 診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(下図参照)。

診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(下図参照)。

(ア) 診療を担当した医療機関は、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定する。

(イ) 医療機関は、上記診療報酬のうち、患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬(以下「医療費」という。)については、老人保健に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、公費負担医療制度に係るものは都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村に請求する。

 このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。

 〔1〕 医療機関は、診療報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に送付する。

 〔2〕 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関ごと、保険者等ごとの請求額を算定し、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。

(ウ) 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認のうえ、審査支払機関を通じて医療機関に医療費を支払う。

 (国の負担)

 保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
(ア) 老人保健法に係る医療費については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、地方公共団体及び保険者が以下のように負担している(下図参照)

 〔1〕 老人保健法により、老人保健施設療養費等を除く老人医療費については、国は10分の2を、都道府県・市町村はそれぞれ10分の0.5ずつを負担することになっており、残り10分の7については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
 また、老人保健施設療養費等については、国は12分の4を、都道府県・市町村はそれぞれ12分の1ずつ負担することになっており、残りの12分の6については老人医療費拠出金が財源となっている。

 〔2〕 国民健康保険法により国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の一部を負担している。(平成6年度における国の負担額は老人医療費の約12%)

 〔3〕 健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。(6年度における国の負担額は老人医療費の約21%)

〔3〕健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。(6年度における国の負担額は老人医療費の約21%)

(注)  ( )書きは、老人保健施設療養費等に係る費用の負担割合である。

(イ) 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕 政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費はその全額を、〔2〕 市町村が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は当該市町村が支払った額の50%を、〔3〕 国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は当該国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。

(ウ) 生活保護法及び精神保健法に係る医療費については、国は都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村が支払った医療費の4分の3を負担している。

2 検査結果の概要

 前記の783実施主体(101医療機関)が行った診療報酬の支払について、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費961,502,782円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額569,454,010円が不当と認められる。
 これを診療報酬の別に整理して示すと、次のとおりである。

〔1〕 処置料等の支払が適切を欠いたもの

 414実施主体(55医療機関) 不当と認める国の負担額 308,226,196円

〔2〕 入院時医学管理料等の支払が適切を欠いたもの

 136実施主体(7医療機関) 不当と認める国の負担額 174,155,935円

〔3〕 看護料の支払が適切を欠いたもの

 176実施主体(8医療機関)  不当と認める国の負担額  21,116,189円

〔4〕 検査料の支払が適切を欠いたもの

 103実施主体(7医療機関)  不当と認める国の負担額  14,925,927円

〔5〕 老人基本診療料等の支払が適切を欠いたもの

 18実施主体(8医療機関)  不当と認める国の負担額  12,813,109円

〔6〕 リハビリテーション料等の支払が適切を欠いたもの

 23実施主体(4医療機関)  不当と認める国の負担額  8,056,866円

〔7〕 注射料等の支払が適切を欠いたもの

 82実施主体(7医療機関)  不当と認める国の負担額  7,731,212円

〔8〕 老人病棟入院医療管理料等の支払が適切を欠いたもの

 104実施主体(5医療機関)  不当と認める国の負担額  22,428,576円

3 検査結果の詳細

 上記の診療報酬の支払が不当と認められる事態について、診療報酬の別に、その算定方法及び医療機関における実際の算定・請求等の詳細を示すと次のとおりである。

〔1〕 処置料等の支払が適切を欠いたもの

(処置料の算定方法)

 処置料には、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置ごとに所定の点数が定められている。そして、外来の患者に対して、緊急のため休日又は時間外に処置を行った場合は、所定の点数に緊急休日加算をすることとされている。
 一般処置料の人工腎臓に係る処置については、外来の人工透析の患名一に対して人工腎臓実施中に食事を提供した場合は、所定の点数に食事加算をし、この場合において医療用食品(注) を提供したときは更に医療用食品加算をすることとされている。また、著しく人工腎臓の実施が困難な障害者等に対して人工腎臓を実施した場合は、所定の点数に障害者等の加算をすることとされている。
 そして、人工腎臓の処置に使用される特定保険医療材料及び薬剤の購入価格は、厚生省告示で定められており、このうち特定保険医療材料の購入価格については4年4月及び6年4月に逐次低い価格に変更されている。また、一部の薬剤の費用については、6年4月より、人工腎臓の所定点数に含まれていることから別途に算定できないことになっている。
 また、老人病棟等入院患者に対して行う皮膚科軟膏等の処置については、入院期間が1年を超える場合、1年以内の入院患者に対して行う皮膚科軟膏等の処置よりも低い点数の処置料が定められている。

(注) 医療用食品 主として入院患者の食事に用いられることを目的とする食品であって、厚生大臣が指定する検査機関において調理加工後の栄養成分が分析され、かつ、当該栄養成分分析値が保たれている食品

(検査の結果)

 検査の結果、北海道札幌市ほか45市町に所在する55医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが52,576件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 人工腎臓に係る処置において、休日等に行った緊急でない処置について緊急休日加算を行ったり、人工腎臓実施中に食事を提供した際に、医療用食品を使用した事実がないなど医療用食品加算の要件を満たしていないのに、所定の点数に医療用食品加算を行ったり、障害者でない者に障害者等の加算を行ったりしていた。

(イ) 人工腎臓の処置に使用される特定保険医療材料について、変更前の高い価格の点数で算定したり、価格の高い別の特定保険医療材料の点数で算定したりしていた。

(ウ) 人工腎臓の処置に使用される薬剤について、割高な算定を行ったり、実際よりも多い使用量に基づいて算定したり、処置料に含まれる薬剤料を別途算定したりしていた。

(エ) 実際は低い点数の処置を行っているのに、高い点数の処置を行ったとして皮膚科軟膏処置料を算定したり、入院期間が1年を超える老人病棟等の入院患者に対して行った皮膚科軟膏等の処置について、1年以内の患者に対して行う高い点数により算定したりしていた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなかった。
 このため、検査料、注射料及び手術料の算定を誤っているものも含めて、上記の52,576件の請求に対し北海道札幌市ほか413市区町村等が支払った医療費について510,236,812円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額308,226,196円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要

千円 千円

北海道

札幌市ほか30市町村等(4) 1,149 21,691 13,612 処置料の支払不適切

宮城県

伊具郡丸森町ほか2市等(1) 268 1,568 884

栃木県

黒磯市ほか7市町等(1) 1,005 14,453 9,638

群馬県

桐生市ほか8市町村等(1) 335 3,556 2,225 処置料及び注射料の支払不適切

千葉県

船橋市ほか12市等(1) 1,124 1,270 662 処置料の支払不適切

東京都

東村山市ほか47市区町等(4) 2,991 19,942 9,818

石川県

金沢市ほか28市町村等(3) 3,020 4,103 2,899

岐阜県

各務原市ほか6市町等(1) 255 2,541 1,367

愛知県

稲沢市ほか15市町村等(1) 1,540 19,251 10,368

三重県

津市ほか15市町村等(1) 1,337 3,495 2,084 処置料及び検査料の支払不適切

京都府

京都市ほか15市町等(2) 1,417 12,389 6,868 処置料の支払不適切

大阪府

大阪市ほか14市等(1) 1,689 35,119 20,519

奈良県

奈良市ほか7市町等(1) 1,373 1,720 910

和歌山県

和歌山市ほか7市町等(1) 142 1,526 740

鳥取県

鳥取市ほか26市区町村等(3) 3,134 19,997 11,704 処置料及び注射料の支払不適切

島根県

浜田市ほか11市町等(2) 1,323 17,558 10,140 処置料の支払不適切

広島県

福山市ほか39市町村等(7) 5,377 85,694 55,694 処置料及び手術料の支払不適切

山口県

下関市ほか45市町村等(7) 11,232 130,639 77,734 処置料の支払不適切

徳島県

阿南市ほか39市町村等(7) 4,640 91,351 55,273

香川県

丸亀市ほか6市町等(1) 161 1,016 717

佐賀県

唐津市ほか21市町村等(2) 3,865 4,515 3,171

長崎県

佐世保市ほか9市町等(1) 928 7,798 5,792 処置料及び検査料の支払不適切

宮崎県

都城市ほか26市町等(1) 2,683 3,418 2,101 処置料の支払不適切

沖縄県

那覇市ほか9市町村等(1) 1,588 5,615 3,292

小計

52,576  510,236  308,226

〔2〕 入院時医学管理料等の支払が適切を欠いたもの

(入院時医学管理料等の算定方法)

 入院時医学管理料及び看護料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。そして、医療機関において、医師及び看護婦等の数が標準となる数にそれぞれ100分の80を乗じて得た数以下である場合(以下「医師看護婦不足」という。)の翌月分の入院時医学管理料及び看護料については、所定点数に100分の90を乗じて得た点数を用いて算定することとされている。また、医師看護婦不足の医療機関については、都道府県知事は、入院時食事療養(I)の届出(注) を受理しないこととされており、既に入院時食事療養(I)の届出を行っている医療機関が医師看護婦不足に該当する場合には速やかに届出を取り下げさせることになっている。

(注)  入院時食事療養(I)の届出  6年10月に、基準給食の承認制から入院時食事療養(I)の届出制に変更された。

(検査の結果)

 検査の結果、茨城県猿島郡猿島町ほか6市に所在する7医療機関において、入院時医学管理料等の請求が不適正と認められるものが13,518件あった。いずれも、医師看護婦不足であるのに入院時医学管理料等について所定の減額をしないで算定していた。
 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、府県において、定期的に調査し把握している医師等の配置に関する資料の活用が十分でなかった。
 このため、上記13,518件の請求に対し茨城県猿島郡猿島町ほか135市区町村等が支払った医療費について290,882,406円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額174,155,935円は負担の要がなかったものである。
 これを医療機関の所在する府県別に示すと次のとおりである。

府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要

千円 千円
茨城県 猿島郡猿島町ほか64市区町村等(1) 5,229 127,341 70,183 入院時医学管理料、看護料等の支払不適切
神奈川県 鎌倉市ほか14市区町等(1) 231 15,691 6,302
京都府 京都市ほか5市等(1) 595 2,900 2,362
大阪府 大阪市ほか54市町等(3) 7,266 140,766 92,062
佐賀県 伊万里市ほか5市町等(1) 197 4,182 3,244

小計

13,518 290,882 174,155

〔3〕 看護料の支払が適切を欠いたもの

(看護料の算定方法)

 看護料は、入院料の一部であり、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。この看護料には、都道府県知事への届出(注1) を行い、厚生大臣の定める基準に該当する看護を行った場合に算定できる新看護料、基準看護料等と、上記以外の看護を行った場合に算定する看護料(以下「その他の看護料」という。)とがある。そして、その他の看護料については、都道府県知事へ看護婦等の数に関する届出を行い、看護を行った場合は、高い点数のその他の看護料を算定することとされている。
 各看護料については、都道府県知事へ看護婦等の夜間の勤務体制等に関する届出を行い、夜間の看護を行った場合は、所定の看護料の点数に加算(以下「夜間看護等加算」という。)をすることとされている。
 また、一般病棟に入院している老人の患者については、入院期間が6月を超える場合、6月以内の点数よりも低い点数の看護料が定められている。
 このほか、介護職員等が重点的に配置されている特例許可老人病棟(注2) において老人病棟入院医療管理料を算定する場合には、看護料は、同管理料に含まれていることから、別途に算定できないこととされている。
 都道府県知事は、医療機関が、看護の届出を行った後に当該看護の所定の要件を満たさなくなった場合には、変更の届出をさせることになっている。また、看護の届出を行っている医療機関に対しては、毎年、実地調査を行うとともに、届出書の記載事項について報告を徴し審査を行うことになっている。

(注1)  都道府県知事への届出  6年10月に承認制から届出制に変更された。

(注2)  特例許可老人病棟  主として老人慢性疾患の患者を収容する病院であって、医師、看護婦等の配置について、医療法(昭和23年法律第205号)第21条第1項のただし書による特例として、都道府県知事から一般病院より緩和された基準によることの許可を受けた特例許可老人病院の当該許可に係る病棟

(検査の結果)

 検査の結果、栃木県宇都宮市ほか7市区町に所在する8医療機関において、看護料の請求が不適正と認められるものが11,345件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 基準看護料、高い点数のその他の看護料及び夜間看護等加算を、都道府県知事への届出等を行っていないのに算定していた。

(イ) 看護婦等の数が、高い点数のその他の看護の要件を満たさず、低い点数のその他の看護に該当することになっているのに、変更の申請を行わないまま高い点数のその他の看護料を算定していた。

(ウ) 入院期間が6月を超える老人の患者について、6月以内の高い点数で看護料を算定していた。

(エ) 特例許可老人病棟において、老人病棟入院医療管理料を算定しているのに、別途看護料を算定していた。
 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、(ア)、(ウ)及び(エ)については、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなく、また、(イ)については、県において、看護婦等の配置状況に関する資料の活用が十分でなかった。

 このため、上記の11,345件の請求に対し栃木県宇都宮市ほか175市区町村等が支払った医療費について36,831,100円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額21,116,189円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要

千円 千円
栃木県 宇都宮市ほか3区町等(1) 45 1,154 646 看護料の支払不適切
東京都 杉並区ほか73市区町村等(2) 3,670 15,421 9,094
神奈川県 横浜市ほか1市(1) 669 1,868 1,012
静岡県 沼津市ほか66市区町村等(2) 3,702 13,057 7,238
京都府 京都市ほか3市等(1) 406 3,018 1,634
和歌山県 伊都郡かつらぎ町ほか50市町村等(1) 2,853 2,310 1,489

小計

11,345 36,831 21,116

〔4〕 検査料の支払が適切を欠いたもの

(検査料の算定方法)

 検査料には、血液化学検査、内分泌学的検査等の検体検査料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。また、検査は、治療方針の決定に必要な限度で行うこととし、診療上必要があると認められる範囲内において選択して行うこと、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
 そして、検体検査料のうち一定の血液化学検査料については、それらの検体について10項目以上の検査を一括して行った場合は、項目の種類によらず、上限として定められた点数(215点)で算定することなどとされている。
 また、安定した状態にある人工透析の患者について、計画的な治療管理を行う場合には、各種の検査項目を包括した慢性維持透析患者外来医学管理料を算定することができるが、同管理料に包括されていない検査の検査料を算定する場合にはその必要性をレセプトの摘要欄に記載することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、北海道帯広市ほか5市町に所在する7医療機関において、検査料の請求が不適正と認められるものが8,092件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 多くの患者について検体検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定していた。

(イ) ほとんどの患者について、毎月、10項目以上の血液化学検査を実施するに当たり、検査を2回に分けて実施することなどにより、上限として定められた点数によらずにその都度血液化学検査料を算定していた。

(ウ) 安定した状態にある人工透析の患者について、慢性維持透析患者外来医学管理料に包括されていない検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等において、医療機関からほとんどの患者に対し画一的に同一の検査を行ったとする請求がなされていることなどを看過し、更に(ウ)については、検査の必要性がレセプトの摘要欄に記載されていないことを看過していた。
 このため、上記8,092件の請求に対し北海道帯広市ほか102市区町等が支払った医療費について27,292,596円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額14,925,927円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する道県別に示すと次のとおりである。

道県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要

千円 千円
北海道 帯広市ほか6町等(1) 229 1,424 757 検査料の支払不適切
栃木県 小山市ほか46市区町等(2) 3,530 6,749 3,639
岐阜県 大垣市ほか17市町等(1) 1,549 7,926 5,076
三重県 亀山市ほか10市町等(1) 1,046 5,233 2,338
鳥取県 米子市ほか7市町(1) 340 1,530 639
長崎県 長崎市ほか16市区町等(1) 1,398 4,429 2,474

小計

8,092 27,292 14,925

〔5〕 老人基本診療料等の支払が適切を欠いたもの

(老人基本診療料の算定方法)

 老人基本診療料には、老人初診料、老人再診料等があり、それぞれの診療ごとに所定の点数が定められている。このうち、老人初診料は老人保健法の対象となる患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があった場合に、老人再診料はその後の診療行為の都度それぞれ算定できることとされている。ただし、特別養護老人ホーム(以下「特養ホーム」という。)に配置されている医師(以下「嘱託医」いう。)が特養ホームに赴いてその入所者に行っている診療については、その診療が別途国の補助事業として実施されている老人福祉施設保護事業の一環として行われているものであることから、老人初診料、老人再診料等は算定できないこととされている。そのため、患者が特養ホームの入所者である場合には、レセプトにその旨を表示することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、東京都国分寺市ほか6市に所在する8医療機関において、老人基本診療料等の請求が不適正と認められるものが7,227件あった。いずれも、特養ホームの嘱託医が特養ホームに赴いて入所者に行った診療について、老人初診料、老人再診料等を算定していた。
 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、市町において、特養ホームの入所者に係るレセプトの点検が十分でなかった。
 このため、処置料の算定誤りも含めて、上記の7,227件の請求に対し東京都国分寺市ほか17市町等が支払った医療費について、22,928,400円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額12,813,109円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する都県別に示すと次のとおりである。

都県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要

千円 千円
東京都 国分寺市ほか1市(1) 1,620 5,517 2,375 老人基本診療料等の支払不適切
和歌山県 海南市ほか3市町等(3) 2,109 7,262 4,351
香川県 坂出市ほか1市(2) 778 3,487 1,888
佐賀県 伊万里市ほか6市町等(1) 2,201 5,588 3,599 老人基本診療料及び処置料の支払不適切
宮崎県 延岡市ほか2町等(1) 519 1,072 597 老人基本診療料の支払不適切

小計

7,227 22,928 12,813

〔6〕 リハビリテーション料等の支払が適切を欠いたもの

(リハビリテーション料の算定方法)

 リハビリテーション料には、理学療法料、作業療法料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。
 このうち、理学療法料については、基本的動作能力の回復訓練の内容に応じて複雑な訓練に係るものと簡単な訓練に係るものがある。そして、前者は、医師の指導監督の下に1人の理学療法士が1人の患者に対して重点的に個別的訓練を1対1で40分以上専用施設で行った場合に、後者は、医師の指導監督の下に複数の患者に対して基本的動作能力の回復訓練を15分以上行った場合にそれぞれ算定できることとされている。
 また、理学療法に係る専任の常勤医師がいることなどの要件に適合しているとして都道府県知事への届出(注) を行った医療機関においては、届出施設としての高い点数によって算定できることとされている。そして、都道府県知事は、届出受理後に届出の内容と異なった事情が生じた場合には、遅滞なく変更の届出をさせることになっている。また、届出を受理した医療機関に対しては、毎年、実地調査を行うとともに、届出書の記載事項について報告を徴し審査を行うことになっている。

(注)  都道府県知事への届出 6年10月に、承認制から届出制に変更された。

(検査の結果)

 検査の結果、茨城県日立市ほか2市に所在する4医療機関において、リハビリテーション料の請求が不適正と認められるものが1,651件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 老人保健施設において、長時間、機能訓練等を行っている患者に対して、同じ日に必要のない理学療法を実施し理学療法料を算定していた。

(イ) 複雑な訓練に係る理学療法でないものについて、複雑な訓練を行った場合に用いることになっている高い点数で算定していた。

(ウ) 専任の常勤医師が退職したため承認施設の要件に該当しなくなったのに、変更の申請を行わないまま理学療法について承認施設に適用される高い点数で算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等において、(ア)については、老人保健施設で機能訓練等を行った患者に対して同じ日に理学療法を行ったとする請求が多数なされていること及び、(イ)については、患者に対し複雑な訓練を画一的に繰り返し行ったとする請求がなされていることを看過していた。(ウ)については、県において、常勤医師の配置状況に関する資料の活用が十分でなかった。
 このため、老人基本診療料及び注射料の算定誤りも含めて、上記の1,651件の請求に対し茨城県日立市ほか22市区町村等が支払った医療費について15,158,630円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額8,056,866円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する県別に示すと次のとおりである。

県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要

千円 千円
茨城県 日立市ほか13市区町村等(1) 354 10,204 5,255 リハビリテーション料及び老人基本診療料の支払不適切
滋賀県 大津市ほか5市町等(1) 728 1,743 1,079 リハビリテーション料及び注射料の支払不適切
岡山県 倉敷市ほか3市町(2) 569 3,210 1,721 リハビリテーション料の支払不適切

小計

1,651 15,158 8,056

〔7〕 注射料等の支払が適切を欠いたもの

(注射料の算定方法)

 注射料は、静脈内注射、点滴注射等の注射の種類に応じた技術料の点数に、使用した薬剤に係る薬剤料の点数を合算して算定することになっている。
 そして、人工腎臓の回路を通して静脈内注射、点滴注射等を行った場合の技術料については算定できないことになっている。

(検査の結果)

 検査の結果、北海道帯広市ほか6市町に所在する7医療機関において、注射料等の請求が不適正と認められるものが3,359件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 注射料の算定に当たり、薬剤の点数について購入価格を10円で除するなどして算定すべきところ、購入価格をそのまま点数として算定していた。

(イ) 人工透析の患者に対して必要性の認められないビタミン剤を画一的に繰り返し投与し、薬剤料を算定していた。

(ウ) 人工透析の患者に対して人工腎臓の回路を通して行った静脈内注射及び点滴注射について、注射に係る技術料を別途に算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなかった。
 このため、入院時医学管理料、検査料、処置料及び入院時食事療養費の算定を誤っているものも含めて、上記の3,359件の請求に対し北海道帯広市ほか81市区町村等が支払った医療費について13,521,971円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額7,731,212円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する都道県別に示すと次のとおりである。

都道県名 実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要

千円 千円
北海道 帯広市ほか21市町等(2) 1,005 3,000 1,875 注射料及び検査料の支払不適切
栃木県 河内郡南河内町ほか18市町等(1) 682 1,471 861 注射料の支払不適切
群馬県 富岡市ほか5市町(1) 184 4,656 2,270 注射料及び入院時食事療養費の支払不適切
東京都 品川区ほか11市区等(1) 311 2,161 1,280 注射料の支払不適切
山梨県 韮崎市ほか9市町村等(1) 459 1,092 720 注射料及び処置料の支払不適切
静岡県 静岡市ほか16市町等(1) 718 1,138 721 注射料及び入院時医学管理料の支払不適切

小計

3,359 13,521 7,731

〔8〕 老人病棟入院医療管理料等の支払が適切を欠いたもの

(老人病棟入院医療管理料、給食料、画像診断料、老人入院環境料の算定方法)

 老人病棟入院医療管理料(6年9月以前は特例許可老人病院入院医療管理料)は、介護職員等が重点的に配置されている特例許可老人病棟に入院している患者について算定するもので、特例許可老人病棟以外の一般病棟において看護婦等の数が入院患者数に対して所定の割合以上であることも要件となっている。
 給食料は、入院時食事療養費が設けられたため、廃止されており、算定できないことになっている。
 画像診断は、治療方針の決定に必要な限度で行うこととし、診療上必要があると認められる範囲内において選択して行うこと、同一の画像診断はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
 老人入院環境料については、厚生大臣が定める施設基準に該当するとして都道府県知事に届け出た医療機関に入院している患者の場合、所定の点数に老人病棟療養環境加算をすることとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、東京都江戸川区ほか4市に所在する5医療機関において、特例許可老人病院入院医療管理料等の請求が不適正と認められるものが2,417件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 特例許可老人病棟以外の一般病棟において看護婦等の数が要件を満たしていないのに、特例許可老人病院入院医療管理料を算定していた。

(イ) 入院時食事療養費を算定しているほかに、廃止された給食料を別途算定していた。

(ウ) 多くの患者についてコンピュータ断層撮影を画一的に繰り返し実施し、これに係る画像診断料を算定していた。

(エ) 都道府県知事への届出を行っていないのに、老人入院環境料について老人病棟療養環境加算を行っていた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、(ア)については、県において、定期的に調査し把握している看護婦等の配置に関する資料の活用が十分でなく、(イ)、(ウ)及び(エ)については、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなかった。
 このため、上記の2,417件の請求に対し東京都江戸川区ほか103市区町村等が支払った医療費について44,650,867円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額22,428,576円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する都県別に示すと次のとおりである。

都県名

実施主体
(医療機関数)
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要

千円 千円
東京都 江戸川区ほか26市区町等(1) 352 15,475 8,202 給食料の支払不適切
岐阜県 羽島市ほか32市町村等(2) 599 8,695 4,493 画像診断料の支払不適切
奈良県 奈良市ほか36市町村等(1) 1,302 3,644 1,740 老人入院環境料の支払不適切
和歌山県 和歌山市ほか8市町(1) 164 16,835 7,992 老人病棟入院医療管理料の支払不適切

小計

2,417 44,650 22,428
〔1〕  〜〔8〕 の計 100,185 961,502 569,454