会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)建設本省 | (項)住宅建設等事業費等 |
道路整備特別会計 | (項)道路事業費等 | ||
治水特別会計(治水勘定) | (項)河川事業費等 |
補助の根拠 | (1) | 公営住宅法(昭和26年法律第193号) 道路法(昭和27年法律第180号) 河川法(昭和39年法律第167号)等 |
(2) | 予算補助 |
事業主体 | 5補助事業者 |
補助事業 | 道路事業等 |
調査の対象 | 道路事業等の公共事業に係る国庫補助対象事業費に含まれる事務費のうちの食糧費 |
調査した食糧費の額 | 1億6241万余円 |
上記に対する国庫補助金相当額 | 1億0775万余円 |
懇談会に使用した食糧費の額 | 1億2107万余円 |
上記に対する国庫補助金相当額 | 8073万余円 |
<検査の結果> |
上記の補助事業において、食糧費の使用が国庫補助事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、食糧費の経理処理が明確でなかったりしている事態が見受けられた。 このような事態が生じていたのは、食糧費の使用や経理処理について、補助事業者の認識や理解が十分でなかったことにもよるが、建設省において、次のように適切でない点があったことによると認められた。 (ア) 食糧費、なかでも懇談会の経費について国庫補助の対象となる範囲を具体的に定めていなかったこと (イ) 国庫補助事業に係る食糧費について、審査・確認を十分行っていなかったこと (ウ) 補助事業者に対し、食糧費の使用及び経理処理について十分指導していなかったこと |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、建設省では、平成7年11月に都道府県に対して通達を発するなどして、用地買収交渉等国庫補助事業実施のため特に必要な場合の地元関係者、学識経験者等との懇談会を除いて、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするよう食糧費の範囲を具体的に定めるなど、国庫補助事業に係る食糧費の使用及び経理処理を適切に行わせる処置を講じた。 |
1 制度の概要
(公共事業に係る事務費)
建設省では、道路網の整備を図りもって交通の発達に寄与すること及び河川を総合的に管理することにより国土の保全と開発に寄与することなどを目的として、道路法(昭和27年法律第180号)、河川法(昭和39年法律第167号)等に基づき、道路事業、河川事業、公営住宅建設事業等の公共事業を実施する都道府県に対し、その事業に要する経費の一部について国庫補助金を交付している。
これらの公共事業に係る国庫補助対象事業費には、工事費のほか事業を実施するために必要な事務費が含まれており、建設省では、事務費の額を事業費の額に応じてその8%の範囲内としている。
公共事業に係る国庫補助事業の事務費の内訳は、建設省所管補助金等交付規則(昭和33年建設省令第16号。以下「交付規則」という。)等により、おおむね次のとおりとなっている(下図参照) 。
すなわち、事務費は、国庫補助事業に直接従事する都道府県職員の人件費、国庫補助事業実施に直接必要な設計審査・用地交渉等のための旅費、国庫補助事業実施のため直接必要な庁費及び工事雑費から構成されている。庁費は、更に需用費、役務費、備品購入費等の費目に区分され、需用費の一部に食糧費が含まれている。
食糧費の使用範囲は、交付規則等によると、国庫補助事業の実施のために直接必要な会議用茶菓子、賄料等(用地買収交渉、補償交渉等補助事業の遂行上特に必要な場合に限る。)とされている。
したがって、都道府県が支出した食糧費のうち、用地買収交渉、補償交渉等補助事業の実施に直接要した食糧費が国庫補助の対象経費となる。
建設省の交付規則等では、道路事業、河川事業等の国庫補助事業の交付申請に当たり、事務費の総額及びその使用内訳について都道府県と協議を行い、食糧費の所要額を定めている。そして、事業完了後の実績報告書の提出に当たっても食糧費の支出額を報告することとなっている。
一方、公営住宅建設事業等の国庫補助事業については、補助金交付申請書の添付書類である附帯事務費明細書により、需用費に含まれる食糧費の金額についても交付申請することとなっているが、実績報告書の提出に当たっては需用費の支出額までの報告となっている。
2 検査の結果
本院では、公共事業に係る国庫補助事業の検査については、従来、工事費に重点を置いて実施してきた。しかし、事務費に含まれる食糧費を巡る問題については社会的関心が高く、その使用目的を明確にするなど厳正な経理処理が求められているところである。したがって、食糧費が国庫補助事業の補助目的に沿って適切に使用されているか、経理処理は適切に行われているかという観点から調査した。
全国の都道府県のうち5補助事業者を調査の対象とした。
上記の補助事業者では、平成6年度に公共事業に係る国庫補助対象事業の事務費として計179億9340万余円(国庫補助金額107億0597万余円)を支出しており、各補助事業者からの提出調書によれば、食糧費は計2億2503万余円(国庫補助金相当額1億4339万余円)となっている。このうち、1億6241万余円(国庫補助金相当額1億0775万余円)の食糧費について、支出負担行為伺、支出命令書等の証拠書類(以下「経理関係書類」という。)及び歳出整理表等の帳簿に基づき調査した。
(調査の結果)
(1) 食糧費が補助目的に沿って適切に使用されているかを調査した。
調査したところ、食糧費1億6241万余円のうち、会議用の茶菓子、弁当等に使用しているものは4134万余円(国庫補助金相当額2702万余円)、25.4%であるのに対し、飲食を伴う懇談会(以下「懇談会」という。)に使用しているものは1億2107万余円(国庫補助金相当額8073万余円)、74.5%となっていた。
そして、上記の懇談会に使用している食糧費1億2107万余円について、次のような事態が見受けられた。
ア 懇談会に使用された食糧費を使用目的別にみると、次のように国庫補助事業の実施のために直接必要であるか否か判然としないものがあった。
〔1〕 使用目的が「公共事業打ち合わせ」、「業務調整」等と一律に記載されているなど、具体的な使用目的が明確となっていないもの |
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1,067件 | 8414万余円 |
〔2〕 予算要求のための懇談会に使用しているもの | ||
39件 | 349万余円 |
〔3〕 本省庁、他都道府県等からの視察に伴う懇談会に使用しているもの | ||
38件 | 275万余円 |
イ 懇談会に使用された食糧費には、3補助事業者において、国庫補助事業の執行課が上京して関係省庁等と懇談会を行っていた事態などが369件、2877万余円あった。
(2) 食糧費が適切に経理処理されているかを調査した。
調査したところ、食糧費1億6241万余円には、上記(1)ア〔1〕 のように経理関係書類に具体的な使用目的が記載されていないもののほか、次のような事態が見受けられた。
(ア) 2補助事業者では、食糧費を支出するに当たって、国庫補助対象事業費と単独事業費とを区分することなく支出負担行為伺等を作成して、支出命令書等の決裁を受け、これらを整理・記入する帳簿においても区分して記載していなかった。
(イ) 4補助事業者では、出席者について、経理関係書類に人数を全く記載していなかったり、国何人、補助事業者何人と記載していたりなどしていて、経理関係書類では懇談会の出席者が特定できないものとなっていた。
したがって、上記の(1)及び(2)のように、食糧費の使用が国庫補助事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、食糧費の経理処理が明確でなかったりしているのは適切とは認められず、改善の要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、食糧費の使用や経理処理について補助事業者の認識や理解が十分でなかったことにもよるが、建設省において、次のように適切でない点があったことによると認められた。
(ア) 食糧費、なかでも懇談会の経費について、国庫補助の対象となる範囲を具体的に定めていなかったこと
(イ) 国庫補助事業に係る食糧費について、審査・確認を十分行っていなかったこと
(ウ)補助事業者に対し、食糧費の使用及び経理処理について十分指導していなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、7年11月に都道府県に対して通達を発するなどして、食糧費の使用及び経理処理を適切に行うよう次のような処置を講じた。
(ア) 用地買収交渉、補償交渉等国庫補助事業実施のため特に必要な場合の地元関係者、学識経験者等との懇談会を除いて、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするなど国庫補助の対象となる範囲を具体的に定めた。
(イ) 国庫補助金の交付決定及び実績報告の際に、食糧費の使途内訳について、建設省で審査・確認の徹底を図ることとした。
(ウ) 都道府県に対し、次のような指導を行った。
〔1〕 国庫補助対象事業費と単独事業費の経理を区分すること
〔2〕 経理関係書類に目的、内容、出席者の範囲等を明示すること
〔3〕 都道府県の会計機関において的確な審査・確認を行うこと