科目 | (住宅・都市整備勘定)(項)住宅管理費 |
部局等の名称 | 東京、関東、中部、九州各支社 |
工事名 | 平成6年度さつきが丘団地2-10-23号棟他外壁修繕工事ほか86工事 |
工事の概要 | 賃貸住宅等の保全管理業務の一環として、経年等による損耗が全体的に著しい賃貸住宅等の建物の外部及び内部の天井、壁面等の塗装、補修等を行う工事 |
工事費 | 7,443,361,250円 (当初契約額7,046,230,000円) |
請負人 | 有限会社遠藤工業所ほか41会社等 |
契約 | 平成6年4月〜7年3月 指名競争契約 |
過大積算額 | 7300万円 |
<検査の結果> |
上記の各工事において、内部足場費の積算(積算額計1億0701万余円)が適切でなかったため、積算額が約7300万円過大になっていた。 このように積算額が過大になっていたのは、賃貸住宅等の共用廊下等の塗装作業や補修作業においては、作業工具の改良などにより、仮設の内部足場を設置しないで施工されているのに、これが積算に反映されていなかったことによるものである。したがって、積算の基準を施工の実態に適合した適切なものに改める要があると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、平成7年10月に、内部足場費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算の基準を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。 |
1 工事の概要
住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)東京支社ほか3支社(注1) では、賃貸住宅等の保全管理業務の一環として、平成6年度に、経年等による損耗が全体的に著しい賃貸住宅等において、建物の外壁及び建物内部の共用廊下、バルコニー、階段室等の天井、壁面等の塗装、補修等を行う修繕工事を87工事(工事費総額74億4336万余円)施行している。
公団では、修繕工事の工事費は、本社制定の「保全工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づいて積算することとしている。これによれば、共用廊下、バルコニー及び階段室等の天井面等の高所部分の塗装作業や補修作業(以下「塗装作業等」という。)を行う場合には、内部足場が必要であるとして、高さ1.8mの鋼製脚立2台と足場板2枚とを組み合わせた仮設の足場(以下「脚立足場」という。)を設置することとなっている。
東京支社ほか3支社では、本件各工事の工事費の積算に当たって、積算要領に基づき、脚立足場を設置して塗装作業等を行うこととなっている共用廊下、バルコニー等の延べ床面積を算出し、これに脚立足場の設置単価(注2)
を乗ずるなどして、本件各工事における内部足場費を計1億0701万余円と積算していた。
(注1) 東京支社ほか3支社 東京、関東、中部及び九州各支社
(注2) 脚立足場の設置単価 塗装作業等を行う共用廊下等の床面積10m2 当たりに脚立足場1組を10日間設置することとして算定された単価
2 検査の結果
(調査の観点)
賃貸住宅等の塗装作業等においては、近年、作業工具が改良されていることが想定されたこと、また、居住者の日常生活への配慮が求められていることから、実際に脚立足場を設置して施工しているかについて調査した。
(調査の結果)
調査したところ、賃貸住宅等の共用廊下やバルコニー等における塗装作業等は、次のように行われていて、実際には、脚立足場はほとんど設置されていない状況となっていた。
すなわち、共用廊下やバルコニー等、大部分の箇所においては、長柄付きに改良されたローラーを使用して塗装作業を行っていたり、高さ90cm程度の小型の脚立を移動させながら補修作業を行っていたりなどしていて、積算で見込むこととなっている脚立足場は設置されていなかった。そして、実際に脚立足場を設置していた箇所は、建物1階のホール、階段室の最上階、屋上の塔屋内部など天井高が相当高い箇所に限られていた。
したがって、塗装作業等における内部足場費については、脚立足場の設置箇所を天井高が相当高い箇所(施工の実態からみておおむね2.7m以上)に限定することとして計上するなどして、施工の実態に適合した積算を行う要があると認められた。
(低減できた積算額)
上記により、本件各工事における内部足場費を修正して計算すると、3345万余円となり、前記の積算額1億0701万余円を約7300万円低減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、賃貸住宅等の共用廊下やバルコニー等の塗装作業等は、内部足場をほとんど設置せずに行われている状況になっているのに、積算要領がこれらの施工の実態を反映したものとなっていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、7年10月に、賃貸住宅等の修繕工事における内部足場費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。