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  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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  • 医療費

労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの


(191) 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(労災勘定)(項)保険給付費
部局等の名祢 労働本省(支出庁)
北海道労働基準局ほか13労働基準局(審査庁)
支払の相手方 303医療機関
不適正支払額 56,882,104円
 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、上記の303医療機関に対して56,882,104円が不適正に支払われていた。

1 保険給付の概要

 (労働者災害補償保険)

 労働者災害補償保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。

 (療養の給付に要する診療費の支払)

 療養の給付は、保険給付の一環として、都道府県労働基準局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、負傷又は発病した労働者(以下「傷病労働者」という。)に対し診察、薬剤の支給等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働基準局に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働基準局では請求の内容を審査し、その結果に基づき、労働本省において労災診療費を支払うこととなっている。
 労災診療費は、労働省労働基準局長が定めた「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号。以下「算定基準」という。)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕 健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕 初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定めこれにより算定することとなっている。

2 検査の結果

 (検査の対象)

 北海道労働基準局ほか14労働基準局において、労災診療費の請求に対する支払の適否について検査した。

 (不適正支払の事態)

 検査したところ、北海道労働基準局ほか13労働基準局において、労災診療費が不適正に支払われていたものが、303医療機関について56,882,104円あった。これは、上記の14労働基準局において、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによるものである。

 (主な態様)

 上記の労災診療費が不適正に支払われていた事態について、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。

ア 手術料に関するもの

 一回の皮切により手術を行い得る範囲(以下「同一手術野」という。)の手術につき、2以上の手術を同時に行った場合の手術料は、主たる手術の所定点数のみにより算定することとなっており、指については特定の手術を除いて、左右の手、足ごとに同一手術野とみなすこととなっている。また、切創等の創傷によって起こった腱の断裂の単なる縫合については、創傷処理の点数で算定することとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか12労働基準局において、手術料が190医療機関に対し697件、32,993,159円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。

(ア) 指の同一手術野につき2以上の手術を同時に行っているのに主たる手術の所定点数によらず、それぞれの手術の所定点数により算定していた。

(イ) 切創等の創傷によって起こった腱の断裂の単なる縫合について、創傷処理の点数によらず、これよりも高い腱縫合術の点数で算定していた。

イ 入院料に関するもの

 傷病労働者が、医師又は看護婦の常時監視を要する症状であるなどの算定要件に該当する場合には、1日につき所定の金額を限度として、入院室料加算を算定できることとなっている。また、労働災害に起因する傷病に係る療養の給付と労働災害に起因しない傷病に係る療養の給付を同時に受けている場合の入院料は、当該入院を必要とした傷病に係る入院料として算定することとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか13労働基準局において、入院料が40医療機関に対し293件、8,876,474円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。

(ア) 入院室料加算の算定要件に該当しない傷病労働者について、入院室料加算を算定していた。

(イ) 労働災害に起因しない傷病により入院しているのに労災診療費として入院料の点数を算定していた。

ウ 画像診断料に関するもの

 画像診断のコンピュータ断層撮影のうちの単純CT撮影は、頭部、躯幹、四肢の区分に応じて所定点数が定められている。このうち四肢については悪性腫瘍等の疾病について撮影する場合に限り所定点数を算定できることとなっている。また、単純CT撮影を複数の区分について同時に行った場合には、主たる区分の所定点数のみにより算定することとなっている。
  しかし、北海道労働基準局ほか11労働基準局において、画像診断料が65医療機関に対し181件、2,726,742円不適正に支払われていた。その主なものは次のとおりである。
(ア) 悪性腫瘍等の疾病ではないのに四肢について単純CT撮影の所定点数を算定していた。

(イ) 複数の区分について同時に行った単純CT撮影についてそれぞれの所定点数により算定していた。

 (労働基準局別の内訳)

 上記の不適正支払額を労働基準局別に示すと次のとおりである。

労働基準局名 医療機関数 不適正支払件数 不適正支払額

北海道労働基準局

28

144
千円
6,090
宮城労働基準局 8 296 812
茨城労働基準局 26 173 3,361
埼玉労働基準局 23 143 2,581
千葉労働基準局 17 197 1,640
東京労働基準局 54 354 8,817
神奈川労働基準局 25 546 3,709
新潟労働基準局 24 205 4,581
富山労働基準局 3 44 1,769
愛知労働基準局 22 328 5,850
京都労働基準局 6 286 836
大阪労働基準局 23 268 6,849
山口労働基準局 6 90 2,400
福岡労働基準局 38 262 7,581
303 3,336 56,882