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雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの


(188) 雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定)(項)失業給付費
部局等の名称 茨城県ほか17都県(支給庁)
日立公共職業安定所ほか98公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 266人
失業給付金の支給額の合計 169,278,372円
不適正支給額 60,732,370円
 失業給付金(基本手当及び再就職手当)の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、上記の266人に対して60,732,370円(基本手当35,610,420円、再就職手当25,121,950円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

 (雇用保険)

 雇用保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者を被保険者とし、被保険者が失業したときにその生活の安定を図るなどのため失業給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

 (失業給付金の支給)

 失業給付金には基本手当及び再就職手当のほか9種の手当等がある。このうち、基本手当は、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給されるものであり、再就職手当は、受給資格者が、基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上(平成6年6月28日以前は2分の1以上又は100日以上)残して安定した職業に就いた場合に支給されるものである。基本手当及び再就職手当は、公共職業安定所が、次のように支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給することとなっている。

 (ア) 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職、就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認のうえ失業の認定を行って支給を決定する。

 (イ) 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入れ年月日等について調査確認を行って支給を決定する。

  (注)  受給資格者 離職した被保険者で、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あり、労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることの要件を満たしていて、公共職業安定所において、基本手当を受給する資格があると決定された者

2 検査の結果

 (検査の対象)

 宮城県ほか24都府県(支給決定庁 仙台公共職業安定所ほか195公共職業安定所)から失業給付金の支給を受けた者のうち、再就職した者12,909人について、公共職業安定所における失業給付金の支給決定の適否を検査した。

 (不適正支給の事態)

 検査したところ、次のとおり基本手当及び再就職手当が不適正に支給されていた。

ア 基本手当

 茨城県ほか17都県で、本院が調査した7,313人に対する基本手当の支給のうち265人に対する支給(支給額144,156,422円)について、35,610,420円が不適正に支給されていた。これは、日立公共職業安定所ほか97公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職、就労していながらその事実を失業認定申告書に記載していないため、申告書の内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。

イ 再就職手当

 茨城県ほか17都県で、本院が調査した1,462人に対する再就職手当の支給のうち72人に対する支給について、25,121,950円が不適正に支給されていた。これは、下館公共職業安定所ほか47公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入れ年月日を記載していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都県別に示すと次のとおりである。

都県名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業給付金 左のうち不適正失業給付金
千円 千円
茨城県  日立ほか4
下館ほか1
小計 
242
49
11
2
4,916
923
5,840
2,053
923
2,977
栃木県  宇都宮ほか5
宇都宮ほか3
小計 
339
111
 18
6
 8,423
2,480
10,903
 2,122
2,480
4,603
東京都  飯田橋ほか12
渋谷ほか6
小計 
934
273
 34
12
 25,588
4,135
29,723
 5,559
4,135
9,694
神奈川県  戸塚ほか6
戸塚ほか2
小計 
337
72
 17
4
 7,059
959
8,018
 3,362
959
4,322
富山県  高岡ほか2
砺波
小計 
247
30
 6
1
 4,039
415
4,455
 833
415
1,249
岐阜県  大垣ほか4
大垣ほか1
小計 
363
69
15
3
 8,985
1,560
10,546
 2,069
1,560
3,629
静岡県  静岡ほか8
静岡ほか4
小計 
858
235
 33
8
 18,377
3,798
22,175
 4,073
3,798
7,872
愛知県  名古屋中ほか6
名古屋中ほか3
小計 
458
152
 21
5
 12,446
1,517
13,964
 1,899
1,517
3,416
三重県  四日市ほか4
鈴鹿
小計
 283
13
 7
1
 4,508
95
4,603
 821
95
916
島根県  松江ほか5
松江ほか2
小計
 508
43
 20
4
 9,231
1,022
10,254
 2,159
1,022
3,181
岡山県  岡山ほか5
倉敷中央ほか1
小計 
512
45
 16
2
 11,278
435
11,713
 2,285
435
2,720
広島県  広島ほか1
広島
小計
 238
51
 3
1
 1,971
355
2,327
 1,110
355
1,465
山口県  山口ほか3
山口ほか1
小計
 196
30
 6
2
 5,073
442
5,515
 382
442
825
香川県  丸亀ほか1
高松ほか2
小計
 67
63
 4
4
 737
1,344
2,082
 320
1,344
1,665
高知県  高知ほか4
高知ほか1
小計
 514
93
 17
9
 5,849
2,343
8,192
 2,578
2,343
4,921
福岡県  飯塚ほか5
直方ほか1
小計
 549
57
 15
3
 6,304
814
7,118
 1,924
814
2,739
佐賀県  佐賀ほか4
佐賀ほか2
小計
 428
54
 17
4
 7,216
2,191
9,408
 1,712
2,191
3,904
大分県  大分ほか1
別府
小計
 240
22
 5
1
 2,148
285
2,433
 340
285
625
計  98箇所
48箇所
7,313
1,462
 265
72
 144,156
25,121
 35,610
25,121
合計    169,278 60,732

  (注1)  上段は基本手当に係る分、下段は再就職手当に係る分である。

  (注2)  公共職業安定所のうち、基本手当と再就職手当の双方について不適正な支給があったものが47、基本手当のみのものが51、再就職手当のみのものが1あり、したがって、公共職業安定所の実数は99である。

  (注3)  不適正受給者のうち、基本手当と再就職手当の双方に係る者が71人、基本手当のみの者が194人、再就職手当のみの者が1人おり、したがって、不適正受給の実人員は266人である。