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  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

農業農村整備事業の実施における水道管等の移設補償費の算定を適切なものにするよう改善させたもの


(1)  農業農村整備事業の実施における水道管等の移設補償費の算定を適切なものにするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業生産基盤整備事業費
(項)農村整備事業費
(項)農地等保全管理事業費
部局等の名称 農林水産本省、東北、関東、北陸、近畿、中国四国、九州各農政局
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)
予算補助
事業主体 道1、県18、市17、町96、村17、土地改良区等8、計157事業主体
補助事業 農業農村整備事業(795地区)
補助事業の概要 国の補助を受けて実施するほ場整備事業等の農業農村整備事業において、水道管等の移設補償を行うもの
補助対象事業費 41億9791万余円 (平成5、6両年度)
上記に対する国庫補助金交付額 20億9997万余円
節減できた補助対象経費 1億9920万円 (平成5、6両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 9870万円
<検査の結果>

 上記の補助事業において、移設補償費の算定に当たり、実際に要した移設工事費を基に算定することとすれば、補償費を約1億9920万円(国庫補助金相当額約9870万円)節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、農林水産省において、水道管等の移設補償費の算定方法について具体的な定めをしていなかったことなどによると認められた。
 
<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、農林水産省では、平成7年11月に地方農政局等に対して通達を発し、都道府県等が支払う補償費は実際に要した移設工事費を基に算定することとし、同年12月以降締結する補償契約から適用することとする処置を講じた。

1 補助事業の概要

(農業農村整備事業の実施)

農林水産省では、土地改良法(昭和24年法律第195号)等に基づき、農業・農村の健全な発展を図ることを目的として、ほ場整備事業、農業集落排水事業、農道整備事業等の農業農村整備事業を実施する都道府県、市町村等の事業主体に対し、事業の実施に要する経費の一部を補助することとしている。

(補助の対象)

 上記の事業における補助対象経費は、工事費のほか、用地及び補償費、測量及び試験費、事務費等からなっており、このうち用地及び補償費には、用地取得に必要な費用や建物等の移転費用のほかに、事業実施の際に障害となる水道管、電柱等の公共施設等を移設するのに必要な費用が含まれている。
 そして、このような公共事業の施行に伴い機能の廃止・休止が必要となる既存の公共施設等についてその機能回復を図ることを目的とする公共補償については、「公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱」(昭和42年閣議決定)により、事業主体がその原因者として金銭をもって補償するものとされている。

 (水道管等の移設に対する補償)

 事業主体は、事業の実施に当たって、道路を掘削するなどの際に、埋設されている水道管、消化栓等の水道施設(以下「水道管等」という。)が障害となる場合には、この水道管等を管理する者(以下「水道事業者」という。)と協議するなどして、水道管等の移設に関する移設補償契約を締結している。そして、この契約に基づき、事業主体は水道事業者に対し、水道管等の移設工事費に事務費を加えるなどして算定した移設補償費(以下「水道補償費」という。)を支払うことになっている。

2 検査の結果

 (調査の対象及び観点)

 平成5、6両年度に、北海道ほか25県(注1) において、道県又は市町村等の527事業主体が実施した2,080地区に係る水道補償費164億3967万余円(国庫補助金相当額82億3149万余円)を調査の対象とし、補助対象経費として計上された水道補償費が適切に算定されているかについて調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、北海道ほか19県(注2) において、157事業主体が実施した795地区に係る水道補償費41億9791万余円(国庫補助金相当額20億9997万余円)について、次のような不適切な事態が見受けられた。
 上記795地区の水道補償費の算定に当たり、事業主体では、いずれも、水道事業者が設計図書に基づき算出した水道管等の移設工事費(以下「設計金額」という。)を基として水道補償費を算定し、この金額により水道事業者と移設補償契約を締結して水道補償費を支払い、その全額を補助対象経費としていた。
 一方、水道事業者は、当該移設工事を実施するに当たって、この設計金額を基に予定価格を設定して競争入札等に付し、予定価格以下の落札価格等で契約していたため、その工事請負契約金額(以下「工事契約金額」という。)は、いずれも水道補償費の算定の基礎とした設計金額を下回っている状況となっていた。また、このうちには、水道事業者が既に工事請負契約を締結していて、移設補償契約の締結時に、事業主体でその工事契約金額を把握することができると認められるのに、これによることなく、設計金額を基として水道補償費を算定していたものが多数見受けられた。
 しかし、水道補償費は、事業の施行に伴い障害となる水道管等の機能回復に要する費用を補償するものであり、その補償に当たっては、実際に要した移設工事費である工事契約金額を基に算定した金額で補償すれば足りると認められた。現に、工事契約金額を確認した後に移設補償契約を締結し、これにより水道補償費を支払っている事業主体も多数見受けられた。
 したがって、上記のように、工事契約金額を上回る設計金額を基として水道補償費を算定し、これを補助対象経費としているのは適切でなく、改善の必要があると認められた。

 (節減できた水道補償費)

 上記の795地区について、工事契約金額を基に算出したとすれば、水道補償費は計39億9867万余円となり、前記の補助対象経費を約1億9920万円(国庫補助金相当額約9870万円)節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、主として次のようなことによると認められた。
(ア) 農林水産省において、水道補償費の算定方法について、具体的な定めをしていなかったこと

(イ) 事業主体において、補助対象経費となる水道補償費についての認識が十分でないため、実際に要した移設工事費である工事契約金額を把握しておらず、設計金額をそのまま移設工事費としていたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、7年11月に地方農政局等に対して通達を発し、都道府県等が支払う水道補償費は、工事契約金額に基づき算定した額によることとし、同年12月以降締結する補償契約から適用することとする処置を講じた。

 (注1)  北海道ほか25県 北海道、岩手、宮城、山形、茨城、群馬、埼玉、千葉、富山、福井、山梨、長野、岐阜、三重、滋賀、鳥取、島根、岡山、香川、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、沖縄各県

 (注2)  北海道ほか19県 北海道、岩手、宮城、山形、茨城、群馬、埼玉、千葉、富山、山梨、長野、滋賀、島根、岡山、香川、高知、佐賀、長崎、熊本、大分各県