ページトップ
  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 厚生省|
  • 不当事項|
  • 補助金

国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの


(118)−(121)  国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計(組織)厚生本省(項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生本省(交付決定庁)
広島、山口、高知、長崎各県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先 呉市ほか3市村(保険者)
財政調整交付金の概要 市町村等の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、災害等特別の事情を考慮して交付する特別調整交付金がある。
上記に対する交付金交付額の合計 881,609,000円 (平成5、6両年度)
不当と認める交付金交付額 31,300,000円 (平成5、6両年度)
 上記の4市村において、財政調整交付金の交付額の算定の基礎となる保健施設費支出額又は国民健康保険直営診療施設の年間診療実日数を過大に計上したり、保険料(又は保険税)の収納割合を事実と相違した高い割合としたりして交付申請を行っていた。また、これに対する上記4県の審査が十分でなかった。このため、交付金31,300,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

1 交付金の概要

 (国民健康保険の財政調整交付金)

 国民健康保険は、市町村等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、出産育児一時金、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づいて交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

 (普通調整交付金)

 普通調整交付金は、被保険者の所得等から一定の基準により算定される収入額(調整対象収入額)(注1) が、医療費、保健施設費等から一定の基準により算定される支出額(調整対象需要額)(注2) に満たない市町村に対し、その不足を公平に補うことを目途として交付するものである。
 普通調整交付金の交付額は、調整対象需要額が調整対象収入額を超える額に別に定める率を乗じて得た額となっている。そして、保険料又は保険税(以下「保険料」という。)の収納割合(注3) が所定の率を下回る場合は、その下回る程度に応じて段階的に交付額を減額することとなっている。
 調整対象需要額のうち保健施設費は、健康相談・診査など被保険者の健康の保持増進のために必要な事業(以下「保健施設事業」という。)に係る費用である。その費用の額の算定は、〔1〕 1月から12月までの間の保健施設費支出額から保健施設事業に係る他の国庫補助金の収入額等を控除した額(以下「保健施設費対象額」という。)と、〔2〕当該市町村の全被保険者数に一定額を乗じて得た額(以下「保健施設費基準額」という。)のうちいずれか少ない方の額によることとなっている。

 (注1)  調整対象収入額  本来徴収すべきとされている保険料の額で、調整対象需要額等を基に算定される応益保険料額と、被保険者の所得等を基に算定される応能保険料額との合計額

 (注2)  調整対象需要額  本来保険料で賄うべきとされている額で、医療費、老人保健医療費拠出金及び保健施設費の合計額から患者の一部負担金及び療養給付費等負担金等の国庫補助金等を控除した額

 (注3)  収納割合  市町村が徴収決定を行って納付義務者たる世帯主に賦課した保険料の額に対する収納した額の割合

 (特別調整交付金)

 特別調整交付金は、市町村について災害その他特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付するものであり、次のような種類の交付金がある。

(1) へき地において国民健康保険直営診療施設を運営している市町村に対して、その運営に当たり損失が生じた場合に交付するもの(以下「へき地直診特別交付金」という。)
 へき地直診特別交付金の交付額は、〔1〕国民健康保険直営診療施設における1月から12月までの間の年間診療実日数を基に算出した基準額(以下「直診基準額」という。)と、〔2〕同施設における上記期間の支出額から収入額を控除した額のうちいずれか少ない方の額に、施設の区分ごとに定められた率(3分の2又は10分の5)を乗じて得た額となっている。
 そして、年間診療実日数の算定において、半日の出張診療は0.5日として計算することとなっている。

(2) 国民健康保険事業に対する経営努力が顕著であるなど事業の適正な運営に積極的に取り組んでおり、保険料の収納割合の確保・向上に努めている市町村に対して、前年度の全被保険者に係る保険料の収納割合が前々年度の収納割合を上回っているなどの場合に交付するもの(以下「収納割合確保・向上特別交付金」という。) 収納割合確保・向上特別交付金の交付額は、別に定める定額となっている。

(3) 保健施設事業に積極的に取り組んでいる市町村に対して、保健施設費対象額が保健施設費基準額を超えている場合に交付するもの(以下「保健施設費特別交付金」という。)
 保健施設費特別交付金の交付額は、保健施設費対象額から保健施設費基準額を控除した額に4分の1を乗じて得た額となっている。

 (交付手続)

 財政調整交付金の交付手続は、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕 交付申請書を受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査のうえ、これを厚生省に提出し、〔3〕 厚生省はこれに基づき交付決定を行い交付することとなっている。

2 検査の結果

 財政調整交付金の交付について検査した結果、呉市ほか3市村において、保健施設費支出額又は国民健康保険直営診療施設の年間診療実日数を過大に計上したり、保険料の収納割合を事実と相違した高い割合としたりして交付申請を行っていた。また、広島県ほか3県のこれに対する審査が十分でなかった。このため、財政調整交付金31,300,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
 これを、県別に示すと次のとおりである。

県名 交付先
(保険者)
年度 交付金交付額 左のうち不当と認める額

(118)

広島県

呉市

6
千円
860,751
千円
18,347
 (普通調整交付金)
 呉市では、平成6年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり、保健施設費対象額が保健施設費基準額を超えているとして、保健施設費基準額を保健施設費として調整対象需要額に算入していた。これにより算定した交付金の額に基づいて6年度の交付申請を行い、846,722,000円の交付を受けていた。
 しかし、保健施設費対象額の算定の基礎となった6年1月から同年12月までの保健施設費支出額についてみると、同市では、同期間において支出負担行為をしたが支出していなかった巡回検診車の購入費用等を誤って保健施設費支出額に含めていた。このため、保健施設費対象額は、表1(修正)のとおり、保健施設費基準額を下回っているのに、この事実と相違して高くなっていて、調整対象需要額に算入する保健施設費が過大となり、交付金が過大に交付されていた。

表1

年度 保健施設費支出額(A)

千円

保健施設事業に係る国庫補助額(B)

千円

保健施設費対象額(A−B)

千円

保健施設費基準額

千円

調整対象需要額に算入する保健施設費

千円

6 (交付申請) (修正)   (交付申請) (修正)   (交付申請) (修正)
99,015 30,358 5,000 94,015 25,358 37,897 37,897 25,358

 (特別調整交付金)
 同市では、6年度分の保健施設費特別交付金の算定に当たり、表2(交付申請)のとおり、保健施設費対象額が保健施設費基準額を超えており、交付金の交付要件を満たすとして14,029,000円の交付を受けていた。
 しかし、6年度における保健施設費対象額は、前記のとおり事実と相違して高くなっていて、表2(修正)のとおり、実際は保健施設費基準額を下回っているので、交付金の交付要件を満たさないものであった。

表2

年度 保健施設費対象額(A)

千円

保健施設費基準額(B)

千円

保健施設費基準額超過額(A)−(B)

千円

6 (交付申請) (修正)   (交付申請) (修正)
94,015 25,358 37,897 56,118 0

 (過大交付額)
 したがって、普通調整交付金及び保健施設費特別交付金の適正な交付額は、表3のとおり、計842,404,000円となり、計18,347,000円が過大に交付されていた。

表3

年度 交付金の種別 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

6

普通調整交付金
千円
846,722
千円
8842,404
千円
84,318
保健施設費特別交付金 14,029 14,029
860,751 842,404 18,347

(119) 山口県 柳井市 5 10,000 10,000
 柳井市では、平成5年度分の収納割合確保・向上特別交付金の算定に当たり、表(交付申請)のとおり、前年度の全被保険者に係る保険料の収納割合は96.31%であるとしていた。
 そして、この収納割合が前々年度の収納割合(96.27%)を上回っているので、収納割合確保・向上特別交付金の交付要件を満たすとして5年度の交付申請を行い、10,000,000円の交付を受けていた。
 しかし、前年度の全被保険者に係る保険料の収納割合算定の基礎となった前年度の保険料の収納額についてみると、同市では、次のようにして、保険料の収納割合を事実と相違して不当に高くしていた。
(ア) 5年度の収納額に含めるべき前年度の出納整理期間後の収納額の一部を、前年度の収納額に含めて、収納額を過大にしていた。
(イ) 保険料収納割合の計算上収納額に含めないことになっている保険料の過大納付に係る還付未済額を含めて、収納額を過大にしていた。
 そして、適正な収納額は表(修正)のとおりであり、これによれば保険料の収納割合は96.19%となる。これは前々年度の収納割合を下回り、交付金の交付要件を満たさないものであった。
 したがって、収納割合確保・向上特別交付金10,000,000円は交付の要がなかった。

年度 全被保険者に係る前年度の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

前年度の全被保険者に係る保険料の収納割合(B/A)

前々年度の保険料の収納割合(96.27%)に対しての増減
5 (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
887 887 854 853 96.31 96.19 0.04 △0.08

(120) 高知県 幡多郡西土佐村 5、6 8,488 1,768
 西土佐村では、平成5年度分及び6年度分の大宮診療所に係るへき地直診特別交付金の算定に当たり、年間診療実日数を5年度199日、6年度96日とし、これを基に算出した直診基準額により算定した交付金の額に基づいて5年度及び6年度の交付申請を行い、計8,488,000円の交付を受けていた。
 しかし、年間診療実日数についてみると、同村では、半日の出張診療の場合の診療実日数を0.5日として計算すべきところ、これを誤って1日として計算していた。
 そこで、適正な年間診療実日数を算定すると、5年度186日、6年度48日となる。
 したがって、へき地直診特別交付金の適正な交付額は、表のとおり、5年度及び6年度で計6,720,000円となり、計1,768,000円が過大に交付されていた。

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

5
千円
5,524
千円
5,238
千円
286
6 2,964 1,482 1,482
8,488 6,720 1,768

(121) 長崎県 松浦市 5 2,370 1,185
 松浦市では、平成5年度分の上志佐診療所に係るへき地直診特別交付金の算定に当たり、年間診療実日数を94日とし、これを基に算出した直診基準額により算定した交付金の額に基づいて5年度の交付申請を行い、2,370,000円の交付を受けていた。
 しかし、年間診療実日数についてみると、同市では、半日の出張診療の場合の診療実日数を0.5日として計算すべきところ、これを誤って1日として計算していた。
 そこで、適正な年間診療実日数を算定すると、47日となる。
 したがって、へき地直診特別交付金の適正な交付額は、表のとおり、1,185,000円となり、1,185,000円が過大に交付されていた。

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

5
千円
2,370
千円
1,185
千円
1,185

(118)−(121) の計 881,609 31,300