会計名及び科目 | 一般会計(組織)運輸本省 | (項)海岸事業費等 |
港湾整備特別会計(港湾整備勘定) | (項)港湾事業費等 |
補助の根拠 | (1) | 海岸法(昭和31年法律第101号) 港湾法(昭和25年法律第218号)等 |
(2) | 予算補助 |
事業主体 | 4補助事業者 |
補助事業 | 港湾整備事業等 |
調査の対象 | 港湾整備業等の公共事業に係る国庫補助対象事業費に含まれる事務費のうちの食糧費 |
調査した食糧費の額 | 5273万余円 |
上記に対する国庫補助金相当額 | 4212万余円 |
懇談会に使用した食糧費の額 | 4271万余円 |
上記に対する国庫補助金相当額 | 3380万余円 |
<検査の結果> |
上記の補助事業において、食糧費の使用が国庫補助事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、食糧費の経理処理が明確でなかったりしている事態が見受けられた。 このような事態が生じていたのは、食糧費の使用や経理処理について、補助事業者の認識や理解が十分でなかったことにもよるが、運輸省において、次のように適切でない点があったことによると認められた。 (ア) 食糧費、なかでも懇談会の経費について国庫補助の対象となる範囲を具体的に定めていなかったこと (イ) 国庫補助事業に係る食糧費について、審査・確認を十分行っていなかったこと (ウ) 補助事業者に対し、食糧費の使用及び経理処理について十分指導していなかったこと |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、運輸省では、平成7年11月に都道府県に対して通達を発するなどして、用地買収交渉等国庫補助事業実施のため特に必要な場合の地元関係者、学識経験者等との懇談会を除いて、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするよう食糧費の範囲を具体的に定めるなど、国庫補助事業に係る食糧費の使用及び経理処理を適切に行わせる処置を講じた。 |
1 制度の概要
運輸省では、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに航路を開発、保全すること及び津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護しもって国土の保全に資することなどを目的として、港湾法(昭和25年法律第218号)、海岸法(昭和31年法律第101号)等に基づき、港湾事業、海岸事業等の公共事業を実施する都道府県に対し、その事業に要する経費の一部について国庫補助金を交付している。
これらの公共事業に係る国庫補助対象事業費には、工事費のほか事業を実施するために必要な事務費が含まれており、運輸省では、事務費の額を事業費の額に応じてその9%の範囲内としている。
公共事業に係る国庫補助事業の事務費の内訳は、港湾関係補助金等交付規則(昭和36年運輸省令第36号。以下「交付規則」という。)等により、おおむね次のとおりとなっている(下図参照) 。
すなわち、事務費は、国庫補助事業に直接従事する都道府県職員の人件費、国庫補助事業実施に直接必要な設計審査・補償交渉等のための旅費、国庫補助事業実施のため直接必要な庁費から構成されている。そして、この庁費の一部に食糧費が含まれている。
食糧費の使用範囲は、交付規則等によると、補償交渉等補助事業の遂行上特に必要な場合に限るとされている。
したがって、都道府県が支出した食糧費のうち、補償交渉等国庫補助事業の実施に直接要した食糧費が国庫補助の対象経費となる。
運輸省の交付規則等では、国庫補助事業の交付申請に当たり、食糧費を庁費の金額に含め、庁費として申請することとなっている。したがって、食糧費については、庁費の金額の範囲内で、事業主体である都道府県の判断により支出されることになる。また、事業完了後の実績報告書の提出に当たっては、食糧費の支出額については事務費の支出額に含めて報告することとなっている。
2 検査の結果
本院では、公共事業に係る国庫補助事業の検査については、従来、工事費に重点を置いて実施してきた。しかし、事務費に含まれる食糧費を巡る問題については社会的関心が高く、その使用目的を明確にするなど厳正な経理処理が求められているところである。したがって、食糧費が国庫補助事業の補助目的に沿って適切に使用されているか、経理処理は適切に行われているかという観点から調査した。
全国の都道府県のうち4補助事業者を調査の対象とした。
上記の補助事業者では、平成6年度に公共事業に係る国庫補助対象事業の事務費として計16億0651万余円(国庫補助金額10億5161万余円)を支出しており、各補助事業者からの提出調書によれば、食糧費は計6034万余円(国庫補助金相当額4556万余円)となっている。このうち、5273万余円(国庫補助金相当額4212万余円)の食糧費について、支出負担行為伺、支出命令書等の証拠書類(以下「経理関係書類」という。)及び歳出整理表等の帳簿に基づき調査した。
(1) 食糧費が補助目的に沿って適切に使用されているかを調査した。
調査したところ、食糧費5273万余円のうち、会議用の茶菓子、弁当等に使用しているものは1002万余円(国庫補助金相当額832万余円)、19.0%であるのに対し、飲食を伴う懇談会(以下「懇談会」という。)に使用しているものは4271万余円(国庫補助金相当額3380万余円)、80.9%となっていた。
そして、上記の懇談会に使用している食糧費4271万余円について、次のような事態が見受けられた。
ア 懇談会に使用された食糧費を使用目的別にみると、次のように国庫補助事業の実施のために直接必要であるか否か判然としないものがあった。
〔1〕 使用目的が「港湾事業打ち合わせ」、「業務調整」等と一律に記載されているなど、具体的な使用目的が明確となっていないもの
289件 | 2063万余円 |
〔2〕 予算要求のための懇談会に使用しているもの
25件 | 405万余円 |
〔3〕 本省庁、他都道府県等からの視察に伴う懇談会に使用しているもの
35件 | 243万余円 |
イ 懇談会に使用された食糧費には、2補助事業者において、国庫補助事業の執行課が上京して関係省庁等と懇談会を行っていた事態が90件、976万余円あった。
(2) 食糧費が適切に経理処理されているかを調査した。
調査したところ、食糧費5273万余円には、上記(1)ア〔1〕 のように経理関係書類に具体的な使用目的が記載されていないもののほか、3補助事業者において、出席者について、経理関係書類に合計人数のみを記載していたり、国何人、補助事業者何人と記載していたりなどしていて、経理関係書類では懇談会の出席者が特定できないものとなっていた。
したがって、上記の(1)及び(2)のように、食糧費の使用が国庫補助事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、食糧費の経理処理が明確でなかったりしているのは適切とは認められず、改善の要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、食糧費の使用や経理処理について補助事業者の認識や理解が十分でなかったことにもよるが、運輸省において、次のように適切でない点があったことによると認められた。
(ア) 食糧費、なかでも懇談会の経費について、国庫補助の対象となる範囲を具体的に定めていなかったこと
(イ) 国庫補助事業に係る食糧費について、審査・確認を十分行っていなかったこと
(ウ) 補助事業者に対し、食糧費の使用及び経理処理について十分指導していなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、7年11月に都道府県に対して通達を発するなどして、食糧費の使用及び経理処理を適切に行うよう次のような処置を講じた。
(ア) 用地買収交渉、補償交渉等国庫補助事業実施のため特に必要な場合の地元関係者、学識経験者等との懇談会を除いて、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするなど国庫補助の対象となる範囲を具体的に定めた。
(イ) 国庫補助金の交付決定及び実績報告の際に、食糧費の使途内訳について、運輸省で審査・確認の徹底を図ることとした。
(ウ) 都道府県に対し、次のような指導を行った。
〔1〕 国庫補助対象事業費と単独事業費の経理を区分すること
〔2〕 経理関係書類に目的、内容、出席者の範囲等を明示すること
〔3〕 都道府県の会計機関において的確な審査・確認を行うこと